「レニサン。おわん取りに来ました」
エネリアがそう言うとおかゆと薬のからを載せた盆を手に取る。
「それではこれから私買い物にいってきますので。」
そしてエネリアはお大事にと一言言うと静かに部屋から出て行った。
そう、ボクは病気になってしまったのである。
最近ニュースでもよく取り上げられ死者が出たりなんかもしているあの病気だ。
どうしてこんな変な名前なんだろうと思ってしまうようなあの病気だ。
そして隔離しないといけないようなあの病気だ。
あえて名前は出さないが。
どうやら新型のあの病気は下痢や嘔吐なんかの症状もあるらしいが僕は比較的軽いようでそういう症状はなかった。
だけど食欲はあまりなく頭が痛いしのども痛いし、鼻水は止まらないし、くしゃみやせきは出るし、もう最悪だ。
僕は無事この病気を治すことができるのだろうか。
僕は布団の中にもぐりこみながら考えた。
もし僕が死んだらどうなるのかな?
今僕が店の社長だから次の社長は誰になるんだろう?
チャップかな?
いや、チャップは社長って器じゃないしな。
チャップなんかに店を任せたら瞬く間に赤字になってつぶれちゃうだろう。
それじゃぁメイ?
でもメイは人と話すのが苦手だからなぁ。
接客ができなきゃこの商売やってけないよ。
じゃぁ接客ができるといえばアレスタ?
でもあいつはすぐ情にほだされるからなぁ。
依頼内容に怒って客を追い返したり、はたまた感動的な話だったら無償で依頼を引き受けかねない。
じゃぁフェイク?
いやいや、あいつ幽霊だし、風吹いたらすっ飛ぶし、論外論外。
残るはエネリアか・・・。
でもエネリアはまだここに来て日が浅いからなぁ。
まだ知らないことも多いだろうし・・・。
でも第1候補はエネリアだ。
次期社長は彼女しかいない!
そうして僕が寝返りをうったところだった。
かたりと微妙に僕の隔離されている部屋のふすまが動いた。
ここは普段使っていない4階を急遽掃除して作った部屋。
ここに何か用があるヤツはいないはず。
そう考えているとまたかたっとふすまが動き、少し隙間ができた。
だがその隙間から相手の姿をうかがうことはまだできない。
誰だろう?
もしかして僕の知らない人物がどうにかしてここに進入してきたのだろうか?
う、なんかそう考えるとちょっと怖いぞ。
僕はじっとふすまを見つめた。
また、かたりと動く。
僕に用があるのだろうか?
でも用があるなら声をかけるのが筋だろう。
またもふすまが動く。
でも相手の姿は見えない。
僕はだんだんいらいらしてきた。
用があるならさっさとしろよ!
僕は体力が低下しているから少し気が引けたけど、布団から起き上がり能力を使って一気にふすまを開けた。
「!!!」
驚いて飛び上がったそいつは紛れもなくチャップ。
「あぁ?」
僕は思わずヤンキーのような声を出す。
なんだチャップのヤローこそこそと!
何たくらんでたんだ!
僕がにらみつけていると、チャップは少しもじもじしたあと僕の顔を指差した。
何?僕がいないと寂しいって?
だからって隔離されてるとこにくんなよな♪
僕が少しにやつくとチャップは顔の前で手を振った。
うん?僕の考えていることはチャップの考えていることと違うと?
じゃぁなんだよ!
チャップは僕の顔を指差す手はそのままにもう片方の手で自分の口元を押さえた。
口元?
僕も自分の口元に手をやる。
・・・マスク?
うんうんとうなずくチャップ。
何、コイツ。
わざわざマスクがほしいがために感染のリスクを犯してまでここに来たの?
ばかじゃねーのか。
僕はとりあえず病気が移ったらまずいので新品の封を開けていないマスクをチャップの顔に投げつけて、ぴしゃりとふすまを閉じた。
そしてふすまの向こうではどたどたと去っていく足音が聞こえる。
かなり浮かれた足音だ。
そんなにマスクっていいものか?
息苦しくて邪魔で湿気て気持ち悪いけどな。
僕は複雑な気分になりながらももう一度布団にもぐりこんだ。
ちょっと疲れた、もう寝よう。
そしてしばらくたち僕がうとうとしかけてきたときだった。
またもふすまがカタカタいい始める。
またチャップか。
さっきと同じ手口とはコイツなめとんのか!
僕はまたむくりと起き上がると一気にふすまを開けた。
そしてビクッと驚いたのはチャップではなく、メイだった。
僕はあっけに取られる。
まさかメイもマスク族?
僕が口元を抑えるとメイはプルプルと首を振り僕の後ろを指差した。
そこには僕が暇つぶしに持ってきた漫画本数冊。
そういえばテキトーに持ってきたから何冊か見慣れないのがあったっけ。
あれってメイのだったのか。
僕は悪いと思いながら本をメイに向かって飛ばした。
こういうとき僕の能力って便利だ。
動かなくていいもの。
メイは漫画を受け取りうれしそうな顔をすると静かにふすまを閉め、去っていった。
ふぅ、これで特に部屋には面白いものはない、マスクもさっきチャップに上げたので全部。
これで誰も来ないだろう。
そう考えてうとうとし始めたときだった。
またもふすまの前に誰か来た。
今度はふすまカタカタはなかったけれど、そいつはわざとらしく部屋の前でくしゃみを連発する。
なんだ、コイツは。
何が望みだ。
や、誰かはもう分かっている。
ケド、相手したくない。
でも時間を空ければ空けるほどくしゃみはひどくなっていく。
なんか明らかに今のくしゃみじゃないだろみたいな声も混ざり、鼻をすするわざとらしい音も。
このままじゃうるさくて眠れないので仕方なく僕はふすまを開けた。
ふすまの前にいたのは案の定アレスタ。
僕は迷惑そうな顔をしているのに対し、アレスタはパッと表情を明るくする。
そしてアレスタはどこからか紙を取り出し僕に見せた。
“ティッシュくれ”と書かれている。
そう僕の後ろにはティッシュの山があった。
何かとティッシュは必要だろうということで、この建物内にあった新品ティッシュをほぼ総動員していたんだ。
たぶん下に残っていたティッシュがきれたんだろう。
エネリアは今買い物に行っていないし、まぁこの判断は納得できるかな。
僕は仕方なく新品ティッシュをわたした。
アレスタは“お大事に”とかかれた紙を見せ去って行く。
僕はふすまを閉めもう一度横になった。
さすがにもう誰も来ないだろう。
あと僕の部屋にあるのは布団と使いかけティッシュ(ばい菌付きと思われる)とゴミ袋のみ。
ゴミ袋の中もばい菌だらけ。
こんなものをほしがる人はいない。
これでやっと眠れる。
僕はそう思い目をつむった。
そしてしばらく後、もう聞きなれたカタカタ音が耳に届いた。
いい加減にしろよとふすまをみるとふすまに開いた小さな隙間からもやのようなものが入ってくるのが見えた。
まさか、おい、やめろよ!
僕は顔を青くして固まった。
僕は耳をふさぎ口を閉じたが抵抗むなしく、もやが耳に入っていく。
すると頭の中に声が響いた。
“レニ、俺には今大いなる災厄から逃れるために病気の体が必要だ。すまん、今度ジュースおごってやる。”
ジュースくらいじゃいやだと思ったか思わないかのうちにすぐ近くから僕に入り込もうとするやつの名を呼ぶ声が。
そして開くふすま。
その後ふすまの先にいたメイの口から聞こえたのは“仕事の場所”。
そしてその場所は今台風が近づいてきている場所の名だった。
:
「レ・・・サ・・・。レニサ・・・。・・・レニサン!!」
はっと目を開けるとそこには僕の顔を覗くエネリアの顔。
「あ、やっと起きてくれましたか。もうすっかりよくなりましたね!」
僕は何がなんだか分からないけどとりあえずエネリアに日にちを聞いた。
エネリアの口から返ってきた日付は僕が隔離されて3日後。
・・・そんなに長い間僕の意識は飛んでいたのか。
そしてエネリアは背後から何か取り出し、僕に差し出した。
「差し入れの手作りバナナジュースです。」
去っていくエネリア。
「そーいやあいつって意外と料理できたよな。」
そうつぶやいて飲んだジュースは認めたくないけど、うまかった。
あとがき
またも、よう分からんものを書いてしまった。
キャラを理解している人じゃないと最後らへんは何のことやら分からないぞ!
まぁ、あの、よく分からないというかたはこれから
キャラ紹介見るなり、便利屋サイコの本編の方を見るなりしたってください。
それからあの病気といっていますが、必ずしも皆さんが思い浮かべるであろうあの病気とは限りませんよ。
書いてある症状が間違っていたとしてもあの病気はどの病気か書いてないんだから責任は持ちませんよ。
まぁそんなこと誰も気にしないでしょうけど。
まぁなんにせよ病気には気をつけましょう。
そして、隔離されている部屋には必要な看病をするとき以外近づかないようにしましょう。
怒られま・・・いやいや、うつったら大変ですからね!