開催報告 第1回 多自然川づくり見学会(第3回 意見交換会)
■1.日程 平成29年9月2日(土)午前7時30分~12時00分頃
■2.主催:おだわら環境志民ネットワーク
協力:小田原市道水路整備課河川係
■3.場 所
①桑原地区水路(施工済み植生定着区間)
②曽比地区水路(牛島排水路)で施工直後、植生未定着区間
③曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)で施工予定区間
■4.概要
小田原市が施工した多自然水路整備箇所の見学。
施工後の水辺植生の定着状況を見学し、施工後の水質結果や水生動物等の定着状況から、工事による水辺環境の劣化と回復について意見交換した。
地図の中心マークが桑原地区水路(施工済み)は日本新薬と酒匂川の間を南下する川。メダカ保護区(小田原市指定)にってます。H19年度施工
曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)地図中心マークの20m西が牛島排水路、20m東が寺下排水路。
今まで小田原を含む多くの日本で行われてきた、2面または3面コンクリ壁による水路に比べると、石積み護岸や、施工後に流れに変化をつけるために河床の岸側に大きめの石を置く「根固め捨石工」などは、魚類や水生植物のが定着しやすく、施工後に自然が再生しやすい工法です。他の河川へも広く普及させたいです。しかし工事予定区間を踏査してみると、工事することによる自然性の低下になっていて、必ずしも「多自然川づくり」とは言えない区間もあることがわかりました。
■桑原の多自然水路整備個所(施工済み、小田原市メダカ保護区水路)
桑原の多自然水路(施工済み)は、小田原市が指定はしたメダカ保護区でもある。県道新設にぶつかる別水路の水を引き回し合流させる必要があったため、計画流量が増るので拡幅工事を平成19年にした区間である。
拡幅は、区間により工法が異なるが、一番長い区間(日本新薬西側沿い)は林道側を拡幅し、森林側は施工しない「片岸拡幅」で、施工後の植生定着を期待してアンカー式丸石積み護岸とした。ほぼ期待通り、施工後にミゾソバやオオカナダモ等の水辺植生が自然に定着した。昔よく行われたコンクリむき出しのつるつる護岸に比べて自然性も費用もかなり高い。この点は行政に感謝であり高く評価できる。
課題① 拡幅工事と流量の増加により、直線的で瀬淵や細流の無い、「トロ」がつづく単調な水路になってしまった。またアブラハヤ、オイカワなどの里の魚類にとっては適した流速であるが、メダカにとっては流速が早くメダカは少数しか生息できなくなってしまった。
課題② 流れに瀬淵を再生させるため、河岸に置き石をところどころ置いたが、上下流方向へ長細く並べてしまったので、瀬淵ができにくい。石の配置を変えて瀬淵を作ると望ましい。
(上写真)アンカー式空石積み護岸(コンクリを練り込まない丸石積み)。日本新薬北沿い。
施工後約10年経過したが、水生植物が定着しない区間(上写真)と定着している区間(下写真)がある。定着しない区間は何が要因なのであろうか?
(上写真)流れに瀬淵の変化を作るため河岸に四角い雑割石(30cm程度の置き石)を置いた。良い発想である。しかし上下流方向へ長細く1列に並べてしまったため瀬淵ができにくい失敗例。石をもっと一か所にごろんと集積させて瀬淵を作ってほしいと市に要望した。場所:日本新薬西沿い。施工後約10年経過し水生植物が定着しているアンカー式空丸石積み護岸。
また、日本新薬西沿いは瀬淵や細流の無い、「トロ」がつづく単調な水路なので、水路の西側の樹林地を、ユンボで掘削し、複数個所にワンド(湾処)や細流を作る様に市に要望した。一応ワンドがあるが、全約400m区間に1か所しかない。
■牛島排水路(小田原市曽比)
(上の図)施工予定地図、図の上が北向き。西側が牛島排水路、東側が素掘りの自然護岸が多い寺下排水路。
区間ごとに凡例を変えて工法が書かれてます。寺下排水路では自然性の高い地域の特徴である「素掘り水路」の約半分は消失し「練り石積み」になる(図の青実線区間)計画。
施工直後の区間と施工予定区間を見学。施工前の状態が、コンクリを練り込まない丸石積みの垂直護岸です。この地域の小水路には20cm程度の小さめの丸石積みが、護岸や家の盛り土の擁壁等に使われてます。昔、酒匂川の「大口」から運んできたのです。
しかし、コンクリを練り込まない丸石積みは、数十年すると、水の流れで積み石の裏(道路側)の土が洗掘される箇所もあります。すると道路が陥没するので路肩の耐久性としては問題があります。そこで今回はアンカー式練り丸石積護岸に置き換えします。簡単に言うと、丸石に鉄の棒が刺さってる製品があって、その石を積んで、石積と道路に間にコンクリを充填するというものです。
詳しくは、メーカーの例http://www.kankyo-kogaku.co.jp/river/alda/index.html
見た目には、昔と似た丸石積なので、これが市長が言う「水辺の原風景を保全再生」ではないでしょうか。丸石が大きくて石と石の隙間にコンクリが練り込まれてるので、昔に比べると、小魚や水生昆虫が逃げ込む石の隙間が減ってしまうので自然性は若干落ちますが、路面陥没のリスクを減らすには致し方ないかと思いました。
上写真:曽比地区牛島排水路 画像の左半分はのH28年度施工、右側は施工前でコンクリを練り込んでいない昔の護岸(施工予定)。
★★★ココ重要★★★
■寺下排水路(小田原市曽比)施工予定
工事予定の寺下排水路には、市内でも桑原、鬼柳、曽比ぐらいにしか残っていない「水田と一体になった素掘り水路」が残っており、魚類が川から水田に遡上できる環境である。まさに森里川海の連続性が残っている。水際には水生植物も多く生育し、生物調査の結果でも魚類の個体数が非常に多い河川であった。
以下、寺下排水路「水田と一体になった素掘り水路」が残されている貴重な環境
素掘りの水路や水田からの排水口が素掘りで魚類が遡上できる環境は、良好な例として、冊子「かながわ田んぼの生きものウォッチング」(神奈川県2007)に以下の様に、解説付きで小田原の写真が掲載されている。
↓
「水田と一体になった素掘り水路」といのは、どのようなメリットがあるかご存じでしょか?
実は、里の小魚は、川から水田へ魚類が水田排水口を遡上してくるのです。魚は水温のちょっと温かい水を感じ取って水田へ遡上しているのかと思います。
下の絵をご覧ください。左は用水路、右は水田です。小魚は、水田を産卵場や稚魚の成育場にしてます。河川工事や圃場整備で水田排水口に落差ができてしまうと、これらの魚類は遡上できずに生育場所を失ってしまいます。
しかし、寺島排水路では、非常に良好な自然環境であるこの素掘り水路の約半分の区間が壊されて裏にコンクリを流し込んだ丸石積みの垂直護岸(上記の牛島排水路の写真と同じ工法)になる計画である。実に残念であると同時に自然破壊である。
同様なことは、事業を評価する県の委員会でも述べられ、事業の縮小や環境団体の意見を聞くように求められている。
水源環境保全・再生かながわ県民会議 平成27 年度第1回事業モニター報告書 事業名 河川・水路における自然浄化対策の推進
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/828973.pdf#search=%27%E7%9C%8C%E6%B0%91%E4%BC%9A%E8%AD%B0+%E5%B0%8F%E7%94%B0%E5%8E%9F%E5%B8%82+%E5%AF%BA%E4%B8%8B%E6%8E%92%E6%B0%B4%E8%B7%AF%27
この委員会意見を踏まえ、一部の素掘り水路は破壊されずに残ることになったが、およそ半分の素掘り水路は消失し練り石積み(地図の青実線区間)になってしまい、水田との生態的なつながりが分断されてしまう現計画である。しかし現計画は大まかな方針であり、素掘り水路を削って石積みにするか、素掘り水路を残すかは、今後、個々の地権者や農家の意見も聞きながら詰めていくとのことです。
このため市へ以下を再要望した。
台風などの大雨の時は、上流の取水水門を閉めるので、増水氾濫の危険性は低い河川であることと、現状の環境貢献機能を高く評価して、その素晴らしさを、農家や近隣住民に理解してもらい、何とかこの良好な自然を残してほしい。
やむを得ず石積護岸にする区間では、寺下排水路から水田へナマズ等が遡上できるように、水田魚道を設置してほしい。
市長の議会説明では「多自然水路整備」を行い「水辺の原風景を保全再生」すると言って予算承認されたが、寺下排水路については、逆の行為が計画されており残念である。
ブリ森レポーター & 志民ネット理事 伊豆川哲也
---------------------------------------------
以下、開催案内(終了しました)
普段知ることのない、生きものに配慮した川の工事の手法を学んでいただき、今後工事予定の区間について市に建設的な要望を言っていただければ幸いです。
今回の見学は、市長が 「自然環境の保全と再生」の中で、「多自然水路整備」を行い「水辺の原風景を保全再生」するとした先進的な市の事業です(H29/2/20小田原市議会本会議)。
第1回 多自然川づくり見学会(第3回 意見交換会)
■1.日程 平成29年9月2日(土)
午前7時30分~12時00分頃
■2.主催:おだわら環境志民ネットワーク
協力:小田原市道水路整備課河川係
■3.テーマ 多自然川づくりの見学
■4.場 所
①桑原地区水路(施工済み植生定着区間)
②曽比地区水路(牛島排水路)で施工直後、植生未定着区間
③曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)で施工予定区間
■5-1.概要
小田原市が施工した多自然水路整備箇所の見学。
施工後の水辺植生の定着状況を見学し、施工後の水質結果や水生動物等の定着状況から、工事による水辺環境の劣化と回復について考察。
■5-2.開催趣旨
今回の見学は、市長が 「自然環境の保全と再生」の中で、「多自然水路整備」を行い「水辺の原風景を保全再生」するとした先進的な市の事業です(H29/2/20小田原市議会本会議 H29年度予算案の説明)。
国交省では、河川の自然の回復力を活かした生物が定着できるような川づくりを「多自然川づくり」として20年前から試行錯誤して各所の手引書作成、講習会などをやってきました。
しかし、各地の河川工事では環境面でがっかりすることがよくあります。
そこで、国交省の「多自然川つくり」の先進技術を県西地域で、もっと取り入れてもらおうと伊豆川が思い、小田原市(河川係)と神奈川県(小田原土木センター)に「どんな工事計画なのか」、「○○川の工事は国交省の多自然川づくりのマニュアル類に沿っているのか?」など訪ねてきました。その際に、有志の市民による河川研究会で見学会もさせていただきたいと伊豆川等が申し入れしていました。
このような経緯を踏まえ、今回、志民ネットで、見学会を開催することとなりました。
市による多大なる協力で開催しますが、市による開催ではないため、不手際もあるかと思いますが、ご了承ください。
また、「多自然川づくり見学会」の第2回以降も計画してますので、どの区間を見学したいか、伊豆川に教えていただければ幸いです。
■5-3.見学ポイント
(1) 「神奈川県水源環境保全・再生交付金事業」(100%県税)で小田原市が多自然水路整備(河川工事)を実施しており、代表的な下記3タイプを見学。
タイプ分け
①護岸工事済みで水辺植生定着(回復)区間(桑原地区メダカ保護区の水路)
②護岸工事直後で水辺植生未定着区間(曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)の一部)
③護岸工事予定区間(曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)の一部)
(2) 上記①の施工済みで水辺植生定着(回復)区間にて、多自然川つくりの複数の工法(丸石にコンクリ練り積み等)による植生の回復状況や瀬淵の回復力を見学し、施工前後の水質比較や水辺動植物の回復調査結果を市河川係から報告してもらいます。
(3) その後、上記②③を見学し、施工直後の②区間での植生や瀬淵の回復予想を考察するとともに、今後護岸工事する③区間を見ていただき、自然再生と治水を両立する河川工事の在り方や工法、維持管理、川沿いの住民からの要望等について皆さんと議論します。
■6.集 合 小田原市役所(午前7時30分)
〒250-8555 神奈川県小田原市荻窪300番地
現地は住宅街の狭い道路のため、指定の車に乗合いにて移動。
マイカーの方は市役所駐車場(無料)に駐車。
マイカー(指定の乗合車を除く)での現地同行はご遠慮ください。
■7.参加申し込み
8月25日(金)まで
ただし乗用車乗合のため座席の関係で参加できない場合がありますので早目のお申し込みをお願いします。
■8.申込問い合わせ
人数・参加者氏名、代表者氏名、所属、連絡先等お知らせください。
志民ネット会員(構成団体の会員含む)向けですが、知り合いでも参加できる様にしました。
おだわら環境志民ネットワーク 事務局
(小田原市 環境部 環境政策課 環境政策係)
TEL:0465-33-1473 FAX:0465-33-1487
Mail:ka-kansei@city.odawara.kanagawa.jp
■9.見学の後日
行政に「環境よくしてほしい」とだけ言っても単なるクレーマーにされてしまいます。
そこで、多自然川づくりの複数の工法を今回、実際に見ていただき、次に皆さんのご自宅の近くの川をご覧になってください。
その川にも適応できそうな工法を要望することで、具体的な提案ができます。予算の見当もつきます。
■管轄部署■
・小河川や水路の管轄
(山王川の上流側(久野川、坊所川)、名もないような水路)
小田原市役所5階 建設部 道水路整備課 河川係
TEL 0465-33-1548
FAX 0465-33-1565
do-kasen@city.odawara.kanagawa.jp
・大きな川の管轄
(酒匂川、山王川の下流側、早川、森戸川、中村川等)
神奈川県 県西土木事務所 小田原土木センター 河川砂防1課
TEL 0465-34-4141
FAX 0465-35-9247
東町5丁目 2番58号
---投稿 伊豆川哲也 ----------
izkw_tetsuya@yahoo.co.jp
あしがら冬みず田んぼの会長
おだわら環境志民ネットワーク理事。日本野鳥の会神奈川支部西湘ブロック会員。
小田原山盛りの会員。美しい久野里地里山協議会員。
■1.日程 平成29年9月2日(土)午前7時30分~12時00分頃
■2.主催:おだわら環境志民ネットワーク
協力:小田原市道水路整備課河川係
■3.場 所
①桑原地区水路(施工済み植生定着区間)
②曽比地区水路(牛島排水路)で施工直後、植生未定着区間
③曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)で施工予定区間
■4.概要
小田原市が施工した多自然水路整備箇所の見学。
施工後の水辺植生の定着状況を見学し、施工後の水質結果や水生動物等の定着状況から、工事による水辺環境の劣化と回復について意見交換した。
地図の中心マークが桑原地区水路(施工済み)は日本新薬と酒匂川の間を南下する川。メダカ保護区(小田原市指定)にってます。H19年度施工
曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)地図中心マークの20m西が牛島排水路、20m東が寺下排水路。
今まで小田原を含む多くの日本で行われてきた、2面または3面コンクリ壁による水路に比べると、石積み護岸や、施工後に流れに変化をつけるために河床の岸側に大きめの石を置く「根固め捨石工」などは、魚類や水生植物のが定着しやすく、施工後に自然が再生しやすい工法です。他の河川へも広く普及させたいです。しかし工事予定区間を踏査してみると、工事することによる自然性の低下になっていて、必ずしも「多自然川づくり」とは言えない区間もあることがわかりました。
■桑原の多自然水路整備個所(施工済み、小田原市メダカ保護区水路)
桑原の多自然水路(施工済み)は、小田原市が指定はしたメダカ保護区でもある。県道新設にぶつかる別水路の水を引き回し合流させる必要があったため、計画流量が増るので拡幅工事を平成19年にした区間である。
拡幅は、区間により工法が異なるが、一番長い区間(日本新薬西側沿い)は林道側を拡幅し、森林側は施工しない「片岸拡幅」で、施工後の植生定着を期待してアンカー式丸石積み護岸とした。ほぼ期待通り、施工後にミゾソバやオオカナダモ等の水辺植生が自然に定着した。昔よく行われたコンクリむき出しのつるつる護岸に比べて自然性も費用もかなり高い。この点は行政に感謝であり高く評価できる。
課題① 拡幅工事と流量の増加により、直線的で瀬淵や細流の無い、「トロ」がつづく単調な水路になってしまった。またアブラハヤ、オイカワなどの里の魚類にとっては適した流速であるが、メダカにとっては流速が早くメダカは少数しか生息できなくなってしまった。
課題② 流れに瀬淵を再生させるため、河岸に置き石をところどころ置いたが、上下流方向へ長細く並べてしまったので、瀬淵ができにくい。石の配置を変えて瀬淵を作ると望ましい。
(上写真)アンカー式空石積み護岸(コンクリを練り込まない丸石積み)。日本新薬北沿い。
施工後約10年経過したが、水生植物が定着しない区間(上写真)と定着している区間(下写真)がある。定着しない区間は何が要因なのであろうか?
(上写真)流れに瀬淵の変化を作るため河岸に四角い雑割石(30cm程度の置き石)を置いた。良い発想である。しかし上下流方向へ長細く1列に並べてしまったため瀬淵ができにくい失敗例。石をもっと一か所にごろんと集積させて瀬淵を作ってほしいと市に要望した。場所:日本新薬西沿い。施工後約10年経過し水生植物が定着しているアンカー式空丸石積み護岸。
また、日本新薬西沿いは瀬淵や細流の無い、「トロ」がつづく単調な水路なので、水路の西側の樹林地を、ユンボで掘削し、複数個所にワンド(湾処)や細流を作る様に市に要望した。一応ワンドがあるが、全約400m区間に1か所しかない。
■牛島排水路(小田原市曽比)
(上の図)施工予定地図、図の上が北向き。西側が牛島排水路、東側が素掘りの自然護岸が多い寺下排水路。
区間ごとに凡例を変えて工法が書かれてます。寺下排水路では自然性の高い地域の特徴である「素掘り水路」の約半分は消失し「練り石積み」になる(図の青実線区間)計画。
施工直後の区間と施工予定区間を見学。施工前の状態が、コンクリを練り込まない丸石積みの垂直護岸です。この地域の小水路には20cm程度の小さめの丸石積みが、護岸や家の盛り土の擁壁等に使われてます。昔、酒匂川の「大口」から運んできたのです。
しかし、コンクリを練り込まない丸石積みは、数十年すると、水の流れで積み石の裏(道路側)の土が洗掘される箇所もあります。すると道路が陥没するので路肩の耐久性としては問題があります。そこで今回はアンカー式練り丸石積護岸に置き換えします。簡単に言うと、丸石に鉄の棒が刺さってる製品があって、その石を積んで、石積と道路に間にコンクリを充填するというものです。
詳しくは、メーカーの例http://www.kankyo-kogaku.co.jp/river/alda/index.html
見た目には、昔と似た丸石積なので、これが市長が言う「水辺の原風景を保全再生」ではないでしょうか。丸石が大きくて石と石の隙間にコンクリが練り込まれてるので、昔に比べると、小魚や水生昆虫が逃げ込む石の隙間が減ってしまうので自然性は若干落ちますが、路面陥没のリスクを減らすには致し方ないかと思いました。
上写真:曽比地区牛島排水路 画像の左半分はのH28年度施工、右側は施工前でコンクリを練り込んでいない昔の護岸(施工予定)。
★★★ココ重要★★★
■寺下排水路(小田原市曽比)施工予定
工事予定の寺下排水路には、市内でも桑原、鬼柳、曽比ぐらいにしか残っていない「水田と一体になった素掘り水路」が残っており、魚類が川から水田に遡上できる環境である。まさに森里川海の連続性が残っている。水際には水生植物も多く生育し、生物調査の結果でも魚類の個体数が非常に多い河川であった。
以下、寺下排水路「水田と一体になった素掘り水路」が残されている貴重な環境
素掘りの水路や水田からの排水口が素掘りで魚類が遡上できる環境は、良好な例として、冊子「かながわ田んぼの生きものウォッチング」(神奈川県2007)に以下の様に、解説付きで小田原の写真が掲載されている。
↓
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「水田と一体になった素掘り水路」といのは、どのようなメリットがあるかご存じでしょか?
実は、里の小魚は、川から水田へ魚類が水田排水口を遡上してくるのです。魚は水温のちょっと温かい水を感じ取って水田へ遡上しているのかと思います。
下の絵をご覧ください。左は用水路、右は水田です。小魚は、水田を産卵場や稚魚の成育場にしてます。河川工事や圃場整備で水田排水口に落差ができてしまうと、これらの魚類は遡上できずに生育場所を失ってしまいます。
しかし、寺島排水路では、非常に良好な自然環境であるこの素掘り水路の約半分の区間が壊されて裏にコンクリを流し込んだ丸石積みの垂直護岸(上記の牛島排水路の写真と同じ工法)になる計画である。実に残念であると同時に自然破壊である。
同様なことは、事業を評価する県の委員会でも述べられ、事業の縮小や環境団体の意見を聞くように求められている。
水源環境保全・再生かながわ県民会議 平成27 年度第1回事業モニター報告書 事業名 河川・水路における自然浄化対策の推進
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/828973.pdf#search=%27%E7%9C%8C%E6%B0%91%E4%BC%9A%E8%AD%B0+%E5%B0%8F%E7%94%B0%E5%8E%9F%E5%B8%82+%E5%AF%BA%E4%B8%8B%E6%8E%92%E6%B0%B4%E8%B7%AF%27
この委員会意見を踏まえ、一部の素掘り水路は破壊されずに残ることになったが、およそ半分の素掘り水路は消失し練り石積み(地図の青実線区間)になってしまい、水田との生態的なつながりが分断されてしまう現計画である。しかし現計画は大まかな方針であり、素掘り水路を削って石積みにするか、素掘り水路を残すかは、今後、個々の地権者や農家の意見も聞きながら詰めていくとのことです。
このため市へ以下を再要望した。
台風などの大雨の時は、上流の取水水門を閉めるので、増水氾濫の危険性は低い河川であることと、現状の環境貢献機能を高く評価して、その素晴らしさを、農家や近隣住民に理解してもらい、何とかこの良好な自然を残してほしい。
やむを得ず石積護岸にする区間では、寺下排水路から水田へナマズ等が遡上できるように、水田魚道を設置してほしい。
市長の議会説明では「多自然水路整備」を行い「水辺の原風景を保全再生」すると言って予算承認されたが、寺下排水路については、逆の行為が計画されており残念である。
ブリ森レポーター & 志民ネット理事 伊豆川哲也
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以下、開催案内(終了しました)
普段知ることのない、生きものに配慮した川の工事の手法を学んでいただき、今後工事予定の区間について市に建設的な要望を言っていただければ幸いです。
今回の見学は、市長が 「自然環境の保全と再生」の中で、「多自然水路整備」を行い「水辺の原風景を保全再生」するとした先進的な市の事業です(H29/2/20小田原市議会本会議)。
第1回 多自然川づくり見学会(第3回 意見交換会)
■1.日程 平成29年9月2日(土)
午前7時30分~12時00分頃
■2.主催:おだわら環境志民ネットワーク
協力:小田原市道水路整備課河川係
■3.テーマ 多自然川づくりの見学
■4.場 所
①桑原地区水路(施工済み植生定着区間)
②曽比地区水路(牛島排水路)で施工直後、植生未定着区間
③曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)で施工予定区間
■5-1.概要
小田原市が施工した多自然水路整備箇所の見学。
施工後の水辺植生の定着状況を見学し、施工後の水質結果や水生動物等の定着状況から、工事による水辺環境の劣化と回復について考察。
■5-2.開催趣旨
今回の見学は、市長が 「自然環境の保全と再生」の中で、「多自然水路整備」を行い「水辺の原風景を保全再生」するとした先進的な市の事業です(H29/2/20小田原市議会本会議 H29年度予算案の説明)。
国交省では、河川の自然の回復力を活かした生物が定着できるような川づくりを「多自然川づくり」として20年前から試行錯誤して各所の手引書作成、講習会などをやってきました。
しかし、各地の河川工事では環境面でがっかりすることがよくあります。
そこで、国交省の「多自然川つくり」の先進技術を県西地域で、もっと取り入れてもらおうと伊豆川が思い、小田原市(河川係)と神奈川県(小田原土木センター)に「どんな工事計画なのか」、「○○川の工事は国交省の多自然川づくりのマニュアル類に沿っているのか?」など訪ねてきました。その際に、有志の市民による河川研究会で見学会もさせていただきたいと伊豆川等が申し入れしていました。
このような経緯を踏まえ、今回、志民ネットで、見学会を開催することとなりました。
市による多大なる協力で開催しますが、市による開催ではないため、不手際もあるかと思いますが、ご了承ください。
また、「多自然川づくり見学会」の第2回以降も計画してますので、どの区間を見学したいか、伊豆川に教えていただければ幸いです。
■5-3.見学ポイント
(1) 「神奈川県水源環境保全・再生交付金事業」(100%県税)で小田原市が多自然水路整備(河川工事)を実施しており、代表的な下記3タイプを見学。
タイプ分け
①護岸工事済みで水辺植生定着(回復)区間(桑原地区メダカ保護区の水路)
②護岸工事直後で水辺植生未定着区間(曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)の一部)
③護岸工事予定区間(曽比地区水路(牛島排水路、寺下排水路)の一部)
(2) 上記①の施工済みで水辺植生定着(回復)区間にて、多自然川つくりの複数の工法(丸石にコンクリ練り積み等)による植生の回復状況や瀬淵の回復力を見学し、施工前後の水質比較や水辺動植物の回復調査結果を市河川係から報告してもらいます。
(3) その後、上記②③を見学し、施工直後の②区間での植生や瀬淵の回復予想を考察するとともに、今後護岸工事する③区間を見ていただき、自然再生と治水を両立する河川工事の在り方や工法、維持管理、川沿いの住民からの要望等について皆さんと議論します。
■6.集 合 小田原市役所(午前7時30分)
〒250-8555 神奈川県小田原市荻窪300番地
現地は住宅街の狭い道路のため、指定の車に乗合いにて移動。
マイカーの方は市役所駐車場(無料)に駐車。
マイカー(指定の乗合車を除く)での現地同行はご遠慮ください。
■7.参加申し込み
8月25日(金)まで
ただし乗用車乗合のため座席の関係で参加できない場合がありますので早目のお申し込みをお願いします。
■8.申込問い合わせ
人数・参加者氏名、代表者氏名、所属、連絡先等お知らせください。
志民ネット会員(構成団体の会員含む)向けですが、知り合いでも参加できる様にしました。
おだわら環境志民ネットワーク 事務局
(小田原市 環境部 環境政策課 環境政策係)
TEL:0465-33-1473 FAX:0465-33-1487
Mail:ka-kansei@city.odawara.kanagawa.jp
■9.見学の後日
行政に「環境よくしてほしい」とだけ言っても単なるクレーマーにされてしまいます。
そこで、多自然川づくりの複数の工法を今回、実際に見ていただき、次に皆さんのご自宅の近くの川をご覧になってください。
その川にも適応できそうな工法を要望することで、具体的な提案ができます。予算の見当もつきます。
■管轄部署■
・小河川や水路の管轄
(山王川の上流側(久野川、坊所川)、名もないような水路)
小田原市役所5階 建設部 道水路整備課 河川係
TEL 0465-33-1548
FAX 0465-33-1565
do-kasen@city.odawara.kanagawa.jp
・大きな川の管轄
(酒匂川、山王川の下流側、早川、森戸川、中村川等)
神奈川県 県西土木事務所 小田原土木センター 河川砂防1課
TEL 0465-34-4141
FAX 0465-35-9247
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---投稿 伊豆川哲也 ----------
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あしがら冬みず田んぼの会長
おだわら環境志民ネットワーク理事。日本野鳥の会神奈川支部西湘ブロック会員。
小田原山盛りの会員。美しい久野里地里山協議会員。