どうしたベルディヒ


  いや、もちろん良い意味でさ(笑)。

 全豪オープン男子シングルス準々決勝 トマーシュ・ベルディヒ対ラファエル・ナダル

   6-2、6-0、7-6(5)


  ベルディヒは対ナダル戦、なんと17連敗中だったそうな。フェデラーの対ナダル連敗記録(確か5連敗とかじゃなかったっけ)よりひでえじゃねえか。それが、250でもない、500でもない、マスターズ1000でもない、グランド・スラムという大舞台で、劇的なストレート勝利。

  ベルディヒの勝因はずばり、ウェアのデザインが普通に良かったことと帽子をようやく脱いだことだと思われます。

  

  帽子を脱いだベルディヒ、う~ん、やっぱりティムラズ・ガバシュビリに似てる。基本的にフランケンシュタイン顔なんだよな。

  これは冗談半分、真面目半分で、ウェアはともかく、帽子を脱いだことは象徴的だと思います。ベルディヒがどんなコートでも常に帽子をかぶってプレーしていたのは、おそらく仮面効果(自分を外部から遮断することで安心できる効果)のためもあるんじゃないかと感じていたんです。帽子を脱いだってことは、もう仮面効果は必要なくなったのかもしれません。

  私は以前ベルディヒのことが嫌いでしたが(フェデラーの天敵だから)、ベルディヒは実はグラス・ハートの持ち主だろうと徐々に思うようになりました。どの大会でもいいところまで上がるのになかなか優勝できないのは、いまいち気の弱いところがあるからでしょうし、悪意があると受け取られがちだった言動も、自信のなさの裏返しだったのでしょう。

  去年のツアー・ファイナルズの際、参加選手たち8人がテームズ河に浮かんだ船上に一堂に会するイベントがありました。そのときにベルディヒが率先して選手全員を集めてセルフィーを撮りました。スマホをかざしたベルディヒの明るい笑顔を見て、この人は本当は良い人なんじゃないかという思いをいよいよ強くしました。

  85年生まれのベルディヒは今年で30歳を迎えます。テニス選手の30歳はキャリアの境目とみなされています。バレエ・ダンサーの40歳みたいなもんですな。29歳を迎えた去年からそれを意識してか、ベルディヒは自分のキャリアに集中したいという理由で、デビス・カップに参加しませんでした。でも、その気持ちがなかなか成績に結びつかないようでした。

  今日の対ナダル戦、終わった今でこそベルディヒの「圧勝」と表現できるでしょうが、試合が終わるまで油断できないのがナダルという選手の怖さです。現に第3セットは接戦となり、ナダルは何度もピンチに陥りながらも、驚異的な精神力でそれらをしのいでいました。タイブレークも最後のポイントが決まるまで結末が読めませんでした。

  日本人の判官びいきで、今まで17連敗もしているのなら、今度こそはベルディヒに勝ってほしいと私は思い、ベルディヒを応援していました。しかし、会場は大多数がナダルの味方で(ナダルが劣勢だったせいもあるでしょうが)、ナダルがポイントを取ると大喝采と拍手の嵐が湧き起こるのに対し、ベルディヒがエースやウィナーを決めてポイントを取っても、実にささやかな拍手の音が静かに響くばかり(笑)。

  ベルディヒ、ほんとに人気ねえなあと思いつつ、でもくじけずにがんばれよ、根負けするなよ、自分から崩れるなよ、と心の中で応援してました。第3セットのタイブレーク、ベルディヒはさぞ緊張したことだろうと思いますが、最後までよく耐えました。ベルディヒがミニブレーク1つという僅差で勝った瞬間、思わず拍手しちゃいました。

  私はこれからもベルディヒを応援するかもしれません(ただし、フェデラーと対戦する場合は除く)。ベルディヒ、少なくとも私の中では空気脱却です。今日の劇的な勝利、本当におめでとう。

  フェデラーはベルディヒを見習うべき。更に、ナダルに勝ってきた他の選手たち全員を見習うべき。彼らはナダルを突き放して見ている。当然のことながら、対戦する以上はナダルを「敵」とみなして、恐れることなく勇猛に戦って勝った。フェデラーは、「ラファ」との「お友だちごっこ」をいいかげんに卒業しなくてはならない。ナダルに対する生ぬるい「友情」を切り捨てないと、これからもずっと勝てないよ。

  それにしても、これでボトム・ハーフは誰が決勝に進むのか読めなくなったなあ。

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ショックデカメロン~(泣);付:名前がまぎらわしいこの三人


  と、まずは20年前に学校の先輩が思わず口走った名言によって、わたくしの今のこの感情を表現したい(注:デカメロン…14世紀に成立したジョヴァンニ・ボッカチオの小説。確かダンテの『神曲』と一緒に世界史の教科書に出てきたんだったと思う)。


 全豪オープン男子シングルス3回戦 ロジャー・フェデラー対アンドレアス・セッピ(イタリア)

   4-6、6-7(5)、6-4、6-7(5)


  試合のスタッツ(内容統計)を見ると、フェデラーはなんとダブル・フォールトが9本!ウィナー57本に対してアンフォースト・エラー(凡ミス)が55本!というとんでもない数字。これはフェデラー的にまずありえない数字です。特にダブル・フォールトが9本というのは明らかに異常。

  これ見ただけで、今日のフェデラーに何が起きていたのかが分かります。一昨日の2回戦の試合中に痛めた右手小指の状態が良くなかったのでしょう。

  サービス・エースも15本と多いですが、エースが15本でダブル・フォールトが9本ってのは、フェデラー的にはかなりいびつな数字です。これに加えて、セカンド・サービスでのポイント獲得率が48%と半分を下回っていること、ネット・プレーによるポイント獲得率が58%で6割に満たないことから、精神的に余裕のない状態で、やみくもにプレーしていたことが察せられます。

  (参考までに、対戦相手のプレー・スタイルによって違ってきますが、普段のフェデラーのスタッツは、サービス・エース:10本前後、ダブル・フォールト:1~2本、ファースト・サービスによるポイント獲得率:80~100%、セカンド・サービスによるポイント獲得率:70~80%、ネット・プレーによるポイント獲得率:70~80%、ウィナーとアンフォースト・エラーの数の対比は2:1もしくは3:1、てな感じだと思います。)

  今日は指が気になって集中できず、焦りが昂じて更に集中できなくなり、それでいよいよ焦ってますます集中できない、という悪循環にはまってしまったんでしょうね。

  2回戦の第1セット後にフェデラーがトレーナーを呼んだ時の様子から察するに、何かの理由で右手小指の第一関節の腹がいきなり炎症を起こして、それが今日になっても治らなかった可能性が高いです。たぶん早くて1年後くらいにはフェデラー自身が事情を明らかにしてくれると思います。

  今日の試合、死力を尽くして勝ったとしても、これから試合はいよいよタフになっていくばかり。無理がたたって指の状態が更に悪化し、果てに治療のために長期戦線離脱なんてことになったら本末転倒です。精密検査を受けて原因を突き止めた上で、じっくり治すのが現実的に賢明な選択です。今回は不運だったと思ってあきらめましょう。

  どれだけポイントを失うことになるのかは知りませんが、2位はしばらく保持できると思うので(3位以下との差が3,000ポイント以上もあり、現在3位のラファエル・ナダルは去年の全豪オープンで決勝に進出しているから)、今のところは別に焦る必要もないのでは。

  さて、誰が優勝するのかな。個人的には、決勝はジョコヴィッチとナダルで、優勝はジョコヴィッチだろうと予想しています。

  最後にこの傷心をなぐさめるために。


 名前がまぎらわしいこの三人

  シモーネ・ボレッリ(Simone Bolelli、プロテニス選手)

   

  フェデリコ・ボネッリ(Federico Bonelli、バレエ・ダンサー、英国ロイヤル・バレエ団)

   

  ロベルト・ボッレ(Roberto Bolle、バレエ・ダンサー、ミラノ・スカラ座バレエ団)

    (注:フレディ・マーキュリーに非ず)

  ちなみにこの三人は全員イタリア人です。2回戦のフェデラー対シモーネ・ボレッリの試合を観戦していて、「フェデリコ・ボレッリ」、「ロベルト・ボネッリ」、「シモーネ・ボッレ」、「シモーネ・ボネッリ」、「フェデリコ・ボッレ」、「ロベルト・ボレッリ」としょっちゅう混同してました。

  
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アダム・クーパーのインタビューが新国立劇場公式サイト上で公開された件


  上のタイトルのとおり、新国立劇場公式サイト で、去年末の『シンデレラ』終演後に上映されたアダム・クーパーのインタビューが閲覧できます。

  新国立劇場で上映されたインタビューより、時間が少し長めになっているような気がします(後半部分がつけ足された?)。編集もきっちりされてる印象です。2003年のボーン版『白鳥の湖』日本公演の舞台写真、そして本題であるピーター・ダレル振付『ホフマン物語』の舞台写真も多く見られます。『ホフマン物語』の舞台写真は、98年にスコティッシュ・バレエ団が上演し、アダム・クーパーが主人公のホフマン役で客演した折のものです。

  写真だけですが、クーパーの演技の凄さがよく伝わってきます。こんなインタビューと舞台写真を見たら、ますます『ホフマン物語』が楽しみになっちゃいますね。よくできてるトレーラー(宣伝動画)だと思います。新国立劇場もなかなかやるようになったねえ。

  みなさまぜひご覧になって下さいませ~


  最初で紹介されている『ラ・バヤデール』(2月上演)も観に行きます。小野絢子さんとワディム・ムンタギロフ主演の日です。ガムザッティ役は米沢唯さん、ブロンズ・アイドルは八幡顕光さんだそうです。米沢さんがガムザッティか~。技術面ではまったく心配してないけど、演技のほうはどうなるかなあ。可憐な感じの米沢さんがガムザッティをどう演じるか、心配半分、楽しみ半分ですね。

  他の公演日のガムザッティ役は本島美和さん(21日)と長田佳世さん(22日)。長田さんは21日のニキヤ役でもあります。米沢唯さんも22日にニキヤを踊ります。こういうキャスティングが本当は面白いんだけどね。正反対のキャラクターの役を同じダンサーが踊るっていう。特に長田さんはテクニック強いし、演技力もあるから、このキャスティングは納得です。

  本島さんのガムザッティは、演技面ではまったく問題なしだろうと思います。容姿と演技では最も魅力的で、圧倒的な存在感のあるガムザッティになるでしょう。本島さんのガムザッティには大いに興味をそそられるのですが、ガムザッティは演技だけの役ではないので…。第二幕でのガムザッティとソロルとのパ・ド・ドゥを考えると、う~ん。

  ソロルのキャストが他に菅野英男さん(21日)、福岡雄大さん(22日)というのはよく分かるし、ブロンズ・アイドルを福田圭吾さんが踊る(21日)のも分かる。でも、22日のブロンズ・アイドルが奥村康祐さんというのは少し意外でした。

  『シンデレラ』で奥村さんは道化を踊っていて、あれにも正直驚いたんです。奥村さんの現在の立ち位置がよく分からない今日このごろ。

  新国立劇場バレエ団の『ラ・バヤデール』はいいですよ。衣裳と装置のデザインが洗練されているのに加え、演出が女目線で説得性があります。上演時間も短いです。改訂を担当した牧阿佐美さん曰く「世界で最もコンパクトな『ラ・バヤデール』」だそうで、確かに冗長なところがなく、途中で飽きることがありません。群舞も見ごたえあるしね。

  楽しみにしてます~。

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ちょっとひどくない?


  昨日(1月11日)、ミハイロフスキー劇場バレエの『白鳥の湖』を観に行きました。久しぶりにイリーナ・ペレンのオデット/オディールが観られて幸せ♪

  今回上演された版(改訂演出:A.メッセレル、再演出:M.メッセレル)は演技重視のようで、能面演技が多い旧ソ連系の『白鳥の湖』(ブルメイステル版は除く)とは異なり、主役から群舞に至るまでが細かく演技しておりました。

  ペレンも以前の「上手できれいなお人形さん」ではなく、表情や表現力がかなり豊かになっていました。一方で動きや姿勢にやや乱れや粗いところが見られました。以前のペレンは、無表情で感情が感じられないけど、技術は完璧で、教科書どおりの端正なきっちりした踊りが魅力でもあったので、ちょっと戸惑いました。でも、黒鳥のパ・ド・ドゥでの32回転では、ダブルを入れて片腕を上げるなど、華麗な技術を披露しました。

  さて、記事の題名は、もちろんミハイロフスキー劇場バレエの『白鳥の湖』についてではありません(まぎらわしくてごめん)。ミハイロフスキー劇場バレエの『白鳥の湖』の感想は後日また。

  昨日の夜、オーストラリアで開催されたブリスベン国際の男子シングルス決勝があって、ロジャー・フェデラーがミロシュ・ラオニッチを破って優勝しました。250というグレードの低い大会の決勝だけど、最後までどちらが勝つか分からない良い試合になりました。

  ラオニッチの成長ぶりは凄まじいです。去年の秋ごろから別人のように急激に変わってきました。以前は1.爆速サーブでエースを取る、2.爆速サーブ→相手がかろうじて返したボールをフォアで強打してウィナーを決める、というシンプルな攻撃パターンだったのが、今回はラリー戦になってもミスすることなく、コントロールがすばらしくなりました。

  精神的にもタフになって、第2セットの中盤からの逆襲がすごかったです。第2セットをラオニッチが取ったときには、こうなるとラオニッチは手がつけられないから、フェデラーはほどほどのところであきらめるかな、と思いました。

  第3セット、フェデラーがサービスをキープして5-4、ポイントが30-30になったところで、ラオニッチはダブル・フォールトを犯してしまいます。不思議なことに、ビッグ・サーバーと呼ばれる選手は、なぜか大事な局面でダブル・フォールトを犯すことが多い気がします。

  ラオニッチは次のファースト・サーブもフォールト、セカンド・サーブは入れることを重視したのか、浅いものとなりました。その浅いサーブを、フェデラーがここぞとばかりに強打してラリー戦に持ち込みます。結局、フェデラーがはじめてつかんだマッチ・ポイントを生かして優勝しました。6-4、6-7(2)、6-4。薄氷の勝利でした。

  この試合に勝ったことで、フェデラーはシングルス勝利数1,000回を達成しました。歴代3位です。250の大会なのに、フェデラーが跳び上がって叫び、腕を何度も振り上げて喜んでいたのは、激戦になんとか勝てたこと、そしてこの勝利が1,000勝目という特別なものだったからでしょう。

  それが昨日の夜のことで、今日はネットで関連ニュースを読みながら上機嫌でいたのですが…。

  お昼にTBSの『ひるおび!』っていう情報番組を観てました。他局はみんなスポーツ中継だったので。そしたら、錦織圭選手の特集コーナーが放映されました。最近はどこの局のニュース番組や情報番組でもしょっちゅう錦織君を取り上げているので、「全豪オープンが近いからねえ」と思って観ていました。

  ところが、そのコーナーを担当していた男性アナウンサー(石井大裕さんという方らしい)と、解説者として出演した元女子プロテニス選手の沢松奈生子さんが、酔っぱらっているのかと思えるほどの異様なハイテンションで言いたい放題。

  錦織君を褒めるのは当たり前です。全豪オープンの優勝候補筆頭に挙げるのも当たり前です。日本の選手なんだから応援するのが当然。でも、世界の他の選手たちをあざけるのはいけないよ。

  沢松奈生子さんが特にひどかった。沢松さんは、ラオニッチが決勝で負けたのは「(錦織君との準決勝で力を)出し切ったから」、カタール・オープン準々決勝で敗退したノヴァク・ジョコヴィッチは「調整不足」、同じくカタール・オープンで初戦敗退したラファエル・ナダルは「不調」、「虫垂炎だから」と次々とまくしたて、他のトップ選手たちはみな状態が良くないので錦織君が優勝する、という結論に持っていこうとしました。

  ところが、そこで司会の恵俊彰が「フェデラーは優勝してますよね?」とツッコみました。そしたら沢松さん、「(ブリスベンの決勝で)出し切った!出し切ったから!」、つまりラオニッチと同じで、もう余力がないから全豪では負ける、という意味のことを大声で何度も言い放ちました。全員が爆笑。うわ、感じ悪っ!

  たぶん、沢松さんはしゃべってるうちにテンションがどんどんどんどん上がってきて、つい言葉が行き過ぎてしまったのだと思います。開幕戦で優勝した選手は全豪で優勝できない、というジンクスも頭にあったのでしょう。それでも、あれは聞いていてかなり不愉快でした。

  沢松さんには分からないのかもしれませんが、ジョコヴィッチやナダルほどのレベルのトップ選手になると、本番(今回の場合は全豪オープン)に向けて、驚異的なスピードで調整してくるものです。上手にピークを合わせてきます。グランドスラムのような2週間という長丁場になると、その1週目から2週目の間でも、実に巧みに調整して、徐々に調子を上げていきます。開幕戦の結果が芳しくなかったから全豪もダメ、などとは断言できません。

  ジョコヴィッチは、前哨戦なしでいきなりグランドスラムに出て優勝するよーなヤツだし、ナダルは確かに故障・病気明けだけど、あの異常な集中力で何をしでかすか分からない化け物。

  フェデラーについてもまたしかり。フェデラーに至っては、1試合内で調整しちゃう選手だよ?それに、全豪まではまだ1週間の間隔があります。また「こういうジンクスがあります」と紹介するのなら分かりますが、「出し切った!」から勝てない、などと大会前から決めつけるのは、いくらなんでもフェデラーに対して失礼じゃないのかな。沢松さんて確か、マルチナ・ヒンギスのシュテフィ・グラフに対する態度が失礼だ、とテニス雑誌で批判してたよね。

  それに、ジョコヴィッチ、ナダル、フェデラーだけが出場するわけじゃないでしょう。チェンナイ・オープンで優勝したスタン・ヴァヴリンカは?カタール・オープンで優勝したダヴィド・フェレールは?準優勝したトマーシュ・ベルディヒは?それに、今のミロシュ・ラオニッチは以前のラオニッチとは違って、実に恐るべき選手になったと思いますよ。

  こうしたトップ10だけでなく、トップ20、50、100以内、更に100位台の選手にだって、注目すべき選手はたくさんいます。調子が良ければ誰でも好成績を残せます。それがグランドスラムの恐ろしいところであり、かつ醍醐味でしょ。

  地上波の昼の情報番組は、テニスをまったく観ない、知らない人ばかりが観ているだろうから、いいかげんなことを言ってもかまわない、と思っていたのかなあ?フェデラーは負ける、という意味のことを言った部分でいちばんカチンときたけど、よく考えたら沢松さんは、他の男子選手全員を侮辱したことになる。

  こういうふうに、軽はずみに無神経なことを言っちゃうところがお嬢さんなんだよなあ、とため息をつきながら思いました。でも、私は沢松さんの現役時代を知ってるので、沢松さんの家系、プレー・スタイル、キャリアを思い出して、まあ、あのお嬢さんの言うことだから、となんとかあきらめがつきました。

  これから各局で全豪オープンが取り上げられていくんでしょうが、杉山愛さん、神尾米さん、松岡修造(←呼び捨て)には、他の選手たちを貶めるような発言はしてほしくないですね。

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ペリカン・ダンス・アワード2014(受賞編)


  去年はそんなに公演観てないから、かな~り苦しいです。でもま、観た範囲内で印象に残った作品やダンサーさんたちを記しておきます。


 最も良かった作品賞:『雨に唄えば』

  これは文句なしというか、決まってますよね(笑)。第一幕の「グッド・モーニング」や、第二幕の最後、逃げようとするキャシーをドンが呼び止めるシーンで、観客の拍手があまりにも長く続くものだから、舞台の進行が止まっちゃったでしょう。「グッド・モーニング」では、観客の拍手が終わらず次のシーンに移れないため、ドン役のアダム・クーパーは思わず噴き出してしまい、コズモ役のステファン・アネッリ、キャシー役のエイミー・エレン・リチャードソンも寝たまま笑っていました。

  年末の歌舞伎の特番で紹介してたんだけど、この現象は「ショーストップ」というんだって。観客による儀礼的な拍手を超えた熱狂的な拍手で、舞台が一時中断することだそうです。演者にとっては何よりも嬉しいことなんだそう。このショーストップが、『雨に唄えば』ではおそらく毎回起こったと思うんです。こういう舞台は日本ではめったにないのでは。


 最も良かった舞台賞:新国立劇場バレエ団『シンデレラ』

  シンデレラ役と王子役とをゲスト頼みで上演してた頃が夢のよう。主役から群舞に至るまですばらしかったです。


 最も良かった演目賞その1:『ドン・キホーテ』第一幕(ナタリア・マツァーク、デニス・ニェダク、キエフ・バレエ)

  マツァークの明るく溌剌としたキトリが最高でした。美しい容姿に加え、柔らかい身体と強いテクニックをぞんぶんに使った踊りは、文句のつけようがない完璧な出来ばえ。ニェダクの飄々としてどこかお調子者のバジルも魅力的で、しかもリフトは頼もしいことこの上なし。


 最も良かった演目賞その2:「ラプソディー」抜粋(吉田都、スティーヴン・マックレー、「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」Aプロ)

  マックレーが超絶技巧を駆使したソロでまず強烈なインパクトをかまし、次に吉田さんと完璧に息の合ったパ・ド・ドゥ。微塵の隙もない艶やかな踊りで、この二人で「ラプソディー」全編をぜひ観たいと思いました。マックレーは2012年の「ロイヤル・エレガンスの夕べ」で、ウェイン・マクレガー振付「クローマ」からソロを踊り、やはり観客を熱狂の渦に巻き込みました。マックレーの持つ、作品の良さを最大限に引き出す力はすごいと思います。


 最も良かった演目賞その3:「コンチェルト」第2楽章(島添亮子、ジェームズ・ストリーター、小林紀子バレエ・シアター「マクミラン・トリプルビル」)

  奇しくも同じ月に「ロイヤル・エレガンスの夕べ」で、佐久間奈緒さん(バーミンガム・ロイヤル・バレエ)とベネット・ガートサイド(英国ロイヤル・バレエ)がこれを踊ったのですが、島添さんとストリーターの踊りのほうが断然良かったです。島添さんが最初に上半身をゆっくりと折って、腕を緩やかに回す動きを観ただけで、あまりな美しさと物哀しさに涙が出そうでした。 
 

 最も良かった男性ダンサー賞:アダム・クーパー(『雨に唄えば』)

  一応ファンなんでお約束です(笑)。歌唱力や演技力と同時に、人間力が大幅にアップしたことを強く感じさせられたパフォーマンスでした。本当に強く優しい、成熟した大人になった。


 最も良かった女性ダンサー賞:エレーナ・フィリピエワ(2013年12月-14年1月キエフ・バレエ日本公演)

  主役、準主役、カメオ・ロール的出演(フロリナ王女、街の踊り子、太鼓の踊り)で、役柄はもちろん振付のタイプも異なる踊りを悠々とこなしてみせた、まさに八面六臂の大活躍でした。特にフィリピエワの踊った「太鼓の踊り」(『ラ・バヤデール』)は、大事に記憶の中にとっておきます。

  この間の「シェヘラザード」(フィリピエワが急遽ゾベイダ役で出演)も、実際に観に行った人から聞いたことには、とてもすばらしい舞台となったようです。フィリピエワなら納得ですが、金の奴隷役でやはり急遽登板したイヴァン・プトロフも意外に(←ごめん)大健闘した模様。会場は大いに盛り上がり、拍手と喝采が止まなかったそうです。


 最も魅力的だった女性ダンサー賞:本島美和(新国立劇場バレエ団)

  『眠れる森の美女』のカラボス役です。あんなに美人で演技が上手くて存在感のあるカラボスは久しぶりに観ました。遅まきながら、本島さんは演技派で表現力のあるダンサーだということが分かりました。本島さん主演の『こうもり』を観に行こうかと思案中。『こうもり』については紹介映像しか観たことないけど、以前はアレッサンドラ・フェリも踊っていたというから、本島さんも大丈夫だろう。


 プロフェッショナル賞:リカルド・セルヴェラ、ラウラ・モレーラ(英国ロイヤル・バレエ団)

  文字どおりプロフェッショナルなダンサーたち。何を踊っても信頼して観ていられる。


 これから楽しみな男性ダンサー賞:デニス・ニェダク(キエフ・バレエ)

  ジークフリート王子でもソロルでもバジルでも何でもこなし、演技も雰囲気もたたずまいも踊りも、役柄に応じて自在に変えられるところが凄かったです。東欧のダンサーにしては珍しく(←これもごめん)、西側的なリアルで深みのある演技ができるところも魅力的だと思いました。


 これから楽しみな女性ダンサー賞:アンナ・チホミロワ(ボリショイ・バレエ)

  正直、最も印象に残ったバレリーナです。背はそんなに高くないみたいだし、突出して恵まれた体型を持っているというわけでもない。でも、強靭なテクニック、ダイナミックでキレの良い踊り、明るく闊達な雰囲気、豊かな表情、強い目力、輝くオーラ、舞台に出てくると即座に目が行ってしまう存在感など、プリマの条件を備えています。次のボリショイ・バレエ日本公演で主役を踊るのはこの人だろうと思います。


 最も良かったコール・ド賞:キエフ・バレエ(2013年12月-14年1月キエフ・バレエ日本公演)

  キエフ・バレエは舞台装置や衣装がショボかったのですが、レベルの極めて高いコール・ドのおかげで、そんなことはまったく気になりませんでした。特にダンサー総出演の『ドン・キホーテ』の群舞がすばらしく、ボリショイ・バレエのコール・ドが個々のダンサーの能力頼みなのに対して、キエフ・バレエのコール・ドは全体のチーム力で魅せていた感じです。


 残念だった舞台:ボリショイ・バレエ『ラ・バヤデール』

  まずユーリー・グリゴローヴィチは「改訂」のしすぎ。見ごたえのあるマイムや演技部分を踊りに変更、一つの踊りを途中でぶった切って他の踊りを入れる、やたらと細かい部分を変えまくって無意味につじつまを合わせようとし、逆に混乱する結果になる、など。

  もう新しい作品を創り出すことは年齢的に無理だから、改訂を続けることで振付家としての矜持を保とうとしているのかもしれない。ボリショイ・バレエのダンサーたちが、いまだにグリゴローヴィチの顔色を窺っているらしいことからして(インタビューで必ずグリゴローヴィチを褒めたたえる)、グリゴローヴィチの存在はもはや老害なのではと思う。


 残念だったダンサーその1:セミョーン・チュージン(ボリショイ・バレエ日本公演『ラ・バヤデール』、『ドン・キホーテ』)

  個人技は物凄い。でも、パートナリング、とりわけ支え手と送り手のサポートがかなり劣っている(リフトは普通)。以前にオリガ・スミルノワと、今回はエカテリーナ・クリサノワ、アンナ・チホミロワ、クリスティーナ・クレトワと組んで踊ったのを観た。どのバレリーナとでも支え手と送り手で失敗することが目立った。回転するバレリーナをサポートすると、軸をまっすぐに保たせること、回転数を多くさせること、静止を手助けすることがほぼまったくできない。そのため、『ラ・バヤデール』でのニキヤ、ガムザッティとのパ・ド・ドゥは見ごたえの薄いものになってしまった。特に第三幕、影の王国のシーンでのニキヤとのパ・ド・ドゥ、あんなに見せ場を決められない踊りを観たのははじめてだった。

  チュージンはマリインスキー劇場バレエのウラジーミル・シクリャローフとは違い、頭の良いダンサーだろうと感じるのだけど、『ドン・キホーテ』でのチュージンの選択は疑問に思った。キトリ役のクレトワは確かに(ボリショイ基準では)まだ技量不足のバレリーナだけど、それを補おうとしたにせよ、自分だけが超絶技巧の凄技をこれでもかと披露しまくるのはどうなんだろう。それよりまずサポート力を向上させてくれよ、と思ったのが正直なところです。今後に期待。


 残念だったダンサーその2:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団)

  「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」と新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』で観た印象が同じ。「いつの間にこんなに地味なダンサーになっちゃったの!?」 個人技もパートナリングも優れているのに、以前のような輝きや明るさが失せてしまった。どうしてだろう?「上手だけど印象に残らないダンサー」にならないよう祈る。


 残念だった作品:多数

  小品では「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」Aプロ、Bプロ、「ロイヤル・エレガンスの夕べ」に集中。全幕ではウェイン・イーグリング版『眠れる森の美女』(新国立劇場バレエ団)。共通しているのは、日本での公演だからって、自分たちのやりたい放題しないでほしい、ということです。


 見直した賞:リアム・スカーレット(振付家)

  英国ロイヤル・バレエによるゴリ押し「英国出身振付家」だとずっと思ってましたが、「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」で上演された「ノー・マンズ・ランド」(アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー)で「まあいいんじゃない?」とはじめて思い、「ロイヤル・エレガンスの夕べ」で上演された「アスフォデルの花畑」(ラウラ・モレーラ、ベネット・ガートサイド)で、印象に残る良い振付だなあと感じました。

  スカーレットの作品は、日本ではまだなかなか上演機会がないだろうと思いますが、他の作品も観てみたいです。


 見直した賞:ネマイア・キッシュ(英国ロイヤル・バレエ団)

  「ロイヤル・エレガンスの夕べ」で上演された「ルーム・オブ・クックス」(アシュレイ・ペイジ振付)での夫の演技に感心しました。しかも労働者階級のDV男っていう役どころだったので特にね。それまでは個人技ダメ、パートナリングもダメな、ヘタレな王子用プリンシパルだと思っていました。渋い役や複雑な人物の役のほうがイケるとは。

  もうネタがない。 こんなところです。

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ペリカン・ダンス・アワード2014(ノミネート編)


  年は明けて2015年。みなさま、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます~。


  昨日の「ガキ使」は途中からしか観られなかった(ウチの家族が「大晦日は紅白」と固執したため)のですが、ちょうどネタの爆笑度が加速していくところから観られました。

  個人的に最も大爆笑したネタは、俳優の西岡徳馬がテツ&トモと一緒になって、赤いジャージ姿で「なんでだろ~なんでだろ~」をやったシーンです。「修学旅行の記念写真でこんなふうに写っちゃうヤツが必ず一人はいる」で、西岡徳馬が白目向いてピースサインをした瞬間に腹筋崩壊。

  あとは毎年のお約束ネタ、月亭方正が蝶野正洋からビンタを食らうシーンでの方正の絶叫「あきお~!!!」でも大爆笑。

  振分親方(高見盛)主演の「3年B組振分先生」も面白かった。「腐ったミカン」回で有名な不良(←死語w)の加藤君役で、直江喜一本人(現在51歳)が出てきたのにも笑った。直江喜一さんは俳優を引退してリーマンになり、順調に出世して今は支社長とかになられているそうだが、よく出演を承諾したな。しかも51歳で学ラン(笑)。仕事始めで、部下の人たちにさっそくネタにされるだろうね。

  さて2014年の観劇を回顧。あんまり観なくなっちゃったけど。正直、ここ1~2年の間に税金、保険料、光熱費、物価、すべてが急激に値上がりしたせいで、もうムダ使いはできないっていう深刻な感覚がある。そうなると、私の場合、真っ先に減らすのは観劇代になる。絶対に観たいものしか観なくなった。

  消費税が8%に引き上げられた2014年4月以降、個人消費が20%近くも下落したのは、そりゃ当たり前だろうと私は思う。しかし官僚や政治家は、自分たちがおカネに困らない環境にあるので、こういうシンプルな生活感覚を持てない。だからGDPがマイナス成長になったのは予想外の事態、などと浮世離れしたことを言っている。

  以下は2013年末~14年に観た公演。年、月、演目、カッコ内は主演です。


  2013年12月

   1.キエフ・バレエ『くるみ割り人形』(オリガ・ゴリッツァ、ヤン・ヴァーニャ)
   2.キエフ・バレエ『ラ・バヤデール』(ナタリア・マツァーク、デニス・ニェダク、エレーナ・フィリピエワ)
   3.キエフ・バレエ『ラ・バヤデール』(オリガ・ゴリッツァ、ヤン・ヴァーニャ、オリガ・キフィアク)

  2014年1月

   4.キエフ・バレエ『眠れる森の美女』(オリガ・ゴリッツァ、ヤン・ヴァーニャ)
   5.キエフ・バレエ『ドン・キホーテ』(第一幕:ナタリア・マツァーク、デニス・ニェダク、第二幕:オリガ・キフィアク、ドミトロ・チェボタル、第三幕:オリガ・ゴリッツァ、ヤン・ヴァーニャ)
   6.キエフ・バレエ『白鳥の湖』(エレーナ・フィリピエワ、デニス・ニェダク)

  2月

   7.アメリカン・バレエ・シアター『マノン』(ポリーナ・セミオノワ、コリー・スターンズ、ジェームズ・ホワイトサイド、ヴェロニカ・パールト)

  3月:鑑賞せず

  4月

   8.新国立劇場バレエ団『カルミナ・ブラーナ』(米沢唯)
   9.新国立劇場バレエ団『カルミナ・ブラーナ』(湯川麻美子、菅野英男、八幡顕光、タイロン・シングルトン)

  5月:鑑賞せず

  6月:鑑賞せず

  7月

   10.「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」Aプロ(アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー、ローレン・カスバートソン、ワディム・ムンタギロフ、ユルギータ・ドロニナ、イサック・エルナンデス、吉田都、スティーヴン・マックレー、カーステン・ユング)
   11.「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」Bプロ(アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー、ヤーナ・サレンコ、スティーヴン・マックレー、ローレン・カスバートソン、ワディム・ムンタギロフ、ユルギータ・ドロニナ、イサック・エルナンデス)

  8月

   12.「ロイヤル・エレガンスの夕べ」(ラウラ・モレーラ、ツァオ・チー、崔由姫、ネマイア・キッシュ、リカルド・セルヴェラ、佐久間奈緒、ベネット・ガートサイド、サラ・ラム、スティーヴン・マックレー)
   13.小林紀子バレエ・シアター「マクミラン・トリプルビル」(島添亮子、アントニーノ・ステラ、ジェームズ・ストリーター、喜入依里、後藤和雄、高橋怜子、萱嶋みゆき)

  9月:鑑賞せず

  10月:鑑賞せず

  11月

   14.新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』(米沢唯、ワディム・ムンタギロフ)
   15.『雨に唄えば』(アダム・クーパー、エイミー・エレン・リチャードソン、ステファン・アネッリ、オリヴィア・ファインズ)

  12月

   16.ボリショイ・バレエ『ラ・バヤデール』(エカテリーナ・クリサノワ、セミョーン・チュージン、アンナ・チホミロワ)
   17.ボリショイ・バレエ『ドン・キホーテ』(クリスティーナ・クレトワ、セミョーン・チュージン、アンナ・ニクーリナ)

   18.新国立劇場バレエ団『シンデレラ』(小野絢子、福岡雄大)
   19.新国立劇場バレエ団『シンデレラ』(米沢唯、菅野英男)


  いやあ、本当に観劇回数が減っているねえ。もっとも今年は『雨に唄えば』を最優先にして、観劇用のおカネをほとんどつぎこんだからという事情もあります。

  これでは「アワード」も何もないよなあ…。でも、個人的に良かった公演、そうでもなかった公演、良かったダンサー、そうでもなかったダンサー、そういうのをまとめてもいいか。

  (後日、受賞編に続く~

  
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