フランシスコの花束

 詩・韻文(短歌、俳句)

思い出の不条理

2016-11-26 09:15:13 | POEMS(詩)

 思い出の不条理

思い出の中の思い出に
心が包まれるとき
思い出は優しさに崩れて
どろどろの鼻水を顔一杯に
ぶちまけるかもしれぬ

記憶が堆く積まれた そこには
木炭のような
ざらざらした暗さ
チャコールグレイの 渋さ
その明から暗へのグラデーション
暗がりの明滅が心を
傷ませる か弱いバランス
ほの明るい幸福が掠める
思い出のひらめき だが
真に思い出らしい思い出は
そこにはかけらもない

だから過去というものを
誰も信じはしない
思い出が過去と束ねられるとき
思い出の情感は形を失い
色彩をとどめない


希望を持て

2016-11-26 09:04:55 | POEMS(詩)

  希望を持て

女を 玩具扱い
男を  独裁者扱いして
地球のどこかで
充足している
歪んだ価値
ひずんだ独占
それは帝国主義の塗り替え
資本主義の果ての
グローバリズム
新しい国粋主義の連合
女はますます権利を増長させ
男はいよいよ我欲の強制に走る
すれ違う思惑
行き違う共感
幸福は共有されず
光は常に散乱して
どこにも収斂しない


現世の神

2016-11-26 03:52:27 | POEMS(詩)

  現世の神

真実を遠ざける場所
ただ一人 そこに佇立して
茫然と見つめる現世の様
虚偽の束を引き寄せて
何食わぬ顔して多数の善意を
むさぼり食う悪鬼の群れ
朝から晩までむしゃむしゃ
少しもおいしくはないのに
囲われた不実の中で
偽の美のゆりかごの中で
口を顎を動かし続ける
「まずい まずい」とぼやきながら
淡々と咀嚼する
まるで真っ黒なありの王
ああ 我らの知らない神は
鋭く深い虚実の狭間に
世界を落とし込むばかり