蓄音機でジャズを聴く!

蓄音機とジャズを中心に、日々の出来事をつづる。

秋吉作品を聴く「トゥッティ・フルーティ」

2022-08-31 15:02:36 | ジャズ


秋吉さんのディスコメイト・レコードでの最後のリーダー作は、ピアノ・トリオにフルート・カルテットを加えたアルバムです。

トシコ=タバキン・ビッグ・バンドでは、リードセクションは皆フルート持ち替えでフルートアンサンブルを用いた曲も多いので、そこからの発想か、あるいは一人娘の満ちる嬢が当時フルートを学んでいたからなのか、いずれにしても珍しい編成です。

トリオは、気心の知れたバンド・メンバーのボブ・ボウマン(b)とジョーイ・バロン(drms)で、フルートの4人は当時17歳の満ちる嬢の他、いずれもクラシック畑で実績を積んでいる方たちです。

フルートはアンサンブル主体で、ソロもありますがおそらく譜面に書かれたものだと思います。

曲は、タバキン作の「フォーリング・ペタル」、ボサノバの「カーニバルの朝」の他は、秋吉さん作の4曲です。

タイトル曲の「トウッティ・フルーティ」は、のちにビッグバンド用にアレンジされて「ハッピー・ホッファー」と改題されて「テンガロン・シャッフル」に収録されます。

また、「青い夢(ブルー・ドリーム)」も同アルバムに、「シック・レディ」は1991年録音の同名アルバムで再演されます。

残りの1曲「ラスト・ミニット・ブルース」は、多分スタジオで即興的に作ったブルースナンバーです。

通常のピアノ・トリオではないですが、秋吉さんのソロはたっぷり聴けます。

ウエストコースト時代のトリオやコンボ作品を聴くことができるのは、ディスコメイト・レコードのおかげです。

ニューヨークに戻ってからは、日本クラウンの「ナインティ・ワン」レーベルが、バラエティーに富んだ作品を制作してくれました。

ディスコメイトとナインティ・ワンには感謝しなければなりません。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋吉作品を聴く「メモワール(ヨーロッパの思い出…戦争と平和)」

2022-08-26 15:34:45 | ジャズ


1982年9月録音の、トシコ=タバキン・ビッグ・バンドによる12作目のアルバムです。

この年の7月にヨーロッパのジャズ・フェスティバルを巡ったときの思い出を4曲に綴った作品です。

まず最初の「リメンバリング・バド」は、バド・パウエルがパリのクラブ・ブルーノートで演奏しているフィルムにインスパイアされたという曲です。

パウエルは、もちろん秋吉さんが最も影響を受けたピアニストですが、渡米後実際に本人と何度か会い励まされたそうです。

パリでも、パウエルファンの写真家(?)フランシス・ポードラの家で会っているようです。

続く「ミラノの饗宴」は、イタリア、ミラノでのコンサートの後でバンドメンバーと行った店でメンバーたちが大騒ぎしている様子が描かれています。

「リメンバリング・バド」、「ミラノの饗宴」ともに、後年何度かレコーディングされています。

3曲目は「リラクシング・アット・ツェーラムズェー」です。

「ツェーラムズェー(ツェル・アム・ゼー)はオーストリア、ザルツブルグ州の都市で、そこのホテルでコンサートの後に「ほっとくつろいで、何となくうつろになった感じを描いてみた」と語っておいでです。

(レコードでは)B面を占める「2つの顔」は2部構成の大曲で、前年にドイツのたくさんの町を巡った際に感じた、親切で思いやりのある人々の印象と第二次世界大戦でのナチス・ドイツとのギャップに、どの国民でも持っている二面性を気づき、この曲のテーマにした、ということです。

秋吉さんは、この作品を最後に1974年から8年間続けたバンドを解散し、ニューヨークに戻って新たなビッグバンドを結成することになります。

数々の栄誉を受けたウエストコースト時代の最後のアルバムです。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋吉作品を聴く:「ジャスト・ビ・バップ」

2022-08-12 16:39:19 | ジャズ


「ディスコメイト」における秋吉さんプロデュース作品で、今度はチャールス・マクファーソン(as)とスティーブン・ハフステッター(tp)をフロントに据えたクインテットで「ビ・バップ」をやろう、という趣向です。

ベースはおなじみのジーン・チェリコ(2曲のみ)とビッグバンドからボブ・ボウマン、ドラムスはロイ・マッカーディです。

ハフステッターは「トシコ・プレイズ・トシコ」に続いての抜擢ですが、今度は解説の油井正一さんが絶賛しています。

秋吉さんも、2作に起用するくらいですから評価されていたのでしょう。

「アイ・ソート・アバウト・ユー」は、彼のフリューゲルホーンをフィーチャーした演奏になっています。

マクファーソンは、秋吉さんとチャールス・ミンガス(b)のバンドで共演歴があり、秋吉さんは「彼のやることすべてが気に入っている」、「音色はチャーリー・パーカーにいちばん近い」とおっしゃっています。

私は、30年以上前に札幌で彼の演奏を聴いたことがあります。

客席はガラガラでなんとも寂しいコンサートでしたが、それでもそのあとでザナドゥ盤「ビューティフル!」を購入した覚えがありますから、気に入ったのでしょう。

「バット・ビューティフル」は、彼の美しいバラード・プレイが堪能できます。

他の曲は、フロントのふたりと秋吉さんのソロが楽しめる演奏で、J.J.ジョンソン作の「ケロ」、マイルス・デイヴィスの「コレクターズアイテムズ」でソニー・ロリンズとチャーリー・パーカーがテナーサックスで共演している「サーペンツ・トゥース」、ハフステッターのオリジナル曲「モビアウス・トリップ」、ディジー・ガレスピーの「コン・アルマ」、クリフォード・ブラウンの「ジョイ・スプリング」です。

ディスコメイト・レコードには、秋吉さんのトリオ作品が3枚、コンボ作品が3枚あります。

ピアニスト秋吉敏子のファンには、どれも欠くことのできないアルバムです。

1980年3月録音
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする