英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語コラム(28)

2006年08月04日 | コラム
今回、代名詞のお話なんですが、代名詞というのは、もちろん、‘he’「彼」とか、‘she’「彼女」とか、‘it’「それ」のことです。これらは、何かを受けて指しているとよく解説されますが、代名詞は、当然のこと、話しかける相手が、予め何を指すのかわかっていないと使っても意味がないものです。「彼が ・・・」、「彼を ・・・」、「彼と ・・・」、などと一方的に言っているだけでは、結局、その「彼」って誰のことよ?となってしまいますから。

つまり、代名詞の性質は、基本的に、何か指す対象に常に依存しているわけです。典型的には、ある会話の中で、何らかの初登場となるような名詞が出てきて、それから後に代名詞が登場する、というのが最もわかりやすい解説になると思います。

(1)Eric likes books. He is always reading some book. (‘Eric’=‘he’)
  (エリックは本が好きで、彼は、いつも何か読んでるんだよ。)

代名詞には、このいわゆる、「後追い型・他者依存型」の性質があるため、少し詳しい解説本などになると、「古い情報」を担っている、と解説されることがよくあります。(1)で言えば、‘Eric’「エリック」は、会話の中に、先に登場している名詞であり、「新しい情報」ということになります。

その‘Eric’に依存して後追い的に、今度は、代名詞‘he’「彼」が、結局は、2回目に出てきた‘Eric’としての解釈を受けて、続く文の中で使われているわけですから、この点、代名詞は「古い情報」、という考えは正しいと思われます。

そして、発音に関しては、(1)での‘he’は、通常、ストレスを置くようなイントネーションにはならず、‘Eric’の方にストレスが置かれるのが普通です。これは、新しい情報は注目度が高いが、一方、古い情報は注目度が低いと見なされやすいため、話者の発音の力点が自然とそのようになるのだと思われます。

(2)Eric was in the office last night. I think not George but he stole our secret file.
  (昨夜は、エリックがオフィスにいた。ジョージではなく彼が我々の機密ファイルを
   盗んだんだと思う。)

そこで、(2)ですが、通常のイントネーションで発音される際は、‘not George but he’「ジョージではなく、彼が」のうち、‘he’の方にストレスを置くような発音になります。と言うのも、ジョージに疑いがかかっているところに、(2)の話者は、エリックが犯人ではないか、というような、他人とは違う新しい意見を持ち出しているからです。

(2)の中の‘Eric’も‘George’も、共に代名詞ではありませんから、「新しい情報」と見なされているはずです。そして‘Eric’を指し示す代名詞‘he’は、古い情報でなければならないはずなのに、話者がストレスを置いて発音するということは、もちろん、(2)の‘he’が、‘George’よりも新しい情報を担っていることを示唆しています。

つまり、(1)に反して、(2)では、代名詞に発音の力点が置かれるわけですから、代名詞が「古い情報」である、というような考えに疑問を投げかける反例となっているわけです。

ここで、大事なのが、「新しい情報・古い情報」のとらえ方です。よく考えてみれば簡単なんですが、「新しい・古い」といった概念は、絶対的なものではなく、主観的・相対的なものです。例えば、10年前に買ったクルマは、5年前に買った別のクルマと比べれば、もちろん、古いと言えますが、一方、15年前に買った、また別のクルマと比べれば、新しいということになります。

このように、「新しい・古い」とは主観的・相対的な概念なので、見方によっては、古いと思っているものが新しいと思われているということもあり、一方、新しいと思われているものが古いと思われているということにもなり得るわけです。

そこで、「代名詞は古い情報を担う」、という、誤解されやすい断定的な解説についてですが、こういった解説は、あくまでも、代名詞自体は、何を指しているのかを、自分で指し示す能力がない、という点で、「後追い型・他者依存型」であり、この点においてのみ、必然的に「古い情報」であると理解すべきなのです。

これを言いかえると、名詞‘Eric’は依存するものを必要としないが、一方、代名詞‘he’は依存するものが必要なので、イコール (=) 関係が成り立つ‘Eric’と‘he’のような2つの表現の間でのみ、「新しい・古い」といった関係が、常に付きまとう結果になる、ということなのです。

(2)での代名詞がストレスを置かれる発音になる要因は、こういった理解とは、もちろん、次元が違います。つまり、代名詞という単語そのものが、もともともっている、言わば、「他者依存型」という語彙的な性質とは全く関係ないものです。

ただ単純に、「異なる人物」である2人、‘George’と‘he’(=‘Eric’) という点から、そのコントラストにおける情報の新しさ・古さの比較になっているわけですから、もはや、代名詞は指し示す相手が必要だから、どうのこうの、ということとは全く関係ない別次元の問題だということがわかると思います。

というわけで、結構、誤解されやすい、「代名詞は古い情報を担う」、という解説は、そのままストレートに文字通りの解釈をしてはならず、「指し示す相手が前提となる性質上、その指し示す相手と比較した場合、常に古い情報を担う立場にある」、と補足して理解するべきものなのです。

コトバの問題に常につきまとう、「新しい情報・古い情報」の概念は、何かとの比較において相対的に決定されるべきものなので、単語そのものに、最初から、「新しい情報・古い情報」を指定することは、本来的には不可能なのです。

つまり、(2)のような代名詞の使い方があるのは、コトバの在り方としては、むしろ、自然なことであり、一方、(1)のような例から、代名詞の本質を語ろうとするのは、巨視的に観た場合、特殊なことなのです。「一般・特殊」の関係を常に念頭に置いてモノゴトを観察するようにしておかないと、事態を見誤ってしまいますね。

       みんなの英会話奮闘記★      ★英語・人気blogランキング


最新の画像もっと見る

コメントを投稿