大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第118回

2014年07月18日 15時04分50秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第110回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第118回




「ねぇ、彼女!」 琴音の真正面に人影が写り顔を上げるとそこには和尚の話を聞きに行ったときのカウンセラーといわれる女性が立っていた。

「あ!」

「やっと気付いてくれたわね」

「こんにちは、まさかこんな所でお逢いするなんて」

「あの時お名前を聞いていなかったから つい、彼女って呼んじゃったけど」 鞄の中から名刺入れを出して

「私、未来更紗(みきさらさ) と言います。 こんな事をやってるの」 差し出された名刺にはカウセリングと書かれてあった。

「あ、私名刺を持ってないんですけど・・・織倉琴音といいます。 カウンセリングされている事はあの日若い女の子達に聞きました。 超有名な方だって聞きました」

「えぇ! 超有名? ちょっと有名の間違いじゃないかしら?」 すると後ろから

「更紗さん、急に居なくならないで下さいよ。 探したじゃないですか」 男性が歩いてきた。

「あら、ごめんなさい」 男性が琴音を見て会釈をし

「こちらの方は?」 

「この間話してたでしょ。 和尚の所であった人よ」

「ああ、貴方でしたか。 いや、失礼しました。 私、更紗のマネージメントをしております野瀬(のせ)と申します」 内ポケットから出した名刺を琴音に差し出した。

「織倉琴音です」

「ねぇ、えっと・・・」 更紗は少々、天然のようだ。

「織倉琴音さんですよ」 野瀬が素早く言った。

「ごめんなさい。 貴方に逢えてあまりに嬉しくてテンションが上がっちゃってるわ。 あ、貴方じゃなくて織倉さんだったわね・・・うーん、固いわね。 琴音さんでいいかしら?」

「はい・・・」 話のテンポの速さについていけないようだ。

「私のことは更紗って呼んでね」

「はい。 ・・・更紗さんですね」

「呼び捨てでいいわよ」 更紗の横で野瀬が時計を見ながら

「更紗さん、時間・・・」

「あ、そうだったわね。 ねぇ、琴音さん時間空いてる?」

「・・・はい。 別に何もありませんけど」

「私と一緒してくれない?」

「更紗さん、そんな事を急に言っても織倉さんの心づもりもあるでしょうし」 野瀬がそこまで言うとその言葉を打ち消すかのように

「琴音さんの目を見てみたいの」

「え? 私の目?」

「そう。 目っていうか貴方・・・じゃない、琴音さんを見てみたいの」 何を話されているのか分からない琴音は思わず野瀬を見た。

「更紗さんは思ったらすぐの人だからついて行けませんよね。 最初は僕もそうでしたから今の織倉さんの気持ちがよく分かります」

「ねぇ、野瀬君 琴音さんについてきてもらってもいいでしょ?」

「それは織倉さん次第ですけど・・・そうですね、更紗さんの言ってたとおりなら それもいいかもしれませんね。 織倉さんどうでしょうか? 今からある人に会うんですけど そこに同席していただけませんか? お時間があるようですしどうでしょうか?」

「ある人って、大切なお客様か誰かじゃないんですか? そんな大切な席に私がなんてとんでもありません」

「大切と言えば大切なんですけど・・・ね」 野瀬がそう言い更紗を見た。

「ね、いいじゃない。 黙って座っているだけでいいから」 琴音の腕を引っ張って歩き始めた。

「あ・・・えっ?」 野瀬が手を引かれている琴音の横に来て

「すみません。 織倉さん諦めてください。 決して悪いようにはしませんから」 ロビーを抜けエレベーターに乗ってそのままホテルの客室の前まで連れて行かれた。

「会う人はこの部屋の中に居るの」

「私こんな立派なホテルのお部屋って入った事がないですよ」

「どのホテルでも一緒よ。 旅行で泊まったホテルも旅館も単にみんな個室って言うだけよ」 野瀬が部屋のベルを鳴らすと中から黒いスーツを着た強面な男性が現れた。

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