医師であり作家である鎌田實氏のコラム。
パレスチナから来日した医師の
イゼルディン・アブエライシュさんが、
東京で開催された講演会でそう語った。
怒りは体に良くないと聞いていたが、
このタイトルにハッとした。
“病”なのだ。
以下その文章を挙げる。
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彼は、ガザ地区の難民キャンプで生まれた。
貧乏の中で苦労して医師になった。
医療は、長年、争い続けている
パレスチナとイスラエルの
懸け橋になると考えてきた。
しかし2009年1月、惨劇が起こる。
イスラエルがガザ地区を攻撃。
戦車が彼の自宅前まで迫り、砲撃した。
彼の目の前で、3人の娘と
一人の姪が絶命した。
彼は電気の消えた暗闇の中で、
娘たちの遺体を抱きしめながら、
絶叫した。
「なんてことだ。
神様、どうなっているんだ。」
こんな残酷な目に遭わせた敵ならば、
憎んで当然だろうとだれもが思う。
だが、彼は違った。
憎まない生き方を選んだのだ。
中略
ぼくはイゼルディンさんに聞いた。
なぜ、あなたは憎まない生き方を
選んだのですか。
すると彼はこう答えた。
「憎しみや暴力は、病です。
どこかで誰かが憎しみ合いを絶たなければ、
身を滅ぼしてしまう。」
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家族を
目の前で殺された怒りは、
どれほどだろう。
自分の腕の中で、
息絶える姿をみる悲しみは・・・
それでもイゼルディンさんは、
憎まない生き方を選んだのだ。
「憎しみは、身を滅ぼす病」だから。
怒り憎しみという感情を
洗い流して生きたい。
人間の心の可能性に
勇気をくれるコラムだった。
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