英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語コラム(29)

2006年09月03日 | コラム
今さら聞けない英語の疑問なんて、どんなものがあるかな?とも思いますが、こんなのどうでしょう?

(1)All the angles of a triangle are less than 180゜.
  (三角形の内角は、どれも180度より小さい。)

(1)で述べているようなことは、もちろん、三角形の3つの角は常に全部足し合わせて180度ジャストという誰でも知っている三角形の法則があるわけですから、当たり前のことなんですが、しかし、これが、なかなか面白い問題提起につながっていきます。

(2)All the angles of a triangle are 180゜.
  (三角形の内角は、全て足し合わせると180度だ。)

(1)から‘less than ~’「~ より下」を取り除くと、(2)のような英語になりますが、それでも正しい英語です。しかし、その意味が、単純に‘less than’を取り除いただけの解釈になっているわけではなく、根本的に意味が変わってしまっていることに注意して下さい。

(1)も(2)も、主語の‘all the angles of a triangle’「三角形の全ての角」は同じ表現です。しかし、(1)では、「全ての三角形の内角1つ1つが」という解釈になる一方で、(2)では、「1つの三角形における内角の総和が」という解釈になっているわけですから、この2つの異なる解釈が発生する原因はどのようなところにあるのか、ということになります。

(3)All the batters hit a home run in the game last night.
  (昨夜、その試合では、バッター全員がホームランを打った。)

そこで、(3)のような英語ですが、別に難しくも何ともなさそうな平易な英語に見えますが、これをとっさに会話などで言おうとすると、意外に、ん?ちょっと待てよ、と考えてしまうことがあります。それは、英語では名詞表現に、逐一、「単数・複数」の区別がともなうからです。

真面目なヒトなら、必ず、バッターが全員ホームランを打ったということは、バッターの数だけホームランの数があるはずだ。だから、(3)の目的語は、単数形の‘a home run’ではおかしく、‘home runs’と複数形にするのが正しいのではないか?などと考えてしまうわけです。

しかし、結論から言うと、別に、(3)はおかしいということはなく正しい英語であり、全く問題はありません。これは‘all’「全て」や、それに類する語句、‘every’などの表現が共通にもっている性質に着目し、その性質を予め理解しておけば、割とスッキリと解決してしまうようなことなのです。

(4)Every student in this school hates a teacher.
(5) a. この学校では、全ての学生に嫌いな先生が1人はいる。
   b. この学校では、全ての学生がある1人の先生を嫌っている。

まず、(4)のような英語は、一般的に、(5a)と(5b)のような2通りの解釈があります。(5a)は、学生それぞれに1人ずつ嫌いな教師がいる、と言っているわけですから、学生の数だけ嫌いな教師の数がある、というようなことを言っているわけです。

一方、(5b)は、学校の中に、ある嫌われ者の教師が1人いて、しかも、学生全員がその教師を嫌っているような状況を言っているわけです。つまり、潜在的に、「全て」というような意味をもった表現は、①・「全ての中で、それぞれ」というような解釈もあれば、一方、②・「全てが1つにまとまって」というような解釈も許してしまうので、もともとの性質として、その解釈があいまいなのです。

ですので、(4)のような英語は、たまたま、「全て」という表現のもつ2通りの解釈の可能性のうち、どちらも許しているようなケースになる、というだけのことなのです。ここで、(1)と(2)に戻って考えてみると、まず、私たちは、「不変の真理」として、1つの三角形がもっている3つ内角の総和は180度ジャストである、という知識がその前提としてアタマの中にあります。

すると、(1)は、‘less than 180゜’「180度より下」の表現から、180度ジャストではないと判断されるので、‘all the angles of a triangle’の‘all’は、①と②の解釈のうち、②・「全てが1つにまとまって」という解釈にはなり得ないと常識的に判断するわけですね。

一方、(2)は、もちろんこの逆で、‘~ are 180゜’「~ は180度だ。」の表現から、180度ジャストが確定するわけですから、三角形の内角の1つが180度になってしまったら、残り2つの内角はなくなってしまうじゃないか、と判断するので、①と②の解釈のうち、①・「全ての中で、それぞれ」という解釈にはなり得ないとなるわけですね。

つまり、(1)と(2)の解釈が1つに決まってしまい、かつ、お互いに異なる解釈になるのは、「全て」という表現が、もともともっている2通りの解釈というあいまい性があり、それに加えて、私たちが不変の真理としている三角形に対する知識があると、一方が他方を排除し合うような選択しかなくなってしまう、ということなのです。

そこで、(3)ですが、これは、①と②の解釈のうち、①の解釈を利用した英語表現であることは、もうおわかりになると思います。もし仮に、②の解釈になってしまったら、それは、バッター全員で力を合わせて1本のホームランを打ったというような、野球のルールを全く無視したような解釈になってしまいますから。

(6)All the batters hit home runs in the game last night. (訳同(3))

(6)は、(3)の目的語を複数形‘home runs’に変えたものです。今回の考え方からすると、(6)はどんな解釈になるのかというと、全てのバッターが、1人2本以上のホームランを打ったという解釈になりますが、一方、全てのバッターがホームランを打ったことは確かだが、1本だけの者や、2本以上打った者が混じり合っている、という解釈にもなります。

と言うよりも、「複数×複数」のような掛け算が文の中にあると、もう数が入り乱れてゴチャゴチャした感じになってきますので、実際、(6)は、あまりにも繁雑すぎて、情報伝達上、不親切な表現の仕方になり、好ましくないとされています。

(7)Each of the batters hit home runs in the game last night. 
  (各々のバッターが複数のホームランを打った。)

そこで、あえて、1人につき2本以上のホームラン、と言いたければ、(7)のようにするのが自然です。もちろん、言うまでもなく、いろいろ工夫すれば、他にも、(7)の日本語訳を意図するような英語表現はたくさんありますが。う~ん、何ともややこしいですね。

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