大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第185回

2015年03月17日 15時05分38秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第180回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第185回




会社からマンションに帰り鞄から携帯を取り出すと2件のメールが入っていた。 自転車をこいでる間に着信していたようだ。

「更紗さんと野瀬さんからだわ」 すぐに2人のメールを見てみると

「やだ、なにこれ? 更紗さんも野瀬さんも同じことが書いてある」 その内容に思わず笑いがこぼれた。

「お忙しいから最近連絡がないと思っていたらこういう事だったのね。 もう、気を使わなくていいのに」

更紗は『絶対に野瀬君に内緒にしてよ』 と。 そして野瀬は『更紗さんには言わないで下さい』 と文頭に書いてあり、そのあとの文章が二人ともほぼ同じ内容だ。

野瀬のメールは『正道さんの指導が落ち着くまでは、お互い織倉さんには連絡をしないでおこうと約束をしてました。 でも、もう限界。 身体がクタクタです。 織倉さんパワーをもらいたくて連絡しました。 いつかお暇な時がありませんか?』 と言うものだった。 

更紗のメールとどこが違うかと言うと、せいぜい織倉さんと書かれているところが琴音さんと書かれていたり、丁寧語か否かくらいのものだ。

クスクスと笑いながらも

「えっと・・・内緒っていう事はどういうお返事をしたらいいのかしら」 暫く考えて

「あ、こうしよう」 琴音に遊び心が出た。 そして更紗と野瀬それぞれにメールを打ち出した。



週末、琴音が部屋で待っていると野瀬からメールが入ってきた。 あと10分で迎えに着くというものだった。

「え!? 時間厳守の野瀬さんが早いじゃない・・・どうしよう、予定外だわ」 そう言っても10分後には野瀬がやって来る。 

読んでいた本に栞を挿みパタンと閉じた。 そして目の前にあったお茶を一気に飲み干し、湯呑みをキッチンに持っていくと軽く洗った。 身支度はもう出来ていたが忘れ物はないかとカバンの中をチェックし、コタツのコンセントを抜き上着を羽織った。

少しすると玄関のベルが鳴った。 いつも通り玄関に座って待っていた琴音がすぐに玄関ドアを開けるといつもより大きな声で

「織倉さん! 久しぶりです!」 疲れた様子など見えない野瀬が立っていた。

「お久しぶりです。 ・・・野瀬さん、疲れていらっしゃると思ってましたけど・・・」 目を丸くして言った琴音に

「織倉さんからメールを頂いた途端に元気になってきたんですよ」

「もう、野瀬さんったら」 照れながらそれ以外返す言葉がない。

「僕は嘘なんて言いません。 本当の事ですよ。 更紗さんにこき使われてもうヘロヘロでしたよ」

「やっぱりお忙しかったんですね」

「そうなんです。 ちょっと難しいクライアントが数人かたまってしまって」 野瀬の表情に一瞬疲れを見た。

「お疲れですね」

「そうなんです。 だから織倉さんに元気を頂かないと。 さ、何処へ行きましょうか?」

「私はいつものお野菜の美味しいお店がいいんですけど、どうですか?」

「いいですねぇ。 行きましょう」 野瀬がイヤだといっても必ずこの店に行くつもりでいた。

二人でマンションの階段を下りていると野瀬が

「うーん、織倉さんとあの美味しい野菜を食べられるかと思うとそれだけでもう元気が出てきましたよ」

「え? 野瀬さんはお肉じゃないんですか?」

「いやだなぁ、僕だって肉だけじゃないですよ。 ・・・いや、確かに今日も肉を食べますけど」

「でしょ?」 その言葉を聞いて丁度階段を降りたところだった野瀬が振り返って言った。

「・・・織倉さん、段々と更紗さんに似てきましたよ」 一瞬足が止まった琴音も階段を降りながら

「そう言ってもらえると嬉しいですけど、まだまだ更紗さんの足元にも及びません」 階段を降りるとマンションの前に停めてあった車に向って歩いた。

「いや、充分更紗さんと同じように僕を苛めてますよ」

「ヤダ、苛めてませんよ」 いつも通り野瀬が助手席のドアを開け琴音を座らせて車を走らせた。


店に着き席に座ると琴音がチラッと時計を見た。 それを見ていた野瀬が

「時間、気になるんですか? 何か予定でも?」

「ゴメンなさい。 そうじゃないんです。 気にしないで下さい」

「そうですか? 何かあったら言ってくださいね」

「はい。 それより何を食べましょうか?」

「僕は勿論、ステーキですよ。 で、今日のサラダは何かなぁ?」 嬉しそうにメニューを開けだした。 

その姿を見てクスッと笑いながら琴音もメニューを見ていると

「琴音さーん!!」 場所も憚らず大きな声が聞こえた。

「え!? あの声は・・・」 野瀬が振り返ると大きく手を振り小走りにやって来る更紗が目に映った。

「ゲッ!? 何で更紗さんが!?」

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