第1話「ヨコハマ・センセーション」(1984年4月17日)
そう言えば、管理人が70~80年代のドラマの面白さに気付くきっかけとなった大映ドラマの代表作「不良少女とよばれて」について、まとまったレビューをしていないことに気付いたので、早速始める。
「不良少女~」は、民間舞楽で活躍された原笙子さんの同名の自伝的小説を元に作られたドラマである。
OPで、衣装を着けて踊っているのが、その原さんである。
なお、ドラマを見た原さん、「こんなことやってない……」とつぶやかれたそうです。

ドラマは、横浜の公園の噴水の前で、主人公である久樹哲也(国広富之)と、婚約者の葉山恭子(岡田奈々)が、共通の友人である男谷弁護士と会っているシーンから始まる。二人は婚約披露パーティーの司会を男谷に頼みに来たのだ。
プリケツ男谷こと男谷を演じるのは、管理人のお気に入り、宮崎達也さん。
照れながらも、男谷は司会を引き受ける。
恭子「男谷さんも、早く良い人見付けたらどうですか」
男谷「いやぁ、俺は哲也と違ってモテんからなぁ」
実際、我々はこの後、哲也の恐るべきモテモテパワーを何度も目の当たりにすることになる。
と、同時に、男谷の恐るべき非モテパワーもイヤと言うほど知らされることになる。
港を出る船の汽笛が遠く聞こえる。
男谷と別れ、海に続く階段を降りていた二人の目に、

派手な服装をした若者たちの姿が映る。
左右に並ぶ仲間たちから祝福されながら、一番奥に立っている一人の女性に向かって歩く4人の女の子。

その女性こそ、哲也にとって運命の人となる曽我笙子(伊藤麻衣子)その人であった。

恭子「何かしら?」
哲也「さぁ」
恭子「何処かの学校でお誕生日パーティーやってるんじゃない?」
まさかその女性に自分の婚約者を奪われるとも知らず、暢気な推測を口にする恭子さん。
笙子は、ひとりひとり名前を呼んで、「お誕生日おめでとう」と、花束を渡す。
4人が涙ぐんで喜んでいると、けたたましい音を鳴らして暴走族風のバイクが数台突っ込んでくる。
バイクは逃げ惑う若者たちを追いかけ、4人が思わず落とした花束を無残に轢き潰してしまう。
八千代「東京流星会のチンピラだっ」
笙子の部下のひとり、八千代を演じているのが、後に「セーラー服反逆同盟」でルリを演じる山本理沙さん。
笙子たちは近くに隠していた木刀などの武器を取り出し、すぐに反撃に出て、バイクの男たちに激しい暴行を加える。
笙子「バカヤロー、この子達はね、ただの一度だって誕生日を祝って貰ったことのない子なんだよ!」
網タイツの太腿もあらわに、執拗に木刀を振り下ろす笙子。
生々しい暴力の現場に思わず顔を背ける恭子だったが、哲也は、笙子の頬をとめどなく涙が流れているのを見逃さなかった。

OP後、男谷の司会で、久樹家と葉山家の婚約披露パーティーがホテルの一室で華やかに行なわれている。席には、レギュラーであるそれぞれの両親の顔も見えるが、今回は自己紹介程度。
葉山家は舞楽の名門で、哲也も楽人として、役所に勤めているのだ。
哲也の吹く笙で、舞のたしなみのある恭子が衣装を着けて客の前でデモンストレーション的にみやびな踊りを披露する。

そんな優雅な世界とはあまりに対照的な笙子たちの姿が、偶然、同じホテルにあった。彼らは東京流星会のメンバーが隠れている部屋に、殴りこみをかけに来たのだ。
だが、笙子はその音楽を聞くと、部下に襲撃を任せて、ひとりパーティー会場へ向かう。
笙子が扉を開けると、たまたますぐ目の前の席が空いていた。笙子は迷わずそこに座り、哲也たちを凝視する。
哲也もすぐ、その存在に気付く。
舞楽の後、男谷が「自己紹介をお願いします。そちらのテーブルから」と、たまたま笙子の座ったテーブルから指名する。
笙子は立ち上がるものの、一言も喋らず、手にした花束の花を毟り、最後は花束を哲也の足元に放り投げる。
そして哲也を睨み付けて外へ出て行く。
同じ頃、笙子の部下たちは東京流星会のメンバーをボコボコにして風のように去っていた。

哲也の笙や、恭子の舞を見て思い出したのか、笙子は久しぶりに実家の神社を訪れる。
父親・聖一郎(山本学)が、舞台でラジカセのBGMで舞楽の稽古をしていた。
笙子、いきなりラジカセを蹴飛ばす。
聖「笙子、帰ってきたのか。お父さん、待ってたんだよ」
笙子「相変わらずね、お父さん、たまにはお金になる仕事に精を出したらどうなの?」
聖「それは分かっているけどね、お父さん、働くのが死ぬほど嫌いなんだっ!!!」
笙子「……」
じゃなくて、
聖「それは分かっているけどね、神主と言うのはね、お金を儲ける仕事じゃないんだよ」

笙子は母屋に上がると、勝手にタンスなどを物色して、金目のものを持ち出そうとする。母親が気付いて止めようとするが、笙子は母親を突き飛ばし、
笙子「うるせえな、あたしが昔内職をして稼いだ分を返して貰ってるだけじゃねえか!」
笙子が不良になった原因を作ったのはこの母親の心ない一言だったので、何も言い返せない。
さらに、聖一郎が大事にしている由緒ある笙まで持って行こうとする笙子。
障子を足で開けると、三人の幼い弟妹が立っていた。

ケンジ「姉ちゃんなんか死んじまえ、二度とこの家に帰ってくるな!」
笙子「ケンジ……」
さすがの笙子も、弟に罵倒されて、ショックを隠せない。
笙子が出て行った後、ウメボシをまるごと口に入れたような酸っぱい顔になる両親であった。
笙子は、持ち出した物を質屋に叩き売る。
地下駐車場で、部下と車に乗ろうとした時、突然何台もの車のヘッドライトに照らされる。

笙子「誰?」
朝男「東京流星会会長、西村朝男」
マリ「副会長、山吹マリ」
ここでまたまた運命の出会い。
笙子「あたい、相模悪竜会会長、曽我笙子」
剛「親衛隊長、堂本剛!」
剛は、ツヨシではなく、タケシと読みます。念の為。

朝男「会えて嬉しいぜ、どんな顔したお嬢さんなのかと、会いたさ見たさで恋焦がれていたんだぜ!」
大映ドラマで色んなキャラを演じてる松村さんだが、やっぱりこの朝男がサイコーだね!!

笙子「早く用件言いな」
マリ「用件はてめえをフクロにすることさ!」
狂犬マリ役を体当たりで演じた比企さんの演技も素晴らしい。
ちなみにフクロと言うのは、袋叩きのことで、このドラマでは必須の用語である。笙子もヒートアップして、マリと今にも決闘しそうな雰囲気になるが、
朝男「待て、初回からドンパチするほど野暮じゃねえよ。今日は見合いみたいなもんだ」
笙子「この見合いはまとまんないねえ」
朝男は、笙子に手を組もうと持ちかけるが、笙子はキッパリ断ってその場を離れる。
その後、笙子率いる悪竜会と、東京流星会との数々の抗争の様子が回想シーンとして描かれる。二つのグループは、大方1年近くにわたって全面戦争を繰り広げているのだ。横浜にまで縄張りを広げようとする流星会と、それを阻止しようとする悪竜会の戦いなのだろう。
笙子が殺伐とした世界に生きる中、哲也と恭子はあくまで優雅なセレブ生活。その夜も、クラシックの演奏会を堪能した帰り、腕を組んで歩いていた。と、通り掛かった質屋の店頭に、笙子の売った笙が売られているのを見た哲也、すぐに価値ある品だと見抜いて大人買い。
そして、笙子たちがまた暴力沙汰を起こしているのにでくわし、思わず止めに入る。

哲也「君はこんなことをしちゃいけない」
笙子「ぃやかましい!」
笙子は部下に命じ、哲也をフクロにさせる。

哲也「やめるんだ、君はこんなことをする人間じゃない、やめたまへ! 君はもっと違う生き方を見付けるべきだーっ!」
ボコボコにされながら、懸命に訴える哲也であった。

翌日、ここで、物語の主要な舞台のひとつ、ジョーズと言うスナックが初登場。
店主は山田邦子演じるおアキと言う女性。
深刻なキャラの多い中で、おアキのあっけらかんとした明るさは一服の清涼剤の役割を果たしている。
ただし、コメディリリーフと言うほどお茶らけたキャラではなく、彼女にも暗い過去があることが後々分かる。
ここでは、歩行者天国でジャズダンスを披露しようと、笙子の部下たちにレッスンしている。ここは相模悪竜会の溜まり場のようになっているのだ。
笙子は踊りには加わらず、ニコニコしながらその様子を見守っている。
そこへ、何処でこの場所を聞きつけたのか、再び哲也が現れる。
後編に続く。
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