読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

そして日本経済の進むべき指針を示す、「日銀券(下)」(幸田真音著/新潮文庫)

2008-06-13 09:06:28 | 作家;幸田真音
プラザ合意(Plaza Accord)とは「1985年9月22日、アメリカ合衆国・ニューヨークの『プラザホテル』で行われたG5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議)により発表された、為替レートに関する合意。当時のアメリカ合衆国の対外不均衡解消を名目とした協調介入への合意である。対日貿易赤字の是正を狙い、円高ドル安政策を採るものであった。発表の翌日の1日(24時間)で、ドル円レートは1ドル235円から約20円下落した。1年後にはドルの価値はほぼ半減し120円台での取引が行われるようになった。歴史的な会議であったが、事前に内容は詰められており、会議自体の所要時間はわずか20分程度であった」。

前回表題にした「日本経済の現実が、この小説を追いかけた」というキャプションは、2004年10月に刊行された本作の中で決定された、この2005年6月13日の量的金融緩和政策の解除と、日本銀行が実際に下した2006年3月9日という日付で裏付けられます。

量的金融緩和政策とは、「日本銀行が2001年3月19日から2006年3月9日まで実施していた金融政策。金利の上げ下げではなく日本銀行の当座預金残高量の調節によって金融緩和を行うもので、量的緩和政策、量的緩和策とも呼ばれる」。

本書を巡っての榊原英資さんと幸田真音さんの対談、「今そこにある金融危機」に詳細があります。(http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/463304.html)

また、ここで登場する三上健一が、資金営業部・営業部長を務める日本短資という会社がありますが、一般の方々には馴染みが少ないのではないでしょうか?日本における短資会社の数は、1990年代には7社あったものの、現在は、上田八木短資、セントラル短資、東京短資の3社だそうです。この短資会社についも見ておきましょう。

短資会社とは、「金融機関相互間で資金の運用や決済を行う市場(銀行間取引市場)において、主として1年未満の短期的な資金の貸借やその媒介、各種短期金融商品の売買等を行うことを業とする会社のことをいう。コール市場などの短期金融市場は、証券取引所のような市場があるわけではないので、金融機関同士で条件が合致すれば取引は成立するが、短資会社を経由した方が取引が成立しやすい上に、取引金利も透明性が高いとされている」。

「法的には、『主としてコール資金の貸付け又はその貸借の媒介を業として行う者で金融庁長官の指定するもの』として、貸金業の規制等に関する法律の適用を除外されているが、その代わりに、1983年改正前の出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)の部分的な適用を受けることとなっており、監督当局への届出が必要となる」。


前回同様、ここでもモデル探しをしておきましょう。まず根岸貴道・財務大臣は、この人を措いていません。

谷垣禎一(たにがき さだかず、1945年3月7日 - )は、日本の弁護士、政治家。衆議院議員(9期)。郵政、防衛、大蔵各政務次官、科学技術庁長官(第58代)、金融再生委員会委員長(第3・4代)、国家公安委員会委員長(第68代)、産業再生機構担当大臣、食品安全担当大臣、財務大臣(第4・5・6・7・8代)を歴任。宏池会(谷垣派)会長を務めた。現在は自由民主党政務調査会長。文部大臣を務めた谷垣専一は父。

笙子と同じ歳で、駐日大使館での勤務経験を持つ、ニューヨーク連銀(Federal Reserve Bank of New York)総裁、ウィリアム・F・ターナーとして描かれているのは、おそらくウイリアム・マックダナウといいう人でしょう。ここではウィキペディアの英語版をそのまま引用しておきます。

William J. McDonough, vice chairman and special advisor to the chairman at Merrill Lynch & Co. Inc. is responsible for assisting senior management in the company's business development efforts with governments and financial institutions.

Previously, from 2003 to 2005, he was chairman of the Public Company Accounting Oversight Board, a private-sector, not-for-profit corporation created by the Sarbanes-Oxley Act of 2002 to oversee auditors of public companies.

From 1993 to 2003, Mr. McDonough served as president and chief executive officer of the Federal Reserve Bank of New York. As president, he served as the vice chairman and a permanent member of the Federal Open Market Committee (FOMC), which formulates U.S. monetary policy. Mr. McDonough also served on the board of directors of the Bank for International Settlements and chairman of the Basel Committee on Banking Supervision. He joined the New York Fed in 1992 as executive vice president, head of the bank's markets group and manager of the FOMC's open market operations.

Mr. McDonough retired from First Chicago Corporation and its bank, First National Bank of Chicago, in 1989 after a 22-year career there. He was vice chairman of the board and a director of the bank holding company from 1986 until his retirement. Before joining the New York Fed, Mr. McDonough served as an advisor to a variety of domestic and international organizations. Prior to his career with First Chicago, Mr. McDonough was with the U.S. State Department from 1961 to 1967 and the U.S. Navy from 1956 to 1961.

Mr. McDonough earned a master's degree in economics from Georgetown University in Washington, D.C., and a bachelor's degree, also in economics, from the College of the Holy Cross in Worcester, Massachusetts. He also served as an advisory board member for the Yale School of Management.

Mr. McDonough is a member of the board of directors of the New York Philharmonic Orchestra. Mr. McDonough is chairman of the Investment Committee for the United Nations Joint Staff Pension Fund, and is co-chairman of the United Nations Association of the United States of America. He is also a member of the influential Washington-based financial advisory body, the Group of Thirty.

本作で重要なキャスティングを占めるのが、日本銀行の政策委員会の審議員です。ここでその役割について触れておきます。

「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者等の中から、両議院の同意を得て、内閣が任命することとされており(任期5年)、日本銀行の常勤の役員として、総裁、副総裁(2名)とともに政策委員会を構成しています。政策委員会には、原則月2回開催され、金融政策について審議、決定を行う「金融政策決定会合」と、原則週2回定例的に開催され、金融政策以外の重要事項を審議する「通常会合」があり、両会合を合わせると平日はほぼ2日に1回の割合で、金融政策や日本銀行の業務運営等についての審議、決定を行っていることになります。審議委員は、また、講演や記者会見等を頻繁に行い、経済の現状にかかる委員自身の認識や金融政策についての考え方等を明らかにするよう努めています」。(日本銀行HP)

本作で唯一の女性審議員として登場するのが、、大学教授出身の宮崎遼子(56)審議員です。モデルとして考えられるのはこの人。

須田 美矢子(昭和23年 5月15日生)
出身地 山口県
昭和46. 6/東京大学教養学部卒業
  54. 3/東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得
  57. 4/専修大学経済学部助教授
  63. 4/専修大学経済学部教授
平成 2. 4/学習院大学経済学部教授
  13. 4. 1/日本銀行政策委員会審議委員
  18. 4. 1/  〃 (再任)

笙子が入会していた、国富論の思想によって開かれた「COA;チルドレン オブ アダム」は果して実在するのか?興味があるところですが、調べてみるとこんな記事がありまた。

「グラスゴー大学(The University of Glasgow)は、英国グラスゴーにある15世紀創立の世界的な名門大学であり、英語圏最古の大学の一つ。中世から高位聖職者を輩出し、近世以降は電力単位で知られるジェームズ・ワットや国富論のアダム・スミスなど歴史上の重要人物も多く輩出している。会員制の大学院生クラブを持つ」。

<本作で知る日銀、金融市場のこと>

短資会社の大黒柱、コール市場の仲介(P59)
量的緩和政策による潤沢な資金供給(P61)
原油のユーロ建て契約(P104)
インフレターゲットとインフレ参照値(P168)
時間軸の強化とその問題点(P169)
日銀のトラウマ(P160)
市場の時代(P194~195)
量的緩和政策と金利政策(P219)
橋本元首相の発言とその波紋(P231)
日銀オペの実際(P246)
ブラッドレー・レポート(P254)
日本国際が売られる理由(P261~P262)
国防長官と軍事産業の癒着(P274)
バートランド・ラッセルとアーノルド・トインビー(P278)
人民元の通貨バスケット政策~変動相場制(P284)
21世紀はアジアの世紀(P308~309)
この小説の革新(P293)
笙子が世界金融市場に投げかけたもの(P308~P309)
金利は真理(P306)

最後に、幸田作品を勝手に映画化するという妄想を。本作の主人公、芦川笙子(39)をどんな女優さんに演じさせたらいいか、いろいろ思い浮かべました。

中山美穂(本名: 辻美穂(旧姓: 中山)、1970年3月1日-)は、「所属事務所はビッグアップル。東京都小金井市出身。身長158cm。体重45kg。血液型O型。愛称は「ミポリン」。

夏川結衣(なつかわ ゆい、1968年6月1日 - )は、「熊本県出身。八代白百合学園高等学校卒業。1991年度ユニチカ水着キャンペーンガール。テアトル・ド・ポッシュ所属。趣味はテニス。 左利き(筆記と箸は右手で扱う)」。

飯島直子(1968年2月29日 - )は「神奈川県横浜市港北区出身。身長166cm。血液型A型。所属事務所はJVCエンタテインメント。1997年に前田亘輝と結婚、2001年に離婚。学歴:私立大東学園高等学校卒業」。

妄想した挙句、最終的に私が抜擢したのはこの人でした。

天海祐希(あまみ ゆうき、1967年8月8日 - )は、「本名、中野祐里(なかの ゆり)。 東京都台東区上野出身。宝塚歌劇団の元月組男役トップスター。血液型O型。身長173.6cm。体重48kg。研音所属。スリーサイズB83・W58・H88」。


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