風の族の祝祭

詩歌の森のなかで、風に吹かれて、詩や短歌や俳句の世界に遊んでいたい。
著作権は石原明に所属します。

俳句 JANUARY 2012

2012-01-31 10:07:27 | 俳句
遅くなりましたが年末からの俳句です。

<居酒屋「S」にて二句>
 ママに
恋蝶の瑠璃の眼をてのひらに

 馴染の客に
子供染みていけずに転ぶレモンかな

<居酒屋「R」の金沢出身のマスターよりお歳暮を頂く>
ごりの佃煮おせちに足して加賀の春

淑気かな竜は自在に髯手入
寒月夜犬の鼓動に耳当てて
嘘さらさら電飾されし聖夜街
冬の波心離れし埠頭より
蟷螂枯る命の名残り斧二つ
薄氷を割りし清水を墓に掛け
トランペツトより苦しき気流降誕祭
耳だけが怪物くんで初鏡
木枯しや責め具のごとき車椅子
泥棒の名残す風呂や嫁が君

野遊の靴と靴下同じ泥
空耳や蚕鼓膜を齧りをり
龍天に登る童貞なら登る
額打つ霰しばしは生きめやも
冬晴や身は露の世に残しつつ
フラスコの尻より河童の尻子玉
ちいちいと小鬼も鳴けり虫の闇
空爆や脱皮に耐えし蝉の爪
枯蟷螂プレデターを威嚇せり
バフアリンをさらに三錠毛虫焼く

わだつみの底すべて墓かいやぐら
沈黙に音あり色あり陸奥の雪
聖夜かなもじもじ解く菓子の箱
北欧椅子尻より溶けし初デート
柚子湯へとゆっくり沈む不発弾
冬晴や諏訪に共鳴る火炎土器
明日と云ふ神の領分寒オリオン
春日大社より東大寺望む初鴉
初御空さくつと嘘をついてみる
櫛の歯の欠けたるごとき手毬歌

札束のやうに賀状を数へをり
鰐池に根に持つタイプの竜もをり
らちもなくカピバラ浸かる師走かな
青海苔や皓歯輝く初詣
七草や縁の薄き粥二椀
福袋隅に二三の四日かな
冬の川骨格として流れけり
うたかるたあひみての札とりそこね
元朝や障子の外を太平洋
元旦やたんたんと喰ふ坦々麺

あかねさす初日古今伝授の碑
寝正月猫見上ぐれば見下され
アドニスと呼んでてのひら福寿草
絶景やジオラマ走る初電車
日脚伸ぶ猫の手犬の手打揃へ
底冷や堂にひしめく千体仏
神の留守余命費やし昼寝かな
時雨るるやとつとつ灯る実南天
静電気回り始むる寒卵
寒晴や恐竜ずんずんずんずん来

初読は悲恋人獣交婚譚
山茶花や九九を唱へて一列に
聴診器の冷え肋骨に受けて咳
骨相を指でなでなで寒の月
蝋梅ぞゆかしと女将云ひつのり
アポカリプスの騎士か天狗か花篝
物物物あり原爆資料館
エリーゼのために娼館月光理
向日葵や祭櫓は組上がり
コメント
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