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だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

いなかで暮らしはじめたワカモノたち

2008-10-18 04:46:31 | Weblog

 昨日、NPO法人こうじびら山の家のワカモノ二人の訪問を受ける。岐阜県郡上市名宝で廃屋となっていたキャンプ場跡地を借り受けて、修復し、再開。いなか暮らしの体験プログラムを準備して街の人を迎え入れる。自分たちがいなかで暮らしていくだけでなく、ワカモノたちがいなかで暮らし始めるお手伝いをするのが最終的なミッションだという。
 愛知県常滑市のいなかに入って農業をはじめたのは(株)M-easyのワカモノたち三人。耕作放棄地を借りて有機野菜の栽培にチャレンジしている。こちらも都市の人々との交流を大切にして出荷のかたわら体験農園をすすめている。

 限界集落だらけのいなかを再生するということは、ワカモノがそこに住み着くということに尽きる。そのために必要なのは仕事である。仕事がないからいなかのワカモノは都会にでていくのであるから、仕事は自らつくるしかない。夢を抱いてビジネスにチャレンジする人でなければ、いなかに住み着くことはできない。

 事業をたちあげる時に、まずたちはだかる大きな壁は、事業がまわりはじめるまでの間、どうやって食っていくか、ということである。普通は個人で起業する場合、かなりの額の貯金が必要とされる。起業期はさまざまな初期投資が必要であるとともに、その間の生活費は貯金を食いつぶすしかない。この時期、預金残高が減っていくのは、とてもプレッシャーになるという。
 しかし、ワカモノたちはそのようなまとまった金額のオカネをもっているわけではない。そうすると、いなかに住み着くということは大きなリスクを抱えることになる。普通はなかなかできないことだ。

 こうじびら山の家も、M-easyも、ハタから見ているとやや無鉄砲である。そもそもいなか出身のワカモノが、帰りたくても仕事がないから帰れない、と都会に留まっている状況のいなかである。そこに飛び込んで暮らしていくのは、なにごとも計算ずくではできないだろう。
 そして、彼らに共通していることは、地域のみなさんにしっかり支えてもらっているということだ。まだ事業ははじまったばかりで、「食えない」のであるが、端的に、お米や野菜を分けてもらって、実は食うには困っていないのである。また物的にも心理的にもさまざまにサポートしてもらっている。

 高齢化する日本のいなかでは、そこに根を下ろし真剣に暮らして行こうというワカモノがいれば、おおむね歓迎されるようになった。何かと閉鎖的といわれたいなかは様変わりしている。田畑や山が荒れ始め、このままでは確実に集落が消滅する、ということが誰の目にも明らかになった時、外に向かって心が開かれる。一方、いなかに暮らしているみなさんはおおむね経済的に豊かで、心にも余裕がある。自分たちの息子、娘は手を離れるとともに都会に出て行って帰ってこない分、ワカモノたちをかわいがることができる。

 この際、思い切って存分に支えてもらったらよいと思う。それがお互いにとってプラスになるし、なにより喜びになる。コミュニティビジネスとは、コミュニティに支えてもらうビジネスであることを、私は彼らの果敢なチャレンジの姿から学んだ。これを私は「マイナスリスクのビジネスモデル」と呼ぶことにしたい。いなかでワカモノの仕事を作り出す際の、ひとつのスタンダードなモデルにすることができるのではないだろうか。

 そうはいっても、いつまでも食わせてもらっているわけにはいかない。いなかに住み着くということは、そこで家庭をもち、こどもを育てるということだ。それにはやはりオカネがいる。そこまでの収益をしっかりあげていかなければならない。都会に住んでいるわれわれも、集落の人たちに負けずに、彼らを応援していきたいものである。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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お金がジャマする (to-fu)
2008-10-19 19:54:53
市町村合併で面積的に大きくはなったものの、少なくとも私の住んでいる地域はイナカだと思っています。

ここに20年ちょっと住んで気づかされたことはたくさんありますが、一番大きいのは
「ここにいる限り多額のお金は要らない」
と言うことです。

物々交換が成り立っていて、もともと必要としているものが都会の方と違うから、遠くに行かなくても用がなされてしまうからでしょう。

イナカの人が寛容なのは、数字化された金銭的な面倒くささがないからなのでは・・・と最近は思います。

でも、あればあったでお金の存在は尊いものです。
でも、同時に困りものでもあります。
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訪ねたワカモノより (もんじこと十文字美世子)
2008-10-24 20:08:13
だいずせんせい こんにちは
(↑全部ひらがなって、やわらかくていいですね)

大きなミッションを掲げてはいますが
本人達は、かなり偶然のカミサマに手を引かれ
ひょんなことから郡上のイナカに暮らすように
なった、あるいは暮らさせてもらっている、という
のが実態です。

支えられている心地よさというのは
なかなか得難いものです。

その重さをも含めて 私は日々いとおしいのです。

では、また。
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