Art & Life in Toronto

カナダ・トロントに住んで出会ったアートを紹介します

トロントの小劇場

2015年02月16日 06時31分09秒 | カナダの芸術

今日は抜けるような青空。午前中の気温は-25度。体感気温は-30度に達するということでさすがにたじろいだが、何事も経験、と思って近所に買い物に出た。思ったほど寒くない、と一瞬思ったが、ちょっと息苦しくて咳が出る。顔が痛い。-30度ともなると、通常の「寒い」という感覚の延長線上にはないのだろう。オーロラが見えないのが不思議なくらいだ。

おとといの夜、ハーバーフロントセンターの「worldstage」の今シーズン1本目、「All Our Happy Days Are Stupid」を見た。この芝居は、2013年秋に、Jordan TannahillとErin Brubacherの演出で、Tannahillが運営するアートスペースVideofagで初演された。定員35名の小さな会場が連日満員になったという作品が、このたびハーバーフロントセンターのメインステージで再演された。原作はトロント出身・在住のSheila Hetiの『How Should a Person Be?』。北アメリカのある町からパリに旅行した2つの3人家族(父・母・娘と父・母・息子)が、偶然そこで出会い、息子が消えたり、母がカンヌに出奔したりする、不条理と人生の情緒を併せ持ったストーリー。一部の役者は際立つキャラクターで、もっと英語がわかったらもっと楽しめたであろう不条理な会話を繰り広げたり、独特の身体の動きで笑いをとるところが欽ちゃんのコントを彷彿とさせたりする。場面と場面の合間にはギターの弾き語り。エッフェル塔やパリの街並み、ホテルの家具などの背景と舞台装置は、白いボードに黒の輪郭線が描かれただけ、つまり白黒の平面的なもので、手作業で流れるように入れ替えが行われる。十数名の役者たちは、出番でないときは舞台の袖にいて、観客と同じように目の前の芝居を眺めている。日本でいつかどこかで見たような小劇場系芝居である。
演出したJordan Tannahillは弱冠26歳、劇作家・演出家の仕事で既に数々の賞を受賞している新進気鋭の作家で、映像作品も作り、元パートナーと共にケンジントンマーケット地区でVideofagを運営している。最近、フリーペーパー『NOW Magazine』の表紙を飾ったアーティスティックな(?)風貌からは、もっと尖がった作品を想像していたが、日本の小劇場系芝居と似たものを感じるとは、カナダ、トロントにおける芝居の新しさはそういうところにあるのだろうか。出演者の一部に素人を使ったりするのは日本とも共通する傾向かもしれない。ハーバーフロントセンターのworldstageはメジャーな舞台だが、トロントのアングラ劇場を巡ってみたいと思った夜であった。

All Our Happy Days Are Stupid
(2/13/2015, Harbourfront centre


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