旅のウンチク

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通行止め林道の報道に思う

2017年08月09日 | 時事
 最近、インターネット上のニュースで、ゲートをくぐり抜けて林道を走るオフロードバイクの問題を取り上げた埼玉新聞の記事を目にしました。そして、それに付随するインターネットらしいコメントの数々。ライダー側からも批判めいた”他人事”的なコメントの数々が寄せられるのはレクリエーション後進国である日本の昔からの特徴でしょう。

 私個人はここ10年ほどオフロードバイクで本気で走る事はしていませんが、ここで正直に自白しておきます。自分もゲートを抜けて林道を走ったことは何度もありますし、死亡事故にこそなりませんでしたが一緒に走っていた仲間が転落事故を起こした事や転倒で怪我をしたことは何度かあります。だからまったくもって”他人事”では済まされません。

 いや、むしろ、完全に当事者であると思います。

 観光産業に関わる私から見れば、良い林道は充分に観光資源だとも思います。実際、視点を変えれば林道ツーリングに行けばガソリンを入れたり、食事に寄ったり、コンビニで買物をしたり、場合によっては道の駅で家族に買物をすることだってあるでしょう。そういう意味ではハイカーやドライブ客と変わりなく経済効果はあります。ドライブ客も一般道で毎月のように事故を起こしていますし、年に数回は死亡事故も起こっていると思います。”ドライブ客は事故を起こすから出入り禁止にしよう”という事にはならないのに、林道だけが問題視されるのは一つには”管理費用”の問題だと思います。

 一般道で転落事故が起こったとしたら、そこにはおそらく将来、ガードレールが設置されるのではないでしょうか。林道の場合、そういった費用を一体誰が何のために負担するかという問題が出てきます。林業関係者だけであれば、慣れた道路なので危険箇所は頭に入ってるでしょうから、”気をつけて走る”で事が済みますが、不特定多数の人達が走るとなるとそうはいきません。だからゲートを作って特定の人しか入れなくするという手段が手っ取り早い方法です。もしかすると、ゲートさえ作っておけば勝手に入り込んだ人が死亡事故を起こしても、”不法に入り込んで勝手に事故を起こした”という事が明確にできて煩わしい事実関係の確認を最初から回避できるという事もあるかもしれません。

 オフロードライダーの立場に立ってみた場合。たとえば、とても楽しめる林道があって、そこが”有料道路”だったらどうでしょうか。その通行料が林道の管理者の利益と、ガードレールの設置などを含む道路の整備に当てられるとしたら、高速道路の通行料よりもずっと納得できる通行料だと思うのです。

 料金収受の問題などもあると思いますが、例えばスイスやオーストリアの高速道路通行料のようにガソリンスタンドなどで支払えるようにして、"○○町内林道1日通行券"とか、そんな感じで”受益者負担”にすれば後ろ暗い遊びとしての林道ツーリングから一歩抜け出せると思うのです。

 まあ、これは一つのアイデア。

 ”事故発生”=>”世間の批判”=>”禁止”

 とかく日本ではレクリエーションそのものが、優先順位の低い事に捉えられがちです。最近ではインターネット上のコメントがそれを後押しして、みんなで批判しあって楽しいことがどんどん禁止されていく事が残念でなりません。他人事として批判しているうちに日本の全ての林道が閉鎖されてしまうのも時間の問題。それより、起きている問題を日本のオフロードライダー皆が当事者意識を持って解決方法を考えれば禁止を喰い止めるだけでなく、一つの遊びとして市民権を得る事だって夢ではないと思うのです。


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