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マンガ・アニメの発信力と日本文化(2)融合

2010年12月16日 | マンガ・アニメの発信力の理由
日本のマンガ・アニメの発信力の理由、昨日付け加えたものも入れて並べかえるると次のようになる。表現は少し修正している。

①生命と無生命、人間と他の生き物を明確に区別しない文化、アニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが作品に反映する
②小さくかわいいもの、子どもらしい純粋無垢さに高い価値を置く「かわいい」文化の魅力
③子ども文化と大人文化の明確な区別がなく、連続的ないし融合している
④宗教やイデオロギーによる制約がない自由な発想と表現と相対主義的な価値観
⑤民族や言語、階級などによって分断されない巨大で知的な庶民を基盤にする

今回は、③と「日本文化のユニークさ」四項目との関連に、ごくかんたんに触れて見よう。ただし、③は四項目のすべてに直接関係があるということではない。また、すでに論じた②の「かわいい」文化で論じた観点にかなり重なる部分がある。

(2)ユーラシアの穀物・牧畜(農耕・牧畜)文化にたいして、日本は穀物・魚貝(農耕・漁撈)型とでも言うべき文化を形成し、それが大陸とは違うユニークさを生み出した。

③にとっては、これがいちばん関係が深いかもしれない。日本には、牧畜文化が流入しなかった。そのため、人間と家畜との間には明確な違いがあるものとして厳格な区別をする必要がなかった。ヨーロッパの牧畜文化では、人間とほかの生き物を区別するいちばん大きな違いは、「理性」をもっているかないかにあった。「理性」がまだ充分には発達しない子供もまた、完全な人間とは言えず、したがって子ども文化と大人文化の間にも、はっきりとした区別があった。牧畜を知らない日本人は、人間と動物、強いては大人と子どもの間に厳然たる区別をする必要がなかった。だからマンガ・アニメも、子どもの専有物である必要はなかった。

上の事実は、順序は逆になるが「日本文化のユニークさ(1)」にも間接に関係する。

(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。

牧畜文化を知らなかったからこそ、人間と動物を厳然と区別する必要がなく、縄文的、アニミズム的な心性が残ったともいえるからである。

(4)西欧の近代文明を大幅に受け入れて、非西欧社会で例外的に早く近代国家として発展しながら、西欧文明の根底にあるキリスト教は、ほとんど流入しなかったこと。

ユダヤ教やキリスト教やイスラム教は、発生当初から砂漠や遊牧民との関係が深い。そういう背景を持っていたから、キリスト教はヨーロッパの牧畜・農耕文化とも、ある意味で相性がよかった。農耕とともに牧畜が不可欠で、つねに家畜の群れを管理し殺すことで食糧を得たという生活の営みを合理化するため、人間と動物を厳然と区別する教えが必要であった。

日本では、人間と動物の違いを極端に強調する必要はなかった。人間と動物を完全に異質のものとする人間中心主義の宗教は日本ではなじまなかったし、根づかなかった。日本にキリスト教が根づかなかったひとつの理由に、キリスト教が持っている遊牧・牧畜民的な背景があるのではないか。要するに基盤になっている文化が異質なのである。だからこそ、大人と子どもを明確に区別するキリスト教的な文化も、日本人の感性には異質だったのである。

(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。

もちろん、もともと異質な文化的な背景をもっていた地域にキリスト教が流入していった例は多い。というより、アジア、中南米などの多くの地域でそうしたことが起こった。多くの場合そこには、暴力的な侵略や植民地化、先住民族の虐殺などが伴っていたのである。その意味でこの特徴も③に間接的につながっているだろう。

《関連記事》
日本文化のユニークさ04:牧畜を知らない
日本文化のユニークさ05:動物とつらなる命
日本文化のユニークさ06:人間中心主義でない

《関連図書》
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
アーロン収容所 (中公文庫)
肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)
日本人の価値観―「生命本位」の再発見

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