今月の始めに、関東地方に旅行にでかけた。特別な旅だった。
東京の病院に入院している、大好きな叔母との旅。
10年前に脳こうそくを患って、右半身が動かない。言葉もうまく話せない。
そして数週間前、卵巣がんがみつかり、かなり大きくなっていることがわかった。血栓もあり、それがいつ心臓や脳に飛ぶかわからない、とも言われた。
今何かできることをしようと、皆で叔母と旅行に行くことにした。
東京から海が見える大磯まで、レンタカーを借りて出かける。
特別な時間だった。1分1分がとても大事に思えた。
普通に行けば1時間半のところが、やはり都会。車の数が本当に多くて、3時間もかかってしまった。叔母の身体にとっては、かなりの負担だったと思う。
しかし、本当に元気だった。笑顔だった。
話をする代わりに、叔母は歌をたくさん歌った。
"ベッサメ・ムーチョ"と歌うところを、”グッサメ・ムーチョ”と歌って、皆大笑い。
それから”グッサメ・ムーチョ”の大合唱が始まった。
叔母はみんなを笑わせた。逆にこちらが元気づけられた。
人間の力はすごいと思った。
病院に送った後、兄がめずらしく号泣していた。
運転している兄には、バックミラーで叔母の顔がよく見える。
最後の方は、ずっと兄を見て微笑んでいたようだった。
叔母にとって、この時間はどんなだったろう。
いつもお見舞いにいくと、隅の方でテレビをみている。
静かに、一人で。
病院の中で、車いすで過ごす毎日を繰り返す。
そんな中の一泊二日の旅。
年が明けたら、また皆で来ると約束した。
この旅から、叔母は食事を頑張って摂るようになったそうだ。
年が明けたら、また会いに行こうと思う。
YOU