陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

イスラエル軍がガザ支援船を強襲:トルコ人10名が死亡

2010-06-02 23:30:25 | 中東問題
 5月31日、中東の<ドラゴンの歯>イスラエルが、ガザへ向かう国際支援船団(6隻;乗員679人)を攻撃し、10名のトルコ人を死亡させた。乗員の多くは、イスラエル軍に拘束されたままだ。トルコ政府は、直ちに安保理事会の緊急開催を要求した。

 イスラエルによるガザ封鎖で、パレスチナ住民は生活物資不足に悩んでいる。これは、国際的な同情を呼び、今回の支援船団も40ヶ国の人権活動家が企画したもの。

 詳しくは毎日新聞によると、


ガザ支援船:イスラエル軍が攻撃 活動家ら10人死亡
2010年5月31日 21時5分 更新:6月1日 0時27分

 【エルサレム花岡洋二】パレスチナ自治区ガザ地区への支援物資搬入のため地中海を航行していた貨物船と旅客船計6隻から成る国際支援団体の船団が31日、公海上でイスラエル軍部隊に急襲された。船団にはトルコや欧州の活動家ら約700人が乗船しており、イスラエル軍によると船団側の少なくとも10人が死亡、31人が負傷した。日本人が乗船していたとの情報はない。

 イスラエル軍筋は、死者の多くはトルコ人だとしている。イスラエル軍の広報担当者は「兵士はナイフやこん棒で襲われた」として「責任は船団側にある」と正当防衛を主張しているが、多数の民間人の死傷により、イスラエルへの非難が強まっている。

 船団を組織した国際支援団体「フリー・ガザ・ムーブメント」によると、船団はトルコとギリシャの港を25日以降、順次出港して編成され、北アイルランドのノーベル平和賞受賞者メイリード・マグアイヤ氏ら約40カ国の活動家や政治家が乗船していた。イスラエルによる封鎖が続くガザで不足している建設資材や浄水装置など計1万トンの物資を運んでいたところ、31日未明にガザの西約150キロの公海上で、軍の小型船とヘリコプターに急襲されたという。

 事件を受け、トルコ政府は同日、国連安保理の緊急会合開催を要求し、駐イスラエル大使を本国へ召還した。安保理は同日、緊急会合開催を決めた。

 一方、イスラエル・メディアによると、カナダを訪れているイスラエルのネタニヤフ首相は、閣僚と電話で話し、軍の行動を全面的に支持した。首相は1日に予定されていたワシントンでのオバマ米大統領との会談をキャンセルし帰国する。

 米ホワイトハウスの報道官は「犠牲者が出たことに深い遺憾の意を表明する」と述べた。国連の潘基文(バン・キムン)事務総長はイスラエルに徹底した説明と調査を求めた。

 イタリア、ドイツなど欧州諸国からも事態を憂慮する声が相次ぎ、欧州連合(EU)のアシュトン外交・安全保障政策上級代表は、事件の調査やガザ地区への人道支援物資の無条件搬入をイスラエルに求めた。

 ガザへの物資搬入を国際的に広報していた団体側に対し、イスラエル政府は事前に「ガザのテロ活動を手助けする物資が積まれている可能性があり、船団は阻止する」と宣言。洋上ではここ数日、船団と軍船舶のにらみ合いが続いていた。
http://mainichi.jp/select/today/news/20100601k0000m030080000c.html


 さすがにイスラエル国内でも、軍の行き過ぎとの批判が出ている。だが、硬派のネタニヤフ首相は、強気の姿勢を崩さない。オバマ大統領との会談予定をキャンセルして、帰国する所に意気込みを感じる。遊び呆けている我が国の農水相も、是非見習って欲しいものだ。


支援船強襲、イスラエル国内でも批判噴出

 【エルサレム=加藤賢治】イスラエル軍がパレスチナ支援船を強襲、多数の民間人死傷者が出た問題で、イスラエル国内では軍事作戦失敗に対する批判が噴出している。

 ネタニヤフ首相は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの武装強化を阻止するため、今後も封鎖を続けると明言している。

 1日付のイスラエル各紙は一斉に「作戦は大失敗だった」と批判した。

 イスラエル軍は事件について、ヘリコプターからロープで降下させた特殊部隊兵士を、支援船に乗った活動家約30人が、鉄の棒や刃物を持って甲板で待ち受け、次々に襲ったと説明。この攻撃は予想外で、その後の発砲は正当防衛だったと主張している。

 軍は数週間前から支援船拿捕を想定した訓練を積んでいた。拿捕という行為そのものは既定方針に基づいている。批判の矛先は、軍が船上での想定外の武力衝突に対応できずに多数の死傷者を出し、ガザ封鎖への国際批判まで高めてしまう失態を演じたことに向けられている。

 ガザ武装勢力によるイスラエルへのロケット弾攻撃に反発する国民の間では、ガザ封鎖そのものへの批判は少ない。ハマスへの強硬姿勢を取ってきたネタニヤフ首相は、高まる国際圧力に屈する形で封鎖を解除、緩和するわけにはいかない。

 イスラエルは強襲作戦で押収した支援船団の物資約1万トンは、検査後にガザに陸路で搬入すると強調している。封鎖への批判をかわすのが狙いだ。

 一方、イスラエル軍は1日、ガザから同国南部に侵入した武装パレスチナ人2人を銃撃戦の末、射殺した。また、ガザからはロケット弾2発が発射され、イスラエル軍の報復空爆でパレスチナ人3人が死亡した。

(2010年6月2日00時42分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100601-OYT1T01148.htm


 一方、トルコの要請で開催された安保理は、全会一致でイスラエルによる公海上での武力行使を非難する声明を出した。


国連安保理、イスラエル軍のガザ支援船攻撃で非難声明
2010.06.01 Web posted at: 17:23 JST Updated - CNN

(CNN) パレスチナ自治区ガザへの支援船団が5月31日、イスラエル軍による攻撃を受けた事件で、国連安全保障理事会は1日、人命が失われたことに深い遺憾の意を示し、攻撃を非難する声明を発表した。

声明は、31日午後から1日未明にかけて開かれた緊急会合で、安保理15カ国の全会一致で採択された。イスラエル軍による「公海上での武力行使」で死傷者が出たことを遺憾とし、「民間人少なくとも10人」の死を招いた行為を非難する内容。

イスラエルは事件で9人が死亡したとしているが、支援組織側はこれを上回る死者が出たと主張している。

声明はイスラエルに対して、船団を構成する船と拘束された民間人を即時解放し、死傷者を出身国へ引き渡す手続きに対応するよう要求している。事件の詳細については「迅速、公正で信頼性、透明性のある」調査を求めた。

また、ガザの現状は「持続しがたい状態」だとして重大な懸念を示し、定期的な物資の搬入を継続する必要があると強調した。

さらに、パレスチナ問題を解決する「実行可能な唯一の方法」は、パレスチナ独立国家がイスラエルと共存することだと述べ、双方に「挑発的な行動」を避けるよう呼び掛けた。
http://www.cnn.co.jp/world/AIC201006010020.html


 4年前からの「ガザ封鎖」自体は、人道的観点から国際的な強い批判を浴びているのだが、国連はこれを解除すべしとの声明すら出していない。イスラエルに遠慮する米国がそれを許さないのだろう。

 だが、封鎖の有効性に関して、イスラエル国内からも疑念の声が上がっている。


ガザ支援船襲撃 封鎖政策の矛盾浮き彫りに イスラエル国内でも指摘の声
2010.6.2 00:10

 【カイロ=村上大介】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区に向かっていた国際支援船団を公海上で急襲し多数の死傷者を出した事件は、ガザ封鎖によりイスラム原理主義組織ハマスを弱体化させるとのイスラエルの狙いとは裏腹に、多くの矛盾点を浮き彫りにする結果となった。国連安全保障理事会の議長声明に「封鎖解除」を求める文言を盛り込むことは見送られたものの、封鎖政策の有効性を疑問視する声はイスラエル国内からも出ている。

 1日付イスラエル有力紙イディオト・アハロノトは1面で「罠(わな)」と大見出しを掲げ、支援船団に乗り込んだイスラエル兵が活動家たちの仕組んだ挑発に引っかかったとの見方を示した。同国のメディアは「活動家たちから先に攻撃を受け、やむを得ず発砲したイスラエル兵に責任はない」という点ではほぼ一致している。

 しかし、長期にわたるガザ封鎖の効果については、さまざまな議論が出始めており、有力紙ハアレツは「イスラエルは、4年間におよぶ封鎖で苦しむガザに向かう船を攻撃し、ハマスはロケット弾を1発も撃つことなく圧倒的な勝利を収めた」とし、「封鎖政策が逆にイスラエルの国際的な立場を著しく損ねている」と指摘した。

 安保理議長声明では見送られたものの、今回は欧州連合(EU)も5月31日、事件の徹底糾明だけでなく、ガザ封鎖の即時解除を求める声明を発表。欧州各国もアラブ・イスラム諸国と足並みをそろえつつある。

 イスラエルは、ハマスがガザ地区を武力制圧した2007年6月以降、境界封鎖を強化したが、強硬姿勢を取る以外に無策なハマスへの住民の失望から、ハマスへの支持は低下する傾向にあったとも指摘される。

 しかし、イスラエルが強硬策を取るたびに、ハマスは支持を回復。イスラエルとの和平交渉を進めようとする穏健派のアッバス自治政府議長らの立場は弱まり、和平プロセスが停滞するというジレンマも抱えている。

 一方、治安上の理由からガザ地区への封鎖措置を取るエジプトのムバラク大統領は1日、人道物資などを搬入するためエジプト側境界のラファ検問所を開放するよう命じた。ガザ封鎖に対する非難の矛先がエジプトに向かうのを回避する狙いがあるとみられる。

 イスラエル軍は5月31日、支援船団側の死亡者は9人だったと発表した。負傷者は合わせて十数人にのぼったとしている。イスラエル政府によると、拿捕された船団6隻の乗船者は計679人。うち強制送還に応じたのは約50人だけで、ほかは拘束される見込みだという。

 国際支援団はさらに、ガザを目指す支援船を向かわせると表明。これに対し、イスラエル軍は徹底阻止するとの姿勢を明確にしており、ガザ封鎖をめぐる駆け引きは長期化しそうだ。
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/100602/mds1006020011000-n1.htm


 もたもたしている国連とは別に、EUとロシアが共同でガザ地区の即時解放を求める共同宣言を発表した。我が国政府並びに人権派活動グループは、沈黙したままであっる。我が国に理解のある国トルコに対し、少なくとも政府は哀悼の意を表すべきだろう。


ガザ即座開放を求める、露とEUが共同宣言

 【ロストフ・ナ・ドヌー(ロシア南西部)=貞広貴志】ロシアと欧州連合(EU)は1日、イスラエル軍によるパレスチナ支援船強襲に関し、「人道物資と商業品、人々の往来について、ガザの境界を即座に開放するよう求める」とする共同宣言を発表した。

 当地で開かれた露EU首脳会議で合意し、ラブロフ外相とアシュトン外交安保上級代表(EU外相)の名前で宣言をまとめた。

 メドベージェフ露大統領は1日、会議後の共同記者会見で「我々は、正確を期した調査を行わなければならない」と事実関係を究明する必要性を強調。EUのファンロンパイ常任議長(大統領)は、「事件には衝撃を受けた。(ガザ)封鎖政策は、受け入れられないし、非生産的だ」とイスラエルを非難した。

 一方、首脳会議は、「近代化に向けたパートナーシップ」協力を始めるとうたう共同声明を採択し、閉幕した。

(2010年6月1日22時59分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100601-OYT1T01093.htm
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