陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

「起きて半畳、寝て一畳、天下取っても二合半」を米国人へ伝えたい

2008-10-12 19:59:39 | 財政・経済問題
 米政府の公的資金(税金)による救済を受けた大金融企業が、1週間後に豪華リゾートホテルで酒池肉林の会合していた事が発覚、米国下院の公聴会に呼びつけられた元CEOは、しどろもどろの弁解をしていた。

 小ブッシュ大統領は、新自由主義の建前から企業への政府関与を嫌っている。それが、金融機関への資本注入を遅らせているのだが、一方では米国民の高額所得経営者への反発も大きい。

 米国大金融機関では、経営者の年間所得が100億円を超える例は珍しくないし、退職時には自社株を分与され、数百億円に相当する退職金を貰う場合もある。ゴールドマン・サックスを退職したポールソン財務長官はその典型だ。

 これで経営がおかしくなったから、その救済に7000億ドルも税金から出せと言うのでは、一般の米国民の怒りを買う。経営者らが儲けに走って「サブプライム」問題を引き起こし、レバレッジだ、デリバティブだと詐欺紛いの方法で信用毀損問題を拡大、そして高額所得をたっぷりと確保した後、後始末は国民の皆さんでと言うのだから酷い。

 19世紀の米国大統領は、貧しい家庭の出身者もいた。リンカーンやガーフィールドなどはその代表例だ。南部のプランテーションで儲けた人々は豪邸に住んだかもしれないが、南北戦争でそれは著しく淘汰された。「風と共に去りぬ」がそれを物語る。

 20世紀初頭から第二次大戦前までは、大恐慌にも拘わらず鉄鋼、自動車、石油、化成品、鉄道などで巨万の富を築いた人達もいるのだが、彼らは美術館、教育施設や公共施設を建てて、富を社会に還元した。この時代、「プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(マックス・ウェーバー)は、ある程度調和していたのではないか。

 だが、1991年の冷戦終了後に強大な力を持った国際金融資本は違った。ただ闇雲にカネを稼ぎ、経営者はたっぷりと収入を得、従業員へも億単位でボーナスを与えた。そして、クリントン時代、小ブッシュ時代と続けて高額所得者への減税を行い、現在に至っている。

 ビル・ゲーツ氏は一代で億万長者になった人物だが、彼はアフリカなど貧困地域への教育施設充実に巨額の寄付を行い、死後は大半の遺産を社会へ還元すると言う。だが、それは例外的で、多くの高額所得経営者は敷地数千坪のプール付き豪邸に住み、各種の高級車を保有、豪華ヨットで週末を楽しんでいる。

 「起きて半畳、寝て一畳、天下取っても二合半」と言う言葉がある。太閤秀吉の残した言葉らしいが、人間は起居に半畳、就寝する時は一畳分の面積があれば十分足りるし、一日二合半の飯があれば腹一杯になる。それ以上を求めても、一人では消化仕切れないよとの諫言であろう。

 天下人秀吉は、豪華絢爛の聚楽第に美女多数と共に住み、黄金の茶室に客を招いて栄耀栄華の晩年を送ったが、最後の結論は上記の言葉であった。私の場合、それにタバコ一箱と、清酒二合を慎ましく付け加えたいのだが(笑)。

 国家が外国から多額の借金をし、それで他国において戦争を進め、自国の若者は勿論、多数の婿の民を殺しながら恬として恥じないリーダー感覚、米国の為政者や経営者層がその感覚を反省し、「起きて半畳、寝て一畳、天下取っても二合半」の精神で活動する時、本当の米国の改革が生まれると思うが、夢物語に留まるのであろうか。
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