大袈裟で中身が無い商業音楽が跋扈するようになった80年代後半、ジョージ・ハリスンは速弾きギターと叫ぶだけの歌を喚き散らかす輩をこう評した。
「あぁいう連中は、『スパイナル・タップ』の後によくもまぁ恥ずかしげもなくあの手の音楽を演れるもんだね」
それをJet増刊のジョージ追悼本(本自体は本人と横尾忠則へのインタビュー以外は最悪。死んでまでジョージをコケにして楽しいのか?)で読んで以来、ずっと気になっていたんだけど、先日友人FからDVDをもらったので、早速鑑賞。いやー、最高に笑えます。音楽シーンの出鱈目ぶりを痛烈に皮肉り風刺する。いくら着飾ってみても大体こんなもんだよなぁ。今も大して変わってない…つーかもっと酷くなってるか。
北米ツアーに出たイギリスの大御所バンド、スパイナル・タップ。彼らは60年代にビートルズ・フォロワーのアイドル・ビート・バンドとしてデビューしてからは、サイケ、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルと時代に翻弄されるままスタイルを変えてきた。
そんなタップのドキュメンタリー・フィルムを撮るために自称映画監督のCMディレクター、マーティー(本作の監督でもあるロブ・ライナーが演じる。ちなみに彼は後にかの名作『スタンド・バイ・ミー』を撮る)が同行するが、バンドを取り巻く事態は次第に悪化して…というのがおおまかなストーリー。
リード・ヴォーカルのデイヴィッドが、アジアの怪しげな宗教などに導き自分を覚醒させてくれたという彼女・ジャニーンをバンドのミーティングに引き込み、ジャニーンは衣装やコンセプト、はたまたミキシングやアレンジなど音楽的な事にまで口出しを始める。それをリード・ギタリストでありソング・ライタ-でもあるナイジェルは快く思わず、バンド内に不協和音が…なにかどこかで聞いたことあるような話だな。
とにかくこれ以外にも音楽好きならニヤリと出来る大ネタ小ネタが満載。個人的にはバンドの過去のヒット曲の映像に特に笑わせてもらいました。サイケ期のやつなんかあほらしすぎて最高。
久々にニヤニヤ出来る映画に出会いました。こんな映画までチェックしてたジョージはさすがだな。しっかり覚えていたFも大したものだ。
写真はベーシストのデレク。どこのキットだか知らないけどいいな。これぞ英国ロック、とは友人Fの談。