木・うんちく

木材と人間の関わりを考えて思うままに・・・

266.全く腐っていない43年前の木製フェンス

2023-09-15 09:54:45 | ウッドデッキ


これは43年前に弊社が施工した住宅のフェンス部材です。
この材を下200mmは地面に埋めてフェンスにしていたのですが、一部壊れたので外してきました。
木自体は地面に埋まっていた部分も含めてどこも全く腐っていません。
壊れた理由は一緒に写っているメッキボルトが腐食してちぎれてしまったからです。



これが現場で実際に設置されている状況です(木材にとってはかなり過酷な環境と言えます)。


これを製作した43年前はCCAと言う安全で強力な加圧注入防腐処理薬剤があったので、
この薬剤で処理すると信じられないぐらい耐久性がありました。
色が緑色なのは薬剤の主成分の銅の発色ですが、これが43年経過しても色を保っていると言うことは
薬剤が流脱していないと言うことになり、薬剤が流脱しないので耐久性が保たれると言うことになります。

この薬剤はJASの規格にありますし使用するのは全く問題はないものの、今は防腐処理工場では使ってはいません。
理由はこの薬剤は木に定着している間は世界で一番安全と言われているのですが、
燃やすと六価クロムとヒ素が出ますので、廃棄時は燃やさずに埋める必要があるから・・・だと言われていますが、
実際の理由は、工場処理する時に薬剤を外部に流していはいけないと言う法律ができたので(当たり前ですが)、
そのコストのアップを嫌って、この薬剤の使用をやめたのだと処理工場の担当者から聞いたことがあります。

アメリカやカナダであれば、発注者も施工者も設計者も木材知識があるので、場所に応じて、
この薬剤は今でも使われているのですが、日本の場合は、アメリカやカナダでは当たり前の木材知識は誰も持っておらず、
木材や木材の代りに使う人工木材も間違えた使い方をよくされています。

日本とアメリカ・カナダを比較した時に、木材に対する知識の差がかなり大きく、その根本の原因は
大学の工学部建築学科には、木材の講座がなく、
設計士の方も施工の方も正しい木材知識を得る機会がないからではないかと思います。
結果、木材の使い方を間違えて失敗されたり、その反動で、木材は使わない方向に行く傾向があります。
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265.川崎市の小学校プールの水締め忘れ事件と我が社のトラブル報告

2023-09-11 16:13:41 | ウッドデッキ
川崎市の小学校のプールで水の栓を締め忘れたために190万円の損害が出て、
それを校長と締め忘れた先生の二人で半額の95万円を自腹で負担すると言うことが話題になっています。

弊社もメーカーで、さらに別注も多く手掛けるので、注意はしていても、間違いの発生は皆無ではありません。
間違いが発生した時には関係者が社員と役員全員にクレーム報告のメールを流すルールになっています。
これはトラブルの金額の大小は関係なく、お客様からのクレームなり、間違いの指摘があれば、必ず全員に同時にメールを送るようになっています。
記載するルールは、事実をそのまま記載することと、トラブルに関係した者の名前は上司であろうと役員であろうと遠慮せずに実名で書くことが基本となっています(そうしないと本当の原因が分かりません)。
また、トラブルの発生の直接的な原因と、それを引き起こした根本的な原因の二つを書くようになっています。
しかし、若い社員が書いたメールでは、直接的な原因は書けますが、根本的な原因は分からないことが多いので、原因分析が間違えていると思う場合は、その報告メールを見た社員が、補足の説明メールを流すようにしています。

さて、話は戻って、今回のプールの栓を締め忘れたことについて、ネットの情報を元に弊社の中でトラブル報告が廻るとすると次のようになります。

■発生日時:2023/05/17
■トラブル内容:A教諭がプールに注水して、その後、注水を止めたつもりが、電源スイッチが切られていたため注水が止まらなくなって、5日後にB用務員が気づくまで水が垂れ流し状態になった。
A教諭がプールに注水のスイッチを入れた時に、ろ過装置のスイッチも間違えて入れてしまい。そのために非常ベルが鳴った。その非常ベルを止めるために電源スイッチをオフにした。注水が完了してから、注水のスイッチをオフにしたが、この時に電源スイッチがオフになっていたため注水スイッチそのものが有効になっておらず、注水が解除されないままになってしまった。
■損害金額予想:約190万円
■直接的な原因:A教諭が水を止めた時に、電源スイッチを切っていたら、注水を止めることができないと言う知識がなかったこと。
■根本的な原因:注水時のマニュアルがないこと。ブール管理者に対する作業教育がされていないこと。電源スイッチが切れていると、注水はされるのに、水を止めることはできないと言う装置設計そのものに問題があること。
注水を始める・止めると言う作業について、他の者が確認する2重チェックのシステムが作られていないこと。
■今後の対策:作業マニュアルを教育委員会が中心になって作成すること。川崎市建設部は電源スイッチがオフになっていると、止水ができないと言うシステムの変更を検討すること。
注水・止水について、別の者が正しく作動しているかを確認する2重チェックシステムを各校長が指導して構築すること。

これが弊社の場合に同じことが発生した場合のトラブル報告書になります。
我が社の場合、トラブルやクレームが起きた時に一番重要視されるのは直接的な原因ではなく、根本的な原因です(そうでないと同じ間違いが何度も発生することになります)。
そうすると、今回の場合、最も責任があると判断するのは、マニュアルや2重チェック体制を何ら指導していなかった教育委員会と、この電源スイッチが切られると止水が効かなくて水が出したままになると言う欠陥システムの設計を承認した川崎市建設部と言うことになります。

私が不思議なのは、今回のように直接的な原因も根本的な原因も明確になっていることについて、すべての責任を現場に押し付けて、根本的な原因も究明せず、またその解決策も考えようとしないことです。
まともな民間の会社であれば考えられないことです。
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264.ベンチを作る

2023-09-01 14:22:45 | ウッドデッキ
神社からベンチ製作の依頼がきました。
通常このようなベンチは、公園施設メーカーが出しているカタログから選ばれることが多いのですが、官公庁向けは価格が高い上に、どうも神社の雰囲気に合わない。
と言うことで弊社に注文がきたのですが・・・ご希望の台数が2台。



製作台数が5台ぐらいあれば、金属で構造を作る方が組み立ても楽なのですが、
数量が1台や2台であれば、木で作る方が融通がききます。

神社の中で設置するのであれば、耐久年数は30年~50年は必要です。
価格も施設メーカーの既製品以下にしなければならないと言うことになると、
ここはウリン(アンアンウッド)で作るのがベストと言うことになりました。

しかしウリンで作ると欠点があります。
このベンチの重量を計算すると70kgぐらいあります。
設置場所にクレーン付きのユニック車で運ぶことができるかどうか確認しましたが、設置場所は池の前のパーゴラの下で、クレーンで降ろすことはできない。
かくて2分割にして、現地で最終組み立てをする構造にしました。



手荒な扱いをされても壊れないヘビーデューティな構造にしています。
ネットで販売すれば売れるかもしれませんが、
これだけ重いと宅配便では送ることができません。

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263.液体ガラス

2023-09-01 12:57:03 | ウッドデッキ
木材を不燃や難燃にするには、ホウ酸を加圧注入する方法がありますが、
欠点もあり、あまり使われていないのが実状です。

それが、「液体ガラス」と言う特別な液体を塗布したり浸漬したりすると、木材が燃えない、腐らないようになる画期的な商品ができた。
・・・とテレビ番組で何度も取り上げられたことがあります。

私も、これが使えるものであるかどうかを確認するために、何年か前にその講習会に参加したことがありますが、
言葉巧みに、燃えない・腐らないと説明はされるものの、法的に不燃であるとか難燃であるとかは言わないようにされていて、
耐久性の一番の目安であるJISの腐朽促進試験もされたことはなく、講習会の内容ははなはだ怪しげなものでしたので、会社としてその「液体ガラス」は使えないと言う判断となりました。

しかし2年前に、この液体ガラスの代理店になったと言う会社が売込みにきました。
私は、この液体ガラスは怪しい商品としか思えないが、屋外用の塗料としてならテストをしてみる値打ちはあるかもしれない。
と説明をしたら、その代理店は、こちらで渡したサンプルに液体ガラスで塗装してきてくれましたので、それを屋外暴露試験をしてみました。
液体ガラスを塗装した状態・無処理のままの状態・屋外用の木材保護塗料を塗布した状態と言うことが試験をしましたが、
結果は、液体ガラスは屋外用木材保護塗料としては有効とは全く思えないと言うのがその結論でした。
その結論が出た頃に、塗装サンプルを作った代理店がまたやってきて、このように私に言いました。

「おっしゃっておられたこの液体ガラスと言うのは怪しい商品ではないかと言うことについて、その後色々試験をしましたが、弊社でも同じ結論となりました。
そのためこの液体ガラスの代理店をやめることにしました。試験までして頂いたので、お詫びかたがたそのご報告に参りました。」

しかし、マスコミもこのような法的な裏付けのない商品をよく本気で取り上げたなぁと感心します。

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262.アマゾンジャラ(マニルカラ)とウリンとイペではどちらが耐久性があるか

2023-06-29 12:35:58 | ウッドデッキ
屋外設置のデッキ材として最も耐久性があると言われているのはウリン材です。
以前はイペが上と思われていましたが、今はウリンの方が耐久性があると言う認識が一般的です。
JISの腐朽促進試験の結果はウリンがベストでしたし、実際に地面に埋めた試験でもそうでした。
しかしデッキ材として使われる他のの材アマゾンジャラ(マニルカラ)と比較するとどうなんだろう。

と言うことで、14年前に、弊社の役員の家の庭に敷石として設置したウリンと6年前に設置したアマゾンジャラを掘り出して確認をしてみました。
どちらも毎日、水をかけて半分地面に埋まっていますので、木材としては最も過酷な環境に置かれています。



6年前に掘り出した時は、同じ時期に埋めたウリンとイペとの比較では圧倒的にウリンの勝ちと言う結果が出ましたが
その時に腐朽したイペ材はすべて廃棄し、代りにアマゾンジャラ材を埋めておきました。
それから6年経過して、14年経過したウリンと6年経過したアマゾンジャラを比較したのがこれです。
左の薄いグレーがアマゾンジャラで、右の濃いグレーがウリンです。
地表に出ている表は両者とも問題ありません。



ひっくり返すと、ウリンは14年しても何ともありませんが、アマゾンジャラの方は6年で少し腐朽が進んでいます。



グレーになると材種が識別できなくなるので、カットして木口面で確認しましたが、このとおりです。

今回のことと、6年前にウリンとイベの材を外した時とから分かることは
■ウリンはやはり耐久性が一番であること
■アマゾンジャラとイペの比較では、地面に埋めた結果ではアマゾンジャラの方が耐久性があるようだ。

・・これまで何となく、イペの方がアマゾンジャラよりも耐久性があると思っていましたが、(価格が一番高いのでそれなりの値打ちがあるのかと思っていた先入観があります)
実際の試験を見ると直接対決ではないものの、間接的な比較で言うとアマゾンジャラの方がイペよりも耐久性があるようです。

念のために、保管されている14年前にJISの腐朽促進試験を研究機関に出した時の試験結果報告書を確認しました。
その腐朽促進試験の結果は次のとおりでした。
■ウリンの耐久性は他の屋外用木材と比較してもベストであること(人工木材よりも上でした)
■アマゾンジャラとイベと比較すると、2種類の腐朽菌の内、1方はアマゾンジャラが上で、もう一方の菌はイペの方が上と言う結果でした。
つまり、設置場所や状況によって、イペとアマゾンジャラではどちらが上とは何とも言えないと言うところです。

以上の結果からお客様へのお勧めは、やはりウリン材となり、
イペかアマゾンジャラとの比較であれば、耐久性的にはどちらも同等だが、
イペの方が価格がかなり高いので、イペを使う理由があまりないと言うところです。


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