風の族の祝祭

詩歌の森のなかで、風に吹かれて、詩や短歌や俳句の世界に遊んでいたい。
著作権は石原明に所属します。

俳句 MARCH,2010 60句

2010-03-14 09:56:30 | 俳句
冬木立ひとつは残像暮れにけり
大道にゴスペル歌ふ初詣
海猫に東風の航路を尋ねけり
影が先に来世へ渡る春の風
春風や洗濯物は漕ぎいでな
花冷やテーブルクロスの目の粗き
春の夜地球儀から桃吹きこぼれ
猫の子の爪に大人と云ふ痒さ
若駒のはや病みゐしか水を飲む
馬の仔の何を見しとて瞳の濡れし

からたちの垣根泣き声練習曲
しろつめ草幸は変異でしかないか
いぬふぐり革命もかくあれよかし
花椿井戸の深きに音深し
鼻白むこと言ひて山菜ほろ苦し
夏蜜柑潮目のしるき相模灘
彼岸桜薄墨色の文字を書く
陽だまりの旧東海道の菫草
桃の花この一村と訪ねけり
豌豆の花二つ三つ露零す

白樺のすでに白木の神の業
傀儡女の指より蝶の夢に入る
花筏乗りてゆきたし地獄絵図
曼荼羅図掛けて無住寺桃の花
啓蟄を待てずに出でしタイムトンネル
春泥や底無沼の嵩の増す
水銀の池にも咲くや虞美人草
夜桜の一斉に擬態解きにけり
蝿を喰ふ蜥蜴は竜の貌となり
胎盤が颯爽と来る風光る

啓蟄や百鬼夜行の番を待つ
うららかや唇朱き鬼子母神
桃の花よもつひらさか展きをり
啓蟄や蛇体の神の身繕
血族の墓石冷たし遅桜
春の夜洗濯機には一反木綿
夜桜のサキイカを裂く狂気かな
陽炎や不意に出てくる蛇使い
黒猫の闇より桃花の闇に入る
流し雛目鼻は神に奉げたり

花菫少年の汗まで紫
神韻と桜を散らすダリの時計
陽炎や幾晩年のバウムクーヘン
陽炎や四次元行保育園バス
復活祭地底の蛇の大欠伸
涅槃西風継子いぢめの物語
桃の花狸担いで亡命す
自滅とはかくも脳死の寒鴉
桜吹雪乱数表は解けぬまま
磯巾着少年の脳を抱きしめむ

尼寺や開基の坐像梅古木
八重桜神の手妻を信じをり
花ミモザ夜空に霞む星明り
春愁や後ろめたさのぶーらぶら
風車地蔵の貌の目鼻痕
晩年や昏き桜花と目の疲れ
春霖の果てて御堂の嵌め殺し
少年の脳に入らずの森のあり
鳥雲にコンビナートの挽歌かな
釈迦仏も小用に行きたき余寒かな
コメント
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