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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第10話「ヨーヨーと口紅 三代目の初恋」 後編

2024-06-15 20:36:02 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第10話「ヨーヨーと口紅 三代目の初恋」(1987年1月15日)
 の続きです。

 笑ったり、しかめっ面をしたり、鏡に自分の顔を映している唯。

 
 いつの間に買ったのか、ピンクの口紅を取り出し、良の面影を思い浮かべながら唇に当ててみるが、

 唯「あほらしかー、寝よっ」

 急に我に返り、口紅を放り投げて布団に潜り込むのだった。

 翌日、剣道部に入部した良がひとり道場で素振りをしているのを、入り口からこっそり見ている唯。

 さすが忍びだけあって、良はすぐ唯の存在に気付く。

 
 良「今日は剣道部の稽古は休みだ。一本やらないか? やれるんだろう?」
 唯「……」

 管理人、ここで大変下品なギャグを思いついたが、理性の力で、なんとか書くのを断念したことを告白しておく。

 どんなギャグかは、各自で考えるように。

 
 互いに剣道着を着て、地稽古を行う二人。

 しかし、普通、男が女の子に剣道の稽古やらないか? なんて言わないよね。

 それはともかく、バックに流れる「ジレンマ」が、どう考えてもシーンと合ってない。

 剣道の心得のある良に唯がかなうはずもなく、次々と打ち込まれるが、唯に向かって飛んで来たパチンコ玉のようなものを良が竹刀で弾き飛ばした隙に、唯が一本取ってしまう。

 ま、防具をつけてるんだから、当たってもどうと言うことはなかったと思うが。

 
 校庭で本を読んでいるミヨズ。

 その近くで用務員が落ち葉を集めていた。

 やがて、パラパラと雨が地面を叩き始める。

 
 ミヨズ、眼鏡を外し、

 
 空を見上げる。

 くぅ~、やっぱり綺麗やわぁ。

 まぁ、屋敷さんはモデルが本業なので、演技はいまいちだけどね。

 その雨の中、良と相合傘で帰宅中の唯。

 
 唯「良さん、わちを助けてくれたね。あの玉、わちを狙っちょった」
 良「知ってたのか」
 唯「命ば狙われちょって、変な話じゃけど、なんでか、怒りも力も湧いてこん……わち、どうしたんじゃろ」
 良「……」

 唯、戸惑ったような顔でつぶやくと、駆け出そうとして、あの口紅を落とす。

 良が反射的に拾おうとするが、

 唯「いらん、どうせ使わんもんじゃから」
 良「……」
 唯「おかしか、今日のわち……ひとりで帰るばい」

 唯は雨に濡れながら、ひとりで走り去る。

 無論、唯は、恋する普通の女の子としての自分と、影と戦うスケバン刑事としての自分との狭間で揺れ動いているのである。

 一方、とある画廊で、結花と由真が、礼亜と会っている。

 
 礼亜「星流学園の中に影の忍びが入り込んでるわ」
 結花「らしいわね」
 由真「危うく死ぬとこだったぜ」
 礼亜「すべてはあるときから始まっている。風花良が転校してきた時から……確かに、風花良は風魔の隠れ里を出ている、でもそれが転校してきた風花良と同じ人物かは分からないわ」
 由真「影が良兄ちゃんになりすましてるって言うの?」
 礼亜「かもしれない。敵の懐に飛び込み破壊する、それが忍び、考えられないことじゃないわ」
 結花「そんな……」
 由真「冗談じゃないよ」

 この時点では、礼亜にも影の刺客が誰なのか、確言できないのだった。

 姉たちからその話を聞かされた唯は、とうぜん強く否定する。

 唯「良さんは影じゃなか、正真正銘の良さんじゃ、わちにはわかる」
 由真「能天気でいいなぁ、てめえは」
 唯「良さんはわちの命を救ってくれたんじゃ」
 結花「どういうこと、唯?」

 唯は、ブロックやパチンコ玉から良が守ってくれたことを話す。

 由真「カムフラージュってこともあるぜ」
 結花「私は信じるわ」
 由真「姉貴!!」
 結花「疑えばキリがないわ、由真、父さんの言葉を思い出すの……止観よ」
 由真「止観?」

 ここで、久々に、父・小太郎の思い出が回想される。

 幼い頃の結花と由真、そして良が騒いでいるのを見て、食事の支度をしていた小太郎が三人を正座させる。

 小太郎「目をつむりなさい」

 
 小太郎は手にした包丁を良の目の前に振り下ろすが、すでに忍びの心得があったのか、良は目をつぶったまま、顔を少し動かしてそれをかわす。

 小太郎「おお、えらいぞ、良、それが止観だ。心を無にしてみれば、全ての物が止まって見える。その時、初めて本当の姿が見える。結花も由真も正しい心で物を見つめることを忘れちゃいかんぞ。止観で見ればやがて真実が見えてくる」

 
 結花「心の目に映ったものだけを信じるの……由真、私の心の目は、風花良は昔のままだと告げてるわ、いつも私たちを助け、守ってくれたあの良だとね」
 唯「そうじゃ、きっとそうじゃ!! 良さんは結花姉ちゃんや由真姉ちゃんのおもうちょったとおりの人じゃ、間違いなか、な?」
 由真「あんた、良にいちゃんのことを……」

 由真、嬉しそうに身を乗り出す唯のほっぺたを指でつつく。

 唯「姉ちゃんらと一緒じゃ、だってきょうだいじゃもん」

 その後、風間家に近付く黒装束の忍びの姿があった。

 家の前に張り込んでいた良が、それを攻撃し、追い掛けるが、忍びは良の名を騙った呼び出し状を家の中へ放り込んでいた。

 三人はすぐ、指定された学園の屋上へ向かうが、途中で般若に止められる。

 
 般若「退けい、これはお前たちに仕掛けられた罠だ。良と前後して、学園に入り込んだ者に、どうしても身元の分からぬ者が二人居った」
 由真「じゃあ、そいつらがさっきのコマを?」
 結花「やっぱり良ちゃんは……」
 般若「紛れもなく本物だ」

 もっとも、良が怪我をしていると知った三人は結局学校へ向かい、般若もそれを許す。

 
 校庭からは、屋上に設けられた十字架に良が縛られ、その頭の上でコマが回っていると言う、いささか間の抜けた光景が見えた。

 
 三人は急いで良のところへ行こうとするが、途中の細長い踊り場では、たくさんのコマがぐるぐる回転していた。

 唯「なんじゃこりゃー?」

 それは近付く者に反応し、互いにぶつかり合って激しく飛んでくると言う厄介なトラップだった。

 三人は一旦下がる。

 結花「踊り場の闇のどこかに、コマを操る影がいる。それさえわかれば」
 唯「止観じゃ、こっちの気配を消して、心の目で見ればええんじゃ……姉ちゃん、止観じゃ!!」
 結花「唯!!」

 結花は折鶴を顔の前にかざし、目をつぶって精神を集中させる。

 
 結花「見えた、右から弧を描いて飛んでくるのは右回転、左からのは左回転、その左右を結ぶ一点に敵はいる!!」

 何だかよくわからないが、結花の言葉を頼りに影の居場所を突き止め、それぞれの武器で攻撃する。

 つーか、止観だの小難しいことを言わずとも、懐中電灯で照らせば良かったのでは?
 
 それはともかく、刺客の正体は、最初に記したように、あのカジケン用務員であった。

 が、刺客は不利を悟ると、自ら喉をかき切って命を絶ってしまう。

 前回のハヤブサもそうだが、あまりに諦めが早過ぎる。

 三人がやっと屋上へ辿り着くと、唯や良に向けて、鋭い槍が何本も飛んでくる。

 二重のトラップだったが、それは何者かによって叩き落される。

 続いて、彼らの前にセーラー服姿のミヨズが登場。

 
 ミヨズ「あっはは、あっははは……どうやらこの学園の風魔はあなたたちだけじゃなさそうね」
 唯「お前、なにもんじゃーっ」
 ミヨズ「あはは、あはは……私の名はミヨズ、覚えておきなさい、いずれあんたたちもこの風花良と同じ運命を辿ることになるでしょうから、あはははは……」

 屋敷さん、発声が苦手なのか、いまひとつ迫力のない笑い声になっている。

 ミヨズは笑いながら空に飛び上がり、闇の中へ姿を消す。

 しかし、過去の事例から鑑みて、任務に失敗したミヨズも、翔に処刑されないといけないと思うのだが……

 三人は良の体を十字架から助け下ろすが、既に良は虫の息だった。

 
 良「君たちの父を殺したものは、恐るべき影の頭目……君たちの父上から預った物だ。これに秘密が……」

 良、「翔」と言う字が書かれた鞘に入った短刀を取り出し、唯に託す。

 しかし、良はどうやってそのことを知ったのか、何の説明もないのは物足りない。

 第一、そんな大事なものを、なぜ他人である良に預けねばならなかったのだろう?

 良「結花、由真、唯、さよならは言わない、だからいつでも僕が見守っていることを忘れないで……くれ……」
 唯「良さんーっ」
 由真「良兄ちゃん……」

 良の体に縋りつき、泣きじゃくる三姉妹。

 
 それを離れたところから見ている般若。

 無論、槍を叩き落したのは般若だった。

 般若は夜空を見上げ、

 般若「人の世に蔓延りし邪悪のものら、陰を陽となさしめんとするか、哀れなるかな……」

 こうして、唯の淡い初恋は、影と風魔の暗闘の中に飲み込まれて消えたのだった。

 エピローグ。

 初めて良と会った本屋のあの場所を再び訪れた唯。

 
 振り向いて、短い間に積み重ねた良との思い出を噛み締める。

 と、その良が階段を降りてきたのでハッとするが、無論、それは唯の錯覚に過ぎなかった。

 唯(良さん、父ちゃん、この仇はわちが必ず取っちゃる。必ず……)

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第10話「ヨーヨーと口紅 三代目の初恋」 前編

2024-06-15 20:23:51 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第10話「ヨーヨーと口紅 三代目の初恋」(1987年1月15日)

 冒頭、唯が本屋に来ている。

 ツルゲーネフの「はつ恋」と言う本を買いに来たらしいのだが、何故そんな本を読もうと思ったのか、何の説明もない。

 メモを持参していることから、その本が読みたいわけではなく、授業で必要なので探しに来たと言うことなのかもしれない。

 
 それはともかく、文庫本のコーナーに来た唯、階段の途中に立っている白いセーターの若者と目が合う。

 まじろぎもせず互いの顔を見詰めあう二人。「パンチDEデート」のキャッチフレーズ同様の現象が発生中のご様子。

 と、2階から降りてきた客が若者にぶつかり、若者が手にしていた本が床に落ちる。

 唯がそれを拾い上げ、再び顔を上げた時には、すでに若者の姿は消えていた。

 偶然にも、その本は唯の探していた「はつ恋」であった。

 
 唯、その本を読みながら高架下の道を歩いている。

 冷静に考えたら、本を読みながら歩く人ってあんまりいないよね。

 と、唯の頭上から大きなブロック片が落ちてくるが、さっきの若者がジャンプしてブロック片を蹴り飛ばし、唯を助ける。

 
 唯「あんたは……」

 
 良「一回死んだ、そう思って次は気を付けろよ」
 唯「……」

 若者はそう言って立ち去る。

 唯は礼も言えず、固まったようにその場に佇んでいた。

 どうでもいいが、仮にもヒロインが一目惚れする相手なんだから、もうちょっと美形の俳優を呼んで欲しかった。

 メインタイトル表示後、アジトにて、過去の刺客たちの戦いぶりを振り返って分析しているミヨズたち。

 
 オトヒ「星流学園、そこに根を張る蠢くスケバン三姉妹、この風魔の血を引く邪道のものら、一体どれほどの力を持ちますものやら」

 
 ミヨズ「音羽十郎、鈴の音、天上院滝子、ハヤブサ、我らが毒の網を破る小癪な娘ども、放っては置けませぬな」

 映像を見ていた翔は、

 
 翔「これ、どうやって撮ったの?」

 じゃなくて、

 翔「無を有となし、実を虚となす、虚を実となす、すなわちこれ、有無虚実の転換なり、忍びの極意……捨て身で敵の内懐に飛び込んでこそ、敵を打ち倒すことが可能となる……」

 
 ミヨズ「……」

 明らかに、翔の話を聞いてないミヨズさん。

 翔「分かりおろうな、ミヨズ」

 
 ミヨズ「仰せの通りにございます……ここに控えしわが手だれの忍び、星流学園へ潜入させましてございます」

 その忍びが、武器であるコマをまわして見せる。

 無論、視聴者にその顔は見せない。

 ミヨズ「その上に、今度は私自身、忍びて失敗なきよう万全を尽くす覚悟」
 翔「ほう、そなた自身がな」

 ちなみに、今回チェックしたら、その忍びの顔が一瞬だけはっきり見えて、カジケン(後述)だと言うことがバレバレであった。

 まぁ、普通に見てたら判別できないけどね。

 サブタイトル表示後、星流学園の登校風景。

 
 良「あのー、今日から転校してきた者ですが、職員室はどちらでしょうか?」
 用務員「ああ、職員室ならそこを右に曲がった突き当たりだよ」
 良「ありがとうございました」

 その転入生こそ、他ならぬあの若者であった。

 そして優しそうな用務員を演じるのは、カジケンこと、加地健太郎さんである。

 もうバラしちゃったけど、この用務員がミヨズの送り込んだ忍びなのである。

 管理人、カジケンが刺客と言うのはあまりにわかりやす過ぎるので、視聴者をミスディレクションさせるための囮なのかと思ったのだが、結局カジケンが刺客だったので、まんまと意表を突かれてしまった。

 
 良「卒業まで短い間かもしれませんが、よろしく」

 それはともかく、若者は、風花良(かざはなりょう)と言う少女漫画の登場人物のような名前だったが、結花のいるクラスへ配属となる。

 
 女子「美形だわ~」
 女子「フォーリンラブしちゃいそう」

 良を見て、女生徒たちがうっとりした声を上げる。

 眼科に行け、眼科に。

 で、偶然……ではないのだが、良は結花たちの幼馴染みであった。

 結花「良……ちゃん?」
 良「久しぶりだね」

 信じられないように良の顔をまじまじと見詰める結花。

 
 休み時間、そのことを知った由真が階段を駆け上がり、「良兄ちゃん!!」と、人目も憚らず良の胸に飛び込む。

 由真「何処行ってたんだよ?」
 良「でっかくなったなぁ、由真ぁ」
 由真「あったりまえじゃん、10年だよ、10年!! 急にいなくなったと思ったら、急にあらわれたりして、ほんとにもう」

 彼らの後ろに、唯がおずおずと姿を見せる。

 結花「唯よ、私たちの妹」
 良「妹?」

 唯、恥ずかしそうに頷くとゆっくり彼らのところにやってくる。

 普段とはまるで別人のような大人しさであった。

 唯「この前はありがと」
 由真「知ってんの、唯のこと」
 良「ちょっとね」

 
 唯「姉ちゃんらの知り合いだったんじゃね」
 良「君が結花たちの妹だったとはね、驚いたよ」

 そんな彼らのやりとりを、少し離れた物陰で、本を読みながら聞いている美少女がいた。

 
 そう、それこそ、愛しのミヨズが変装した姿なのだった。

 
 ちゃんと眼鏡を外して素顔も見せてくれる、わかってらっしゃるミヨズさん。

 
 屋敷かおりさん、ちょっと牧瀬里穂に似てるよね。

 
 その日、良は風間家を訪ね、小太郎の遺影に手を合わせる。

 
 さっきはああいったけど、こうして見るとそれほど悪くはない。

 その後、三姉妹は、ちょっとした歓迎会を開き、良を家族のようにもてなす。

 
 結花「10年前の冬の日以来ね」
 唯「良さんはどうしてたんじゃ」
 良「風魔の隠れ里、父は僕をそこで忍びとして育てようとしたんだ。僕は『おやじ、気は確かか?』と言ったよ」
 三人「でしょうねえ……」

 じゃなくて、

 良「そして10年後の今、僕は君たちの父・小太郎おじさんの死の原因を突き止めるために遣わされた」
 由真「おやじの?」
 良「そう、今は何も詳しいことは言えないけどね。だけど必ずおじさんを殺した影の正体を明らかにして見せるよ」

 と言うのだが、それにしては派遣されるのが遅過ぎないか?

 それに、幼馴染と言うが、良の家が風間家とどういう付き合いをしていたのか、その辺もさっぱり分からず、歯痒いこと甚だしい。

 また10年前に突然姿を消して以来、今までなんの音沙汰もなかったというのも、あまりに非常識であろう。

 翌日、ショパンの「別れの曲」を流しながら、優雅に授業をしている依田。

 だが、唯は心ここにあらずと言う感じで、ぼーっと宙を眺めていた。

 依田「風間君? 風間唯君?」

 依田の呼びかけにも何の反応もなく、依田が顔の前で指を鳴らすと、やっと我に返る。

 
 唯「はいっ……」
 依田「あ、君の目、死んでます。ありえないことと思いますが、まさか……恋でもしたんじゃないでしょうね?」

 唯、とろんとした目を上げて、

 唯「胸がキュンとなるのは、恋じゃろか?」

 
 依田「はっ?」

 唯のつぶやきに、思わず、「ああん、てめえドコ中だぁ?」みたいな顔になる依田。

 
 一瞬の間を置いて、生徒たちがどっと笑う。

 どうでもいいが、このクラス、30人くらいしかいないなぁ。

 だが、唯は笑われても怒らず、相変わらずぼうっとして、あらぬほうを見ていた。

 そんな唯を、気遣わしげに見遣る依田であった。

 一方、階段の手摺を何者かがコマで切断して、結花がそこに手を掛けて落ちてしまうと言う事故が発生する。結花はすぐ下の通路に尻餅をつくだけで済むが、その直後、コマを拾って歩き去っていく良の姿が、結花の目に入る。

 
 また、由真が更衣室のロッカーを開けると、回転するコマから毒ガスが噴射される。

 逃げようとするが、ドアに鍵が掛かって出られない。

 それでも、ワイヤーでドアのノブを壊して、なんとか脱出する由真だったが、廊下の向こうを、良が歩いていく姿を目にする。

 由真「良兄ちゃん?」

 その晩、布団を並べて横になっている結花と由真。

 
 結花「なんか変なのよね」
 由真「ああ……」
 結花「由真の時も、私の時も、良ちゃんがそばにいた」
 由真「うん……ま、ただの偶然だよ」
 結花「そうね……」

 口では否定したものの、良に対する微かな疑惑が二人の胸中に生じていた。

 後編に続く。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第9話

2024-05-30 20:42:21 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第9話「ねらわれた秘伝奥義! コマンドーvs唯」(1987年1月8日)

 新年一発目の放送だが、映画「コマンドー」が日本で公開されたのがちょうど1年前。この言葉、よほど流行っていたようで、次回作「少女コマンドーいづみ」では、タイトルにも使われている。

 冒頭、蔀(しとみ)の前で、ひとりの男が、襲い掛かる忍者たちの関節をポキポキと外す様子が、シルエットで映し出される。

 
 オトヒ「楠流忍法の格闘術と米軍特殊部隊の戦闘術をも身に付けております」
 ミヨズ「手土産に、楠流秘伝の毒・於宇(おう)の実を持って参るとのこと……古書によれば秘伝の製法により、幻覚、殺生、思うがままの万能毒でありながら、今や絶滅したと伝えられる毒草にございます」

 ミヨズこと屋敷かおりさんの美しい正面からのショット。

 
 翔「面白い、名は?」
 ハヤブサ「ハヤブサ!!」

 ハヤブサを演じるのは毎度お馴染み、中田博久さん。

 タイトル表示後、唯が横浜に来ている。

 
 唯「全く東京生まれの癖して迷子になるなんて姉ちゃんたちも情けなかぁ~」

 どうやら、姉たちと一緒に来たはいいものの、彼らとはぐれてしまったらしい。

 美沙「うるせえな、俺のまわりうろつくんじゃねえよ」

 その唯の耳に、そんな声が飛び込んでくる。

 見れば、近くの公園で、セーラー服姿のパツキン(と言っても栗毛)ギャルが、数人のチンピラにからまれていた。

 彼女は唯にも劣らぬ身体能力で、チンピラたちを翻弄する。

 
 ちなみにチンピラのひとりは、ヒョウ柄のタイツを履いている。

 大阪のおばちゃんか、お前は?

 幅の広い滑り台のようなものを駆け上がり、

 
 ほっそりとした、まるでマネキンのような足を見せつける美沙。

 
 演じるのはクリスティーナと言う人だが、多分、モデルだろうなぁ。

 よく見ると、なかなか可愛い。

 
 時々、デーブ・スペクターに見えてしまうのが難だが、1作目に出てきたパツキンギャル(名前忘れた)に比べれば、全然マシである。

 美沙が男たちを手玉に取るのを頼もしそうに見ていた唯だったが、美沙が、関節技のような技を使うのを見逃さなかった。

 唯「あの動き、忍びんごつある」

 唯、立ち去ろうとする美沙を追いかけ、気さくに話し掛ける。

 
 唯「なんちゅうと、今のずこか技は?」
 美沙「なんだよ、おめー」
 唯「今の技、わちに教えちくり、なぁ、お願いじゃ、今の技、教えて」
 美沙「うるせーなー」

 クリスティーナさん、1作目のパツキンギャル(名前忘れた)と違って、流暢な日本語を操れるのも強みである。

 だが、そんな二人の姿を、公園の木の陰からハヤブサが見詰めていた。

 唯はしつこく美沙にねだり続け、港までやってくる。

 唯「そんげなケチなこと言わんでも、お礼ならするっちゃ、500円ぐらい」
 美沙「はぁっ」

 唯が謝礼として提示する額が、実に庶民的で可愛いのである。

 唯「せめてなんの技かだけでもいいっちゃ」
 美沙「うるせえなぁ、とっとと消えな」

 
 久義「何かあったのかい、おじょうちゃん」
 
 と、クレープの屋台を出しているおじさんが、唯に話し掛けてくる。

 唯「このおねえちゃん、すごかとよ、たったひとりで大の男をグイグイグイ……」

 唯の言葉に、おじさんは急に険しい顔になって美沙の前に出る。

 おじさんは、美沙の祖父・岡田久義であった。

 久義「ほんとうか、美沙」
 美沙「向うから絡んできやがった」

 久義はいきなり美沙の顔をビンタすると、

 久義「あの技はみだりに使うなと言った筈じゃ」
 美沙「うっせーなぁ、だったら教えなきゃいいだろう」
 久義「誰が無理に教えたか、昔はもっと素直じゃった」
 美沙「あんたがかわいそうだったから」
 久義「誰に口を利いてるつもりだ」

 もう一度叩こうとするが、その手を唯が押さえる。

 唯「乱暴はやめない」
 久義「分からん奴には、体で覚えてさせてやる」

 美沙は祖父の手から逃れると、

 美沙「あっかんべーだ」
 久義「待て、不良娘」

 美沙は悪態をついて走り去ってしまう。

 久義が唯の手を振り払うと、唯はその勢いで尻餅を突いてしまう。

 
 唯「いてー」
 久義「すまん」

 ……

 大丈夫です、管理人が精査したところ、ちゃんと黒ブルマを履いてました。

 唯「厳しかぁ、うちのじいちゃんと一緒じゃ」
 久義「グレさせまいとして、厳しく育てたのが逆目に出たのかも知れん……もう手に負えん」

 久義を演じるのは名優・戸浦六宏さん。

 これほどクレープ屋が似合わない俳優もあまりいないだろう。

 唯「わかった!! 女心は複雑なんじゃ、おじいさんにも分からんことがある、わちに任しやい」

 唯は力強く引き受けると、美沙の後を追って走り出す。

 その後、心ここにあらずといった様子でクレープを焼いている久義だったが、少し離れた所にいるハヤブサの存在に気付く。

 
 久義「生きていたのか、ハヤブサ」
 ハヤブサ「さすが楠流宗家だな」

 二人は、他の人間には聞こえない特殊な言葉で離れたまま会話を交わす。

 久義「楠流忍法を戦争に利用したお前はもはや弟子ではない、さっさと去るが良い」

 ハヤブサは、「於宇の実」と、その製法を記した巻物を要求するが、久義は断固拒否する。

 一方、唯は美沙につきまとい、あれこれうるさく話しかけていたが、揉み合っているうちに二人とも海へ落ちてしまう。

 だが、雨降って地固まると言う奴で、それをきっかけにやっと二人は打ち解ける。

 美沙のアパートで制服が乾くのを待ちながら、あれこれ話す二人。

 
 美沙「あんた、見かけによらず強いね」
 唯「じいちゃんに仕込まれたと……父ちゃんも母ちゃんもおらんかったし、強くならんとみんなにバカにされたかい」

 
 美沙「あたいと同じだね。もっともあたいはみなしごだけどさ」
 唯「でも、じいちゃんが……」
 美沙「あいつとは血が繋がってないんだよ、あんなに厳しいのも所詮他人だからさ」
 唯「そんげなことなかー、いんや、血の繋がりなんかどんげでもよか、あん時のじっちゃんの目はほんとんこつ美沙さんのことを心配しちょった目じゃ!!」
 美沙「分かったようなこと言いやがって……」

 翌日、唯は学校の裏手で、丸太棒を相手に美沙の使った関節技の再現を試みていると、例によって依田があらわれ、

 
 依田「風間君、成績不振を物言えぬ丸太に当たってるんですかぁ」
 唯「違うわい、関節技の練習じゃ」
 依田「ほう、関節技? しかし、馬鹿力だけを頼りにしているようじゃバツですねえ」
 唯「ごちゃごちゃ言うならやってみい」

 依田は懐から鉛筆を取り出すと、指の間に挟んで折って見せる。

 依田「頭を使いなさい、頭を……要はテコの原理の応用です」
 唯「テコの原理?」

 唯は由真に「テコの原理」について教えを乞うが、

 
 由真「てめえ、中学ぐらい出てるんだろー」
 唯「そんげなこと言わんで教えて」
 由真「自分で調べな」
 唯「そんげな、冷たいこと言わんとー、教えちくりよ」
 由真「そんなもん分かる訳ねえだろー」
 唯「ああー、うん、由真姉ちゃん知らんと?」
 由真「てめーっ」

 無論、由真がそんなことを知ってる訳がなく、逆に唯にバカにされて追い掛け回す。

 結花「やめなさい!! 私が説明してあげる」

 スケバンなのに成績優秀な結花が、黒板に図を書いて二人に説明してやる。

 
 結花「力点に加えたf×bって力のモーメントが作用点ではa×wと言う逆向きの力のモーメントとして働く訳……分かる?」

 が、モーメントだのなんだの、難しい言葉を使ってしまっては、わかるものもわからなくなり、

 
 唯「うん……」
 由真「……」

 自信なさげに頷く唯と、ただコニコニ笑っている由真の様子から、二人が理解してないのは明白だった。

 結花「ダメだこりゃあ……」

 それでも唯、今度はもっと太い原木の端をコンクリートの隙間に噛ませ、それを素手でへし折ろうとする。

 
 唯「こんげな木の一本や二本、それーっ!!」

 どうでもいいが、そんなもんどっから持ってきたんだ?

 
 物陰から見ていた依田は「やれやれ」と言う顔で立ち去ろうとするが、唯はなんと、ほんとに真っ二つにしてしまう。

 唯「やったーっ!!」

 しかし、さすがにこれは説得力がないよなぁ。

 依田は呆れたように溜息をつき、

 依田「恐るべきは無知なる者……」

 CM後、唯は、屋台を押している久義を見掛ける。

 
 で、そのときの久義の足の動きが、なんかゲームのキャラクターみたいで妙に可愛らしいのだ。

 と、目出し帽をかぶった数人のコマンドが現れ、老人に襲い掛かる。

 唯「じいちゃん、危ない!!」

 
 唯、思わずヨーヨーを取り出して助けようとするが、さすが忍びの棟梁、久義は老人とは思えぬ軽快な動きを見せ、難なく彼らを撃退してしまう。

 唯「すごかー、じいちゃん!! ……おじいちゃん?」
 久義「いつかこういう日が来ると思っていた。君に頼みがある……」

 
 美沙は、公園で物思いにふけっていた。

 さっきも書いたけど、この人、なかなか美人なんだよね。

 頭の中に「血の繋がりなんかどんげでんよか……」と言う唯の言葉がリフレインする。

 美沙「こだわってんのはあたいのほうかもしんない」

 と、ハヤブサとコマンドたちがあらわれ、あっさり美沙を気絶させて連れて行こうとするが、そこへ唯がやってきて、両手を広げてとおせんぼする。

 ハヤブサは両者の間に飛び降りると、先に部下を行かせる。

 唯が追いかけようとするが、ハヤブサがすかさずその手を掴む。

 唯「なんじゃ貴様、うちの関節技、見せてやる!!」

 唯、ハヤブサの逞しい体に抱き付いてベアハッグのような技を仕掛けるが、そんな付け焼刃が通用する筈がなく、

 
 あっさり返されて、逆に両肩の骨を外されてしまう。

 唯「待て、美沙さんを返せ……お前ら待て」

 両手が使えず、その場に倒れ込む唯だったが、這ってでも彼らを追いかけようともがく。

 ハヤブサは、唯のことは知らされていなかったようで、そのまま行ってしまうが、影にとっては千載一隅のチャンスを逃したと言えよう。

 ほどなく久義も駆けつけ、唯の体を起こし、肩の骨を戻してやる。

 その痛みのせいか、唯の額にあの梵字が浮かび上がる。

 久義「まさか、君は風魔一族の?」
 
 
 唯「風魔一族、鬼組の頭・小太郎の娘、星流学園1年B組風間唯、またの名を三代目スケバン刑事・麻宮サキ!!」

 唯は名乗ると、わざわざヨーヨーを取り出して「桜の代紋」を見せ付ける。

 それを聞いた久義は、

 
 久義「長いっ!!」

 じゃなくて、

 久義「桜の代紋……」
 唯「なんでわちが風魔のもんじゃと?」
 久義「楠流忍法23代宗家、岡田久義」
 唯「あの技は楠流忍法の体術ね」

 そこへ、手紙付きのナイフが飛んでくる。

 
 唯「今夜0時、港湾局隣の廃工場で例のものと引き換えに娘を返す……」

 ちなみに、「廃工場」の「廃」の字、間違ってますね。

 最初は、忍者らしく旧字体で書いてあるのかと思ったが、こんな旧字体はないのである。

 ここで、ごく簡単に久義と美沙の関係が説明される。

 久義は、警察に追われている途中、偶然捨てられていた赤ん坊の美沙を見付け、それを自分の孫として育ててきたらしい。

 久義「人をあやめる術しかしらなんだワシに、美沙は命を守り、はぐくむことの素晴らしさを教えてくれた。ワシにとって美沙は御仏なのじゃ、この命にかえても守る」

 久義は唯をアパートへ連れて行き、畳の中に隠していたハヤブサが喉から手が出るほど欲しがっている「於宇の実」を三つ、およびその製法を記した巻物を取り出して見せる。

 
 久義「これは「於宇の実」と言い、使い方によっては万人を殺すことも、また目の錯覚を起こさせ、術の助けにすることもできる。万能の毒の実じゃ。世界中にこの種のみ。永久に封印しておくつもりであったが、やむをえん。楠流の奥義は、あらゆる殺気を消し去り、自らの存在すら消すことだ。おぬし、俺の影になるか?」
 唯「影?」

 こうして、スケバン刑事と老いた忍びと言う異色コンビが誕生し、完全武装で敵地に乗り込むことになる。

 バックに由真の「ジレンマ」が流れ、実に燃えるシーンとなっている。

 廃工場に入り込み、ハヤブサの部下たちをテキパキと片付けていく二人。

 
 なお、唯が高所から飛び降りた際、スカートがまくれてフトモモが剝き出しになるセクシーショットがある。

 ご心配なく、今度もしっかり黒ブルマを着用しておられました。

 ちくしょう。

 久義「月影に入るぞ」

 あらかじめ打ち合わせてあったのだろう、久義は「於宇の実」のひとつを火種の筒の中に入れ、もうひとつを唯に渡す。

 唯はそのひとつを口に含む。

 しかし、仮にも毒なのに、そんなもん食べて大丈夫なのだろうか?

 久義は巻物をハヤブサに見せつけ、

 久義「これが欲しいか、ハヤブサ」
 ハヤブサ「……」
 久義「やれんなぁ」
 ハヤブサ「なにぃ」
 久義「女子供を人質に取るなど、特殊部隊で覚えたのか? そんなやつらに楠流宗家を譲るわけにはいかん」
 ハヤブサ「おのれぇ」
 久義「見事ワシを倒してみるか」

 せっかく美沙を人質にしてるのに、ハヤブサは挑発に乗って久義との一騎打ちを始める。

 久義、あっさりハヤブサに捕まり、両手で首を極められるが、それは久義の想定どおりの展開で、首に提げた筒から、「於宇の実」をいぶして生じる煙が立ち昇る。

 ハヤブサ「悪足掻きはやめろ」
 久義「楠流奥義、月影の術!!」

 
 久義の叫びと同時に、なんと、久義の影の中から唯のヨーヨーが飛んできて、ハヤブサの手首に巻きつく。

 ハヤブサ「月影が動く?」

 続いて唯自身の姿が、影の中から起き上がる。

 ま、そんな魔術めいたことは不可能なので、「於宇の実」の煙によって、ハヤブサに幻覚を見せたのだろう。

 ただ、だったらハヤブサに煙を吸わせるだけで十分で、唯が実を食べる必要はなかったように思うのだが……

 
 唯、ハヤブサの体を吊り上げる際、「支点、力点、作用点!!」と叫び、結花に教わった「テコの原理」を使いこなしている雰囲気を出しているが、これはまあ、形だけのもの。

 
 ハヤブサ「この技は一体……」
 久義「これが於宇毒の秘術よ」
 ハヤブサ「於宇!! それさえ手に入れば……世界は我が手に……ふっふっふっふっ」

 不敵な笑みを浮かべるハヤブサだったが、何故か、舌を噛んで自害してしまう。

 とにかく、あきらめが早過ぎるのが「影」のみなさんの欠点ですね。

 つーか、そもそも、それで世界を手に入れるのは無理なんじゃないかなぁ。

 人質になっていた美沙を唯が助け下ろす。

 唯「見たじゃろう、じいちゃんはなぁ、命を賭けて戦ったとよ」
 美沙「身から出た錆さぁ助けんのが当然だろ」

 なおも不貞腐れた態度を取り続ける美沙に、久義がカッとなって手を上げようとするが、それより先に、唯が美沙の顔を引っ叩く。

 
 唯「しゃからしかっ!! なんで二人とも突っ張ると? なんで素直な気持ちが言えんとー?」
 美沙「……」

 久義、足元に巻物を置き、その上に火薬を撒いて火をつける。

 更に、もう世界にひとつしかない「於宇の実」を投げ入れる。

 久義「ワシは、これで過去の全てを捨てた。もしもう一度やり直す気があるなら、明日公園に来てくれ。もし美沙がいなかったら、じいちゃんは、そのままどっかへ消えてしまうよ」

 久義はそう言い残して、闇の中へ消える。

 翌日、港で唯と美沙が話している。

 美沙「あたい、あいつをほんとのじっちゃんと思うことにしたよ」
 唯「良かったね」
 美沙「そうじゃないと、あたいひとりぼっちだもん」
 唯「そうじゃそうじゃ、なんかあったら遊びにおいで」
 美沙「ありがとう」

 でも、考えたら、もし今、久義がいなくなったら、まだ高校生の美沙は路頭に迷ってしまうのだから、美沙には他に選択肢はなかったのではあるまいか?

 ともあれ、美沙は屋台を引いてやってきた久義に駆け寄り、しっかりと抱きつく。

 唯「なんでわちのじっちゃんは黙っておらんごなったんじゃろう……」

 ぽつりとつぶやく唯の目に涙が溢れる。

 いささか唐突だが、そこに結花と由真があらわれる。

 由真「てめえ、探したんだぜ、夜遊びなんて10年早いんじゃないかー」
 唯「そんなんじゃなか」

 以上、ハヤブサ、「於宇の実」、楠流忍法、久義とハヤブサの師弟関係、唯と美沙の友情、「積み木崩し」、「テコの原理」など、色んな要素を詰め込んでいるが、そのすべてが中途半端で、いまひとつ乗れないエピソードであった。

 唯の特訓のくだりは削って、その分を他のドラマの描写に回すべきだったと思う。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第8話

2024-05-13 19:47:23 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第8話「炎の修業!これが究極のヨーヨー技じゃ」(1986年12月18日)

 神社の鳥居のそばで、寅さんのバッタモンみたいなおじさんが、子供たちを集めて「バイ」をしている。

 
 おじさん「ここに並んでいるヨーヨーは、そんじょそこで売ってるヨーヨーとはちっとばかし訳が違う……」

 子供たちの後ろには、焼き芋を齧っている唯の姿もあった。

 
 おじさん「こら、そこのイモ姉ちゃん、何処が違うか分かるかい?」
 唯「うっ……」

 突然話し掛けられて、むせる唯。

 おじさん「かの、アメリカ合衆国はロサンゼルスってところで、研究に研究を重ねてやっと完成したヨーヨーってのがこれだ。名付けて、スペシャル・スーパー・ヨーヨー!」

 
 おじさん「見てくれ、この回転力、使いやすさ抜群だ」

 おじさんは、子供たちにその特別なヨーヨーを実演して見せる。

 「ブランコ」「犬の散歩」「ジェットスター」など、神業的なヨーヨー捌きを披露するおじさん。

 この妙技の数々、吹き替えではなく役者本人が演じているのだが、何を隠そう、この滝雅也さんこそ、「スケバン刑事」シリーズのヨーヨー指導をしている人なのだ。

 だから、ヨーヨーが上手くて当たり前なのだ。

 おじさんの「タンカバイ」(泥棒の始まりが石川の五右衛門~と言うあれ)に、世間知らずの唯は「スケバンの始まりは誰じゃ? 知らんとやー?」と割り込む。

 唯「九州にその人ありと言われた大スケバン、風間唯じゃっ」
 おじさん「もう、イモ姉ちゃん嫌い!」

 おじさんの商売が終わった後、唯は礼儀正しくおじさんにヨーヨーの指導をお願いする。

 おじさんは、唯の特製ヨーヨーを手にすると、初めてなのに自由自在に操ってみせる。

 唯「すごかー、おじさんが売ってるスペシャルスーパーヨーヨーじゃなかとに、なんでそんげなことができる?」
 おじさん「はっはっ、あれはただのオモチャじゃ……だけど、こいつは違う、こいつは立派な武器だ」

 俄かに厳しい眼差しになったおじさん、ヨーヨーを前後に投げて、二つの石灯籠の笠の部分を叩き落して見せる。

 唯は、その技を教えてほしいと熱心に頼むが、おじさんはにべもなく断り、さっさと行ってしまう。

 その後、礼亜から風間三姉妹に指令が下る。

 退学処分を受けた西南高校の不良たちが、校長の一人娘を誘拐して廃屋に立てこもっているという、由真曰く「つまんねー事件」であった。その娘を救出することが彼らの任務であった。

 三人は、簡単にその廃屋に潜入を果たす。

 
 ちなみにこの場所は「少女コマンドーいづみ」第9話で、A-JARIの本多氏が浜田晃氏に監禁されていたところですね(知るか)

 
 んで、スケバン刑事にぶっ飛ばされる為にこの世に生を受けてきたようなチンピラたちのリーダー(左端)を演じているのが、同時期に放送されていた「セーラー服反逆同盟」第16話にも出ていた瀬山修さんですね(知るか)

 瀬山「なんだ、てめえら」

 ちなみに彼は、退学処分さえ取り消してくれたら娘は解放してやると学校側と電話で交渉している。

 いくら復学できても、誘拐事件なんか起こしたら意味ねえだろ。

 三人と不良たちの戦いになる。

 戦いの最中、唯はあのおじさんが境内で見せたあの技を実戦で試してみようとする。

 だが、前方の敵にヒットして後方に飛んだヨーヨーが、誤って由真の脇腹にヒットしてしまう。

 唯「由真姉ちゃん!」
 由真「バ、バカ……」

 思わぬミスに、茫然とする唯。

 その隙に、不良たちは人質を連れて車で逃げ去ってしまう。

 由真のダメージは意外と大きく、そのまま入院と言うことになる。

 
 唯「由真姉ちゃん、ごめん、うち……」
 由真「気にすんなって、やろうと思ってやったんじゃねえんだろ?」

 由真、ベッドのそばでうなだれている唯を逆に励ます。

 一方、礼亜は結花を病院の屋上へ誘う。

 
 礼亜「唯さんにちょっと問題があるの。ヨーヨーのこと……」
 結花「由真のことなら……」
 礼亜「そうじゃなくて、彼女が倒した暴走族たちの方……彼女のヨーヨーが全部急所に打ち込まれているの。幸い、ヨーヨーの力がまだそれほどでもなくて、大事に至らなくて済んでるけど……このままだと、いつか誰かを殺してしまうかも知れないわ」

 と言うことで、唯は、般若の山(2話で三人が逃げ込んだ山のことか?)に再び送り込まれて、ヨーヨーの修業をさせられることになる。

 渋々唯が山に踏み込むと、忍び装束の男がいきなりヨーヨーを投げて唯の首に巻きつける。

 
 般若「それまで! 久しぶりだな、元気そうではないか」
 唯「こいつ、なにもんじゃ?」
 般若「権佐(ごんざ)と言ってな、お前は既に会っている……」

 他でもない、それはあのヨーヨー売りのおじさんだった。

 
 唯「なんだ、おじさんかー」

 こうして、山の中で、唯と権佐ふたりだけの特訓が開始される。

 権佐、ヨーヨーを売っていた時とは別人のような厳しさで、精神面、技術面、体力面など、多角的に唯を指導・鍛錬する。

 それらは非常に興味深い特訓の数々であったが、特に面白くないので割愛する。

 数日間の山篭りを経て、唯の技量・パワーは格段に向上する。

 数枚の杉板を等間隔に並べた目標にヨーヨーを投げると、板を全てぶち抜いてしまう。

 唯、自分のヨーヨーのパワーに戸惑いすら覚えていた。

 
 権佐「今のお前はヨーヨーに途轍もない回転力をつけることができる。ましてやそのヨーヨーは超合金だ。破壊力は凄まじい物を持っている」
 唯「そんなー、ちょっと当たっただけで痛かとに、わちが投げたら……おそろしかー、わち、こんなもん使えん!」

 唯、ヨーヨーを武器として使うのが怖くなり、思わず地面に叩き付ける。

 権佐はそのヨーヨーを拾い上げると、

 権佐「お前はヨーヨーの当たった痛さを知っている、自分の投げたヨーヨーの力も知っている、後は敵との距離を知り、どう投げるか、どこを狙うか、それが武器を使いこなすということなのだ」

 諄々と説いてから、ヨーヨーの威力をセーブして投げる技を唯に見せる。

 一方、由真は由真なりに責任を感じ、怪我が癒えないのに病院を抜け出し、人質の女の子をひとりで救い出そうとしていた。

 復学の芽もなくなった瀬山たちはヤケクソになっていて、神社の境内に女の子を連れて行き、やーらしいことをしようとする。

 そこへ、手負いの由真が現れ、果敢に戦いを挑む。

 体が万全でない由真、当然、苦戦する。

 
 賽銭箱に寄りかかるように倒れた時、スカートがめくれて太腿が剥き出しになるのがちょっと嬉しい。

 そこへ、特訓を終えて山を降りた唯と結花が由真を助けに駆けつける。

 結花は、あえて唯ひとりに不良たちを任せる。

 ヨーヨー使いとして格段の進歩を遂げた唯、今度は相手をそれほど傷付けず、適度な威力でヨーヨーをぶつけ、その動きを封じていく。

 
 そして、権佐が最初に見せたあの大技を繰り出し、石灯籠の笠を瀬山の頭上に(ドリフのように)落として、見事に人質を救出する。

 結花「やったね、唯、灯篭を割るほどの力と、相手のダメージを和らげる技を会得したね」
 唯「うふふ」

 結花も、目を見張る唯の成長振りに賛辞を惜しまなかった。

 最後、石灯籠を壊された神主が出てきて、唯たちを叱り付ける。

 唯たちは謝りながら、一目散にその場を離れるのだった。

 にしても、この人質の女の子がもっと可愛ければなぁ……

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第7話

2024-04-24 20:12:09 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第7話「水の中に舞え!セーラー服の死闘」(1986年12月11日)

 高架下にて、数人の不良高校生が、ひとりの美しい女子高生に喧嘩を売っている。

 
 天上院滝子と言う、生まれながらに旅行会社に就職することを宿命付けられたような名前の女子高生を演じるのは、アイドルの中野みゆきさん。

 そこに、唯たち三姉妹が通り掛かるが、滝子は不良たちをあっという間にぶちのめす。

 唯「おんなひとりで、ごっつぅい、えらかー」
 由真「見かけないツラだね」

 強い女の子が大好きな唯、ためらわず滝子に近付いて話しかける。

 唯「つよかー、わちゃ星流学園1年B組、出席番号9番、風間唯じゃ。たった今お姉さんのファンになったんじゃ。握手ばしちゃんない」
 由真「ったく、あのプッツンもん」
 結花「あれが唯のいいとこよ」

 
 唯は握手を求めるが、滝子は「よしなさい、つまらないことに憧れるのは」と、唯からカバンを受け取ると、そのまま歩き去る。

 ほどなく、その滝子が転校生として星流学園にやってくる。

 しかも、由真のいる2年B組に。

 滝子「天上院滝子です。よろしくお願いします」

 挨拶をした後、由真に鋭い視線をよこす滝子。

 情報通のクマによると、滝子は「はぐれスケバンのお滝」と呼ばれ、都内の不良たちからも恐れられている猛者らしい。

 同じクラスの由真は「その腕、試してやる」と、中庭のベンチに座って本を読んでいる滝子にいきなりリリアンを投げ付ける。

 だが、滝子は読んでいた本を素早く閉じてリリアンを受け止めると、怪力で由真の手を掴んで無理矢理開かせ、その中にリリアンを戻す。

 滝子「これは糸を編むもの、飛ばしたりしたら危ないわ」
 由真「……」

 さすがの由真も、タジタジであった。

 唯、ますます滝子に惹かれたようで、下校中の滝子を待ち伏せする。

 滝子「どうして私のこと付きまとうの?」
 唯「あんたのことが好きなんじゃもん」
 滝子「そんなこと言われるの、初めて」
 唯「そんなことなかー、滝子さん、素敵じゃもん」
 滝子「あなたのような普通の女の子が一番素敵なのよ」
 唯「そうじゃ、わちら、友達になって……」
 滝子「友達?」
 唯「うん、友達じゃ」
 滝子「なれたら良いわね……」

 その夜、風間家の三姉妹の枕元に次々手裏剣のようなものが飛んで来て突き刺さる。

 すわ、刺客か?

 いいえ、違いました。

 
 彼らの上司、般若おじさんでしたーっ!

 しかし、夜中に家の天井から逆さにぶら下がる上司って、死ぬほどイヤだよね。

 おまけにそんな変態的な登場をしたにも拘らず、用件は「礼亜のもとへ来い」だけ。

 電話しろよ……

 とにかく、翌日、三人は図書館にいる礼亜を尋ね、詳しい話を聞く。

 礼亜は新聞の綴じ込みを見せる。

 1年前、男子高校生と女子高生が乗っていたボートが高波で転覆し、男子の方だけ死んだと言う事故の記事なのだが、その奇跡的に助かった女子高生と言うのが、他でもない天上院滝子だったのだ。

 
 礼亜「死んだ男子生徒は風魔の血を引くもの、ただで溺れる筈がないわ……天上院滝子は影の忍び……」
 唯「事故じゃ、ただの事故じゃ!」
 結花「あいつが、本当に忍びかどうか」
 由真「あたしたちがそれを確かめればいいんだろ?」
 礼亜「狙いは、あなたたちかも知れない……」

 由真は乗り気になるが、唯は「何かの間違いじゃーっ」とその場から走り去る。

 唯、こっそり滝子のあとをつけ、その自宅まで付いて行く。

 滝子の家は、むかし懐かしい駄菓子屋であった。

 
 優しく子供たちの相手をしたり、店をやっている祖母の肩を揉んであげたり、他校の不良もびびるスケバンとは思えぬ滝子の意外な一面を見て、唯はますます滝子が好きになる。

 だが、唯の気配が消えるや否や、祖母は急に厳しい顔つきになる。二人とも、唯が見ていることは先刻承知だったのだ。

 祖母「とうとうお前の本当の戦いをする時が来たようじゃ……このババが手塩にかけて育ててきたお前が……」

 滝子は、祖母(実は乳母)と二人で影の頭領・翔の前に平伏し、翔から直々の命令を受ける。

 翔「彼らの中に、怒りが生じたその時、額に梵字が浮かび上がる者がいるという。風間小太郎の三姉妹の中にもしもそのような者がおったとしたら……我らにとってどのような災いを起こすかも知れん」
 滝子(宿命の相手と戦う為に生を受けた私……)

 滝子はまず同じクラスの由真に戦いを挑み、得意の水中に由真を引き摺り込んで倒す。

 もっとも、由真の梵字は額には出ないので、その命を奪うことまではしなかった。

 唯は直接滝子に問い質す。

 唯「わち、あんたんこと好きじゃった、ほんとんごつ好きじゃった。なのに……あんた、影ね?」
 滝子「さあ……でも、もしそうだったら?」
 唯「許せんわい」
 滝子「よしなさい、あなたは私の戦うべき相手じゃないわ。戦いの炎、燃えるような憎しみがあなたにはないもの」
 唯「やっちゃる、ぶっ倒しちゃるーっ!」

 唯、去ろうとする滝子にいきなり突進するが、滝子は体をかわすと、唯に当身を食らわせて失神させる。

 滝子「良い子だね、あんた、友達になれれば良かった……」

 滝子は唯の体を抱き締めるようにして優しく地面に横たえて、その場を離れる。

 その後、唯、滝子の得意な水中戦を想定し、いつもの忍術コーナーで参考書を開いてお勉強。

 で、とりあえず、プールで息継ぎなしで泳ぐ訓練をする。

 抜群の運動能力を誇る浅香唯さんは、勿論ここでもバリバリ泳いでいる。

 
 ……と言う訳で、しばしの目の保養タイムになります。

 
 水中で水をかきながら、(何の為にこんなことをしちょるんじゃろう……何の為に?)と、訓練の……と言うより、忍びとしての宿命そのものに疑問符を投げかける唯であった。

 とりあえずプールから上がろうとした唯の頭をモップで上から押さえつけたものがいる。

 例によって依田先生であった。

 
 唯「誰じゃ、何すんじゃ」
 依田「潜る訓練をしてるんじゃありませんか」
 唯「知らん、人の勝手じゃろ」

 言い捨てて再び泳ごうとする唯を、依田がすかさずモップで引き寄せる。

 
 依田「でもね、風間さん、そんなことで潜水時間と言うものは伸びませんよ」
 唯「先生に何が分かるんじゃ」
 依田「分かりますよ、ひとつ教授してあげましょう。ハイパーベンチレーション、分かります? 速く大きな呼吸を繰り返し体内の炭酸ガスレベルを強制的に下げる、ま、その結果は潜水時間が長くなります。やり過ぎると失神しますがね」

 だが、その特訓をする前に、唯は結花と滝子が決闘しようとしていると聞かされ、その場所へ走る。

 ススキの草原で激しくぶつかる結花と滝子。

 実力はほぼ互角だったが、結花の額にも梵字が浮かばないのを見て、滝子は意外そうな顔になる。

 そこへ唯の声が聞こえてきたので、滝子はさっさと退却する。

 唯「姉ちゃん……」
 結花「あいつ、あたしの敵う相手じゃない」

 滝子、駄菓子屋の家に帰ってくると、後片付けをしていた祖母としばし見詰め合う。

 祖母「おかえり」
 滝子「ただいま」

 唯、ヨーヨーを手に店の前に立っていたが、やがて踵を返して行こうとする。

 それを「待ちなさい」と滝子の声が止める。

 滝子「破れてるわ、スカーフ」
 唯「……」

 滝子は自分のスカーフを外し、破れた唯のスカーフの代わりに巻いてくれる。

 滝子「今夜、学園のプールで会いましょう」
 唯「なんでわちらと戦うんじゃ? 本当はあんた、イイ人じゃなかか? なんでじゃ?」
 滝子「知らない。私たちの仕える影星がそうさせるだけ。さよなら……」

 唯、滝子に貰ったスカーフを触りながら、(なんでそんなもんに仕えんにゃならんのじゃ。自分の生きたいように生きればいいじゃろう)と、心の中で訴えるのだった。

 その夜、唯はやむなくプールへ行き、スカーフを鉢巻のように巻いた滝子とプールサイドで戦う。

 なんとか闘志をかきたてて応じる唯だったが、祖母の肩を揉んでいる滝子の姿がフラッシュバックし、どうしても戦う気が起きない。

 
 唯「やめじゃっ!」

 滝子の手を振り払い、さっさと帰ろうとする。

 だが、滝子は、チェーンの付いた手錠を互いの手首にはめ、あくまでこの場で決着を付けようとする。

 滝子「あんたも私と同じ、戦う宿命なのさっ」
 唯「わちは、わちは……」

 ほとんど無抵抗の唯の首を、チェーンで絞める滝子。

 唯、ポケットからヨーヨーを取り出して強く握り締める。

 唯、首を絞められながら滝子の顔を振り向く。

 見れば、滝子の目からも涙がこぼれていた。

 唯、ふっきれたようにヨーヨーで滝子を打ち、

 唯「戦っちゃる、わちと戦ってお前に何が残るか、わちは見ちゃる!」

 ここでやっと、唯の額に梵字が浮かび上がり、滝子の倒すべき相手が唯だと言うことが分かる。

 滝子、得意の水中戦に持ち込もうと唯と抱き合うようにしてプールに飛び込む。

 
 ヤケクソに深い水の中で、激しくつかみ合う唯と滝子。

 唯、特訓(いつしたんだ?)の成果か、滝子と水中で互角に戦う。

 結局、滝子の方の息が先に続かなくなったのか、唯はヨーヨーをプールサイドの結花に投げ渡し、ぐったりした滝子の体を引っ張りながらプールから出ようとする。

 だが、唯が先にプールから上がると、滝子はすかさずチェーンを外し、再びプール中央に戻る。

 
 滝子「来ないで、あたしのこと良い人だって言ってくれたの、あんたが初めてだった。さよなら……」
 唯「なんでじゃ、これからは友達じゃなかかー?」

 唯の叫びも虚しく、忍びの掟に従い、滝子は水中に潜ると自爆して命を絶つ。

 唯「田舎で喧嘩しちょるときは楽しかった。じゃけん、なんで、なんで、今はこんげつらか思いせにゃならんのじゃ! わちゃ戦っちゃる、戦いをなくす為に、わちらを戦わせるごっつう悪かもんと戦っちゃる!」

 悲しみを怒りに変えて、激しく闘志を燃やす唯であった。