10-1 米国における様々な事業形態
10-2 パートナーシップの定義とパートナーシップ法
・パートナーシップ partnership
・2人以上の者 two or more persons
2人以上の者は、自然人に限られず、会社、信託や他のパートナーシップ等も含まれる。
・営利を目的に business for profit
・事業を共有する co-ownership
・統一パートナーシップ法 Uniform Partnership Act; UPA
パートナーシップはいくつかの点でそのパートナーから独立した別個の主体とは認められていない
・修正統一パートナーシップ法 Revised Uniform Partnership Act; RUPA
パートナーシップは独立した別個の主体
10-3 パートナーシップの特徴
パートナーシップはその設立に際して原則として州への登録を必要としない
パートナーシップに関するパートナーの合意 partnership agreement は口頭でも書面でもよい
・信認関係 fiduciary relationship
・無限責任 unlimited liability
・存続期間 duration パートナーシップの存続は有限 limited duration と考えられている
・独立性 independence
・課税 taxation パートナーシップ自身は租税主体 taxable entity ではない
10-4 ゼネラル・パートナーシップとリミテッド・パートナーシップ
・ゼネラル・パートナ―シップ general partnership ; GPS
パートナー全員がゼネラルパートナーで構成される。
ゼネラルパートナーは経営に参加しパートナーシップの債務に対して無限責任を負う。
・リミテッド・パートナーシップ limeted partnership ; LPS
1人以上のゼネラルパートナーと1以上のリミテッドパ ートナーから構成される。
リミテッドパートナーは経営には参加せず、通常出資額を限度とした有限責任のパートナー。
10-5 パートナーシップの設立 formation
パートナーシップは当事者の合意 agreement により成立する。
・合意は口頭でも書面でもよい。
・明示的でも黙示的でもよい。
・1年を超えて継続することが明らかな場合には、詐欺防止法 statue of fraud により書面でなければならない。
パートナーシップの設立において州への登録 filing は原則不要。
10-6 パートナーの権利と義務
パートナーの権利、義務は一般にパートナーシップ合意 partnership agreement により定められる。口頭でも書面でもよい。
・パートナーの権利 partner's right
・パートナーシップ持分 partnership interest
パートナーシップの利益分配や、精算における出資額の返還を受ける権利
他のパートナーの同意なしに自由に譲渡 assign することができる。
・パートナーシップ財産 partnership property
パートナーシップが保有する全ての資産
各パートナーはパートナーシップ財産に対して同等の権利を有し、共同的権利は含有 joint tenancy となる。
原則として、他のパートナー全員の合意なく、単独で譲渡 assign することはできない。
・経営参加権利 right to participate in management
各パートナーはパートナーシップの経営に参加する権利を同等に有する。
他のパートナー全員の同意を得ない限り経営参加権を譲渡することはできない。
・損益の分配 share in profits or losses
パートナーシップの損益は以下のルールで分配される。
・別途パートナーシップ合意がなければ、損益は出資割合に関わらず等分に分配する。
・利益の分配割合について合意が存在し、損失の分配割合が未定の場合は、損失は利益の分配割合に従って分配される。
・利益の分配割合と損失の分配割合が異なる合意も可能。
・その他の権利
・パートナーシップの帳簿 partnership book を閲覧 inspect、調査 investigate、複写 copyすることができる。
・パートナーはパートナーシップの担保あるいは無担保債権者になることができる。また利子を受け取ることもできる。
・パートナーの義務 partner's duties
10-7 パートナーシップと第三者との関係
パートナーはパートナーシップの代理人であり、パートナーが第三者と締結した契約はパートナーシップを拘束 bond する。
・表見代理 apparent agency
・全パートナーの同意 unanimous consent が必要な事項 →表見代理が成立しない。
・新規パートナーの加入 admission of a new partner
・パートナーシップ財産の譲渡
・パートナーシップが保証人になること
・パートナーシップの債務を承認すること
・請求権や債務の可否について仲裁人にゆだねること
・パートナーシップの債務
・統一パートナーシップ法
・契約上の債務 →共同責任 joint liability (全員を訴える必要がある)
・不法行為の債務 →連帯責任 joint and several liability(誰かひとりを訴えればよい)
・修正統一パートナーシップ法
・全ての債務 →連帯責任 joint and severar liability
・新規加入パートナー及び脱退パートナーの責任
・新規加入パートナー
加入前の債務:有限責任、加入後の債務:無限責任
・脱退パートナー
脱退前の債務:無限責任、脱退後の債務:なし(ただし告知 notice が必要。表見代理により無限責任を負う可能性あり)
10-8 パートナーシップの終了
・パートナーシップ終了の第一段階 - 解散 dissolution
・パートナーの行為による解散
・パートナーシップ合意による存続期間の終了、特定の事業の終了
・パートナー間で解散を決めた場合
・パートナーの脱退 withdrawal (修正統一パートナーシップ法では、解散事由とならない。)
・法の適用 operation of law
・パートナーシップの事業が違法 illegal になった場合
・パートナーが破産 bankrupt した場合 (修正統一パートナーシップ法では、解散事由とならない。)
・パートナーが死亡 death した場合 (修正統一パートナーシップ法では、解散事由とならない。)
・裁判所の判決 decree of court
・パートナーシップ終了の第二段階 - 清算 liquidation
解散後、パートナーはパートナーシップを清算して終了するか、事業を継続するかを選択できる。
・パートナーシップ解散の第三者への告知 notice
10-9 リミテッド・パートナーシップ
・リミテッド・パートナーシップの設立
州務長官 secretary of state にリミテッド・パートナーシップ定款 certificate of limited partnership を登録 filing しなければならない
※ゼネラル・パートナーシップが合意だけでよいのと異なる
・リミテッド・パートナーシップの権利と義務 rights and duties
リミテッドパートナーは経営に参加する権利を持たない
以下は経営の参加に該当しない
・ゼネラルパートナーの業務上の相談にのること、助言すること
・パートナーシップ合意の変更を承認、あるいは反対すること
・リミテッド・パートナーシップの解散及び清算について投票すること
・借入について投票すること
・営業内容の変更について投票すること
・ゼネラルパートナーを解任 removal すること
・損益の分配
別途パートナーシップ合意がなければ、リミテッド・パートナーシップの損益は出資割合に基づいて分配される。
※ゼネラル・パートナーシップが等分になるのと異なる
・リミテッド・パートナーシップの解散 dissolution
ゼネラルパートナーの脱退、死亡、破産はリミテッド・パートナーシップの解散原因となる。
リミテッドパートナーの脱退、死亡、破産はリミテッド・パートナーシップの解散原因とはならない。
10-10 パートナーシップに類似した事業形態
・ジョイント・ベンチャー joint venture
ゼネラル・パートナーシップと塁維持している。
・有限責任パートナーシップ limited liability partnership; LLP
すべてのパートナーがリミテッドパートナー(有限責任)
・個人事業 sole proprietorship
10-11 会社の特徴
・会社の特徴及び利点
・独立した法的主体 separate legal entity
・有限責任 limited liability
・株式の自由譲渡性
・存在の永続性 perpetual existence パートナーシップの存続は有限 limited duration
・資金調達性の容易性 ease of financing
・経営の集中 cenralized management
・会社の不利な点
・課税 taxation 会社は株主から独立した租税主体 taxable entity。二重課税 double taxation
・費用 cost
10-12 会社の種類
・州内法人 domestic corporation と州外法人 foreign corporation
州外法人は、営業活動を行う州の州務長官 secretary of state に営業許可の登録を行い、手数料等を支払う必要がある。
・公開会社 publicity held corporation と閉鎖会社 closely held corporation
・適法に設立された会社 de jure corporation と事実上の会社 de facto corporation
・小規模会社 subchapter S corporation(普通の会社はC corporation)
会社自体は租税主体 taxable entity とみなされず、パートナーシップについての課税と同様に出資者である株主に会社の損益が割り当てられ、原則として株主の段階でのみ課税される。二重課税の不利益が排除される。
・内国法人 domestic corporation であること
・発行及び流通する株式の種類が1種類であること
・株主の数が原則として100人以下であること
・株主は個人または財団等(individuals,estates,certain trusts)であること
・株主は非居住の外国人 nonresident alien ではないこと
・専門職法人 professional corporation 医師、会計士、弁護士等の免許を有する専門家のみにより株式を所有されている会社
職業上の過誤による責任は無限責任、その他の債務については有限責任を負う。
10-13 会社の設立
会社は、基本定款 articles of incorporation / charter を設立州に登録することにより設立される
※ゼネラル・パートナーシップは合意のみで設立、リミテッド・パートナーシップはリミテッド・パートナーシップ定款の登録で設立。
・基本定款 articles of incorporation, chapterの登録 filing
・発起人 promoter
発起人は設立前の会社に対して(信認義務を有しているが)代理人 agent ではない
発起人と第三者が締結した契約
1.会社が採択 adoption しない場合 →発起人は債務 liability を負う。会社は拘束 bound されない。
2.会社が採択 adoption する場合 →発起人は債務 liability を負う。会社は拘束 bound される。
3.発起人の債務を免除する当事者代替契約 novation が結ばれた場合 →会社が債務 liablity を負う。
・設立総会 organizational meeting
付属定款 by-lawsの承認および取締役 directors の承認を行う。
・株式の引受 subscription
信用出資 executory promises は認められない
水割株 watered stock は認められない
10-14 会社の機能と責任
・会社の機能 corporate power
権能外の行為 ultra vires acts
→当初は無効とされていた。現在、多くの州で、権能外の行為であることを理由に責任を免れることは認められない。
・会社の責任
・契約責任 liability for contracts
・不法行為責任 liability for torts
・犯罪責任 liability for crimes
10-15 株式の分類
・授権株式 authorized stockと自己株式 treasury stock
・額面株式 par value stockと無額面株式 non-par value stock
・普通株式 common stockと優先株式 preferred stock
・累積型優先株式 cumulative preferred stock
・参加型優先株式 participating preferred stock
10-16 資本の構造と配当
・会社の資金調達
・登録債 registered bonds
・無記名債券、持参人払式債券 bearer bonds
・無担保債 debenture bonds
・有担保債、モーゲージ債 mortgage bonds
・任意繰上償還可能債券 redeemable bonds
・転換社債 convertible bonds
・会社の資本構造 capital structure
・資本金 stated capital
・純資産 net assets
・剰余金 surplus
・利益剰余金 earned surplus
・資本剰余金 capital surplus
・配当 diviends
10-17 株主総会
・株主総会における一般的な決議事項
・議決権 voting right
・累積投票 cumulative voting
・委任状 proxy,power of attorney
・定足数 quorum
10-18 株主の権利
・議決権 voting rights
・配当を受領する権利 right to receive dividends
・残余財産の分配請求権 right to receive distribution of assets on liquidation
・帳簿閲覧権 right to inspect books and records
・代表訴訟 derivative suit 提起権 →(会社の代わりに)取締役を訴える
・直接訴訟 direct suit 提起権 →会社を訴える
・増資新株優先購入権 preemptive rights
10-19 株主の責任
【原則】株主の責任は株式の引受価額を限度とする有限責任
・法人格否認の法理 piercing the corporate veil
・違法配当 illegal dividends
・支払株主の少数派株主に対する信認義務
10-20 取締役
・取締役の選任
・取締役の役割
・取締役の義務
取締役は株主及び会社に対して信認義務 fiduciary duty を負っている。
信認義務は、注意義務と忠実義務がある。
・注意義務 duty of care と経営判断不介入の法理 business judgement rule
誠実に行動した取締役は、その判断につき明白かつ重大な過失 gross negligence が無い限り、個人的な責任は負わないとする法理
・忠実義務 duty of loyality と利益相反 conflicts of interest
10-21 役員 officers
10-22 会社組織の重要な変更
株主総会と取締役会の承認が両方必要
・基本定款の変更 amendments of articles of incoporation
・会社資産の全部譲渡
・合併 merger
・解散 dissolution
・清算 liquidation
取得会社の株主総会の承認が不要
・株式交換 stock exchange
親会社、買付会社の取締役会の承認のみで実施可能
・親子会社間の合併
・公開買付 tender offer
10-23 有限責任会社 limited liability company
設立 損益の分配 存続期間
個人事業主 無し 無し 有限
ゼネラルパートナーシップ 合意のみ 原則等分 有限
リミテッドパートナーシップ 州への登録が必要 原則出資割合 有限
有限責任会社 州への登録が必要 原則出資割合 有限
会社 州への登録が必要 配当 無限