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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「不良少女とよばれて」 第21話「エバー・オンワード」

2025-04-06 19:39:45 | 不良少女とよばれて
 第21話「エバー・オンワード」(1984年9月4日)

 前回、漸く少年院を出た笙子が哲也と共に向かったのは、横浜港であった。

 
 哲也「今日から君の新しい人生が始まるんだ」
 笙子「ええ、ええ」
 哲也「笙子さん、君は明日から舞楽を始めるんだ」
 笙子「舞楽を?」
 哲也「ああ、総務府の楽人を辞めた時からずっと考えていたんだが、僕は君と一緒に民間舞楽を始めたいんだ」

 抜け目のない哲也は、既に笙子のこれからのことまで決めていた。

 哲也「奈良時代に仏教と共に中国から伝えられた舞楽は元々庶民のものだったんだ。人々は晴れた空の下で行われる舞楽を見ることにより、喜びや悲しみを昇華させ、たおやかな舞に人間としてのあるべき形や心を求めていたと思うんだ。舞楽を通じて奈良時代の人々のたおやかな心を今の人たちに伝えたい同好の士を集めて民間舞楽を始めるんだ。それが僕たちの使命だと思ってね。もう既に稽古場も決まっているし、会の名前も決めてあるんだよ! 君に相談なしに勝手に決めてしまったんだが……」

 さすがにそんなことまで勝手に決められたら、いくら恋人と言っても笙子もちょっと気を悪くする……なんてことは勿論なく、「哲也さんが気に入ってるんなら私も大賛成ですぅ」と、ひたすら従順な笙子であった。

 哲也「会の名前はね、『笙の会』って言うんだよ。笙子さんの笙は舞楽の笙、この名前以外考えられない。もう決めたんだからね、反対は許さない」
 笙子「哲也さん」
 哲也「僕と一緒に民間舞楽をやってくれるね?」
 笙子「はい!」

 笙子、自立している女のようで、こういうところは男に言われるがまま、と言う感じなんだよね。

 哲也に「今すぐ海へ飛び込むんだ!」と言われたら、迷わず飛び込みそうだ。

 結局「大映ドラマ」って、男の発想で作られてるドラマなのだ。

 次のシーンでは、何故かとっぷりと日が暮れて、笙子の実家の神社は闇に包まれている。

 午前中に少年院を出て、なんで家に帰るのが夜になるのか、納得の行く説明をして頂きたい。

 
 それはともかく、「お父さん、お母さん、笙子、ただいま帰りました!」と、復員した日本兵みたいにかしこまって両親に挨拶をする笙子。

 両親のみならず、弟や妹たちも、心から笙子の帰還を歓迎してくれる。

 聖一郎「笙子、良く辛抱してくれたね、お父さんもお母さんもどんなに嬉しいか……」
 美也子「笙子、許してね、私があんな無情なことを言った為に……」
 笙子「私は愛育学園で、どんなつらいことにも負けない心を学んできました。二度と非行には走りません!」

 CM後、笙子はモナリザのことを話題にする。哲也は、依然としてモナリザが両親に会ってくれないのだと心苦しげに話す。

 少年刑務所で、ミシンを踏んでいるモナリザの姿が映し出されるが、モナリザの出番は今回はこれだけ。

 美也子「笙子、皆さんがお待ち兼ねよ、ケンジ……」

 母親に促されたケンジたちが隣の広間のフスマを開くと、

 
 ででーんと、笙子の友人たちが勢揃いしてお出迎え!

 笙子、たちまち笑み崩れ、ひとりひとり仲間と再会を喜ぶ。

 笙子「景子~、ヒロシさんも、ヨシオさんも……剛ぃ、由美子、ナオミ、マサコーっ」

 こういうシーンがありがたいのは、今までその名前もさだかでなかった友人たちの名前が一気に判明することだ。

 ↓マサコ  ↓ナオミ  ↓由美子

 
 笙子「おハル、なにやってるの?」
 晴子「竜一と組んでね、色んなところでライブやってるんだぁ」
 由美子「おハルはさ、人気があって、何処でやっても満員だよ」
 ナオコ「今度LP出すんだよ、笙ちゃん!」
 笙子「凄いじゃない、おハル!」

 そうかぁ、まだ、LPの時代だったのか……と言っても、ちょうどこの年からCDプレーヤーが本格的に普及し始めたんだけどね。

 なお、勢揃いと書いたが、おアキの顔が見えなかった。

 ヨシ坊は、急用があっておアキが来られないので、自分が代わりに来たと説明する。

 だが、実際は急用などではなく、おアキ自身の意志で出席しなかったことが視聴者に示される。

 おアキ、笙子のことは大好きだが、それ以上に、深い恩義のあるモナリザのことを慮って、あえて出席しなかったのだ。……と言うようなことを、ひとりごとで分かりやすく説明しながらひとりで笙子の為に乾杯するおアキ。

 
 と、その背後から、これも歓迎会にいなかった玉子がゾンビのように静かに入ってくる。

 気だるそうで、いかにもラリってると言う感じ。

 彼女が呼びかけると、似たようなのがぞろぞろと入ってくる。呼ばれるまで外で待ってる不良と言うのも、行儀が良くてヤだなぁ。

 玉子「悪いんだけどさ、私のツケでみんなに飲ませてやってよ」
 おアキ「おタマ、笙子ちゃんが退院したの知らないのかい? みんな笙子ちゃんのうちに……」
 玉子「かんけーねーよ、笙子が退院したからって私の人生が変わる訳じゃないんだ」

 笙子の実家では、改めて聖一郎がみんなに挨拶し、おハルの音頭で和やかに乾杯が行われていた。

 さすがに少年院の退院祝いの席でビールを呷る訳にも行かず、未成年者(笙子、由美子、マサコなど)はジュースで我慢するのだった。剛、ヒロシ、ヨシ坊、晴子などは普通にビールを飲んでいる。

 
 マサコ「笙子、今度は哲也さんとの結婚式だね、哲也さん、私たちの前でいつ結婚するのか話して下さい」

 長い長い少年院編が終わって、やっとまともな台詞が貰えて嬉しいマサコさん。

 哲也「ここに来る前に笙子さんとも話し合ったんだが、僕と笙子さんとでこれから民間舞楽を始めようと思ってるんだ。笙子さんのお父さんにも是非顧問になって頂きたいと思ってるんですが」
 聖一郎「私にですか? 勿論ですよ、ねえ、母さん」
 美也子「ええ、あなた」
 聖一郎「哲也さん、民間舞楽は私の夢だったんですよ」

 と、玄関のチャイムが鳴る。

 ケンジたちが出るが、大きなタイの尾頭付きを持って戻ってくる。

 ケンジ「西村朝男って人がねえ、これ、姉ちゃんにあげてくれってさ」
 笙子「朝男がぁ?」

 思い掛けない祝いの品に、顔をほころばせる笙子。
 
 剛「笙子、西村は高級麻雀荘の経営が大当たりで、凄い羽振りだそうだぜ、それにここんところ進学塾の経営にも乗り出したって言うぜ。目端が利くぜ、あいつ~」

 そう、朝男、前回鑑別所を出たばかりだと言うのに、もうそんなに実業家として成功しているらしいのだ。

 無論、パパから資金を出して貰ってのことだろうが、今までずーっと不良ゴッコにうつつを抜かしてきた人が、そんなに簡単に事業を展開できるわけがない。

 さて翌日、哲也と笙子は早速、あるテナントの4階で「笙の会」を設立するのだった。

 一方、ロイヤル物産で真面目にOLしている恭子さん。

 社長の酒井が紙包みを手に現れ、「シティホテルの村田夫妻にこれを届けて欲しい」と頼む。

 その村田夫妻は、恭子が酒井に紹介した東亜銀行横浜支店の支店長夫妻であった。

 酒井「すっかりお得意様になって頂きましてねえ……恭子さんには感謝してますよ」
 恭子「あたしなんて……」

 謙遜する恭子さんであったが、酒井の言葉の裏にある恐ろしい意味が込められていることに気付く筈もなかった。

 同じ頃、珍しくジョーズのおアキとヨシ坊がめかしこんでいた。

 ヨシ坊「なんか薄気味悪いなぁ」
 おアキ「何が薄気味悪いの? 顔?」
 ヨシ坊「だって、急にホテル行って食事して一泊しようなんて……」
 おアキ「何言ってんのよ、夫婦でたまには贅沢するのも良いのよ。今日はヨシ坊と夫婦の最後の会話をしようと思って……」
 ヨシ坊「最後のってなんですか?」
 おアキ「バカッ、最初のだよ、最初のに決まってるじゃないか。私たちさあ、今までマジに話し合った一度もなかったでしょ?」

 慌てて失言を誤魔化すおアキであったが、そんなにわざとらしく失言する奴ぁいねえよ。

 二人は景子に店を任せ、ホテルへ出掛ける。

 そのホテルは奇しくも、恭子さんが行こうとしているシティホテルだったのだが、ストーリー上は特に関係ない。単に同じところで撮影したかっただけだろう。

 
 さて、「笙の会」で、実に、実に久しぶりに舞楽の稽古をしている笙子。

 なにしろもう終盤だと言うのに今まで数えるほどしか稽古をしていないので、進歩はほとんど見られない。

 そこへ、思い詰めた様子の男谷がやってくる。

 男谷「恭子さんが大変なんだ、相談に乗ってくれ」

 男谷は、恭子さんが酒井と言う男の元で働いていることを説明し、

 男谷「酒井という男は極めて危険な人物なんだ。中学時代から札付きの不良だった男で、万引き、窃盗、放火、婦女暴行、殺人以外はすべてやってのけた犯罪少年で、8年も少年刑務所にいた男なんだ」
 哲也「なんだってぇ?」(MMR風)
 男谷「酒井は恭子さんを利用しようとしてるに違いないんだ」

 酒井の前歴は、ありあまる暇を利用して男谷が調べ上げたものだろう。

 男谷「話そうにも恭子さんは俺に会ってくれないんだ。悔しいけど、俺ではダメだ。恭子さんを救えるのはお前だけなんだ!」
 哲也「ある人を救おうとすればその人と一生を共にする決意がなければ救うことは出来ない。恭子さんを救うことの出来るのは僕じゃない、男谷、お前だ!」

 もっともらしいことを言って、恭子さんを男谷に押し付けようという気マンマンの哲也であった。

 男谷「哲也……」
 哲也「男谷、勇気を持て!」
 男谷「勇気はある、だがな、恭子さんが愛してるのはお前なんだ!」

 哲也、部屋の外でこちらを見ている笙子に気付き、「男谷、僕が一生を共にする女性は笙子さんなんだ」と明言する。男谷は悄然と哲也の前から去って行く。

 さて、おアキとヨシ坊がホテルのレストランでご飯を食べている頃、同じホテルに恭子さんが現れ、村田夫妻の部屋をノックする。

 ソファにぐったりと座っていた夫妻、恭子さんの持っている包みを見ると、いきなりその包装紙を破って、宝石箱を取り出すが、宝石には目もくれず、その下に隠された白い粉の包みを掴む。

 
 で、さすがにそんな奴ぁいないだろうと思うのだが、二人は恭子さんの目の前で白い粉を溶かして注射器に吸わせ、自分で自分の腕にブスリと突き刺すのであった。

 そう、彼らは酒井によって覚醒剤中毒にさせられていて、恭子さんは知らずにその運び屋をやらされていたのだ。

 
 しかもおぞましいことに、(慰謝料は別にして)縁が切れたと思っていたあの腐れ外道の黒岩夫婦が隣の部屋からこちらを覗いているではないか!

 恭子さんは慌てて逃げ出そうとするが、二人に捕まって部屋に連れ戻される。

 その同じ階の部屋に、おアキとヨシ坊が連れ立って入って行くのだが、無論、近くの部屋でそんなことが行われているとは全く気付かない。

 
 恭子「いやっ、放して!」

 鬼夫婦に左右から押さえ付けられている恭子さん。

 今日こそ、岡田奈々さんのパンチラが見れるのではないかと期待した管理人であったが、岡田さんのガードは完璧であった。

 やがて、村田夫妻と入れ替わるようにして、酒井が部下を引き連れてやってくる。

 酒井「見てしまったようだね、恭子さん」
 恭子「酒井さん、あなたは私に知り合いを紹介させて何を売っていたんですか?」
 酒井「覚醒剤ですよ」
 恭子「あなたって人は……」
 酒井「恭子さん、あなたにはまだ知られたくなかったが、知られたものは仕方ない。これはねえ、私がのし上がる為の手段なんですよ」

 さすがに覚醒剤と来ては、不幸大好きな恭子さんもこのまま彼らに付き合う訳に行かない。

 かずみ(黒岩夫人)が、何とかの一つ覚えの「あたいの子供を殺した癖に」と言うマジックワードを繰り出すが、恭子さんは「知らないわよ、そんな昔のこと!」(註・言ってません)と振り切り、その足で警察へ行こうとする。

 無論、彼らがむざむざ恭子さんを行かせる筈もなかった。

 しかも、おぞましいことに、酒井が覚醒剤の注射器を手に、恭子さんに迫ろうとするではないか。

 酒井「私は少年刑務所に8年もいた男なんですよ、そんな私がのし上がる為には手段なんか選んじゃいられませんよ」

 黒岩が袖をめくり、恭子さんの白い腕が剥き出しになる。

 酒井はその腕に注射器の針を……

 恐ろしいことに、恭子さんは本当に覚醒剤を打たれ、後述するようにあっという間に中毒者になってしまうのだった。

 男谷は、恭子さんの両親を訪ね、酒井のことを洗い浚いぶちまける。

 
 葉山「しかし、ロイヤル貿易は一流デパートにもコーナーを持ってる優良会社と言うじゃありませんか」
 男谷「それも事実です、ですが葉山さん、僕は酒井と言う男は極めて危険な人物だと思ってます。明日にでも恭子さんを説得して連れ戻して下さい」

 それにしても、こんなに恭子さんの為に仕事も何もほったらかして奔走する男谷なのに、恭子さんから男として全く相手にされないと言うのは、いくら脇役だと言え、かわいそう過ぎるし、男谷の真心に頑なに応えようとしない恭子さんが凄く情のない女性に見えてくる……

 翌朝、ジョーズでヨシ坊がめそめそと泣いている。

 笙子「どうしたんですか?」
 ヨシ坊「ママが消えちゃったんです。こんな手紙残して……」

 驚いておアキの置き手紙を読み上げる笙子。

 笙子「ヨシ坊、私は訳があってみんなの前から姿を消すことにした。どうぞ私を捜さないでおくれ、ヨシ坊に対する私の愛は生涯変わらない……」
 ヨシ坊「ひどいよ、僕が夫として不満ならそう言ってくれれば……」
 笙子「そんなことじゃないと思う」
 哲也「もしや、ママさんは葉子の所に行ったのかも知れない。葉子の力になる為に……」

 ここで、実際に刑務所の面会室でモナリザと会っているおアキの姿が映し出されるのだが、これが現実の出来事なのか、哲也たちの想像だったのかは分からない。多分、前者だろう。

 そこへ、今度はナオミたちが血相変えて駆け込んでくる。

 ナオミ「笙ちゃん、大変だよ、おタマの奴が、相模悪竜会って旗をブッ立ててハマのチンピラと喧嘩を始めてんだよ!」
 笙子「……」

 笙子たちは波止場でテキトーに乱闘しているおタマたちのところへ飛んでくる。

 
 笙子「おタマ、やめなさい、ご両親のことは聞いたわ、そのことで荒れてこんなバカなことをしてるんだったらもうやめるのよ」
 玉子「うっせーんだよ、笙子、でけえツラすんな、確かにお前は前の会長だったかもしれないけどねえ、悪竜会の新しい会長はこの私なんだ。そいつが気に入らねえってんなら、私とここでタイマン張るかい?」

 今まで「笙子おネエ」とか甘えて呼んでいたのに、呼び捨てにする玉子さん。なんか可愛い。

 
 笙子「おタマ、本気で私とタイマンを張るというの?」
 玉子「ああ、本気だよ」

 玉子はいきなり笙子の顔を引っ叩く。

 笙子「おタマ、気が入ってないじゃないか、そんなもんじゃ私を倒せないよ」

 たちまちかつてのスケバン魂を身に宿し、物凄い目付きで玉子を挑発する笙子。

 玉子はヤケになったように無抵抗の笙子を殴っていたが、途中から泣き出して、最後は笙子に抱き付く。

 玉子「許して、おやじが、若い女のところに行っちまってさ、おふくろと離婚することになっちまったんだ……進学することできなくなっちまってさ、私、何していいか分からなくなっちまったんだ」
 笙子「おタマ、分かってたのよ、おタマの気持ちはよく分かってたのよ」

 それにしても、「悪竜会を復活させるんじゃーっ」と叫んでいた1分後に、こんなに簡単に更生されては、彼女を信じてついてきた不良たちもイイ面の皮である。

 その後、すっかりおとなしくなった玉子をまじえて、眺めの良いレストランでお茶を飲んでいる笙子たち。

 
 哲也「どうだろう、玉子さん、何もすることがないのなら、僕と笙子さんがやろうとしている民間舞楽を手伝ってくれないかな?」
 笙子「おタマは珠算2級の免状を持ってるし、経理の方やってくれると助かるんだけどなぁ。私そっちの方全然ダメだから」
 玉子「私やる、何でもやる、哲也さんや笙子おネエと一緒なら仕事するの楽しいもん!」

 と言う訳で、たまたま「珠算2級の免状を持って」いたおタマは、「笙の会」の事務員として働くことになる。

 その後、彼らが会計を済ませて廊下へ出て来たところ、同じフロアの別の店から出てきた恭子さん及び酒井にばったり出くわしてしまう。

 
 哲也「恭子さん」
 恭子「哲也さん……お久しぶりでございます」

 ほんとに久しぶりに顔を合わせる元婚約者の二人。

 えーっと、13話でお寺にみんな集まった時以来になるのか?

 酒井は、哲也と久しぶりの再会に感極まった恭子さんが何か余計なことでも喋るのではないかとおそれ、そそくさと恭子さんを促してその場を離れようとする。

 哲也「恭子さん、男谷が心配していますよ。男谷があなたを待ってます!」

 哲也、立ち去ろうとする恭子さんの背中にそれだけ告げて、自分のほうから足早に去って行く。

 恭子「哲也さん……」

 おぞましいことに、恭子さんは黒岩や酒井の手下がたむろしている部屋に入るや否や、自ら腕をまくって、「酒井さん、私に覚醒剤を……」と、ためらうことなく言うのだった。

 そう、恭子さん、短期間ですっかり中毒患者になってしまったらしいのだ。

 マサコたちは、「笙の会」の発表会を知らせる看板を街のあちこちにばら撒く。

 が、それを、たまたま恭子さんに会いにロイヤル貿易にやってきた多賀子が目にしてしまう。

 娘を捨てた男(哲也)と、娘から婚約者を奪った娘(笙子)の名前を見て、多賀子がどんな気持ちになったかは、言うまでもない。

 多賀子からそのことを告げられた葉山が、総務府の関係者を動かしたのか、「笙の会」に「総務府の楽人だった人間が、不良少女と民間舞楽を興すとは何事だっ、即刻中止したまへ!」と誰かの嫌がらせ電話がかかってくる。

 まぁ、現実に言って、民間舞楽を興すのに別に役所の許可は要らないだろうから、そのまま放置プレーしても良かったと思うが、それではストーリーが進まないので、笙子が単身、葉山のところへ許しを請う為、訪ねると言う嫌なシーンになる。

 しかし、実際、笙子のモデルである原笙子さんが民間舞楽を始めた時も、似たような嫌がらせを受けたんじゃないかと察せられる。

 笙子は、稽古中の葉山のところへ押しかけ、民間舞楽をすることを許して貰おうとする。

 いぢわるな葉山は「破門した弟子が民間舞楽を興そうとどうしようと私の関知するところではない」と、相手にしてくれない。

 で、いろいろあって、笙子は葉山やベテランたちの前でカリョービンとか言う舞を舞う羽目になる。

 勿論、ドラマが始まってから不良同士の抗争や恋や友情に明け暮れていた笙子のつたない舞楽が、彼らの眼鏡にかなう筈もなく、ボロクソにけなされる。

 
 葉山「思い上がるのもいい加減にしなさい、舞楽には1200年の伝統が(以下略)」

 で、葉山は笙子の目の前でお手本を示すのだが、笙子とそんなに変わらないように見えるのは、どっちも素人なんだからしょうがない。

 でも、葉山の弟子たちは、ちゃんと本職の人なので、その舞はさすがに風格があるんだよね。

 
 ナレ(その時、笙子は全身から火が噴き出すほどに己を恥じていた。威風堂々、自由闊達に舞う葉山の姿が舞楽の底知れぬ深さを感じさせていた。この人の前で舞うとは、なんと言う無謀な試みであったろう)


 自分が井の中の蛙に過ぎなかったことを痛烈に思い知らされた笙子の胸中をあますところなく解説してくれる親切なナレーション。

 しかし、「威風堂々」はともかく「自由闊達」とはとても形容できない舞だけどね。

 で、笙子は一転、葉山に弟子入りを志願することになる。

 が、「女性を弟子に取るつもりはない」と、ニベもなく断られる。

 
 玄関先で座り込んだ笙子、雨の日も風の日も、肉の日もポイント5倍の日も、そのままずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、その場に座り続ける。

 どしゃ降りの中、心配した哲也が(何故か傘も差さず)迎えに来るが、笙子はなんとしても葉山に弟子入りして本格的に舞楽を学びたいと自分の気持ちを告げる。

 哲也も笙子の気持ちを理解し、そのまま引き揚げる。

 一方、その葉山の娘・恭子さんに、酒井が結婚を申し込んでいた。

 
 酒井「僕と結婚して僕の良き協力者になってくれませんか? 僕は恭子さんに生涯の伴侶になって欲しいんですよ」

 ビジネスの話でもするように淡々と求婚する酒井。

 無論、酒井は恭子を幸せにしようなどと思ってこんなことを切り出している訳ではない。

 
 と、その店へふらりと現れたのが、すっかり成り上がった朝男であった。

 しかし、さすがに今回の「偶然の出会い」のチェーンコンボは度が過ぎるなぁ。

 朝男「恭子さんじゃありませんか」
 恭子「あなたは……」
 朝男「西村です、その節は……」

 どの節? と一瞬考え込んでしまったが、哲也が東京流星会の事務所に居座っている時に連れ戻しに来て、朝男と顔を合わせていたね。あと、法事でも会ってるか。

 朝男は恭子を店から連れ出そうとする。

 酒井「なんだい、君は」
 朝男「誰だい、あんた」
 酒井「ロイヤル貿易の酒井というものだ」
 朝男「ほーっ、嫌なニオイのする男じゃないか。恭子さん、こんな男と付き合ってちゃいけないなぁ」

 蛇の道はヘビで、朝男は酒井と言う男の本性を一目で見抜いていた。

 酒井「店長! この無礼な男をなんとかしたまえ」
 店長「なんだね、君は?」

 何も知らない店長、すぐ二人の前にやってくるが、

 
 朝男「やかましい!」

 
 と、いきなり朝男にぶん殴られてしまう!

 苦労人の店長には気の毒だが、今までのモヤモヤが一瞬で吹き飛ぶ爽快なシーンである。

 朝男、店員たちもボコボコにしてしまうが、

 恭子「酒井さん、行きましょう」

 と、肝心の恭子さんは彼を無視してさっさと出て行ってしまう。

 朝男「恭子さん!」
 酒井「とんだ三枚目だな、元東京流星会会長・西村朝男くんだね、あんたの顔はよおく覚えておくよ」

 険しい目付きで、二人の背中を見送る朝男であった。

 
 その夜、引き続き雨の降る中、廊下の窓から庭に座っている笙子の姿を見て、

 
 葉山(怖い……)

 と言うのは嘘だが、怖いのは確かである。

 翌日、さすがの葉山も根負けして、笙子を家に置いてやることを認めるのであった。

 ただし、内弟子ではなく、住み込みのお手伝いさんとしてであったが。

 
 笙子「ありがとうございます、ありがとうございます。内弟子でなくとも構いません! 月25万ほど貰えたら!

 こうして、笙子の本格的な舞楽修業の日々が始まるのだった。

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