パイとパイ

(ハンプトン・コート・パレス内にあるチューダー・キッチンの一室。当時の王侯貴族はパイをよく食べたそうな。)

  土曜日は例によって「寝たきり雀」でした。夜になって少し復活し、持ち帰った仕事を2時間ばかりやりました。

  今日(日曜)も午前はゆっくり休み、午後になってから新しいプリンタをパソコンにつなげて、印刷のテストなどをやりました。

  プリンタにはなんとUSBケーブルが付属していませんでした。でも、壊れた前のプリンタを処分する際に、「予備として使えるかも」という理由で、電源ケーブルとUSBケーブルは手元に残しておきました。試しにそのUSBケーブルで、新しいプリンタと起動したパソコンをつなげました。そしたらパソコンは首尾よく新しいプリンタを認識してくれました。

  これによって、「機械の本体は捨ててもケーブルは捨てるな、万が一のときに役に立つ」という教訓を得ました。

  お試し印刷もうまくいきました。新しいプリンタのインクカートリッジは前のと異なります。前のプリンタのインクカートリッジの予備が1個あったのですが、仕方ありません。今度ヨドバシカメラに行ったときにでも、インクカートリッジの再生用回収ボックスに入れてきましょう。

  夕方から夜にかけて、また仕事を3時間ばかりやりました。また神経が尖ってはいけないので、夕ご飯とお風呂の後は仕事はしないことにしました。少し自分の気を緩ませようと思って、それで今この日記を書いているわけ。

  「回転木馬」のほうはウォーキング公演が終わりました。いちおう検索してみたんだけど、ウォーキング公演のレビューが見つかりません。まあ、プリマスとかマンチェスターとか、ロンドンから遠く離れた都市での公演なら、現地のメディアのサイトにでもレビューが載るかもしれません。

  11月からのウエスト・エンド公演(サヴォイ劇場)が始まれば、それこそあちこちのメディアのサイトにレビューが載るでしょう。恐ろしいような楽しみなような。

  ロンドンのパブに行くと、メニューに“Pie”が必ずあるでしょう。これを頼むと、上の写真にあるような、また「スウィーニー・トッド」に出てきたような(あんまり思い出したくないが)パイが出てきます。

  日本のパン屋さんで売っているような、多層構造の薄い生地の中に具が入っているものではなく、ぶ厚い器状の生地の中にクリーム・チキン、サーモンなどが入っているものです。日本のいわゆる「パイ」は、pieというよりはpastry(ペストリー)だと思います。

  私はロンドンのパブに行くと必ずパイを頼みます。日本では、たとえば本当に本格的なイギリス料理店やパブならばありつけるのでしょうが、私の日常の活動範囲内にはありません。だからロンドンに行ったときに、ここぞとばかりにパイを食べるのです。

  ハンプトン・コート・パレスのチューダー・キッチンに行ったら、大量のパイのレプリカが、これでもかとばかりに並べられていてびっくりしました。写真にあるように、中身は肉のシチューです。

  音声ガイドによれば、パイ生地は本来「器」の役割を果たしていたそうなのです。つまり、小麦粉でできた食器です。足りない食器の数を補なうため、また料理を熱いまま供するために考え出されたのが、料理をパイの中に閉じ込めて焼く、という方法だったそうです。

  だから、チューダー朝におけるパイの正しい食べ方は、ナイフとフォークでパイの蓋部分を外してから、中に入っている具のみを食べる、ということになります。贅沢なことですな。

  ・・・てなことを先日、同僚に話したら、面白いことを教えてくれました。高価な小麦粉に手が届かないイギリスの庶民が考案した「擬似パイ」についてです。彼らは小麦粉の代わりにジャガイモを使ってパイを作った(真似た)というのです。

  「たとえば、ビーフのパイを頼んだら、具がむき出しになっていて、肉の上にマッシュ・ポテトが敷きつめられている、ということが今でもあるでしょう。あれは昔の名残りですよ。」

  それを聞いてハタ、と思い出しました。このまえのロンドン旅行のとき、行きの飛行機の機内食で、「にんじんや溶けかけたブロッコリーが入ったミート・ソースの上に、マッシュ・ポテトがたんまり載せてあるもの」を出されました。

  客室乗務員は事前にビーフとチキンのどちらがいいか聞いてきたのですが、その客室乗務員は、「ビーフのパイとチキンの照り焼きとどちらになさいますか?」と言ったような記憶があるのです。それで私は「わーい、パイだ~」と喜びつつアルミ・ホイルの蓋を開けたら、そこにマッシュ・ポテトの平原が広がっていたのでびっくりしたのです。

  そのときは「何がパイだ、ウソつけ」と内心思いましたが、同僚の「イギリス庶民考案のジャガイモを用いた擬似パイ」の話を聞いて、別にウソではなかったことが分かりました。

  でもちょっとモヤモヤした気持ちにもなりました。エコノミー席の客=どうせビンボー庶民=せいぜいジャガイモの擬似パイがお似合いよ、という認識が航空会社側にあったのであろうか、と。  
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