新国立劇場バレエ「シェイクスピア・ダブル・ビル」

5月6日(公演最終日)に鑑賞。
フレデリック・アシュトンの『夏の夜の夢(ザ・ドリーム)』目当てでチケットを取りました。上演順も『マクベス』が先、『夏の夜の夢』が後でした。もっともこれは、悲劇を先に上演して、喜劇をメインに持ってきて、観客に明るい気持ちで帰ってもらおうという配慮であることは言うまでもありません。
ところが、先に上演された『マクベス』が圧倒的すぎました。新国立劇場バレエの芸術監督である吉田都さんが、英国ロイヤル・バレエのウィル・タケットに依頼して新制作された作品です。もちろん世界初演。
ウィル・タケットの作品はいくつか観たことがあったので、タケットの振付とストーリー・テリングについては何の心配もしていませんでした。衣装はコリン・リッチモンド、男性の登場人物はみなスコットランドのキルト・スカートに着想を得たと思われるスカート付きの衣装を着ていました。それと関係あるかどうか分かりませんが、男性ダンサーたちが女性ダンサーの腕の動きやステップで踊っていたのが面白いと思いました。
舞台装置らしいものはベッドと机くらいでした。それでもドラマティックな効果を発揮していたのは照明の力でした。照明は佐藤啓さんです。
何より凄かったのは、イギリス出身の作曲家ジェラルディン・ミュシャの原曲をマーティン・イェーツが編曲した音楽でした。スコットランド民謡風のメロディに打楽器を強く打ち鳴らした音楽の凄まじかったこと。ダンサーたちは音楽に負けていました。初演ですから仕方ありません。次に上演されるときはブラッシュ・アップされていることでしょう。
指揮もマーティン・イェーツでした。マーティン・イェーツは第二のジョン・ランチベリーといえますね。これまではケネス・マクミランの『マノン』を編曲した人、という程度のことしか知りませんでしたが、マーティン・イェーツは優れた音楽家でもあることを思い知らされました。
マクベスは福岡雄大さん、マクベス夫人は米沢唯さん。私は小野絢子さん推しなのですが、演技力は米沢唯さんのほうが小野さんより上だと思っています。米沢唯さんはずいぶんと色っぽくなりました。マクベス夫人は殺人を重ねてまで王位に就くことを躊躇するマクベスをうまく煽って操りますが、最後には己が犯した罪によって発狂してしまいます。米沢さんの狂ってしまったマクベス夫人の演技は、目が完全にイッちゃっていてヤバかったです。
この『マクベス』は名作です。間違いなく再演されるでしょうし、世界のバレエ団で上演されてもおかしくない作品だと思いました。

楽しみにしていた『夏の夜の夢』ですが、これは喜劇なんだから、観客を笑わせなくちゃ!いくら踊りが上手くても、観客を笑わせられないなら出来としては失敗でしょう。ダンサーたちは表情に乏しく、アシュトンの難度の高い振付をこなすので精一杯に見えました。客席からは笑い声がほとんど起きませんでした。芸術監督の吉田都さんは英国ロイヤル・バレエ時代にタイターニアを踊っていたので、演技の指導もできたはずですが、今回は踊りのほうを優先したのかもしれません。再演するなら、今度は演技でも観客を楽しませることができるといいですね。
唯一、パック役の山田悠貴さんがすばらしかったです。
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