第42話「麻宮サキよ永遠に 甦れ!奇跡のヨーヨー」(1987年10月29日)
いよいよ最終回である。
前回、もろもろの犠牲の上に、ついにトリヴィドヤーなるものを手に入れた唯。
と言っても、それは目に見えるものではなく、天輪聖王を倒す為の最終兵器ヴァジュラを手に出来る資格のようなものらしい。
唯、図書室に天眼不動明王と男雛、女雛を置くと、

唯「わちは、姉ちゃんたちを見殺しにしてしもうた、わちの戦いは一体なんなんじゃ? 風魔の戦いって、風魔の宿命って一体なんなんじゃ」
それはこっちが聞きたいことだっ!!!!
ほんと、冷静に考えたら、なんで忍者が、世界を救う宿命を背負ってるんだって話ですよ。
と、同時に、前回、あれだけ悲愴な覚悟をかためながら、いまだにうじうじと心を迷わせている唯の姿に、いい加減ウンザリする管理人であった。
つーか、泣くぐらいなら、結花たちを助けてやればよかっただろうがっ!!
それはともかく、そこに般若、いや、依田が入ってくる。
唯、手の甲で涙を拭くと、珍しく生徒の口調になって、
唯「依田先生、人から愛されても、自分がその人に愛で応えられん時、どうすればいいんじゃろう? わちは、色んな人と出会い色んな愛を受けてきた、その人たちに愛で応えたくても、もう誰もおらん!! わちの戦いは何の為の戦いなんじゃ?」

依田「般若としてなら、宿命の一言で答えられるでしょうけどね。教師・依田としては、人間の愛こそ……」
唯「……」
依田「バツですね、うまく答えられません」
依田は何か言いかけるが、結局返答を拒否して立ち去る。
依田(許せ、唯、私は教師である前に、あくまで風魔鬼組・般若なのだ……)
その後、心の中で唯にカッコよく詫びる般若であったが、既に風魔の忍びそのものが全滅してしまった今、鬼組もへったくれもないと思うんだけどね。
放課後、依田が正面玄関の前で待っていると、三つのアイテムを抱えた唯が、これで何度目だと言う気もするが、迷いを断ち切った顔をして出てくる。
ちなみに、最終回だと言うのに、クマやゴロウたち、三姉妹の取り巻きたちは一切登場しない。
唯「依田先生、いや、般若、わち、やるしかないんじゃ!!」
その夜、二人は不動明王像と雛人形を携えて、とある岩山の上に立ち、赤い影星が少し欠けた月のすぐそばで怪しく輝いているのを見上げていた。

般若「赤き星、月と交わりて天輪を成す、光地に伏し聖王を生まん。明日は月が満ちる、影星が月の中央に来たとき、果心居士は天輪聖王に生まれ変わる」
唯「影星が月の真ん中に来るまで、あとどれくらい時間があるんじゃ」
般若「約20時間、不動明王像、男雛、女雛を置く場所は結花と由真が調べてくれた」
般若は例の紙を取り出して見せる。
唯(結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、ゆるしちくり……)
いちいち結花たちのことを思い出して詫びる唯。
この人、ほんとにトリヴィドヤー有資格者なんでしょうか。
帯庵は、迷ったらトリヴィドヤーはキープできないみたいなこと言ってたけど、迷ってばっかりやん。
それはともかく、

般若「我々がいるのはここだ。男雛を置く山はあれだ。ここから直線距離にして10キロある」
唯「女雛は」
般若「あの山だ、直線距離にして15キロ、山の上り下りを考えると倍、が、お前と私ならわけもない距離」
まず、不動明王を彼らのいる岩の上に置くと、像はひとりでに回転し始め、ある方角に向かって固定される。
ついで、般若が男雛を、唯が女雛を、定められた場所に持って行く。
般若が、男雛を岩の上に置くと、これもひとりでに回転しだし、やがて黒くて硬い石像のようなものに変わって止まる。
ひとまずホッとする般若だったが、そこを、前回も出てきた異形の戦士たちが襲ってくる。
苦戦しつつも、般若は彼らをすべて斬り殺す。
最後に唯が女雛を置くと、男雛と同様にひとりでに回転~固定して材質が変わり、その目から赤い光線が空に向かって放たれる。

同時に、不動明王像、男雛からも異なる色の光線が発射され、三つの光は空中でひとつになると、その直下に落ち、

大爆発を起こす。
唯「あそこじゃ、あそこにヴァジュラが!!」
唯が駆けつけると、岩に、一本の長剣が突き刺さっていた。

その、まんまRPGの終盤に出てくる伝説の剣っぽい武器こそ、長い間謎であったヴァジュラの正体なのだった。
うーん、はっきり言って普通過ぎる。
唯「あれが、ヴァジュラ……」
唯が近付こうとするが、頭上から電撃が落ちてきて足元で爆発する。
同時に、明るかった空に暗雲がたちこめ、アビラウンケンソワカ~と言う果心居士の唱える真言が響き渡る。
唯「果心居士、何処じゃ、何処におるんじゃ? 何処じゃ、姿を見せんかい!」
般若「唯!!」
唯「般若!!」
と、背後から、傷だらけの般若が刀を支えにしながらやってくる。

般若が倒れたのを見て唯が駆け寄ろうとすると、電撃が落ちてきて般若に命中する。
果心居士の声「風魔の小娘よ、ヴァジュラを諦め、この場を去れ」
唯「なんてやー、せからしかーっ!!」
果心居士の降伏勧告に唯が反発すると、再び稲妻が落ちて来て、般若をビリビリさせる。
般若「ぐわあああーっ!!」
唯「果心居士、出て来いーっ!!」

般若「唯!! トリヴィドヤーを使い、ヴァジュラを抜けーっ!!」
鬼の形相で叫ぶ般若。
改めて思うのだが、この突っ込みどころ満載のドラマがなんとかドラマとして成立し得ているのは、流行さんの存在感と熱演に拠るところが大だったのではないか、と。
唯「トリヴィドヤー……」
と、再び般若に電撃が浴びせられる。
唯「般若!!」
般若「気を散らすな、うっ、ぐあああーっ、トリヴィドヤーを失うぞ、そうなればヴァジュラは抜けんぞーっ!!」
唯、精神を集中させてオーラを身にまとい、額にアーンクの梵字を浮かび上がらせると、ヴァジュラに向かって歩き出す。
が、電撃は間断なく般若に襲い掛かる。
般若「唯、急げーっ!!」
果心居士「剣に近寄るな、近付いたらその男の命はないぞ!!」
般若「構うなーっ!! ヴァジュラを取れーっ!! うううっ」
まるでラムちゃんにお仕置きされているあたるのような状態で、声を張り上げる般若。
唯、怒りの形相でヨーヨーを握り締め、
唯「果心居士、許さん!!」
丘の上にあらわれた果心居士に向かってヨーヨーを投げつけるが、あっさりキャッチされ、

逆にヨーヨーのチェーンを伝って、激しい電撃を浴びせられる。
衝撃で吹っ飛んだ唯に、般若が駆け寄って抱き起こす。
般若「唯!!」
唯「般若……」
見れば、額の梵字が消えていた。

果心居士「ふっふふふ、心弱き娘よのう、トリヴィドヤーはワシが貰い受けた。天輪聖王になった時、この手でヴァジュラを抜いてやろうぞ」
しかも、果心居士の右手に唯のアーンクが写し取られているではないか。
そう、唯が苦心惨憺して手に入れたトリヴィドヤーを、こともあろうに果心居士に横取りされてしまったのである。
つーか、トリヴィドヤー(と梵字)って、スーパーの半額シールのように、人から人へ簡単に移せるものなの?
だったら、赤ん坊の唯と翔から、梵字を抜き取ってしまえばよかったではないか。
般若「おのれぇーっ!!」
般若、破れかぶれになったように、刀を抜いて果心居士に突っ込んでいき、見事その体を刺し貫くが、無論、その程度の攻撃で倒せるような相手ではなく、

般若「ぐわぁあああーっ!!」
逆にその頭を鷲掴みされ、強烈な電撃を注ぎ込まれて悶絶する。
果心居士は、嘲笑いながら姿を消す。
慌てて般若の元に駆け寄る唯。

唯「般若、般若!!」
般若「何故だ、何故私を助けようとした? 何故ヴァジュラを抜かなかった? 愚かだぞ、唯」
唯「わちは、結花姉ちゃんと由真姉ちゃんを見殺しにしてしもうた、もう二度と人を見殺しにしとうなかったんじゃ!!」
般若「唯……」
唯「許しちくり、般若、わちはもう駄目じゃ」
般若「諦めるな、あと一度だけチャンスがある。果心居士は天輪聖王になる瞬間、必ずヴァジュラの前に現れる筈だ、その時が残された最後のチャンスだ」
唯「じゃけん、じゃけん、わちにはトリヴィドヤーもない!!」
般若「美しい……この世の中を動かしていくのは、人間なのだ。神でもなければ悪魔でもない、ましてや、天輪聖王などに支配されてはならない。お前のような美しい心を持った人間がひとりでも増えればこの世は救われる。お前のやったことは、間違いではない。愚かでもない。その美しい心を持って天輪聖王として立ち向かえ!! 教師依田としてお前に言いかけた答えを言おう、人間の愛こそ、この世の中で最も力強い武器になるのだ」
唯「……」
般若、そう言って唯に微笑みかけるが、最後にもう一度「唯!!」と叫んで絶命する。

唯「般若!! 般若ーっ!!」
その体を抱き締めて、絶叫する唯。
にしても、今まで散々「人としての情を捨てねば勝てまへんのや」みたいなことを、般若も帯庵も口が酸っぱくなるほど言っておきながら、最後の最後に「やっぱ愛が一番やったわ」と、アイフルのCMみたいなことを言われても困るのでヤンス。
じゃあ、今までの大仰なお膳立てはなんだったのってことになるからねえ。
CM後、唯がその辺の岩に背をもたれて寝ている。
寝過ごしたらどうするつもりだったのだろう?
夢の中を、今まで散って行ったたくさんの人たちの面影が通り過ぎて行く。
礼亜、魔破羅おじさん、小太郎、翔、帯庵、般若、そして……
生まれ育ったお寺の本堂で寝ていた唯を、由真が叩き起こす。

唯「なんすっとか」
由真「学校遅刻したって知らないからね」
唯「ここは宮崎、学校は東京じゃろ」
由真「だから汽車で行くんだろ」
唯「あんた、バカやないと、何時間かかると思うちょっとやー」
由真「うるせえな、このチビ」
唯「なんやこのドッカン娘」
由真「この野郎」
唯「なんよーっ」
水を得た魚のように、元気に取っ組み合いの喧嘩を始める二人。
そこに結花があらわれ、木魚用の大きな桴(ばち)で二人の頭を叩く。

結花「よしなさい」
由真「だってこいつが……」
結花「もう、何度言ったら分かるのよ、せっかく宮崎で平和に暮らせると思ってたのに……そんなに喧嘩ばっかりするんだったら朝ご飯抜きよ」
無論、それは現実ではなく、二度とかなうことのない唯の夢であった。
これ、ほんとならめちゃくちゃ泣けるシーンになる筈なのだが……
唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん……」
眠りながら涙を流してつぶやいていた唯、ハッと目を見覚ます。
寝ている間に、空はすっかり暗くなっていた。
唯「影星が月に消えちょる……わち、今こそ、みんなが与えてくれた愛に応えるから、みんなで見守っちくり!!」
既に影星は月の向こうに移動して見えなくなっていたが、代わりに、まんまるいお月様が血のように禍々しい朱色に染まっていた。

と、いつの間にかヴァジュラのそばに戻っていた果心居士、やおら頭巾を外し、そのつるぴかハゲ丸くんのような頭に赤い月からのエネルギーを受ける。

その光を受けた果心居士の顔の、干からびた皮膚がパックのように剥がれて行き、その下から現れたのは、

意外にも、目元も涼やかな美少女であった!!
そう、醜い老人から一気に美少女に変身しちゃうと言う、ツッコミどころだらけの終盤の中では、なかなかセンスの良い演出であった。
要するに果心居士から天輪聖王にクラスチェンジしたと言う訳なのである。

黒いフードも、天知茂先生の早着替えシーンのように紐で後ろに引っ張られ、一瞬で巫女のような神秘的な白装束に変わる。
天輪聖王「我、ついに天輪聖王となれり!!」
選手宣誓のように右手を突き上げ、高らかに宣言する天輪聖王。

最終盤だけの出番だが、天輪聖王を演じるのは、劇場版のヒロインだった小林亜也子さん。
眉はケンシロウ並みにぶっといが、なかなかの美形である。
元々、「スケバン刑事3」は、この小林さんをヒロインにして制作される予定だったのだが、諸般の事情により、番外編として予定されていた「スケバン忍法帖」が「3」として作られ、結局、小林さんが主役のシリーズはお流れになってしまったのである。
それはさておき、天輪聖王は、アーンクの刻まれた右手でヴァジュラの柄を掴んで引き抜く。
天輪聖王「我、聖王となりて、ヴァジュラを手にす。さすれば全宇宙に我の力に優るものなし。今こそ全宇宙を闇に閉ざさん!!」
いきなり全宇宙と来ましたよ!!
スケールがでか過ぎて、ついていけない。
つーか、そもそも宇宙って、最初からほぼ真っ暗じゃないかと……

だが、その時、シュルシュルと言う音がこちらに近付いて来るのに気付き、そちらに目を向ける天ちゃん。
小林さん、好みのタイプとは言いがたいが、美人であることは間違いない。
ただ、「スケバン刑事」のヒロインをやるには、いささかオーラが足りない気もする。
無論、シュルシュルと言う音は、ヨーヨーの風切り音だった。

唯「三代目スケバン刑事、麻宮サキ、またの名を風魔鬼組・頭、風間唯、影を操り、この世を邪悪の闇に包もうとするお前を許す訳にはいかん!!」
全宇宙を支配しようかと言う途方もない敵に対し、思いっきり場違いな名乗りを上げる唯。
ま、そう言う番組なんだから仕方ない。
天輪聖王「梵字すら消えた小娘に、何が出来る?」
唯「しゃからしか!! この世を闇に閉ざすなど、天が許さん、人が許さん、わちが許さん!!」

そう叫んでヨーヨーを持つ右手を天に突き上げると、空から幾筋もの青い光が降って来て、ヨーヨーに集まる。
これは、既に天に召された礼亜、翔、帯庵たちの魂が乗り移っている……と言うことなのだろうか?
唯「許さん、許さん!!」
唯、青く光るヨーヨーを投げる。
天輪聖王、ヴァジュラで受け止めようとするが、

なんと、あれだけみんなが血眼になって探していた伝説の最終兵器ヴァジュラが、その一撃であっさり折れてしまうのだった。

天輪聖王「!!」
これにはさすがの天ちゃんもびっくりし、ひょっとしてパチモン掴まされた? みたいな顔になる。
ヴァジュラ、まさかの見掛け倒し!!
しかし、今までヴァジュラ、ヴァジュラと散々言ってきたのはなんだったのだろう?
実に虚しくなってくるではないか。
唯は、間髪入れず、野球の投球フォームのようなポーズを取ると、渾身の力を込めて、ヨーヨーを投げ飛ばす。
天輪聖王「うっ!!」
驚いたことに、天下の天輪聖王ともあろうものが、そのヨーヨーをまともに食らい、

そのまま、あっさり爆死してしまうのだった。
……
天輪聖王も見掛け倒し!!
これなら、果心居士時代の方がよっぽど強かったではないか。
それにしても、引っ張るだけ引っ張っておいてこのあっけなさ……
当時の視聴者の脱力ぶりが目に浮かぶようである。
せめて、倒される前に、その圧倒的な強さの片鱗でも見せてくれていたら……
それはそれとして、その爆発の衝撃で気を失う唯。
再び目を覚ましたときは、世界は元通りの平和を取り戻していた。
唯「終わった……」
唯はつぶやくと、立ち上がって歩き出す。
その結果を見たものもいなければ、その勝利を讃えてくれるものもいない、極めて虚しく寂寞とした戦いを終えた唯の顔には、微笑みすら浮かんでいなかった。
暗闇指令との別れのシーンもないまま、次のシーンでは、早くも故郷の宮崎の田舎駅に唯を乗せた電車が滑り込んでくる。
ちなみにその駅の名前が「大日村」で、何気に大日如来の伏線になってたんだね。

相変わらず暗鬱な顔の唯だったが、そこへどやどや現れたのが、1話に出て来た地元の下っ端連中であった。
唯「あんたたち……」
一同「唯番長、ばんざーい!!」
唯「ありがとう、ほんとんごつありがとう」
嬉しさのあまり涙ぐむ唯。
しかし、西郷どんのパチモンみたいなこのキャラ、演じる俳優さんも、まさかまたこの役のオファーが来るとは夢にも思ってなかっただろうなぁ。
生まれ育った寺に行き、懐かしい大木を見上げて祖父・帯庵のことを思い出し、再び涙にくれる唯。

唯「よし、みんなで大掃除じゃ」
一同「はいっ」
それでも気を取り直し、下っ端たちに号令を掛ける。
このタイミングでEDのイントロが流れ出し、台詞は聞こえなくなるのだが、ここで、天輪聖王の最期以上にとんでもない結末が訪れる。
寺の参道を、女子高生らしい二つの靴が歩いている。
二人は、本堂の裏手に回る。
そこでは、唯がたらいで洗濯をしていたが、気配に気付いて顔を上げれば、


そこに、死んだ筈の結花と由真が立っていた!!
うーん、前回も書いたが、さすがにこのオチはないよね。
あの愁嘆場はなんだったんだ、視聴者を愚弄するのもいい加減にしろと言いたくなる。
なお、本編では台詞は聞こえないのだが、親切なことに、DVDの特典にそのシーンの会話が漏れなく収録されているので、今回はそれを参考にしながら書くとしよう。

唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、生きとったと?」
由真「妹より先に死んでたまるかよ」
結花「唯……」
……
そんだけかいっ!!!!(管理人の魂の叫び)
般若の場合、その死を看取ったのが唯自身だから、てっきり死んだのだと思って放置していたのを、暗闇指令の配下あたりが(唯が眠っている間に)病院へ担ぎ込んだ、と言う解釈も成り立つのだが、結花と由真の場合、般若にしっかり看取られながら確実に死んでいたのに、それが何事もなかったかのようにピンピンしていると言うのはさすがに無理がある。
ま、生き返っちゃったものは仕方ないので話を続けよう。
唯「うれしか、わち……わち」
結花「もう絶対に離さないわよ、唯」
唯、迷わず飛び付いて、強く二人の体を抱き締めながら、嬉し涙に暮れる。
さらに、

依田「おおーい」
唯「依田先生!!」
般若こと依田まで、けろっとした顔であらわれる。
ま、般若については今書いたようにまだ弁解の余地があるんだけどね。

依田「もう、この人たち、ほんとに冷たいんだから!! 私に全部荷物預けて、さっさと行っちゃうんですよ、バツですよね、もうバツ!!」
ややオカマっぽい口調でやかましく騒ぎ立てる依田。
その後、改まった様子で、
依田「これからは姉妹三人、平和に暮らせよ」
般若としての言葉に、三人は力強く頷く。
依田も、どうして助かったのか、全く説明しようとしないし、唯も聞きもしない。
そして、例によって唯と由真がくだらないことから喧嘩になり、境内で追いかけっこを始める。
それが何よりも雄弁に平和の到来を語っているように見えるのだろう、結花も依田も、幸せそうに見詰めている。
EDが終わると、再び声が戻り、

由真「姉貴、どうにかして」
唯「もう許さんかいね」
由真「なんだよ、もう」
結花「いい加減にしなさい!!」
結花が二人を捕まえ、叱ったところで「終わり」となる。
この強引なハッピーエンドには、言いたいことが山ほどあるが、今更言っても仕方のないことなので、この辺にしておこう。
ま、ぶっちゃけ、この後の劇場版に結花、由真、般若を出すため、無理やり生き返らせたのかもしれないが……
でも、この三人と学園関係者は別にして、それ以外の主要キャラは全員死んでる訳で、なかなかハードな結末ではあったよね。
以上、「スケバン刑事3」のリテイクレビューでした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!!
いよいよ最終回である。
前回、もろもろの犠牲の上に、ついにトリヴィドヤーなるものを手に入れた唯。
と言っても、それは目に見えるものではなく、天輪聖王を倒す為の最終兵器ヴァジュラを手に出来る資格のようなものらしい。
唯、図書室に天眼不動明王と男雛、女雛を置くと、

唯「わちは、姉ちゃんたちを見殺しにしてしもうた、わちの戦いは一体なんなんじゃ? 風魔の戦いって、風魔の宿命って一体なんなんじゃ」
それはこっちが聞きたいことだっ!!!!
ほんと、冷静に考えたら、なんで忍者が、世界を救う宿命を背負ってるんだって話ですよ。
と、同時に、前回、あれだけ悲愴な覚悟をかためながら、いまだにうじうじと心を迷わせている唯の姿に、いい加減ウンザリする管理人であった。
つーか、泣くぐらいなら、結花たちを助けてやればよかっただろうがっ!!
それはともかく、そこに般若、いや、依田が入ってくる。
唯、手の甲で涙を拭くと、珍しく生徒の口調になって、
唯「依田先生、人から愛されても、自分がその人に愛で応えられん時、どうすればいいんじゃろう? わちは、色んな人と出会い色んな愛を受けてきた、その人たちに愛で応えたくても、もう誰もおらん!! わちの戦いは何の為の戦いなんじゃ?」

依田「般若としてなら、宿命の一言で答えられるでしょうけどね。教師・依田としては、人間の愛こそ……」
唯「……」
依田「バツですね、うまく答えられません」
依田は何か言いかけるが、結局返答を拒否して立ち去る。
依田(許せ、唯、私は教師である前に、あくまで風魔鬼組・般若なのだ……)
その後、心の中で唯にカッコよく詫びる般若であったが、既に風魔の忍びそのものが全滅してしまった今、鬼組もへったくれもないと思うんだけどね。
放課後、依田が正面玄関の前で待っていると、三つのアイテムを抱えた唯が、これで何度目だと言う気もするが、迷いを断ち切った顔をして出てくる。
ちなみに、最終回だと言うのに、クマやゴロウたち、三姉妹の取り巻きたちは一切登場しない。
唯「依田先生、いや、般若、わち、やるしかないんじゃ!!」
その夜、二人は不動明王像と雛人形を携えて、とある岩山の上に立ち、赤い影星が少し欠けた月のすぐそばで怪しく輝いているのを見上げていた。

般若「赤き星、月と交わりて天輪を成す、光地に伏し聖王を生まん。明日は月が満ちる、影星が月の中央に来たとき、果心居士は天輪聖王に生まれ変わる」
唯「影星が月の真ん中に来るまで、あとどれくらい時間があるんじゃ」
般若「約20時間、不動明王像、男雛、女雛を置く場所は結花と由真が調べてくれた」
般若は例の紙を取り出して見せる。
唯(結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、ゆるしちくり……)
いちいち結花たちのことを思い出して詫びる唯。
この人、ほんとにトリヴィドヤー有資格者なんでしょうか。
帯庵は、迷ったらトリヴィドヤーはキープできないみたいなこと言ってたけど、迷ってばっかりやん。
それはともかく、

般若「我々がいるのはここだ。男雛を置く山はあれだ。ここから直線距離にして10キロある」
唯「女雛は」
般若「あの山だ、直線距離にして15キロ、山の上り下りを考えると倍、が、お前と私ならわけもない距離」
まず、不動明王を彼らのいる岩の上に置くと、像はひとりでに回転し始め、ある方角に向かって固定される。
ついで、般若が男雛を、唯が女雛を、定められた場所に持って行く。
般若が、男雛を岩の上に置くと、これもひとりでに回転しだし、やがて黒くて硬い石像のようなものに変わって止まる。
ひとまずホッとする般若だったが、そこを、前回も出てきた異形の戦士たちが襲ってくる。
苦戦しつつも、般若は彼らをすべて斬り殺す。
最後に唯が女雛を置くと、男雛と同様にひとりでに回転~固定して材質が変わり、その目から赤い光線が空に向かって放たれる。

同時に、不動明王像、男雛からも異なる色の光線が発射され、三つの光は空中でひとつになると、その直下に落ち、

大爆発を起こす。
唯「あそこじゃ、あそこにヴァジュラが!!」
唯が駆けつけると、岩に、一本の長剣が突き刺さっていた。

その、まんまRPGの終盤に出てくる伝説の剣っぽい武器こそ、長い間謎であったヴァジュラの正体なのだった。
うーん、はっきり言って普通過ぎる。
唯「あれが、ヴァジュラ……」
唯が近付こうとするが、頭上から電撃が落ちてきて足元で爆発する。
同時に、明るかった空に暗雲がたちこめ、アビラウンケンソワカ~と言う果心居士の唱える真言が響き渡る。
唯「果心居士、何処じゃ、何処におるんじゃ? 何処じゃ、姿を見せんかい!」
般若「唯!!」
唯「般若!!」
と、背後から、傷だらけの般若が刀を支えにしながらやってくる。

般若が倒れたのを見て唯が駆け寄ろうとすると、電撃が落ちてきて般若に命中する。
果心居士の声「風魔の小娘よ、ヴァジュラを諦め、この場を去れ」
唯「なんてやー、せからしかーっ!!」
果心居士の降伏勧告に唯が反発すると、再び稲妻が落ちて来て、般若をビリビリさせる。
般若「ぐわあああーっ!!」
唯「果心居士、出て来いーっ!!」

般若「唯!! トリヴィドヤーを使い、ヴァジュラを抜けーっ!!」
鬼の形相で叫ぶ般若。
改めて思うのだが、この突っ込みどころ満載のドラマがなんとかドラマとして成立し得ているのは、流行さんの存在感と熱演に拠るところが大だったのではないか、と。
唯「トリヴィドヤー……」
と、再び般若に電撃が浴びせられる。
唯「般若!!」
般若「気を散らすな、うっ、ぐあああーっ、トリヴィドヤーを失うぞ、そうなればヴァジュラは抜けんぞーっ!!」
唯、精神を集中させてオーラを身にまとい、額にアーンクの梵字を浮かび上がらせると、ヴァジュラに向かって歩き出す。
が、電撃は間断なく般若に襲い掛かる。
般若「唯、急げーっ!!」
果心居士「剣に近寄るな、近付いたらその男の命はないぞ!!」
般若「構うなーっ!! ヴァジュラを取れーっ!! うううっ」
まるでラムちゃんにお仕置きされているあたるのような状態で、声を張り上げる般若。
唯、怒りの形相でヨーヨーを握り締め、
唯「果心居士、許さん!!」
丘の上にあらわれた果心居士に向かってヨーヨーを投げつけるが、あっさりキャッチされ、

逆にヨーヨーのチェーンを伝って、激しい電撃を浴びせられる。
衝撃で吹っ飛んだ唯に、般若が駆け寄って抱き起こす。
般若「唯!!」
唯「般若……」
見れば、額の梵字が消えていた。

果心居士「ふっふふふ、心弱き娘よのう、トリヴィドヤーはワシが貰い受けた。天輪聖王になった時、この手でヴァジュラを抜いてやろうぞ」
しかも、果心居士の右手に唯のアーンクが写し取られているではないか。
そう、唯が苦心惨憺して手に入れたトリヴィドヤーを、こともあろうに果心居士に横取りされてしまったのである。
つーか、トリヴィドヤー(と梵字)って、スーパーの半額シールのように、人から人へ簡単に移せるものなの?
だったら、赤ん坊の唯と翔から、梵字を抜き取ってしまえばよかったではないか。
般若「おのれぇーっ!!」
般若、破れかぶれになったように、刀を抜いて果心居士に突っ込んでいき、見事その体を刺し貫くが、無論、その程度の攻撃で倒せるような相手ではなく、

般若「ぐわぁあああーっ!!」
逆にその頭を鷲掴みされ、強烈な電撃を注ぎ込まれて悶絶する。
果心居士は、嘲笑いながら姿を消す。
慌てて般若の元に駆け寄る唯。

唯「般若、般若!!」
般若「何故だ、何故私を助けようとした? 何故ヴァジュラを抜かなかった? 愚かだぞ、唯」
唯「わちは、結花姉ちゃんと由真姉ちゃんを見殺しにしてしもうた、もう二度と人を見殺しにしとうなかったんじゃ!!」
般若「唯……」
唯「許しちくり、般若、わちはもう駄目じゃ」
般若「諦めるな、あと一度だけチャンスがある。果心居士は天輪聖王になる瞬間、必ずヴァジュラの前に現れる筈だ、その時が残された最後のチャンスだ」
唯「じゃけん、じゃけん、わちにはトリヴィドヤーもない!!」
般若「美しい……この世の中を動かしていくのは、人間なのだ。神でもなければ悪魔でもない、ましてや、天輪聖王などに支配されてはならない。お前のような美しい心を持った人間がひとりでも増えればこの世は救われる。お前のやったことは、間違いではない。愚かでもない。その美しい心を持って天輪聖王として立ち向かえ!! 教師依田としてお前に言いかけた答えを言おう、人間の愛こそ、この世の中で最も力強い武器になるのだ」
唯「……」
般若、そう言って唯に微笑みかけるが、最後にもう一度「唯!!」と叫んで絶命する。

唯「般若!! 般若ーっ!!」
その体を抱き締めて、絶叫する唯。
にしても、今まで散々「人としての情を捨てねば勝てまへんのや」みたいなことを、般若も帯庵も口が酸っぱくなるほど言っておきながら、最後の最後に「やっぱ愛が一番やったわ」と、アイフルのCMみたいなことを言われても困るのでヤンス。
じゃあ、今までの大仰なお膳立てはなんだったのってことになるからねえ。
CM後、唯がその辺の岩に背をもたれて寝ている。
寝過ごしたらどうするつもりだったのだろう?
夢の中を、今まで散って行ったたくさんの人たちの面影が通り過ぎて行く。
礼亜、魔破羅おじさん、小太郎、翔、帯庵、般若、そして……
生まれ育ったお寺の本堂で寝ていた唯を、由真が叩き起こす。

唯「なんすっとか」
由真「学校遅刻したって知らないからね」
唯「ここは宮崎、学校は東京じゃろ」
由真「だから汽車で行くんだろ」
唯「あんた、バカやないと、何時間かかると思うちょっとやー」
由真「うるせえな、このチビ」
唯「なんやこのドッカン娘」
由真「この野郎」
唯「なんよーっ」
水を得た魚のように、元気に取っ組み合いの喧嘩を始める二人。
そこに結花があらわれ、木魚用の大きな桴(ばち)で二人の頭を叩く。

結花「よしなさい」
由真「だってこいつが……」
結花「もう、何度言ったら分かるのよ、せっかく宮崎で平和に暮らせると思ってたのに……そんなに喧嘩ばっかりするんだったら朝ご飯抜きよ」
無論、それは現実ではなく、二度とかなうことのない唯の夢であった。
これ、ほんとならめちゃくちゃ泣けるシーンになる筈なのだが……
唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん……」
眠りながら涙を流してつぶやいていた唯、ハッと目を見覚ます。
寝ている間に、空はすっかり暗くなっていた。
唯「影星が月に消えちょる……わち、今こそ、みんなが与えてくれた愛に応えるから、みんなで見守っちくり!!」
既に影星は月の向こうに移動して見えなくなっていたが、代わりに、まんまるいお月様が血のように禍々しい朱色に染まっていた。

と、いつの間にかヴァジュラのそばに戻っていた果心居士、やおら頭巾を外し、そのつるぴかハゲ丸くんのような頭に赤い月からのエネルギーを受ける。

その光を受けた果心居士の顔の、干からびた皮膚がパックのように剥がれて行き、その下から現れたのは、

意外にも、目元も涼やかな美少女であった!!
そう、醜い老人から一気に美少女に変身しちゃうと言う、ツッコミどころだらけの終盤の中では、なかなかセンスの良い演出であった。
要するに果心居士から天輪聖王にクラスチェンジしたと言う訳なのである。

黒いフードも、天知茂先生の早着替えシーンのように紐で後ろに引っ張られ、一瞬で巫女のような神秘的な白装束に変わる。
天輪聖王「我、ついに天輪聖王となれり!!」
選手宣誓のように右手を突き上げ、高らかに宣言する天輪聖王。

最終盤だけの出番だが、天輪聖王を演じるのは、劇場版のヒロインだった小林亜也子さん。
眉はケンシロウ並みにぶっといが、なかなかの美形である。
元々、「スケバン刑事3」は、この小林さんをヒロインにして制作される予定だったのだが、諸般の事情により、番外編として予定されていた「スケバン忍法帖」が「3」として作られ、結局、小林さんが主役のシリーズはお流れになってしまったのである。
それはさておき、天輪聖王は、アーンクの刻まれた右手でヴァジュラの柄を掴んで引き抜く。
天輪聖王「我、聖王となりて、ヴァジュラを手にす。さすれば全宇宙に我の力に優るものなし。今こそ全宇宙を闇に閉ざさん!!」
いきなり全宇宙と来ましたよ!!
スケールがでか過ぎて、ついていけない。
つーか、そもそも宇宙って、最初からほぼ真っ暗じゃないかと……

だが、その時、シュルシュルと言う音がこちらに近付いて来るのに気付き、そちらに目を向ける天ちゃん。
小林さん、好みのタイプとは言いがたいが、美人であることは間違いない。
ただ、「スケバン刑事」のヒロインをやるには、いささかオーラが足りない気もする。
無論、シュルシュルと言う音は、ヨーヨーの風切り音だった。

唯「三代目スケバン刑事、麻宮サキ、またの名を風魔鬼組・頭、風間唯、影を操り、この世を邪悪の闇に包もうとするお前を許す訳にはいかん!!」
全宇宙を支配しようかと言う途方もない敵に対し、思いっきり場違いな名乗りを上げる唯。
ま、そう言う番組なんだから仕方ない。
天輪聖王「梵字すら消えた小娘に、何が出来る?」
唯「しゃからしか!! この世を闇に閉ざすなど、天が許さん、人が許さん、わちが許さん!!」

そう叫んでヨーヨーを持つ右手を天に突き上げると、空から幾筋もの青い光が降って来て、ヨーヨーに集まる。
これは、既に天に召された礼亜、翔、帯庵たちの魂が乗り移っている……と言うことなのだろうか?
唯「許さん、許さん!!」
唯、青く光るヨーヨーを投げる。
天輪聖王、ヴァジュラで受け止めようとするが、

なんと、あれだけみんなが血眼になって探していた伝説の最終兵器ヴァジュラが、その一撃であっさり折れてしまうのだった。

天輪聖王「!!」
これにはさすがの天ちゃんもびっくりし、ひょっとしてパチモン掴まされた? みたいな顔になる。
ヴァジュラ、まさかの見掛け倒し!!
しかし、今までヴァジュラ、ヴァジュラと散々言ってきたのはなんだったのだろう?
実に虚しくなってくるではないか。
唯は、間髪入れず、野球の投球フォームのようなポーズを取ると、渾身の力を込めて、ヨーヨーを投げ飛ばす。
天輪聖王「うっ!!」
驚いたことに、天下の天輪聖王ともあろうものが、そのヨーヨーをまともに食らい、

そのまま、あっさり爆死してしまうのだった。
……
天輪聖王も見掛け倒し!!
これなら、果心居士時代の方がよっぽど強かったではないか。
それにしても、引っ張るだけ引っ張っておいてこのあっけなさ……
当時の視聴者の脱力ぶりが目に浮かぶようである。
せめて、倒される前に、その圧倒的な強さの片鱗でも見せてくれていたら……
それはそれとして、その爆発の衝撃で気を失う唯。
再び目を覚ましたときは、世界は元通りの平和を取り戻していた。
唯「終わった……」
唯はつぶやくと、立ち上がって歩き出す。
その結果を見たものもいなければ、その勝利を讃えてくれるものもいない、極めて虚しく寂寞とした戦いを終えた唯の顔には、微笑みすら浮かんでいなかった。
暗闇指令との別れのシーンもないまま、次のシーンでは、早くも故郷の宮崎の田舎駅に唯を乗せた電車が滑り込んでくる。
ちなみにその駅の名前が「大日村」で、何気に大日如来の伏線になってたんだね。

相変わらず暗鬱な顔の唯だったが、そこへどやどや現れたのが、1話に出て来た地元の下っ端連中であった。
唯「あんたたち……」
一同「唯番長、ばんざーい!!」
唯「ありがとう、ほんとんごつありがとう」
嬉しさのあまり涙ぐむ唯。
しかし、西郷どんのパチモンみたいなこのキャラ、演じる俳優さんも、まさかまたこの役のオファーが来るとは夢にも思ってなかっただろうなぁ。
生まれ育った寺に行き、懐かしい大木を見上げて祖父・帯庵のことを思い出し、再び涙にくれる唯。

唯「よし、みんなで大掃除じゃ」
一同「はいっ」
それでも気を取り直し、下っ端たちに号令を掛ける。
このタイミングでEDのイントロが流れ出し、台詞は聞こえなくなるのだが、ここで、天輪聖王の最期以上にとんでもない結末が訪れる。
寺の参道を、女子高生らしい二つの靴が歩いている。
二人は、本堂の裏手に回る。
そこでは、唯がたらいで洗濯をしていたが、気配に気付いて顔を上げれば、


そこに、死んだ筈の結花と由真が立っていた!!
うーん、前回も書いたが、さすがにこのオチはないよね。
あの愁嘆場はなんだったんだ、視聴者を愚弄するのもいい加減にしろと言いたくなる。
なお、本編では台詞は聞こえないのだが、親切なことに、DVDの特典にそのシーンの会話が漏れなく収録されているので、今回はそれを参考にしながら書くとしよう。

唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、生きとったと?」
由真「妹より先に死んでたまるかよ」
結花「唯……」
……
そんだけかいっ!!!!(管理人の魂の叫び)
般若の場合、その死を看取ったのが唯自身だから、てっきり死んだのだと思って放置していたのを、暗闇指令の配下あたりが(唯が眠っている間に)病院へ担ぎ込んだ、と言う解釈も成り立つのだが、結花と由真の場合、般若にしっかり看取られながら確実に死んでいたのに、それが何事もなかったかのようにピンピンしていると言うのはさすがに無理がある。
ま、生き返っちゃったものは仕方ないので話を続けよう。
唯「うれしか、わち……わち」
結花「もう絶対に離さないわよ、唯」
唯、迷わず飛び付いて、強く二人の体を抱き締めながら、嬉し涙に暮れる。
さらに、

依田「おおーい」
唯「依田先生!!」
般若こと依田まで、けろっとした顔であらわれる。
ま、般若については今書いたようにまだ弁解の余地があるんだけどね。

依田「もう、この人たち、ほんとに冷たいんだから!! 私に全部荷物預けて、さっさと行っちゃうんですよ、バツですよね、もうバツ!!」
ややオカマっぽい口調でやかましく騒ぎ立てる依田。
その後、改まった様子で、
依田「これからは姉妹三人、平和に暮らせよ」
般若としての言葉に、三人は力強く頷く。
依田も、どうして助かったのか、全く説明しようとしないし、唯も聞きもしない。
そして、例によって唯と由真がくだらないことから喧嘩になり、境内で追いかけっこを始める。
それが何よりも雄弁に平和の到来を語っているように見えるのだろう、結花も依田も、幸せそうに見詰めている。
EDが終わると、再び声が戻り、

由真「姉貴、どうにかして」
唯「もう許さんかいね」
由真「なんだよ、もう」
結花「いい加減にしなさい!!」
結花が二人を捕まえ、叱ったところで「終わり」となる。
この強引なハッピーエンドには、言いたいことが山ほどあるが、今更言っても仕方のないことなので、この辺にしておこう。
ま、ぶっちゃけ、この後の劇場版に結花、由真、般若を出すため、無理やり生き返らせたのかもしれないが……
でも、この三人と学園関係者は別にして、それ以外の主要キャラは全員死んでる訳で、なかなかハードな結末ではあったよね。
以上、「スケバン刑事3」のリテイクレビューでした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!!