以前はよく道化教室で、風船を使ったワークを行っていた。風船を渡され、「では遊んでください」と言われると、参加者が皆一様にそれを膨らまそうとする。そこで塚原さんから、膨らませるだけではなく、楽器にもなったり、伸ばして飛ばせるおもちゃになったりすることを教わる。遊び心が働くと、想像もしないようなものに変化するのだ。
さて、みなさんは“ストロー”と聞いて何を連想されるだろうか。コップ、ジュース・・・私はそんなところだ。しかし、先日お会いしたリコーダー奏者、神谷徹さん(ハンセン病治療に生涯を捧げた精神科医神谷美恵子先生のご次男)は、違った。ストローを楽器にして演奏するのだ。きっとストローでジュースか何かを飲んでいて、“これは楽器になる!”と発見されたのだろう。その演奏会が先日岡山の万成病院のひまわりサロンで行われた。神谷さんは、マスコミなどにも多数取り上げられ、国内だけでなくドイツ、イギリス、アメリカ、韓国、中国など、国際的にもこのストロー楽器の演奏で招かれ、活躍されていらっしゃる。そしてこのストロー楽器の音色、何とも美しい。それをユーモアたっぷりに演奏される。20個以上のお手製の楽器がテーブルの上に並べられていた。曲に合わせて楽器も色々。こいのぼりがついていたり、シャボン玉が出てきたり。また“私バカよねーおバカさんよねー”と演奏しながら、自分の頭の上でストローがくるくる回る。この回るストロー楽器を発明した時は、うれしくて夜中に家族の人達を起こしたそうだ。ご家族にとっては何とも迷惑な話だ。でも会場の人達は皆大笑い。私も本当に涙が出るほどおかしかった。でもだんだんと、その涙がおかしいだけではなくなってきた。寝る間も惜しんで制作に没頭する神谷さんが頭に浮かんだ。素晴らしい遊び心。そしてその遊び心が、こうして色々な人たちを本当に楽しませて、元気にしている。遊び心というのは、人を感動させるのだということを初めて知った。
「ぼくはねぇ。飽きないんですよぉ。」とてもチャーミングにそう言った神谷さんが、今も心に残っている。
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