「発車しま～す」と市電の運転手が駅に来る人に向かってアナウンスをしていると、「お待ちくださ～い！」という可愛い声が聞こえてきました。走りこんでのってきたのは、まだ小学校に上がっていない可愛い坊やでした。お母さんを促しながら、乗り込んでもどこか椅子を探す様子もない。静かにのっていました。この年齢で「お待ちください」と言える子どもをどう思いますか。”なんだかこまっしゃくれているなあ”と思いますか。それとも”なんときちんと躾の行き届いた子だ”と感心しますか。今どき聞いたことのない子どもの美しい表現だとぼくは思いました。
その帰り歩道に雪があったので、車道の端を歩いていたら、わざと僕にぶつかるように老人の５０ｃｃがよけようともせず真っ直ぐ迫ってきました。僕はよけたのですが、そのときこの老人は怒った顔で睨みつけ、”歩道を歩かんか”と棄てせりふを吐いて走り去っていきました。これは多分ぼくがルール違反をしているのでしょうが、それにしてもこの言葉でいっぺんに不快な思いになってしまいました。だから年寄りは嫌われるのかな、と自分に照らして一応は反省しましたが、瞬間に感じた不潔感を拭い去ることはしばらく出来ませんでした。
やさしいタイガー