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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第42話「麻宮サキよ永遠に 甦れ!奇跡のヨーヨー」

2025-07-14 18:52:43 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第42話「麻宮サキよ永遠に 甦れ!奇跡のヨーヨー」(1987年10月29日)

 いよいよ最終回である。

 前回、もろもろの犠牲の上に、ついにトリヴィドヤーなるものを手に入れた唯。

 と言っても、それは目に見えるものではなく、天輪聖王を倒す為の最終兵器ヴァジュラを手に出来る資格のようなものらしい。

 唯、図書室に天眼不動明王と男雛、女雛を置くと、

 
 唯「わちは、姉ちゃんたちを見殺しにしてしもうた、わちの戦いは一体なんなんじゃ? 風魔の戦いって、風魔の宿命って一体なんなんじゃ」

 それはこっちが聞きたいことだっ!!!!

 ほんと、冷静に考えたら、なんで忍者が、世界を救う宿命を背負ってるんだって話ですよ。

 と、同時に、前回、あれだけ悲愴な覚悟をかためながら、いまだにうじうじと心を迷わせている唯の姿に、いい加減ウンザリする管理人であった。

 つーか、泣くぐらいなら、結花たちを助けてやればよかっただろうがっ!!

 それはともかく、そこに般若、いや、依田が入ってくる。

 唯、手の甲で涙を拭くと、珍しく生徒の口調になって、

 唯「依田先生、人から愛されても、自分がその人に愛で応えられん時、どうすればいいんじゃろう? わちは、色んな人と出会い色んな愛を受けてきた、その人たちに愛で応えたくても、もう誰もおらん!! わちの戦いは何の為の戦いなんじゃ?」

 
 依田「般若としてなら、宿命の一言で答えられるでしょうけどね。教師・依田としては、人間の愛こそ……」
 唯「……」
 依田「バツですね、うまく答えられません」

 依田は何か言いかけるが、結局返答を拒否して立ち去る。

 依田(許せ、唯、私は教師である前に、あくまで風魔鬼組・般若なのだ……)

 その後、心の中で唯にカッコよく詫びる般若であったが、既に風魔の忍びそのものが全滅してしまった今、鬼組もへったくれもないと思うんだけどね。

 放課後、依田が正面玄関の前で待っていると、三つのアイテムを抱えた唯が、これで何度目だと言う気もするが、迷いを断ち切った顔をして出てくる。

 ちなみに、最終回だと言うのに、クマやゴロウたち、三姉妹の取り巻きたちは一切登場しない。

 唯「依田先生、いや、般若、わち、やるしかないんじゃ!!」

 その夜、二人は不動明王像と雛人形を携えて、とある岩山の上に立ち、赤い影星が少し欠けた月のすぐそばで怪しく輝いているのを見上げていた。

 
 般若「赤き星、月と交わりて天輪を成す、光地に伏し聖王を生まん。明日は月が満ちる、影星が月の中央に来たとき、果心居士は天輪聖王に生まれ変わる」
 唯「影星が月の真ん中に来るまで、あとどれくらい時間があるんじゃ」
 般若「約20時間、不動明王像、男雛、女雛を置く場所は結花と由真が調べてくれた」

 般若は例の紙を取り出して見せる。

 唯(結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、ゆるしちくり……)

 いちいち結花たちのことを思い出して詫びる唯。

 この人、ほんとにトリヴィドヤー有資格者なんでしょうか。

 帯庵は、迷ったらトリヴィドヤーはキープできないみたいなこと言ってたけど、迷ってばっかりやん。

 それはともかく、

 
 般若「我々がいるのはここだ。男雛を置く山はあれだ。ここから直線距離にして10キロある」
 唯「女雛は」
 般若「あの山だ、直線距離にして15キロ、山の上り下りを考えると倍、が、お前と私ならわけもない距離」

 まず、不動明王を彼らのいる岩の上に置くと、像はひとりでに回転し始め、ある方角に向かって固定される。

 ついで、般若が男雛を、唯が女雛を、定められた場所に持って行く。

 般若が、男雛を岩の上に置くと、これもひとりでに回転しだし、やがて黒くて硬い石像のようなものに変わって止まる。

 ひとまずホッとする般若だったが、そこを、前回も出てきた異形の戦士たちが襲ってくる。

 苦戦しつつも、般若は彼らをすべて斬り殺す。

 最後に唯が女雛を置くと、男雛と同様にひとりでに回転~固定して材質が変わり、その目から赤い光線が空に向かって放たれる。

 
 同時に、不動明王像、男雛からも異なる色の光線が発射され、三つの光は空中でひとつになると、その直下に落ち、

 
 大爆発を起こす。

 唯「あそこじゃ、あそこにヴァジュラが!!」

 唯が駆けつけると、岩に、一本の長剣が突き刺さっていた。

 
 その、まんまRPGの終盤に出てくる伝説の剣っぽい武器こそ、長い間謎であったヴァジュラの正体なのだった。

 うーん、はっきり言って普通過ぎる。

 唯「あれが、ヴァジュラ……」

 唯が近付こうとするが、頭上から電撃が落ちてきて足元で爆発する。

 同時に、明るかった空に暗雲がたちこめ、アビラウンケンソワカ~と言う果心居士の唱える真言が響き渡る。

 唯「果心居士、何処じゃ、何処におるんじゃ? 何処じゃ、姿を見せんかい!」
 般若「唯!!」
 唯「般若!!」

 と、背後から、傷だらけの般若が刀を支えにしながらやってくる。

 
 般若が倒れたのを見て唯が駆け寄ろうとすると、電撃が落ちてきて般若に命中する。

 果心居士の声「風魔の小娘よ、ヴァジュラを諦め、この場を去れ」
 唯「なんてやー、せからしかーっ!!」

 果心居士の降伏勧告に唯が反発すると、再び稲妻が落ちて来て、般若をビリビリさせる。

 般若「ぐわあああーっ!!」
 唯「果心居士、出て来いーっ!!」

 
 般若「唯!! トリヴィドヤーを使い、ヴァジュラを抜けーっ!!」

 鬼の形相で叫ぶ般若。

 改めて思うのだが、この突っ込みどころ満載のドラマがなんとかドラマとして成立し得ているのは、流行さんの存在感と熱演に拠るところが大だったのではないか、と。

 唯「トリヴィドヤー……」

 と、再び般若に電撃が浴びせられる。

 唯「般若!!」
 般若「気を散らすな、うっ、ぐあああーっ、トリヴィドヤーを失うぞ、そうなればヴァジュラは抜けんぞーっ!!」

 唯、精神を集中させてオーラを身にまとい、額にアーンクの梵字を浮かび上がらせると、ヴァジュラに向かって歩き出す。

 が、電撃は間断なく般若に襲い掛かる。

 般若「唯、急げーっ!!」
 果心居士「剣に近寄るな、近付いたらその男の命はないぞ!!」
 般若「構うなーっ!! ヴァジュラを取れーっ!! うううっ」

 まるでラムちゃんにお仕置きされているあたるのような状態で、声を張り上げる般若。

 唯、怒りの形相でヨーヨーを握り締め、

 唯「果心居士、許さん!!」

 丘の上にあらわれた果心居士に向かってヨーヨーを投げつけるが、あっさりキャッチされ、

 
 逆にヨーヨーのチェーンを伝って、激しい電撃を浴びせられる。

 衝撃で吹っ飛んだ唯に、般若が駆け寄って抱き起こす。

 般若「唯!!」
 唯「般若……」

 見れば、額の梵字が消えていた。

 
 果心居士「ふっふふふ、心弱き娘よのう、トリヴィドヤーはワシが貰い受けた。天輪聖王になった時、この手でヴァジュラを抜いてやろうぞ」

 しかも、果心居士の右手に唯のアーンクが写し取られているではないか。

 そう、唯が苦心惨憺して手に入れたトリヴィドヤーを、こともあろうに果心居士に横取りされてしまったのである。

 つーか、トリヴィドヤー(と梵字)って、スーパーの半額シールのように、人から人へ簡単に移せるものなの?

 だったら、赤ん坊の唯と翔から、梵字を抜き取ってしまえばよかったではないか。

 般若「おのれぇーっ!!」

 般若、破れかぶれになったように、刀を抜いて果心居士に突っ込んでいき、見事その体を刺し貫くが、無論、その程度の攻撃で倒せるような相手ではなく、

 
 般若「ぐわぁあああーっ!!」

 逆にその頭を鷲掴みされ、強烈な電撃を注ぎ込まれて悶絶する。

 果心居士は、嘲笑いながら姿を消す。

 慌てて般若の元に駆け寄る唯。

 
 唯「般若、般若!!」
 般若「何故だ、何故私を助けようとした? 何故ヴァジュラを抜かなかった? 愚かだぞ、唯」
 唯「わちは、結花姉ちゃんと由真姉ちゃんを見殺しにしてしもうた、もう二度と人を見殺しにしとうなかったんじゃ!!」
 般若「唯……」
 唯「許しちくり、般若、わちはもう駄目じゃ」
 般若「諦めるな、あと一度だけチャンスがある。果心居士は天輪聖王になる瞬間、必ずヴァジュラの前に現れる筈だ、その時が残された最後のチャンスだ」
 唯「じゃけん、じゃけん、わちにはトリヴィドヤーもない!!」
 般若「美しい……この世の中を動かしていくのは、人間なのだ。神でもなければ悪魔でもない、ましてや、天輪聖王などに支配されてはならない。お前のような美しい心を持った人間がひとりでも増えればこの世は救われる。お前のやったことは、間違いではない。愚かでもない。その美しい心を持って天輪聖王として立ち向かえ!! 教師依田としてお前に言いかけた答えを言おう、人間の愛こそ、この世の中で最も力強い武器になるのだ」
 唯「……」

 般若、そう言って唯に微笑みかけるが、最後にもう一度「唯!!」と叫んで絶命する。

 
 唯「般若!! 般若ーっ!!」

 その体を抱き締めて、絶叫する唯。

 にしても、今まで散々「人としての情を捨てねば勝てまへんのや」みたいなことを、般若も帯庵も口が酸っぱくなるほど言っておきながら、最後の最後に「やっぱ愛が一番やったわ」と、アイフルのCMみたいなことを言われても困るのでヤンス。

 じゃあ、今までの大仰なお膳立てはなんだったのってことになるからねえ。

 CM後、唯がその辺の岩に背をもたれて寝ている。

 寝過ごしたらどうするつもりだったのだろう?

 夢の中を、今まで散って行ったたくさんの人たちの面影が通り過ぎて行く。

 礼亜、魔破羅おじさん、小太郎、翔、帯庵、般若、そして……

 生まれ育ったお寺の本堂で寝ていた唯を、由真が叩き起こす。

 
 唯「なんすっとか」
 由真「学校遅刻したって知らないからね」
 唯「ここは宮崎、学校は東京じゃろ」
 由真「だから汽車で行くんだろ」
 唯「あんた、バカやないと、何時間かかると思うちょっとやー」
 由真「うるせえな、このチビ」
 唯「なんやこのドッカン娘」
 由真「この野郎」
 唯「なんよーっ」

 水を得た魚のように、元気に取っ組み合いの喧嘩を始める二人。

 そこに結花があらわれ、木魚用の大きな桴(ばち)で二人の頭を叩く。

 
 結花「よしなさい」
 由真「だってこいつが……」
 結花「もう、何度言ったら分かるのよ、せっかく宮崎で平和に暮らせると思ってたのに……そんなに喧嘩ばっかりするんだったら朝ご飯抜きよ」

 無論、それは現実ではなく、二度とかなうことのない唯の夢であった。

 これ、ほんとならめちゃくちゃ泣けるシーンになる筈なのだが……

 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん……」

 眠りながら涙を流してつぶやいていた唯、ハッと目を見覚ます。

 寝ている間に、空はすっかり暗くなっていた。

 唯「影星が月に消えちょる……わち、今こそ、みんなが与えてくれた愛に応えるから、みんなで見守っちくり!!」

 既に影星は月の向こうに移動して見えなくなっていたが、代わりに、まんまるいお月様が血のように禍々しい朱色に染まっていた。

 
 と、いつの間にかヴァジュラのそばに戻っていた果心居士、やおら頭巾を外し、そのつるぴかハゲ丸くんのような頭に赤い月からのエネルギーを受ける。

 
 その光を受けた果心居士の顔の、干からびた皮膚がパックのように剥がれて行き、その下から現れたのは、

 
 意外にも、目元も涼やかな美少女であった!!

 そう、醜い老人から一気に美少女に変身しちゃうと言う、ツッコミどころだらけの終盤の中では、なかなかセンスの良い演出であった。

 要するに果心居士から天輪聖王にクラスチェンジしたと言う訳なのである。

 
 黒いフードも、天知茂先生の早着替えシーンのように紐で後ろに引っ張られ、一瞬で巫女のような神秘的な白装束に変わる。

 天輪聖王「我、ついに天輪聖王となれり!!」

 選手宣誓のように右手を突き上げ、高らかに宣言する天輪聖王。

 
 最終盤だけの出番だが、天輪聖王を演じるのは、劇場版のヒロインだった小林亜也子さん。

 眉はケンシロウ並みにぶっといが、なかなかの美形である。

 元々、「スケバン刑事3」は、この小林さんをヒロインにして制作される予定だったのだが、諸般の事情により、番外編として予定されていた「スケバン忍法帖」が「3」として作られ、結局、小林さんが主役のシリーズはお流れになってしまったのである。

 それはさておき、天輪聖王は、アーンクの刻まれた右手でヴァジュラの柄を掴んで引き抜く。

 天輪聖王「我、聖王となりて、ヴァジュラを手にす。さすれば全宇宙に我の力に優るものなし。今こそ全宇宙を闇に閉ざさん!!」

 いきなり全宇宙と来ましたよ!!

 スケールがでか過ぎて、ついていけない。

 つーか、そもそも宇宙って、最初からほぼ真っ暗じゃないかと……

 
 だが、その時、シュルシュルと言う音がこちらに近付いて来るのに気付き、そちらに目を向ける天ちゃん。

 小林さん、好みのタイプとは言いがたいが、美人であることは間違いない。

 ただ、「スケバン刑事」のヒロインをやるには、いささかオーラが足りない気もする。

 無論、シュルシュルと言う音は、ヨーヨーの風切り音だった。

 
 唯「三代目スケバン刑事、麻宮サキ、またの名を風魔鬼組・頭、風間唯、影を操り、この世を邪悪の闇に包もうとするお前を許す訳にはいかん!!」

 全宇宙を支配しようかと言う途方もない敵に対し、思いっきり場違いな名乗りを上げる唯。

 ま、そう言う番組なんだから仕方ない。

 天輪聖王「梵字すら消えた小娘に、何が出来る?」
 唯「しゃからしか!! この世を闇に閉ざすなど、天が許さん、人が許さん、わちが許さん!!」

 
 そう叫んでヨーヨーを持つ右手を天に突き上げると、空から幾筋もの青い光が降って来て、ヨーヨーに集まる。

 これは、既に天に召された礼亜、翔、帯庵たちの魂が乗り移っている……と言うことなのだろうか?

 唯「許さん、許さん!!」

 唯、青く光るヨーヨーを投げる。

 天輪聖王、ヴァジュラで受け止めようとするが、

 
 なんと、あれだけみんなが血眼になって探していた伝説の最終兵器ヴァジュラが、その一撃であっさり折れてしまうのだった。

 
 天輪聖王「!!」

 これにはさすがの天ちゃんもびっくりし、ひょっとしてパチモン掴まされた? みたいな顔になる。

 ヴァジュラ、まさかの見掛け倒し!!

 しかし、今までヴァジュラ、ヴァジュラと散々言ってきたのはなんだったのだろう?

 実に虚しくなってくるではないか。

 唯は、間髪入れず、野球の投球フォームのようなポーズを取ると、渾身の力を込めて、ヨーヨーを投げ飛ばす。

 天輪聖王「うっ!!」

 驚いたことに、天下の天輪聖王ともあろうものが、そのヨーヨーをまともに食らい、

 
 そのまま、あっさり爆死してしまうのだった。

 ……

 天輪聖王も見掛け倒し!!

 これなら、果心居士時代の方がよっぽど強かったではないか。

 それにしても、引っ張るだけ引っ張っておいてこのあっけなさ……

 当時の視聴者の脱力ぶりが目に浮かぶようである。

 せめて、倒される前に、その圧倒的な強さの片鱗でも見せてくれていたら……

 それはそれとして、その爆発の衝撃で気を失う唯。

 再び目を覚ましたときは、世界は元通りの平和を取り戻していた。

 唯「終わった……」

 唯はつぶやくと、立ち上がって歩き出す。

 その結果を見たものもいなければ、その勝利を讃えてくれるものもいない、極めて虚しく寂寞とした戦いを終えた唯の顔には、微笑みすら浮かんでいなかった。

 暗闇指令との別れのシーンもないまま、次のシーンでは、早くも故郷の宮崎の田舎駅に唯を乗せた電車が滑り込んでくる。

 ちなみにその駅の名前が「大日村」で、何気に大日如来の伏線になってたんだね。

 
 相変わらず暗鬱な顔の唯だったが、そこへどやどや現れたのが、1話に出て来た地元の下っ端連中であった。

 唯「あんたたち……」
 一同「唯番長、ばんざーい!!」
 唯「ありがとう、ほんとんごつありがとう」

 嬉しさのあまり涙ぐむ唯。

 しかし、西郷どんのパチモンみたいなこのキャラ、演じる俳優さんも、まさかまたこの役のオファーが来るとは夢にも思ってなかっただろうなぁ。

 生まれ育った寺に行き、懐かしい大木を見上げて祖父・帯庵のことを思い出し、再び涙にくれる唯。

 
 唯「よし、みんなで大掃除じゃ」
 一同「はいっ」

 それでも気を取り直し、下っ端たちに号令を掛ける。

 このタイミングでEDのイントロが流れ出し、台詞は聞こえなくなるのだが、ここで、天輪聖王の最期以上にとんでもない結末が訪れる。

 寺の参道を、女子高生らしい二つの靴が歩いている。

 二人は、本堂の裏手に回る。

 そこでは、唯がたらいで洗濯をしていたが、気配に気付いて顔を上げれば、

 

 
 そこに、死んだ筈の結花と由真が立っていた!!

 うーん、前回も書いたが、さすがにこのオチはないよね。

 あの愁嘆場はなんだったんだ、視聴者を愚弄するのもいい加減にしろと言いたくなる。

 なお、本編では台詞は聞こえないのだが、親切なことに、DVDの特典にそのシーンの会話が漏れなく収録されているので、今回はそれを参考にしながら書くとしよう。

 
 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、生きとったと?」
 由真「妹より先に死んでたまるかよ」
 結花「唯……」

 ……

 そんだけかいっ!!!!(管理人の魂の叫び)

 般若の場合、その死を看取ったのが唯自身だから、てっきり死んだのだと思って放置していたのを、暗闇指令の配下あたりが(唯が眠っている間に)病院へ担ぎ込んだ、と言う解釈も成り立つのだが、結花と由真の場合、般若にしっかり看取られながら確実に死んでいたのに、それが何事もなかったかのようにピンピンしていると言うのはさすがに無理がある。

 ま、生き返っちゃったものは仕方ないので話を続けよう。

 唯「うれしか、わち……わち」
 結花「もう絶対に離さないわよ、唯」

 唯、迷わず飛び付いて、強く二人の体を抱き締めながら、嬉し涙に暮れる。

 さらに、

 
 依田「おおーい」
 唯「依田先生!!」

 般若こと依田まで、けろっとした顔であらわれる。

 ま、般若については今書いたようにまだ弁解の余地があるんだけどね。

 
 依田「もう、この人たち、ほんとに冷たいんだから!! 私に全部荷物預けて、さっさと行っちゃうんですよ、バツですよね、もうバツ!!」

 ややオカマっぽい口調でやかましく騒ぎ立てる依田。

 その後、改まった様子で、

 依田「これからは姉妹三人、平和に暮らせよ」

 般若としての言葉に、三人は力強く頷く。

 依田も、どうして助かったのか、全く説明しようとしないし、唯も聞きもしない。

 そして、例によって唯と由真がくだらないことから喧嘩になり、境内で追いかけっこを始める。

 それが何よりも雄弁に平和の到来を語っているように見えるのだろう、結花も依田も、幸せそうに見詰めている。

 EDが終わると、再び声が戻り、

 
 由真「姉貴、どうにかして」
 唯「もう許さんかいね」
 由真「なんだよ、もう」
 結花「いい加減にしなさい!!」

 結花が二人を捕まえ、叱ったところで「終わり」となる。

 この強引なハッピーエンドには、言いたいことが山ほどあるが、今更言っても仕方のないことなので、この辺にしておこう。

 ま、ぶっちゃけ、この後の劇場版に結花、由真、般若を出すため、無理やり生き返らせたのかもしれないが……

 でも、この三人と学園関係者は別にして、それ以外の主要キャラは全員死んでる訳で、なかなかハードな結末ではあったよね。

 以上、「スケバン刑事3」のリテイクレビューでした。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました!!

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第41話「結花、由真の最期」

2025-07-05 18:38:54 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第41話「結花、由真の最期」(1987年10月22日)

 前回のラスト、風魔の里で偶然見付けた、ヴァジュラの謎を解く鍵と思われる石版、それには、男雛と女雛を従えた、不動明王像が描かれていた。

 三人は東京に戻って、その仏像が正確に何なのか、学校の図書館で調べていた。

 
 由真「不動明王の仏像ったって、こんなにあるんだぜぇ、岩にあんな絵が描いてあったって、どれがどれだかわかりゃしねえよ」

 たくさんの仏像の写真が掲載された美術書を見ながら、ぼやく由真。

 由真「あーあ、せめて依田の奴がいてくれたらなぁ」

 由真の言葉に何かを思い出したように唯が立ち上がり、部屋を出て行こうとする。

 結花&由真「何処へ行くの」
 唯「ちょっと」

 OP後、唯は暗闇指令のオフィスにいた。

 唯は無言でヨーヨーを机の上に置く。

 
 暗闇指令「返すと言うのか?」
 唯「これをもっちょったら、あんたや、あんたの組織の人間に迷惑が掛かる。わちは恐ろしい宿命をせおっちょる、わちと関わりおうた人間はすべて死んでいく。それは風魔の宿命かも知れん、じゃけん、わちはわちの為に犠牲になるものをこれ以上見とうない!!」
 暗闇指令「……」
 唯「悪いんじゃけど、三代目スケバン刑事・麻宮サキの名前は返す。許しちくり」

 それだけ言って立ち去ろうとするが、

 暗闇指令「天眼不動明王、お前たちが探している不動明王の名前だ」
 唯「……!!」

 思わず振り向く唯に、暗闇指令がヨーヨーを投げてやる。

 暗闇指令「持ってけ、何かの役に立つかも知れん」
 唯「じゃけん……」
 暗闇指令「唯、初めてお前に会った時、共に戦おうと言った筈だ、早く行け、天輪聖王は待ってくれんぞ」
 
 唯は頷いて部屋を後にする。

 そしてこれが、本作における暗闇指令の最後の出番となってしまった。

 ま、本作ではめちゃくちゃ影の薄いキャラだったので、視聴者的には何の感慨も起こらない。

 しかし、なんで暗闇指令がそんな重大な事実を知っていたのか、その辺が謎である。

 暗闇指令のエージェントが風魔の里に行ってあの絵を見て、ひそかに調べていたのかもしれない。

 唯が図書室に戻ると、ちょうど姉たちは席を外していた。

 
 唯「天眼不動明王……あった、間違いなか。これじゃ」

 唯、その仏像のある寺の名前をメモするが、そこに姉たちが戻ってくる。

 由真「なーんだ、帰ってたの」
 結花「何処行ってたの」
 唯「ちょっと……姉ちゃんたちは何処行っちょったと」

 唯、メモをポケットに入れて、さりげなく尋ねる。

 由真「メシ食ってたんだよ」
 唯「わち、ちょっと雛人形のこと調べてくる」

 唯が、雛人形を風呂敷に包もうとするが、結花が鋭くその手を掴み、

 
 結花「あんた、私たちに何か隠してるわね?」
 唯「別に、何も……手ぇはなしちくり!! 痛い、なにするんじゃ」

 
 結花「由真、唯のポケット」
 唯「やめない!!」

 由真は唯の制服のポケットに手を突っ込み、メモを取り出す。

 由真「天眼不動明王……勝知寺……姉貴、これ」
 結花「やっぱり……どうして分かったの?」
 唯「暗闇指令が教えてくれたんじゃ」
 由真「この野郎、なんで黙ってたんだよ!!」

 由真、唯の胸倉を掴んで声を荒げるが、唯も荒々しくその手を払うと、

 
 唯「これからはわちひとりで戦う。あんたたちはこんでいい!! 足手まといになるだけじゃ」
 由真「この野郎、兄弟に向かって足手まといとはどう言う意味だよ!!」
 唯「兄弟じゃなか!! わちは風魔鬼組の頭・風間小太郎の娘、あんたたちは小太郎の部下・小源太の娘、わちは風魔の頭としてあんたたちに命令する。わちについてきたらいかん!!」

 唯、自分の方が立場が上なのだと、らしくない言葉を叩き付けると、雛人形を手に部屋を飛び出す。

 由真「あの野郎、ふざけやがって!!」
 結花「由真!!」

 すぐ追いかけようとする由真を結花が引き止める。

 無論、結花には、唯の気持ちが痛いほど分かるのだ。

 唯は森の中の公園のテーブルに男雛と女雛を並べ、

 
 唯「これでいいんじゃ、わちと一緒に戦えばいつかは姉ちゃんたちもわちの犠牲になってしまう。わちは、わちは……」

 いや、いちいちそんなこと台詞で説明して貰わなくても、視聴者にだってそれくらいのことは理解できると思うのだが……

 と、そこにいきなり結花があらわれ、唯の顔を思いっきり引っ叩く。

 唯「何するんじゃ?」

 さすがに唯もカッとなるが、

 結花「うぬぼれるんじゃないわよ!!」

 結花も負けじと怒鳴りつける。

 
 結花「私たちがあんたの犠牲になるですって? この戦いはあんただけの戦いじゃないのよ、あんたの父さんの小太郎が殺されてるように、私たちの父さんの小源太も殺されてるの!!」
 唯(呼び捨て……)

 ……と言うのは嘘だが、ここでいちいち名前を出す必要はなかったと思う。

 まぁ、視聴者が混乱しないようにとの配慮だろうが。

 結花「影を倒し、転輪聖王と戦うことは私と由真の戦いでもあるの」
 唯「……」
 結花「それでも、あんたが私たちを足手まといだって言うのなら、今ここで……」

 結花、折り鶴を取り出すと、それを自分の白い首筋に当てて、この場で自殺することも辞さない覚悟を見せる。

 唯「いかん、そんげなことしたらいかん!!」

 唯、慌てて折り鶴を奪うと、わきに放り投げ、

 
 唯「悪かった、わちが間違うちょった、許しちくり、結花姉ちゃん……」

 その場に土下座して謝る。

 なお、めちゃくちゃ細かいことだが、折り鶴が落ちたのは柔らかい土の上なのに、硬い金属音が鳴るのは変である。

 結花「唯……」
 唯「わち、結花姉ちゃんも由真姉ちゃんも大好きなんじゃ、どんげなことがあっても生きちょってほしか、じゃから、わち……」
 結花「唯……」

 
 結花「唯!!」

 結花の胸に血の繋がりのない妹へのいとしさが込み上げてきて、唯の体をしっかりと抱き締める。

 結花も唯もポロポロと涙をこぼし、

 
 離れたところから見ていた由真も、静かに涙を流していた。

 由真、つとテーブルのところに行くと、雛人形を風呂敷に包んで、自分の背中に結ぼうとする。

 
 唯「何するんじゃ、由真姉ちゃん?」
 由真「てめえにこれ以上勝手な真似させない為に、この雛人形、私が預かっとくんだよ」
 唯「由真姉ちゃん」
 由真「いいか、死ぬときは一緒だかんな」
 唯「由真姉ちゃん!!」

 唯、今度は由真に飛びついて抱き合うが、

 
 結花「般若!!」

 結花が、森の中から出て来た般若に気付き、思わず声を上げる。

 なんか、この表情が、

 般若「てめえら、人を置き去りにしてとっとと帰ってんじゃねえっ!!」

 と言う、三人の薄情さに対する恨みが込められているように見えるのは、管理人の気のせいだろうか?

 唯、般若に駆け寄り、

 唯「般若、生きちょったと?」
 般若「……」

 死の淵から生還した人に掛けるにしてはあまりに軽い唯の第一声であったが、疲労困憊の般若はツッコミを入れる気力もないのか、無言で頷くだけだった。

 唯「じいちゃんは、じいちゃんはどうしたんじゃ」
 般若「生きておられる」
 唯「どこじゃ、どこにおるんじゃ」
 般若「お前がトリヴィトヤーを得た時に、会える筈だ」
 唯「トリヴィトヤー?」

 
 般若「三明と言ってな、宿命通、天眼通、漏尽通と言う三つの力がある。宿命通とは自分と他人の宿世の生死の相を知る通力、天眼通とは、自分と他人の来世の生死の相を知る通力、そして漏尽通とは現在の苦しみを知り、全ての煩悩を断ち切る通力、この三つの通力が一体になったときトリヴィトヤーと言う途轍もない力となる……」

 テーブルについて、突然、訳の分からないことを言い出す般若おじさん。

 終盤になって、急に新しいキーワードをどかどか出すのは勘弁して欲しいのだが、「三明」と言うのは、実際にある仏教用語で、六神通と言う、いわば仏教界における超能力に含まれている概念なのである。

 ちなみに残る三つは、神足通(高速移動およびテレポーテーション)、天耳通(スーパー聴覚)、他心通(テレパシー)である。

 ま、普段なら、

 唯「何いっちょるのか、さっぱりわからん。由真姉ちゃんは?」
 由真「ぜーんぜん」
 般若「……」

 となって、般若が過労死するところだが、もう時間がないので、唯たちはたちどころに理解してしまう。

 唯「天眼通ちゅうのは、天眼不動明王の天眼とおんなじやつやと?」
 般若「そうだ、そしておそらく、雛人形は宿命と漏尽」
 結花「雛人形のどっちが漏尽でどっちが宿命なのかしら」
 視聴者「どっちでもええわいっ!!!!」

 と言うのが、当時の視聴者の偽らざる気持ちだったのではあるまいか。

 あと、由真は絶対、「漏尽」を「老人」だと思ってるよね。

 話を戻して、

 般若「残念だが、それが分からん」
 唯「どっちがどっちでも二つもっちょるんじゃ、あとは天眼不動明王さえ手に入れればわちはトリヴィトヤーを得たことになるんじゃろ」
 般若「天眼不動明王は、勝知寺山門横の洞窟の中で眠っているそうだ」
 唯「……」
 般若「結花、由真、お前たちは雛人形とトリヴィトヤーの関係を調べろ」

 この辺、もろにRPGのクエストっぽいんだよね。

 つーか、そんな神秘的な力と言うのは、本人の修行や鍛錬によって得られるべきもので、アイテムさえ揃えれば手に入れられるようなものではないと思うんだよね。

 また、終盤に来て、意味どころか、発音すらおぼつかない難解な用語をいくつも並べられては、視聴者だって困惑しただろう。

 果心居士「目覚めよ、あやしの者どもよ」

 一方、部下を全て失った果心居士は、鋭い爪を持つ、人間とも野獣ともつかない異形の戦士たちを蘇らせ、戦力を補充する。

 
 果心居士「三日ののち、月が満ち、影星と重なる。そのときこそ、ワシが生まれ変わる時、遂にワシが天輪聖王となるのぢゃ」

 CM後、般若は唯をつれて、どこぞの山奥にある勝知寺にやってくる。

 洞窟の前に立つと、

 
 般若「この中に入る前に、お前に話しておくことがある。この洞窟の中にはあらゆる恐怖が渦巻いている。その恐怖に打ち克ったたとき、お前は天眼不動明王を手にし、トリヴィトヤーを得られる筈だ。何があっても恐れるな、決して迷うな、己を信じろ!! そうすれば、必ずや恐怖に打ち克てる。しかし、もしお前が恐怖に負け、トリヴィトヤーを得られずしてここを出て来た時は……」

 般若、刀を抜いて唯の顔に突きつけ、

 
 般若「私はお前を斬り捨てねばならぬ」
 唯(え、なんで……?)

 と言うのは嘘だが、ほんと、なんでだろう?

 ま、唯の退路を断ち、覚悟を決めさせるためだろう。

 般若「それがトリヴィドヤーに挑むものの定めなのだ、よいな」
 唯「……」
 般若「行け」

 あと、「トリヴィトヤー」なのか「トリヴィドヤー」なのか、台詞によって微妙に発音が違うのも、すっげーイライラさせられる。

 一方、図書館に戻った結花たちだが、偶然によって、女雛の中に隠されていた小さなメモを発見する。

 
 結花「忍者文字だわ」

 再び勝知寺。

 般若は、洞窟の入り口を見下ろすお堂の上に陣取り、護摩壇を焚いて九字を切り続けていた。

 
 般若「己を信じ、耐えるのだ、唯!!」
 唯「きゃああああーっ!!」
 般若「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!」

 もっとも、「あらゆる恐怖が渦巻いている」と言っても、今回も、26話と同じく、洞窟の中から時折唯の悲鳴が聞こえるだけで、その具体的な内容は視聴者の想像にゆだねられると言う、省エネ撮影となっている。

 再び図書室。

 二人は、暗号対照表と首っ引きで、その文章を解読する。

 
 由真「男雛に宿命、女雛に漏尽の通力あり、男雛、女雛、不動をそれぞれの山に置きしとき、三つの通力向きおうて光放たん、この光、ひとつになりてヴァジュラの封印を解かん……それぞれの山って何処だよ」
 結花「場所までは書いてないのよ」

 結花、何を思ったか、男雛の首もスポンと引き抜いてしまう。

 果たして、その中に、

 
 結花「やっぱり」

 位置関係を示す地図が隠されていた。

 いや、そんな分かりやすい隠し場所なら、この前、般若が調べた時に見付けてないとおかしいだろう。

 さて、唯、どんな恐ろしい目に遭ったのか、息も絶え絶えに、砂の多い地面の上に倒れ伏せている。

 ロケ地は、例によって大谷石採石場である。

 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん……」

 夢の中で、唯が洞窟の外へ出ると、結花と由真が唯の名を呼びながら石段を上がってくる。

 だが、そこを、果心居士の差し向けた異形のものたちに襲われ、

 
 結花「唯ーっ!!」

 
 由真「唯!!」

 二人とも彼らの鋭い爪で切り刻まれてしまう。

 
 唯「いやじゃーっ!!!」

 制服を砂だらけにした唯が、絶叫を上げて起き上がる。

 唯「夢か……」

 夢だと分かって安堵する唯だったが、ふと前を見ると、帯庵がこちらに背中を向けて座っているのが見えた。

 
 唯「じいちゃん……じいちゃん!!」

 唯、思わず駆け寄ろうとするが、

 帯庵「カーッ!! 迷うな唯、迷えばトリヴィドヤーは得られんぞ」
 唯「……」
 帯庵「そこを見ろ」

 
 見れば、右手の一段高くなったところに台があり、その上に天眼不動明王像が安置されていた。

 唯「これが……」

 唯、すぐに仏像に手を伸ばそうとするが、帯庵の声が鞭のように飛んでくる。
 
 帯庵「まだ触れてはならん!!」
 唯「なんでじゃ?」
 帯庵「半額シールが貼られてない」

 じゃなくて、

 唯「なんでじゃ? これを持って行けば、わちはトリヴィドヤーを得て、ヴァジュラを手にすることが出来るんじゃろ?」
 帯庵「確かにそうじゃ、だがその時、お前の前で何が起きようと、お前は立ち止まることも、振り返ることも許されなくなる!! お前は今、結花と由真が死んでいく姿を見ておった筈じゃ」
 唯「……」

 
 帯庵「お前はそれを夢じゃと言うた。しかし、夢ではない、お前がトリヴィドゥヤーを得て、この洞窟を出た時に、結花と由真に死が訪れる」
 唯「……」
 帯庵「お前が結花と由真の死に直面しても、何もせぬ、声すらあげん、そうせねば、トリヴィドヤーの力は保てん」
 唯「なんで?」
 帯庵「いや、なんでって言われても……」

 そう言う設定だから仕方ないのである!!

 ま、要するに、肉親の死を前にしても、平常心を保たないといけないってことなんだろうけど、助けたっていいやん。

 唯「そんげなこつ」
 帯庵「どうじゃ、それでもその天眼不動明王に触れ、トリヴィドヤーを得る気があるか? 迷うな、迷えば、すべてが……」

 話していた帯庵、不意に前のめりに倒れる。

 見れば、腹部に深い傷があり、瀕死の状態だったことがわかる。

 唯「じいちゃん!! じいちゃん!!」
 帯庵「ワシに構うな……」

 
 帯庵「唯よ、お前が今ここで迷えばお前の為に死んで行った数多くの者たちの死が無駄になる……どんなことがあってもヴァジュラを手に入れ……戦う……のだ」
 唯「じいちゃん……」
 帯庵「……」

 帯庵、満足げに微笑むと、息を引き取る。

 
 唯「じいちゃん!! じいちゃん!!」

 唯一の肉親を失った唯の慟哭が、洞窟の中に響く。

 唯「じいちゃん、つらかったじゃろ、こんげになるまで、わちのために……」

 唯は、帯庵の頬を撫で、その大きな背中に縋り付いて、まだ残っている温もりを全身で感じ取る。

 だが、いつまでも悲嘆に暮れている訳には行かない。

 唯はハンカチを取り出して帯庵の顔に掛けると、涙を拭い、

 唯「じいちゃん、わちは戦う!!」

 立ち上がると、再び像の前に進み、

 
 唯「トリヴィドヤーを得て、転輪聖王を倒して見せる!!」

 唯が遂に不動明王像を手にすると、像が一瞬、金色の輝きを放ち、ついで、唯の額のアーンクの梵字が、青く光って浮かび上がる。

 やがて、像を手にした唯が、洞窟から出てくる。

 般若「遂にトリヴィドヤーを……」

 般若と目を見交わしてから、石段を降りかけるが、夢で見たのと同じように、結花と由真が石段を登ってきて、その途中、異形の者たちに襲われる。

 
 たちまち捕まり、鋭い爪で傷付けられる結花と由真。

 結花「唯ーっ!!」
 由真「唯ーっ!!」

 二人は唯に助けを求めるが、

 
 唯「……」

 唯は、帯庵の「遺言」を守り、姉たちを助けようともせず、その場に立ちつくす。

 いや、だから、心を乱さずともヨーヨーを投げることはできるんだから、なんでここで姉たちを見殺しにせねばならないのか、さっばり意味が分からない。

 つーか、般若も、見てないで助けに行けよ。

 刺客たちが続いて唯にも向かってくるが、唯はヨーヨーを投げてあっという間に叩きのめす。

 うん、だからね、それをなんでさっきやらなかったの?

 これじゃ、ただの冷たい奴やん。

 瀕死の二人は、唯に例の紙を差し出し、

 
 結花「唯、ヴァジュラの謎が解けたのよ」
 由真「絶対、ヴァジュラ見付けろよ」
 唯「……」

 唯は無言で紙を受け取ると、姉たちの体を踏み越え、そのまま石段を降りていく。

 結花「唯、唯、唯……」

 結花の呼びかけにも、唯は振り返ろうとしない。

 代わりに、般若が降りてきて、二人の体を抱き起こす。

 
 般若「結花、由真!!」
 結花「般若、唯は?」
 由真「あいつ、どうしたんだ?」
 般若「すまん、唯は……唯は、トリヴィドヤーを得たのだ!! だから振り返るわけにはいかんのだ。許してやってくれ」
 結花「そう、トリヴィドヤーを……良かった」
 由真「最後まで、一緒に戦えなかったこと、あいつに謝っといてくれよな」
 般若「由真!! 結花!!」

 二人はせつなそうな顔で互いを見詰め、右手と左手を握り合わせ、

 
 結花「由真」

 
 由真「姉貴ぃ」
 結花「私たち、とても良い三姉妹だったわよね?」
 由真「……」

 結花の問い掛けに由真が大きく頷いたかと思うと、

 
 二人揃って息絶えるのだった。

 般若「結花!! 由真!!」

 しかし、これだけはっきり死んで見せておきながら、最後の最後で何の伏線もなく「実は生きてましたー、てへっ」となるのだから、視聴者を馬鹿にしていると言わざるを得ない。

 このシーンでほんとに二人が死んだと思って泣いた人、ラストシーンを見てどんな気持ちがしただろう?

 管理人、安易にキャラを死なせて視聴者の感動を誘うやり方は嫌いだが、この、ほとんど詐欺のようなやり方は、それ以上に許せない所業だと思う。

 それはともかく、

 唯(結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、わち、わち……)

 ラスト、不動明王を抱いた唯が、姉たちの死を知りながら、涙を堪えて歩いていく姿を映しつつ、最終回へ続くのだった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第40話「大洪水!! 風魔・最強最後の術」

2025-06-29 17:53:33 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第40話「大洪水!! 風魔・最強最後の術」(1987年10月15日)

 冒頭、やえのために用意されたホテルの一室。

 
 唯「この雛人形のためにたくさんの人が死んで行った、この男雛と女雛には一体何が秘められちょるんじゃ」
 般若「ヴァジュラの謎……180年に一度地上に現れると言う悪の権化、天輪聖王を倒す力」

 般若が窓の外を見ると、高層ビルの上空にまがまがしい赤い星が輝いていた。

 般若「見よ、あの影星を、妖しく燃え、その位置を西より東へ変え始めている。影星が真東に位置したとき、180年に一度、天輪聖王が復活するその日の印だと言う」

 サブタイトル表示後、38話以来消息のわからなかった結花と由真の現在の姿が映し出される。

 
 由真「なに、ぽや~っとしてんの、姉貴?」
 結花「星、こんな降るような星を見るのは久しぶり……思い切って旅に出て良かった」

 旅行しとんのかいっ!!!!

 世界が滅びようとしているときに、いくらなんでもお気楽過ぎるだろう。

 しかも、この「思い切って」と言う言い方が、女子大生やOLが失恋旅行してるみたいで、危機感がないにもホドがあるだろ、ホドが……

 現に、おまいらが暢気に旅行してる間に、唯が果心居士に殺されかけてんだぞ。

 ちったぁ自覚を持て、自覚を!!

 由真「ねえ、姉貴、笑うなよ、これ、夢なんだけどさぁ、あたしたちもさ、こういうところでペンション開いたりしない?」
 結花「ペンションかぁ」

 突然、将来の夢を照れ臭そうに語り出す由真。

 だから、そう言う話は世界を救ってからにせいっ!!

 由真はホテルの中庭の砂利の上に木の棒でペンションの間取り図を引き、

 
 由真「ペンション由真へようこそ」

 結花を客に見立てて、ペンションごっこをするのだった。

 
 由真「ここが玄関で、客室は2階に五つね。それで、1階は玄関を入るとひろーいホールになってんの、それでここにまぁるいテーブルがあるの。その上にはいつもたくさんお花を盛ってあるの」

 身振り手振りで、嬉しそうにペンションの内装について語る由真と、笑みを浮かべてそれに付き合う結花。

 なんか、結花の胸がいつもよりでかく見えるが、これはジャンパースカートがゆったりしているせいだろう。

 それにしても、せっかく女子高生三人組が主人公なのに、水着回がひとつもないと言うのは寂し過ぎる。

 そう言えば、「スケバン刑事」って、その手のお楽しみ回がほとんどないんだよね。

 由真「ここが由真の部屋、勿論、クローゼットつき……姉貴の部屋は和風にしてやるね」
 結花「うん……この部屋は?」
 由真「……」

 無論、二人とて、唯のことや影との戦いのことを忘れた訳ではなく、由真は唯の部屋もちゃんと用意しており、それに気付いた結花と深刻な顔で見詰め合うのだった。

 再びホテルの一室。

 般若が男雛と女雛を仔細に調べている。

 
 唯「なんかわかったと」
 般若「いや、この雛人形から答えを取り出すには何か大きな要素が欠けているのかも知れん」
 唯「それは」
 般若「わからん」
 やえ「そう言えば、昔、長老から聞いたことがあります。ヴァジュラの謎を解く鍵が風魔の里に隠されているとか」
 唯「それはいったいなんやと? どこにあるんじゃ」
 やえ「いや、長老はそれしか」
 般若「雲を掴むような話だな」

 それでも、手掛かりはそれしかないので、唯たちは夜行列車で風魔の里へ向かう。

 翌朝、三人が峠の上から風魔の里を見下ろしていると、全身黒ずくめの忍びが素手で襲ってくる。

 唯は目を閉じて「止観」を使いながら、相手の攻撃をすべてかわす。

 唯「その突き、その蹴り……おぼえちょるわい」

 唯の言葉に、忍びは急に攻撃をやめ、その場に膝を突いて自ら頭巾を取り、素顔を見せる。

 
 連道「よかった、君の瞳は影との戦いでも天使の輝きを失ってはいない」

 そう、それは18話に登場した空手の達人・連道武昭であった。

 彼は影の草と言う宿命から逃れようと野獣のように暴れ回っていたが、唯の純真な心に触れて立ち直り、風魔の里へ身を寄せていたのだ。

 唯「さすが連道さんの蹴りはすごか」

 続いて、ヨーヨーが飛んでくるが、唯はそれを自分のヨーヨーで弾き返す。

 
 唯「ヨーヨーの権三」
 権三「また腕を上げなすった」
 
 続いて、8話で唯にヨーヨーの奥義を伝授した権三も登場。

 さらに二人の忍びが宙を飛んで着地し、自ら頭巾を取る。

 
 唯「小次郎さん」

 ひとりは、36話に登場した小太郎の部下の一人・小次郎で、

 
 唯「成美さん、無事やったとね!!」
 成美「風魔で生まれ変わりました」

 もうひとりは、20話に登場した東野成美だった。

 20話のラストで翔の攻撃を受けて生死不明だったが、ちゃんと生きていて風魔の里で「更生」したと思われ、その言葉通り、野獣のような少女だったときとは別人のようにしとやかな美女に生まれ変わっていた。

 この手のドラマで、過去のメインゲストが揃って再登場するというのは珍しく、なんとなく嬉しくなってしまう。

 唯「こんげなところでみんなに会えるなんち、誰がみんなを?」

 唯の問いに、みんなの視線が道の先に向けられる。

 向こうからやってきたのは、神出鬼没のワンパク坊主・帯庵であった。

 思わず帯庵に抱きつく唯。

 
 唯「じいちゃん、じっちゃん!!」
 帯庵「唯、みんな、おんしと共に戦うことを誓うてくれたんじゃ」
 唯「みんな? わち、うれしか、こんげに嬉しいこつはなか」
 般若「ヴァジュラの謎、助けになるな、唯」

 結花と由真のいない今、思いがけず仲間が増えたことを心の底から喜ぶ唯であったが、旧交を温める暇もなく、俄かに風が強くなり、墨のような暗雲が稜線の向こうから湧き上がったかと思うと、急にあたりが夜のように暗くなる。

 果心居士の魔手がこの村に迫りつつあるのだ。

 唯「あの雲から物凄い殺気が渦になって近付いてくる」
 帯庵「みんな、唯を守ってお山の六角堂に……やえさん、村の人々に神社の社に避難するように」
 やえ「お任せ下さい」

 やえは、老人とは思えぬ足取りで草の中をスタスタと進んでいく。

 空には不気味な雷鳴が轟き、ますます不安を掻き立てる。

 
 帯庵「おそろしかー、途轍もなくおそろしかことが、起きるような予感がするぞ」
 般若「帯庵殿」
 帯庵「どげんことがあっても、唯をまもらにゃいかん」
 般若「あの術を使っても」
 帯庵「不憫よのう、風魔の宿命……」

 CM後、

 果心居士「何処へ逃げても無駄なこと、男雛、女雛は、すでに我が掌中にあるも同然」

 自信たっぷりに言うと、自ら風魔の里に向かう果心居士。

 
 みんなが六角堂に集まると、忍び装束に着替えた般若が、なにやら由緒ありげなアイテムを取り出す。

 
 般若「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

 般若は九字を唱えると、独鈷をひとつひとつ連道たちの前に置いていく。

 ちなみに本来はこの独鈷こそが、インド神話におけるヴァジュラのことなのである。

 連道がそれに手を伸ばそうとすると、

 般若「待て、その独鈷を心して手にせよ。一度手にしたら最後、その命、風魔結界の陣解けるまで我が掌中に預かることになる」
 連道「風魔結界の陣?」
 般若「風魔忍法最強にして、されど、最後の術……おのが命を砦とし、結界を作り、風魔の頭領をお守りする。いかなる法術も、これを破ることたやすからず、されど、術者の命もまたこれを保証せず。命ながらえんと考えしもの、即座にここを立ち去れ」
 唯「みんなだけにそんげなことはさせられん!!」

 唯、立ち上がって自分も独鈷を取ろうとするが、般若がその手をむんずと掴む。

 
 般若「おまえ、状況わかってんのか?」
 唯「あんまり……」

 と言うのは嘘だが、唯が人の話を全然聞いてないように見えるのは確かである。

 般若「我らが犠牲になるのはうぬひとり生かさんがため」
 唯「そんげなことはいやじゃ、わちは果心居士と戦う」
 般若「果心居士を甘く見るな!!」
 唯「じゃけん……」
 唯「じいちゃん、なんとかいっちくり!!」
 帯庵「……」
 唯「じいちゃん!!」
 帯庵「……」

 唯が帯庵の体を揺さぶるが、帯庵は目を閉じて無言。

 唯「なんでじゃ、なんでなんじゃ、じいちゃんまで!!」

 が、連道は迷いなく目の前の独鈷を手に取る。

 
 唯「いかん、連道さん!!」
 連道「風間唯、僕は死ぬ為にこの独鈷を手にしたのではない、生きる為に取ったんだ」
 唯「生きるため?」
 連道「もし、この戦いで斃れるようなことがあっても唯君が影と戦ってくれている間、僕の意志は生き続ける」
 唯「……」

 続いて、成美も静かに独鈷に手を伸ばす。

 
 唯「いかん、成美さん、取ったらいかん!!」
 成美「草として死んだも同然の私は風魔で生まれ変わった。そして今、影と戦う戦士としてもう一度生まれ変わるわ」
 唯「……」

 小次郎も、権三も、独鈷を手にする。

 残ったふたつのうち、ひとつを般若が掴む。

 唯「般若……」
 般若「……」

 般若の合図で、5人はお堂の外へ出て、それぞれの位置に付く。

 最後のひとつは、当然、帯庵のたなごころに収まる。

 唯、外へ出ようとする帯庵の体に飛びつき、

 
 唯「せめて、せめて、わちもみんなと一緒に戦う!!」
 帯庵「唯、みなの心がまだ分からんか? もしお前が死ねば、天輪聖王と戦うすべが消え、もっと多くの人々が犠牲になるじゃろう」
 唯「じゃけん……」

 帯庵、唯の体をしっかり抱き締めると、

 帯庵「生きろ、生き延びるんじゃ。そして雛人形を守り、その秘密を解け」
 唯「……」
 帯庵「お前がヴァジュラを手にして、天輪聖王を倒したとき、みなが本当に生きたことになるんじゃ、わかるな、唯?」
 唯「……」
 帯庵「優しさだけが人の道ではなか」

 唯もそれ以上はぐだぐだ言わず、両目から涙を流しながらも、力強く頷いて見せるのだった。

 だが、帯庵が出て行くと、再び迷いの色を浮かべ、

 唯「わちは、わちは……」

 
 お堂の周りに立ち、きたるべき果心居士の攻撃に備える6人。

 
 果心居士「アビラウンケンソワカ、感じるぞ、男雛、女雛のありかを」
 般若「帯庵どの」
 帯庵「風魔結界に入る。臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!」

 帯庵の号令で、指で四縦五横に宙を切りながら、九字を唱えはじめる6人。

 果心居士「見付けたぞ、男雛、女雛を……ううっ、結界、こざかしい!! 燃え尽きよ、風魔の忍びどもぉ」

 六角堂に近付こうとした果心居士は、風魔結界に気付くと、珍しく顔を歪めておののく。

 
 風魔の里は、凄まじい雷雨に見舞われる。

 果心居士の超能力によるものである。

 しかし、「燃え尽きろ」と叫んだ後で、やってくるのが土砂降りの雨と言うのは、いささか腑に落ちない。

 豪雨と強風の中、怯むことなく九字を切り続ける6人。

 と、雷が成美を直撃し、

 
 成美「うっ」

 成美はぬかるみに突っ伏して、あっけなく絶命する。

 うーん、せっかく再登場したのに、あまりにかわいそ過ぎる。

 連道「成美ーっ!!」

 同世代の連道、思わず駆け寄ろうとするが、

 
 般若「待てい、なんびとも持ち場を離れるな!! 今我らは結界が一部、人の意思を捨てるのだ!!」

 ゾクゾクするほどカッコイイ般若の雄叫び。

 だが、次の瞬間、今度は連道が雷に打たれる。

 
 連道「唯……」

 唯、次々と仲間が斃れていく気配に、我慢できなくなって六角堂から飛び出そうとするが、

 
 その時、雨のベールの向こうから卒然と現れたのは、意外にも由真であった。

 管理人、そのあまりに唐突な出現に、てっきり、この由真は、怪談「牡丹灯篭」のように、果心居士が作り出した幻影だと思ったのだが、案に相違してそれは本物の由真であった。

 でも、さすがに旅に出てた筈の二人が、何の前触れもなく戻ってくるのは不自然だよね。

 それはさておき、由真、続いて結花が入ってきて、唯の進路を塞ぐように武器を構えて立ちはだかる。

 由真「ここは通さないよ」
 唯「……」

 折り鶴やユリアン棒を投げ、唯の動きを牽制する二人に対し、

 
 唯「まだわちを恨んじょると?」

 見当違いの答えを返す唯であった。

 無論、二人は唯を果心居士から守る為にそうしているのだ。

 そうこうしているうちに、今度は小次郎が雷に打たれて死亡。

 唯「どけえっ、どかんかいっ!! そこを通しない!!」

 唯、悲鳴のような叫び声を上げると、目をつぶってヨーヨーを二人に向けて投げるが、二人は無抵抗でその身に受ける。

 
 やえ「うわっ!!」

 一方、豪雨で村の堤防が決壊し、神社に避難していたやえばあさんたちをひと呑みにしてしまう。

 うーん、せめてやえばあさんくらいは、助けてやって欲しかった。

 ちなみにこれによって、風魔の里の村人は全滅したらしい。

 いくらなんでも殺し過ぎだろ、スタッフ……

 猛烈な雨を浴びながら、帯庵たちはまだ闘志を捨てない。

 
 帯庵「果心居士とて、どこかに生身の弱さがあるはずじゃ。我らの気を一点に集め、果心居士を倒すのじゃあああ!!」

 と、建物の角から権三があらわれ、

 
 権三「あっしにも、最期の一花、咲かせてください」
 般若「権三!!」

 六角堂の中では、なおも唯と結花たちが睨み合っていた。

 結花「唯、あなたは今、みんなと一緒に戦ってるわ。死ぬことより生き残る方がずっとつらく難しい時もあるのよ」
 由真「唯、今、てめえを死なせる訳にはいかねえんだよ……私たちの戦いはこれからだろ?」
 唯「……」

 姉たちの真意を知った唯は、頬に一筋の涙を伝わせる。

 悲しみのためではなく、喜びのために。

 
 唯「姉ちゃん……」

 三人はそれぞれの武器を前に出し、握手するように触れ合わせる。

 三姉妹の気持ちが再びひとつになった瞬間であった。

 一方、外では、生き残った三人が、最後の念を込めて九字を切っていた。

 
 三人「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!」
 帯庵「唯よ~!!」
 唯「じいちゃん!!」

 と、三人の体から青いオーラが立ち昇り、上空にいる果心居士に強烈な一撃を与える。

 果心居士「なにぃ、奴らの何処にこんな力が……」

 が、次の瞬間、大量の水が押し寄せ、三人を飲み込んでしまう。

 果心居士が退散すると共に、風雨がおさまり、世界は嘘のように明るくなるが、洪水は幻術ではなく実際に風魔の里を襲ったと見えて、あちこちで土砂崩れが起きて、地形までもが変えられていた。

 変わり果てた村の様子を茫然として見下ろしている三人。

 
 唯「これは……」
 由真「すげえ」
 唯「みんな、みんなは?」

 唯が六角堂の周囲を目で探すが、6人の姿はどこにもなく、代わりにあの独鈷が地面に突き刺さっているだけだった。

 ただし、刺さっていたのは5本であり、1人だけ存命していることが仄めかされる。

 唯「これも、風魔の宿命じゃっちゅうんか!!」

 独鈷のひとつを握り締めて、痛切な叫びを上げる唯。

 唯「許せん、果心居士が許せん!!」

 怒りのあまり、手近にあった石碑のような岩にヨーヨーをぶつけるが、

 
 衝撃で表面の石が綺麗に剥がれ落ち、その下から壁画のようなものが現れる。

 それは、中央に剣を持った不動明王が立ち、その左右に、男雛と女雛が侍していると言う、奇妙な絵であった。

 壁画の前に立つ三姉妹の姿を映しつつ、41話へ続くのだった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第39話「長いお別れ もう一人の唯の死」

2025-06-23 18:08:55 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第39話「長いお別れ もう一人の唯の死」(1987年10月8日)

 タイトルにあるように、唯の双子の姉・翔の死を描いたエピソードである。

 個人的には、翔にはもう少し長生きして貰って、唯と二人で果心居士と戦って欲しかったところだが。

 
 翔「唯、風魔の女が何故、この女雛を……?」

 唯の持っていた女雛を見詰めてつぶやく翔。

 翔「オトヒ、ミヨズ、もう誰もおらぬ……」

 と、急に部屋が暗くなり、闇の彼方から、果心居士があらわれる。

 
 果心居士「翔よ」
 翔「お方様、わらわの配下既になく、かくなる上はにっくき風魔の小娘、わらわ自身の手で」
 果心居士「ならぬ」
 翔「なにゆえ」
 果心居士「あやつらに関わるな」
 翔「わけをお教え頂きとうございます。居士様のお心が分かりません。オトヒ、ミヨズの時もなんのご沙汰も頂けず、わらわも知りとうございます。なにゆえ、風魔の小娘が女雛を?」
 果心居士「任せておけ」

 果心居士、翔の質問には一切答えようとせず、それだけ言って闇の中へ消えていく。

 OP後、目の醒めるような黒髪の美少女が、風魔の里を見下ろす峠の上に立つ。

 
 翔「風魔の里、あそこに……」

 翔、雛人形の謎を解くべく、自ら調べに来たのである。

 ちょうどそこへ山菜取りでもしていたのか、以前も登場したやえばあさんが、斜面を下って道へ出てくる。

 
 純白の衣装をまとった翔が歩いてくるのを目にしたやえばあさんだったが、

 
 何故かそれが、唯の姿に見えてしまう。

 つまり、それだけ二人が瓜二つと言うことなのだろうが、さすがに無理がないか?

 やえ「唯お嬢様!!」
 翔「なに?」
 やえ「まさか……いや、すまんことじゃ、他人の空似じゃ」

 その顔を見て茫然となるやえだったが、我に返ると慌てて打ち消す。

 「まさか」と言うことは、それが翔だと気付いたのかもしれない。

 翔は聞き捨てにせず、ずいと近付き、

 
 翔「誰に、似ておると?」
 やえ「いや、すまんことじゃ、おばばも年を取ったのう、うぬに話しても詮無いことよ」
 翔「かまわん、言うてみい!!」
 やえ「お前は!!」

 やえ、相手が影だと見て、杖を両手に持って身構える。

 しかし、翔だと気付いていたのなら、「お前」とは言わないだろうから、単に唯と見間違えたと言うことなのだろうか?

 つーか、いくら忍びだからって、初対面の人間に「うぬ」なんて言いますか?

 ここは「お嬢ちゃん」あたりが妥当かと。

 それはともかく、やえも、若い頃はピチピチした「くノ一」だったのだろうが、もう毒マムシにいじられるお年頃なので、

 
 翔「……」

 翔のひと睨みで、あえなく術中に陥り、操り人形と化す。

 翔「わらわについてくるのじゃ」

 それにしても、普通の恰好をした林美穂さんの水際立った美しさよ!!

 普段、あの変なメイクでいかに損をしているか、これを見るとよく分かる。

 翔やミヨズたちにもっと頻繁にこういう服を着せていれば、男性視聴者の獲得にも貢献したであろうに……

 サブタイトル表示後、翔はやえをアジトに連れ帰り、彼女の知っていることを洗い浚い喋らせている。

 やえ「かつて、私は奈津様のもとで乳母をしておりました」
 翔「奈津とな?」
 やえ「はい、風魔、鬼組が頭、小太郎様の奥方でございます。小太郎様には二人の娘が」
 翔「して、その娘の名は?」
 やえ「唯様と翔様とおいいでな」
 翔「風間唯!!」
 やえ「おいたわしや、姉君の翔様は果心居士と名乗るロリコンおやじ化け物に連れ去られ、巫女の力を保つ為、十の幼児の姿のまま、影の世界へ……」
 翔「もうよい、しばし夢の中に」

 翔が扇でやえの額を触ると、やえはがっくりと首を倒して眠ってしまう。

 さすが翔、唯たちが長い時間を費やして、般若や帯庵の腹立たしいほど固い口を開かせて聞き出した出生の秘密を、簡単にやえの口から聞き出してしまった。

 ただ、なんでやえが、「10才で成長が止まる」なんてことまで知っていたのか、その辺が謎である。

 果心居士がそう言ったのを聞いたのは、37話の回想シーンでは小源太だけで、小源太はそのまま影のメンバーになってしまったのだから、他のものに話しているはずがない。

 翔「風間唯が、わらわの妹とな……術中の老婆が、偽りを語ろう筈がない、肉親を敵と呼ぶもまた一興……じゃが、果心居士め、許さん!! 悲しみは人のサガ、わらわは人を超えた存在、ヴァジュラの力を我が物にし、影の支配者となり、そして、果心居士をも取り込んでやろうぞ」

 初めて自分の悲惨な生い立ちを知った翔。

 だが、赤ん坊の頃から影の首領として育てられてきた人間がそれくらいでエエモンになる筈もなく、果心居士をも凌駕しようと言う大それた野望を燃やすのだった。

 
 その唯、自宅の屋根にぽつんと腰掛け、暮れなずむ夕空を見上げていた。

 微風が唯のシャツをはためかせ、なんともいえない良い「絵」になっている。

 ただ、

 
 唯の見ている星空が、いかにも作り物っぽいのは興醒めである。

 唯「姉ちゃん……」

 前回、止むを得ないことながら結花と由真の実父・小源太を自らの手であやめたこと、そのことで姉たちから恨みの篭った目で睨まれたこと、などを悲しく思い出す。

 ここで、前回のラストの続きが回想される。

 結花と由真は唯に背を向けて歩きだし、唯が呼びとめようとするが、由真はその手を払い除け、

 由真「近付くなよ、このまま一緒にいるとお前を憎んじゃいそうなんだよ」
 結花「わかってるの、でも、心の奥で唯を憎む声がする」

 二人はそう言って唯の前から姿を消したのだった。

 唯「姉ちゃん、何処に?」

 翌日、唯はもしやと思って夏休み中の星流学園へ行って見るが、やはり姉の姿はなかった。

 そこへ般若が現れ、

 般若「風魔の里に翔が現れた。乳母のやえをいずこかへ。翔はやえの口から出生の秘密を知ることになる。姉と妹、互いにそれを知り戦わねばならん……」

 唯、物悲しい子守唄の一節を口ずさむと、

 唯「赤ん坊時に聞いた歌っちゅうのは覚えちょるんじゃろか」
 般若「子守唄……」
 唯「アキラ君を寝かしつける時に、ふと口を突いて出たんじゃ……誰が歌ってくれたんじゃろう? わちは姉ちゃんたちと違う子守唄を聞いて育ったのかも知れん」
 般若「結花と由真の父を討ったことを悔やんでいるのか?」
 唯「違う!! 姉ちゃんたちの気持ちは分かる。じゃけん、じゃけん、わちは決して間違ったことをしたとは思うちょらん!! わちは風間三姉妹である前に、風魔の頭領じゃ!!」

 きっぱり言い切る唯の逞しい顔を見て、

 般若「よくそこまで成長した」

 惜しみない賞賛の言葉を贈る般若だった。

 唯「果心居士を倒す日まで、わちの思いはこのヨーヨーの中に封印するんじゃ!!」

 ヨーヨーを掴んで、自ら言い聞かせるように叫ぶ唯。

 やっと、最大の弱点であったメンタルの弱さを克服してくれたかと頷く般若だったが、その後、ひとり屋上に上がった唯は、

 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、わち、わち、やっぱり……」

 一転、また弱気になって、ぶつぶつ繰り言をつぶやくのだった。

 ダミだこりゃ。

 と、何かの気配を感じ、手摺を乗り越えて下を見ると、

 
 校庭に、弁慶みたいな格好をした男たちが、忽然とあらわれる。

 これほどたくさんの影の刺客が唯の前に現れたのは、かつてないことだった。

 無論、果心居士の差し金である。

 唯「影め、遂に決着をつける気じゃな、ようし、わちが相手をしてやるわい」

 と言うのだが、どう考えても唯を殺しに来たんだから、「わちが相手をしてやる」と言うのは変なのでは?

 CM後、なおも睨み合っている唯と影たち。

 
 ここで、彼らが「法道衆」と言う名前だと分かる。

 唯「わちらを影に飲み込むのは無理じゃと悟ったようじゃな、じゃけん、物凄い数じゃ。結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、わちは見事に生き延びてみせる。みちょっちくり。ようし、一点突破じゃ!!」

 唯がヨーヨーを握り締めて自らを奮い立たせ、攻撃を開始しようとしたその時、さきほどと同じ恰好をした翔が、鞠を突きながら校庭にあらわれる。

 
 法道衆「翔様、何故このようなところへ? すぐお帰りください」
 翔「わらわが用があるのは風間唯、うぬら、散るがよい」
 法道衆「そうは参りません、すべてはお方様の命令でございます」

 
 翔「もう一度言う、散るがよい!!」

 影の頭領としての威厳を見せて、重ねて現地解散を命じる翔だったが、彼らは翔の上の果心居士の命令を受けているので、容易に引き下がろうとしない。

 
 法道衆「風間唯なるもの、翔様とは切っても切れぬあやしの糸でつながりしものとか」
 法道衆「お方様が我らを遣いしはそこのところを慮ってのこと、お方様がお気遣い、大人しくお聞きなされ。ささ、お帰りなされっ」
 法道衆「お帰りなされ」

 そればかりか、したり顔で翔を見下すような言辞を弄する彼らに、翔の怒りが爆発する。

 翔「おろかな、身の程を知るがよい!!」

 翔、全身に紫色のオーラをまとうと、右手からビームのようにそれを撃ち、空間全体を、雷が直撃したかのような眩しい光で覆い尽くす。

 
 あまりの眩しさに顔を伏せた唯が怖々下を覗き込むと、なんと、法道衆が全員、僧衣と下駄とナギナタだけ残して消滅していた。

 何の見せ場もなく、味方に滅されてしまった法道衆の皆さんが不愍でならない。

 翔、何故か唯には目もくれず、回れ右して帰ろうとしたので、唯は慌てて校庭に飛び降りる。

 
 唯「翔、待て!! あんた、やえばあさんにほんとのことを聞いてきてくれたんじゃろ? そうじゃろ?」
 翔「……」
 唯「そうやっていっちくり!!」

 翔、無言で振り返ると、唯をじっと見詰める。

 
 と、地面から炎が噴き出し、それが翔から唯に向かって連続的に爆発する。

 唯「なんでじゃ、なんでなんじゃ、翔?」
 翔「わらわは人間以上、風間唯、うぬとは立つ地平その物が違うのじゃ」
 唯「嘘じゃ、なんで本心を隠す?」
 翔「笑止」
 唯「なら、なんでわちを助けた?」
 翔「取引じゃ。うぬの持つ男雛が所望じゃ」
 唯「男雛を?」
 翔「ただとは言わん、代わりに風魔のおいぼれをくれてやるわ」
 唯「やえばあさん、そんひとはな、そんひとは、わちらを守り育ててくれた乳母なんじゃ」
 翔「黙れ!! 人間以上と言うたが分からぬか」
 唯「翔、わちの話を聞けーっ!!」

 翔、激昂して向かってくる唯の体を念力で封じ、それを振り切って唯の投げたヨーヨーも、鞠であっさり弾いてしまう。

 翔「よいな、風魔の仲間を助けたければ影の祭礼の谷に、うぬひとりで男雛を持て、機会は一度だけぞ……待っておるぞ」
 唯「翔ーっ!!」

 翔は一方的に告げると、後退しながらふっと姿を消す。

 唯「影に飲み込まれた人間が、真に解放されるのは、死のみか……いや、わちには分かる、翔は心の奥で助けを求めちょるんじゃ!! わちにしか翔を助けることは出来ん!!」

 助けを求めているのかどうかは不明だが、翔が、その小さな胸の中に、たとえようのない孤独と寂しさを抱いているのは事実だった。

 アジトに戻ってくると、依然として正体なく座り込んでいるやえの前に座り、その膝に手を置き、遠慮がちに頭を乗せ、

 
 翔「わらわは明日、この手で妹を討つやもしれん、それはわらわが人を超えた証なのだ。男雛と女雛が揃い、ヴァジュラが手に入る。影は、いや、世界はわらわのものよ」

 思えば、赤ん坊の頃に変態ロリコンじじいに攫われて以来、父や母の抱擁や温もりから切り離され、家族は勿論、ひとりの友もなく、腹心のミヨズとオトヒだけを相手に人知れず影の世界に生きてきた……いや、生きていかざるを得なかった翔が、実に哀れな存在に見えてくる。

 さて、唯は約束どおり、緑の濃い山の中にある、影の祭礼の谷へ男雛を包んだ風呂敷を背中にくくりつけてやってくる。

 
 唯「翔、男雛を持って来た!!」

 唯が男雛を岩の上に置き、大声で叫ぶと、谷の上に、翔がやえと共にあらわれる。

 翔、超能力で直ちに男雛を引き寄せようとするが、唯はヨーヨーを飛ばしてそれを落とし、

 唯「まっちくり、わちの話を聞いちくり、ミヨズとオトヒは果心居士の命令で役目が終わるとボロクズのように捨てられてしもうた、オトヒは死の間際まで言うちょった、翔を頼む、助けてやってくれと……」
 翔「……」

 敵の口から、初めて忠臣の最期の模様を聞かされ、翔も粛然とした表情になる。

 唯「そしてこうも言っちょった、影の忍びは、みな光なき地獄で迷っていると……あんたの罪は無には出来ん、じゃけん、償うことはできる筈じゃ!! 翔、一緒に戦おう、一緒に果心居士を倒そう!!」

 唯はさらに踏み込んで、翔へ共闘を呼びかけるが、

 翔「笑止、わらわは別じゃ、果心居士の道具にはならん」

 翔がきっぱり断言すると、にわかに空が暗くなり、唯の背後の空間に果心居士が出現する。

 
 果心居士「翔、今までの悪しき所業には目をつぶろう、その償いとして男雛を奪い、唯を倒すのじゃ」
 翔「……」
 果心居士「翔!!」
 唯「果心居士、許さん!!」

 唯。果心居士の体にヨーヨーを投げつけるが何の手ごたえもなく、逆に、果心居士の口から冷凍ガスのようなものを浴びせられて、身動きできなくなる。

 と、不意に、まだ術がかかっているやえが、あの子守唄を低い声で口ずさみ始める。

 翔「なんなのじゃ、この得体の知れぬ気持ちは? 寂しいような、心温まるような……不可思議な……」
 唯「頭は忘れても、心が覚えちょる!! あんたの心は懐かしさに震えちょるんじゃーっ!!」

 ガスを浴びながら、唯が叫ぶ。

 
 翔「懐かしい? 時空のはざまに落とされ、時から見放されたわらわに過去を慕う心が残っておると言うのか?」

 翔が自問して星空を見上げると、赤ん坊の自分と唯が無心にたわむれている姿が見えた。

 翔「唯……」

 翔の瞳に涙が浮かぶ。

 翔が影の呪縛を解き放った瞬間だった。

 魔破羅おじさんでさえ死と引き換えにやっと影から抜けたと言うのに、精神力だけで克服してしまうとは、さすが翔である。

 翔は、やえの額に手を当てて正気に戻すと、自分の持っていた女雛を託す。

 
 翔「これを唯に……」
 やえ「翔様ぁ」

 果心居士は気付かず、なおも唯にガスを浴びせていた。

 果心居士「ヴァジュラを手にするのはひとりでよいのじゃ」

 
 翔「果心居士!!」
 果心居士「翔……」

 翔、明白な叛意を目に宿し、果心居士に向かってビームを放つ。

 それは良いのだが、翔の右手が平べったくピンク色に塗られているのは、ビジュアル的にいまひとつ。

 
 果心居士も手から青いビームを放ち、翔のビームを受け止める。

 二色の光は一進一退、しばらく均衡を保つが、やはり果心居士には勝てず、最後は翔がビームの直撃を受け、周囲が凄まじい閃光に包まれる。

 翔「あああああーっ!!」

 身悶えしながら絶叫を上げると、地面を転がり落ちる翔。

 言うまでもないが、これは、「スターウォーズ・ジェダイの復讐(帰還)」で、皇帝に殺されそうになったルークを、父親であるダースベーダーがなんとなく改心して命懸けでルークを助けたシーンのパク、いや、オマージュなのである。

 ……

 つーか、果心居士、なんで唯にそのビームを使わなかったの?

 唯「翔ーっ!! 翔!!」

 唯が慌てて駆け寄り、その体を抱き起こすが、翔はすでに瀕死の状態だった。

 
 翔「唯、こんなことで泣いてどうする? 影には、情けも涙もないのよ」
 唯「うん……」

 だが、翔は気丈にもにっこり微笑み、妹・唯を叱咤するように励ます。

 翔「ヴァジュラを手にできるのは、もう、あなただけ、影を、影を倒すの……」
 唯「必ず、必ず!!」
 翔「唯……」
 唯「翔!!」
 翔「唯、ゆ……」

 なおも唯の名前を呼ぼうとする翔だったが、やがてがっくりと頭を落とし、儚過ぎる一生を閉じる。

 それにしても、今更だが、林さんの演技は子役の次元を超越してるよね。

 
 唯「姉ちゃん!!」

 その華奢な体を抱き締め、ぼろぼろと涙を流す唯。

 唯「おぼえちょる、翔の香り、わちにはわかる。今、翔がわちの体の中に……」

 
 唯が翔の体を抱いたまま立ち上がると、鉄鉢がひとりでに割れ、額にカーン(不動明王)の梵字が浮かび上がる。

 それが一旦消えると、

 
 今度は、今まで見たことのない新しい梵字が浮かび上がる。

 やえ「アーンク……大日如来の梵字!!」

 それを見たやえが、驚きに目を見張り、うやうやしく頭を垂れる。

 そう、唯は翔のバイ(薬師如来)の梵字を受け継ぎ、不動明王から大日如来にクラスアップし、いわば「完全体」となったのだ。

 果心居士「翔が倒れても、もうひとりおるぞ、ふっはっはっはっ」

 遂に手駒をすべて失った果心居士だったが、諦め悪く、今度は唯を使ってヴァジュラを手に入れようと画策するのだった。

 ラスト、翔の体を抱いて、前を見据えて歩き続ける唯の姿を映しつつ、幕となる。

 最初に書いたように、翔にはもっと長生きして欲しかった。

 そしてもっと色んなコスプレをして欲しかった。

 あと、撮影の合間に、林さんと浅香さんがどんな会話をしてたのか、想像するとめっちゃ楽しい。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第38話「やめて唯!父さんを殺さないで」

2025-06-14 19:13:31 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第38話「やめて唯!父さんを殺さないで」(1987年9月24日)

 前回のラスト、実の父親・魔破羅こと小源太を追って魔幻の森へ消えた結花と由真。

 OP後、とあるお寺の本堂で、帯庵と般若が話している。

 
 帯庵「小源太が……なんというむごいことを……唯はどうしておる」
 般若「魔幻の森へ姉たちを助けに行くと……いまは私が抑えておりますが、いずれは聞きますまい」
 帯庵「いかん、なんとしても唯を行かせてはならん、唯が影に飲まれては、全ては終わりじゃ」
 般若「はっ、帯庵殿、誰かが結花と由真を救わねばなりません。ならばこの私が……」
 帯庵「……」
 般若「役目とはいえ、娘たちばかりを死地へ赴かせたこの身、今更惜しい命でばございません」
 帯庵「般若……」
 般若「帯庵殿、唯をお返し致します」

 死を覚悟の上で決意を述べる般若だったが、唯が、背後の戸を蹴破ってあらわれる。

 
 帯庵「唯」
 唯「魔幻の森へはこのわちが行く」
 帯庵「たわけ、血迷うたか」
 唯「血迷うてなんかおらん!! ただ悩んじょるのは、わちの性に合わん!! 行くち決めたら行くだけじゃ!!」
 帯庵「お前には分かってはおらん」
 唯「何がじゃ」
 帯庵「姉たちを助けに行く、それがなにを意味するかじゃ……姉たちを助けることはその父・小源太を、いや、魔破羅を倒すことじゃ」
 唯「……」
 帯庵「影に飲まれることはおそろしかことぞ、結花と由真が小源太自らの手で闇に飲まれれば飲んだその父を倒さぬ限り、救うことは出来ん」
 唯「倒しちゃる、わちがこの手でぶっ倒しちゃる!!」
 帯庵「結花と由真の父だぞ」

 
 唯「じゃけん、じゃけん、わちが倒さんと誰が倒すんじゃ? 誰に姉ちゃんたちを救い出せるんじゃ。こうしちょる間も、姉ちゃんらは、姉ちゃんらは……」

 目に涙を溜めて叫ぶ唯。

 サブタイトル表示後、その結花と由真の様子が映し出される。

 およそ現実の世界とは思えない荒涼とした空間を、父の名を呼びながら歩いている二人。

 その前に、トップレスの小源太があらわれる。

 
 小源太「何故追って来たのだ?」
 由真「おやじぃ」
 結花「父さんは私たちをここから帰そうとしてくれたわね。影には入れまいと」
 由真「それはおやじの体の中にまだ風魔の血が流れてるから……」
 小源太「森の奥深く、ここまで踏み込んでしまった以上、お前たちに今までのような生はないと知れ。もはや、お前たちの道はただ二つ、死ぬか、それよりもまだ恐ろしい生き地獄、影に落ちるより他にない」
 結花「怖いものなんて何もないわ、ただ、父さんと生きたいだけだもの。父さんを父さんって呼びたいだけだもの……影だとか生き地獄だとか、そんなもの関係ない!!」

 小源太、刀を抜いて、その刀身から赤い血をしたたらせ、その一帯を、それこそ地獄のような真っ赤な空間に塗り替える。

 
 小源太「見るが良い、どれほどの多くの人の血を吸ってきたことか……私はお前たちを影に飲む、たとえ親子三人、生き地獄へ落ちようとも」

 小源太が刀を左右に振り下ろすと、刀身に付いた血が地面に線を描き、そこから炎が吹き上がる。

 結花「やめて、もう一度、もう一度やり直して!! 私たちの世界へ帰ってきて、父さん!!」
 由真「おやじ……おやじってなんだよ? なんなんだよっ」

 その頃、唯は、風間家の物置部屋で、姉たちや父・小太郎の写真を見ていた。

 唯「どうすればいいんじゃ、父ちゃん……」

 唯は、ふと、小太郎の遺品の中に、「我、いつか再び小源太とあいまみえん。この刃を向けんが為であったとしても」などと柄に彫り込まれた苦無があるのを発見する。

 
 唯「父ちゃん、しっちょったと、小源太さんが影に飲み込まれるかも知れんかったことを……そんでも、そんでも小源太さんを倒すつもりやったと?」

 小太郎が苦無に残した決意を読み、心を震わせる唯。

 唯「父ちゃんは風魔一の戦士じゃった。わちは父ちゃんの跡ば継ぐ娘じゃ。じゃからこれはわちの苦無じゃ!!」

 若干、ジャイアニズム臭のする論法で、その苦無を自分の所有物にしてしまう唯。

 唯「小源太さんを助けられん時は、どうしても救えんかった時は、わちが姉ちゃんらを助けて、小源太さんをたおさにゃならんとやね……たとえ姉ちゃんらに恨まれたとしても、わちが倒さんと」

 苦無を握り締め、ぽろぽろ涙をこぼしながら、漸く己を迷いを断ち切る唯であった。

 その後、自分の部屋でプロテクターをひとつひとつ丹念につけていく唯。

 
 最後はカメラ目線で鉄鉢を装着する。

 
 CM後、唯が再び「魔幻の森」の入り口へやってくると、面をつけた翔が、謡いながら、ひとさし舞っていた。

 でも、これ、ずーっと舞ってたんじゃなくて、唯の到来にあわせてついさっき始めたんだろうなぁ。

 翔は面を外し、

 
 翔「よう来たな、唯」
 唯「翔、あんたとは争わん。わちをよく見ない。あんたとわちは……」
 翔「うぬとわらわは戦うさだめ、世迷いごとは聞かぬ!!」

 以前も書いたが、二人とも標準語とは程遠い言葉遣いなのに、ちゃんと意思疎通ができるんだから、日本語って懐が深いよね。

 念のため、二人のやりとりを標準語に直すと、

 翔「よく来ましたね、唯」
 唯「翔、私はあなたと争う気はありません。私をよく見なさい。あなたと私は……」
 翔「あなたと私は戦う運命なのです。世迷言は聞きませんことよ」

 となる。

 と、そこにバトルスタイルの般若があらわれ、

 
 般若「ここは私に任せて行け。私もすぐ後を追う」

 翔を牽制し、唯を森の中へ行かせる。

 いや、あんたが行くんじゃなかったの?

 
 森の奥深く、唯は、姉たちが、丸い石の台座のようなものの上に寝かされているのを見つける。

 駆け寄ろうとすると、小源太、いや、魔破羅おじさんがあらわれ、

 
 魔破羅「風間唯、この眠りより醒めし時、結花と由真は影となる。見るが良い」

 魔破羅が刀を振るって結花たちの衣服の一部を切り裂くと、その下にある筈の梵字が消えていた。

 唯「梵字が、梵字が消えちょる……姉ちゃん、いかん、影になんか飲み込まれたらいかん!!」

 唯、必死に呼びかけるが、特殊な眠りに落ちているのか、姉たちはピクリとも動かない。

 唯「なんでじゃ、ほんとの父ちゃんがなんでそんげなことをするんじゃ?」
 魔破羅「良い目をしている、風間唯、だが、ヴァジュラを手にするものは二人もいらぬ。ヴァジュラは翔様がその手にするであろう。お前はこの私の手で討たれるのだ」

 雷鳴が轟き、暗雲が天を覆い、周囲は漆黒の闇に閉ざされる。

 ビジュアル、システム的には宇宙刑事シリーズの「魔空空間」に近い。

 唯、魔破羅の剣をプロテクターで受け止め、

 
 唯「お前も風魔なら、なんでわちらとともに戦わん? お前は負け犬じゃ。見ない、姉ちゃんらは泣いちょる。悔しくて、悔しくて心の奥で泣いちょる!!」

 唯、相手を挑発して、小源太の心の底に残っている良心を呼び覚まそうとするが、

 魔破羅「ふふふ、世迷いごと抜かさず、私を倒してみろ」

 年季の入った魔破羅おじさんには通用しない。

 
 魔破羅「ひとつ教えてやる、お前の父、小太郎を殺すよう命を下したのはこの私だ」
 唯「……」
 魔破羅「私はな、己の為とあらば、竹馬の友であろうが娘であろうが殺す」

 などとうそぶく魔破羅であったが、今となっては確かめようのないことである。

 1話の時点では、作戦の指揮を取っているのは翔たちの筈だから、虚言の可能性が高い。

 あと、ケンシロウVSジャギ戦で、ジャギが「シンを焚きつけたのは俺だ」みたいなことを言うシーンを思い出してしまった。

 
 魔破羅の刀の切っ先を、ヨーヨーの表面で受ける唯。

 
 次の瞬間、二人は全く別の場所に移動している。

 と言うより、彼らのいる空間が目まぐるしく変化しているのだ。

 唯、魔破羅の猛攻を防ぎながら、一瞬ヨーヨーを投げそうになるが、なんとか堪える。

 唯(出来ん、こん人は姉ちゃんらの本当の父ちゃんなんじゃ……)

 
 魔破羅「立て、良く聞け、風間唯、結花と由真はまだ本当には影に飲まれてはおらん。体は動かぬが、心の中では邪と正、二つの意志が激しく戦っている。何故ひとおもいに飲まなかったか分かるか? お前の目の前で娘たちを影に飲み込む為だ。ぬふふふっ、はっはっはっ!!」

 魔破羅の笑い声と共に、再び姉たちのいる場所へ戻る唯。

 唯は攻撃をかわしながら、姉たちのそばに行き、

 
 唯「姉ちゃん、あれは姉ちゃんらの父ちゃんなんかじゃなか、魔破羅ちゅう鬼じゃ、わちは倒す、あの鬼ば倒す!!」

 魔破羅おじさんのアシストもあって、漸くホゾを固める唯。

 無論、さきほどから魔破羅が無用の舌を舞わせているのは、優柔不断の唯を怒らせて戦わせ、自分を殺させるためなのである。

 唯が立ち上がり、魔破羅をにらまえると、

 
 唯「風よ、雲よ、この身に走る、風魔の熱い血が泣いちょる。清く、気高い魂を燃やせと叫んじょる!!」

 次の瞬間、唯はヘッドライトの川をバックに、都市の暗闇の中に仁王立ちしている。

 この大胆な場面展開は素晴らしい。

 唯「こらえきれん怒りに、魂がふるえちょる。魔破羅、お前の体ば叩き壊して小源太さんの魂をこの手に取り戻しちゃる!!」

 防戦一方だった唯、ここで初めてヨーヨーを投げる。

 
 高層ビルの下で、セーラー服の少女と甲冑をつけた中年が戦うと言う、シュールな「絵」

 この辺は、それこそ宇宙刑事シリーズのノリに近い。

 千変万化するステージを行き来しながら、風魔最強の戦士と謳われた小源太を相手に、苦しい戦いを強いられる唯。

 と、再び姉たちのいる森に戻るが、

 
 唯「由真姉ちゃん……」

 意識のない筈の由真が、唯の腕に触れ、頬に涙を伝わらせる。

 結花も同様に涙を流していた。

 一方、翔と般若は引き続き睨み合っていた。

 
 と、翔が目からビームを放ち、般若を吹っ飛ばす。

 般若「唯、邪悪なものに負けてはならん!!」

 唯と魔破羅の死闘はいつ果てるともなく続く。

 唯が魔破羅の剣をヨーヨーでへし折れば、魔破羅はヨーヨーをキャッチして鎖を切る。

 事実上の頂上決戦と言うべき、見応えのあるバトルであった。

 
 鎖を投げ捨て、プロテクターの付いた腕を構える唯。

 と、その中に仕込んでおいた例の苦無に気付き、それを引き抜くと、魔破羅に突きつける。

 
 唯「我、いつの日か再び小源太とあいまみえん。この刃を向けんが為であったとしても……」
 魔破羅「……」

 それを聞いた魔破羅、なんとも言えない悲しそうな顔になると、何を思ったか、自ら甲冑を脱ぐと、石の台座の上に飛び降りると、折れた刀を結花の首筋に擬して、

 
 魔破羅「娘らをこの刃にかければ、お前も心置きなく戦えるであろう」
 唯「実の娘を……そげなこと……いかん、いかーんっ!!」
 魔破羅「結花、由真、父の手にかかるは本望ぞ!!」

 構わず、折れた刀を振り上げる魔破羅。

 唯「やめぇーっ!!」

 唯、無我夢中で苦無を投げる。

 
 魔破羅「うっがっ!!」

 苦無は魔破羅のみぞおちに深々と突き刺さる。

 魔破羅、いや、小源太は結花の体を下ろすと、

 小源太「待っていた、この時を、見事だ、唯、よくぞやってくれた。ありがとう」
 唯「……」

 無論、小源太は娘を本気で殺すつもりはなく、唯に自分を殺させるためにそんなポーズを取っただけだったのである。

 小源太「結花、由真、これで本当に私はお前たちの父に戻れる。本当の父に……こうなることでしか私が影から解き放たれることはなかったのだ。苦しかったろう、結花、由真、お前たちにかけられた呪いを解いてやろう……」

 小源太、二人に話し掛けると、先の欠けた刀を自分の腹に突き立てる。

 
 唯「小源太さん……」

 小源太は、穏やかな、満足そうな笑みを浮かべて絶命していた。

 と、小源太の体から梵字が消えると共に、結花と由真の体に梵字が甦る。

 
 同時に、禍々しい森は忽然と消え、さきほどとは打って変わった、爽やかな風の吹く高原の只中に彼らはいるのだった。

 この場面転換も実にセンスが良い。

 
 やがて結花と由真が目を覚まして、傍らにうずくまってる父親に気付くのだが、堀田さんのお尻と股間が、視聴者の視界にストレートに入ってくるのが、ちょっとキツい。

 が、捨てる神あれば、拾う神あり。

 
 二人が立ち上がろうとした際、由真のスカートの中に、ほんの一瞬だが、白いものがはっきりと見えるのだった。

 本作……と言うより、スケバン刑事シリーズ唯一の、ガチのパンチラではないかと思う。

 アクションの多いドラマなので、たまにスカートの中が見えても、ブルマか何かの見せパンを履いてるケースがほとんどだからね。

 アクションシーンじゃなかったので、油断して見せパンを履き忘れた中村由真さんに、管理人は満腔からの感謝を捧げたい。

 それはともかく、

 
 結花「父さん!! 父さん……」
 由真「おやじ……」

 小源太の顔には、命を捨てて娘を影から守り抜いた父親の誇りが微笑みとなって刻まれていた。

 と、三人が一斉に樹海の上空へ視線を向ける。

 そこに、小源太の姿が浮かび上がり、結花たちに優しく語り掛ける。

 
 小源太「お前たちの父は幼い頃よりお前たちを優しく見守り、いつくしみここまで育て上げて来た小太郎ただひとり、小太郎の教えを守り、しっかりと生きるのだ、結花、由真!!」

 影から解放された小源太の魂は、澄んだ空の中へ消える。

 それを般若も見ていた。

 
 般若「小源太殿、安らかにお眠りください」

 結花と由真が小源太のなきがらを寝かせていると、彼らの眼前に翔が忽然とあらわれる。

 翔「ふふふふふふ」

 思わずヨーヨーを構える唯だったが、翔の背後に黒衣の老人……果心居士の姿が浮かび上がる。

 
 翔「そう身構えるではない、風間唯、今宵は静かにその者を弔うが良い。だが、次に会うときはどちらかが死ぬ時!! 良いな?」
 唯「翔!!」

 翔と果心居士は掻き消すようにいなくなる。

 ともかくこれで一件落着かと思いきや、

 
 結花「唯、あなたがその手で倒したのね、父さんを……」
 唯「……」

 結花と由真が、氷のように冷たい眼差しを唯に向けているところで「つづく」のだった。

 そろそろ最終回だと言うのに、また姉妹の反目が始まるのかといささかうんざりしてしまう管理人であった。