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「ドイツ普及福音伝道会」と深井英五

2017-04-11 | 深井智朗『プロテスタンティズム─宗教改革から現代政治まで』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 4月11日(火)11時52分14秒

ふー。
やっと平熱に戻りました。
深井智朗牧師の案内に従ってドイツ宗教思想界をほんの少し偵察飛行しただけなのに、掲示板投稿のペースが一気にスローダウンしたばかりか、ルター派プロテスタンティズムの生真面目沼から濛々と立ち昇る瘴気にあてられて熱まで出す事態となり、自分はやはりドイツとは相性が良くないな、と思っています。
備忘録としてもう少しだけ投稿した後、ドイツから離れるつもりです。

深井智朗牧師

エルンスト・トレルチ『キリスト教の絶対性と宗教の歴史』(深井智朗訳、春秋社、2015)の深井氏による「解題」に「ドイツ普及福音伝道会」とドイツ人宣教師シュピナーに触れて、

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 彼らはこう主張していた。「従来の伝道では異教の人々をキリスト教に改宗させようとするに急であり、しかも、そこには宗派独自の世界観が介在していた。〔しかしこのような考えは改められるべきであり〕不純物をとり去ってイエス・キリストの宗教に立ち返って伝道しなければならない。」そして「キリスト教とキリスト教の文化を非キリスト教諸民族に、それら諸民族の中に既に存在している真理契機と関連させながら広める」ことこそを目ざさねばならない。そのため、普及福音新教伝道会は、まずシュピナーの自宅でこの新教神学校を設立したのである。この学校で教えられていたのは同時のドイツの大学神学のカリキュラムとほぼ同じもので、規模は小さいが優れた教育を行った。
 一八九一年に行われた新校舎の落成式には東京帝国大学の総長であった加藤弘之が招かれ「新教神学校の課程を見ると、帝国大学文科大学に一人の姉妹を得たような気がして誠に喜ばしい」と祝辞を述べた程である。
 第一三代日本銀行総裁となり、戦時中は枢密顧問官であった深井英五はこの学校の学生であったが、彼は当時の教育について次にように回顧している。「〔オットー・シュミーデル〕先生から学んだ研究方法は其の後種々の方面に応用することが出来ました。文書の背景及び含蓄に慎重の注意を払う習慣は、先生に負う所が多いと今に思って居ます。マルクスの著作の訓詁や、外交文書の取扱、契約の作成援用などにも効果的です。」
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とあります。(p273以下)
深井氏は何も書いていませんが、これを読んで私は深井氏は深井英五のご子孫じゃないかな、とチラッと思いました。
ま、だからどうした、と言われればそれまでの話なのですが、深井英五は群馬県高崎市出身の人なので、郷土史的な興味が少しあります。

深井英五(1871-1945)

>筆綾丸さん
>トランプ大統領の神
『プロテスタンティズム』の「参考文献一覧」に載っている森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』(講談社選書メチエ、1996)を読んで、トランプの God をどうとらえるかについて以前の考え方を少し変えました。
後で書きます。

トランプは「なんちゃってクリスチャン」

※筆綾丸さんの下記三つの投稿へのレスです。

おかぐら「宗教改革」(メンデルスゾーン作曲) 2017/04/07(金) 14:36:53
小太郎さん
等族に相当する独語は Ordung で、中国語は等級と訳しているのですね。

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・・・改宗しないユダヤ人を厳しい言葉で批判した。
ルターの言説を単純に擁護はできないであろう。そして重要な点は、これが明らかにルターの主張であり、なおかつナチスに利用されたことである。当時の人々はルターの言葉の政治的利用にあまり違和感を持たず、受け入れた。(140頁)
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この後にルター作曲「神はわがやぐら」の話が続きますが、熱心なルター派信者でユダヤ人のメンデルスゾーンが作曲した「交響曲第5番 宗教改革」をルターが聞いたら、どんな感想を抱いたことだろう、と思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=otcrnrQAwD8
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

「神はわがやぐら」の原文は「Ein feste Burg ist unser Gott」で、「やぐら」は feste Burg の訳なんですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E3%81%AF%E3%82%8F%E3%81%8C%E3%82%84%E3%81%90%E3%82%89
https://www.youtube.com/watch?v=xG5v-dnat-U

「宗教市場」ですが、これはアメリカを踏まえての用語のようですね(178頁~)。

トランプ大統領の神 2017/04/07(金) 16:29:43
https://www.washingtonpost.com/world/national-security/trump-weighing-military-options-following-chemical-weapons-attack-in-syria/2017/04/06/0c59603a-1ae8-11e7-9887-1a5314b56a08_story.html?hpid=hp_hp-top-table-main_syria-315pm%3Ahomepage%2Fstory&utm_term=.69850bf7ec2c

深井氏は、オバマの大統領就任演説に出て来る神を指して、「この神は何であろうか。・・・キリスト教に限りなく似ているがキリスト教の神ではない」(194頁)と云われますが、トランプ大統領がシリア攻撃に関して、
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“We ask for God’s wisdom as we face the challenge of our very troubled world,” he continued. “We pray for the lives of the wounded and for the souls of those who have passed and we hope that as long as America stands for justice then peace and harmony will in the end prevail.”(13行目以下)
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と云うときの God とは、どのような神なのでしょうね。

レオナルド 2017/04/09(日) 14:43:56
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/03/102425.html
斎藤泰弘氏の『ダ・ヴィンチ絵画の謎』は面白い本です。フロイトも登場します(102頁~)。

付録
ドイツ語の辞書を引くと、Religionsgemeinschaft と Religionsgesellschaft と二つあって、どちらも宗教団体と訳されているため相違がわかりませんが、前者が古プロテスタントの宗教団体、後者が新プロテスタントの宗教団体ということなんでしょうかね。
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