旅のウンチク

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サスティナビリティの呪文

2007年11月10日 | 時事
昨日、映画をテレビで見ていた流れで久し振りにニュースショーを目にしたのですが、その中でサッカーの元日本代表、中田選手のインタビューが取り上げられていました。どうやらこのインタビューの内容は"クリエジャポン"という雑誌に掲載されているようなので、興味のある方はどうぞ。

彼は今後の活動として、アジアの貧困救済に携わっていきたいと語る彼は、その活動が継続可能なものとなるようにビジネスとしての展開を考えているという意見を語っていて、キャスターの村尾氏も、持続可能性はビジネスとして展開した方が高いという事を語っていたのですが、この話、いろいろな所で何度も聞いた事がある話だなと思った次第。

いろいろな所で聞かされたという事は、最近流行の考え方なのかと思うと同時に、数年に渡って世界を旅した結論として見出したにしては、ただの流行の考え方である事に少しガッカリさせられたのも事実。そして、多分、これは誰かが後で糸を引いている話でもあるな、などとも思ったりしました。

このインタビューをきっかけに、持続可能性(サスティナビリティ)について書いてみようと思ったわけですが、こと社会福祉的な活動に絡めて語るには、この論法、いろいろな問題があります。

まず、文字どおり、アジアの貧困を救済する活動という事を考えてみた場合、この活動が持続可能である必要性が無いという事に行きあたります。単純な話、世界から貧困が撲滅されれば、そのような活動は必要なくなるのであって、それが理想的な世界ではないでしょうか。この活動と持続可能性を絡めて語る人は、貧困はこの世の中から無くなるなんて夢にも思っていないのに、他人には貧困を無くすために協力してほしいと呼びかけている事になるわけで、いかにも座りの悪い話です。

そして、ビジネスとしての持続可能性。儲かるなら多くの人が協力してくれるでしょうし、それなりに大きな規模の活動が行えるかもしれません。しかし、一方で、ビジネスとしてではなくても、何十年も様々な国で活動し続けてきた人々がいる事も事実です。そういう活動を見ていると、儲かるから取り組むという程度の心意気の人は結局、持続可能な活動など行えないのではないかとも思うのです。

ビジネスとして取り組む、そして、持続可能性を最初から意識して取り組むという事はアジアの貧困そのものが"持続可能性"があり、そこから継続して利益を確保する方法を見出したという事かと思えてきます。アジアの貧困問題が解決したら、そこに巣喰って利益を上げるビジネスは成立しなくなるわけですから、自分達のビジネスを持続させるためには極力アジアの貧困が持続可能であってほしいという結論に行きついて、存在理由そのものが既にジレンマに陥っていると言えます。

私は、ひょんな事からしばらくの時間を鉄道線路沿いのスラムで過ごした事があります。パキスタン北部の山中では、お金をせびられるでもなく、物をせびられるでもなく、ただ"何か食べ物を持ってないか?"と聞かれて、その直接的な要求に動揺した事もあります。そんな中で見えてきた事、それは、結局、我々の日々の生活そのものが、他国の貧困の上に成り立っているという事実です。派手な活動を行うよりも、我々は日々の生活をもう一度見直して、世界の限られた資源や食料や財産を自分達だけで食べ散らかすような生活をやめていく事が大切なのではないかと思っています。


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