Art & Life in Toronto

カナダ・トロントに住んで出会ったアートを紹介します

ホンマタカシ氏をめぐって

2015年02月09日 09時02分25秒 | 美術
今日は朝から雪、体感気温は-18度。こんな日は一日中部屋にこもり、昼からお酒でも飲んで思いを巡らすのが正しい過ごし方、と思いつつ、『Brutus』794号付録のホンマタカシ氏の「New Waves」のポスターを部屋に貼ったら、Gladstone Hotelで始まった展覧会「a lie about a lie; a truth about The truth」が急に気になり、出かけてしまった。
これは、イギリスの写真家で映像作家のTyrone Lebonによって制作された、30分のドキュメンタリー映像「Reely and Truly」と、それに登場する写真家の作品による小さな展覧会で、カナダ、デンマーク、インド、日本、韓国、タイ、イギリス、アメリカの作家の作品約30点で構成されている。日本の作家は、「Reely and Truly」には荒木経惟、ホンマタカシ、イマノフミコの3氏が登場し、展覧会にはホンマ氏2点、イマノ氏5点の作品が出品されている。本展全体のテーマは「写真は真実を表しているか」といったもので、ドキュメンタリー映像に登場するホンマ氏は、訥々とした英語で、それは自分にとって最も興味のあることであり、人は写真には真実が映っていると思っているが、写真は写真でしかない、と語る。イマノ氏は、自作の双子シリーズと、かぼちゃと共に撮るセルフ・ポートレイトについて語る。イマノ氏は初めて知った作家であったが、出品されているかぼちゃシリーズの1点、ベッドの上で裸でかぼちゃと共に写る一枚にはなぜか無性に心ひかれてしまった。
ところでホンマ氏と言えば、記憶は2000年の東京都現代美術館での「低温火傷」展に遡る。「低温火傷」という名付けの妙もあって印象に残るが、そこに出品されていたホンマ氏の作品にはなじめなかった。しかし15年を経て未だにそのときの違和感のようなものを覚えているということは、何らかのひっかかりがあったということなのだろう。以降、その印象を引きずって、ホンマ氏の仕事を追いかけてはいなかったが、昨年、モントリオールにあるカナダ建築センターでの、インドのチャンディーガルについての展覧会にホンマ氏の写真が出品されていたことや、アメリカのアーティストEdward Ruschaのアートブックへのオマージュのような活動があると知ったことで、最近関心を寄せている写真家の一人だ。写真家は文章が上手い、というのは以前から感じていたが、ホンマ氏についても例外ではない。『たのしい写真―よい子のための写真教室』で、「ニューカラー」がいかなる経緯で登場し、どのような特徴を持っているかが平易な文章でよく理解できた。
ホンマ氏とイマノ氏の共通点はロンドン滞在歴があることだ。カナダにいると、英語圏であればロンドン、仏語圏であればパリにつながる日本の作家とはつながることを実感する。日本の作家の作品ともっと海外で出会いたいものだ。ちなみに「a lie about a lie; a truth about The truth」は巡回展で、次はロンドンと東京で開催される予定とのこと。

a lie about a lie; a truth about The truth
(2/8/2015, Gladstone Hotel, 2nd Floor Gallery)


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1 コメント

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東京巡回楽しみです (下高井戸在住)
2015-02-11 01:36:43
興味深い展覧会ですね。東京はいつかな、と思い検索してたら、いまのふみこ氏の個展が近々に催されることを発見。2/17から、アート系本屋のユトレヒトです。動画などもあり、ちょっとビョークに似てる気がしたり。確認(できたら)してきます。次回のレポートも楽しみにしてます。

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