第15話「瞳は忘れない!スケートリンクの死闘」(1987年2月19日)
冒頭、結花と由真の見ている夢が映し出される。
結花は、恋人にプロポーズされると言う甘ったるいものだったが、由真は逆に恋人に捨てられると言うシビアなもの。

由真「お願い、捨てないで、もう暴力はふるわないから!!」
もっとも、由真の台詞で、捨てられたと言うより、逃げられたことが判明する。
タイトル表示後、居間でまったりしている二人。

由真「せっかくの試験休みだってのに、なんでバイトしてまで唯にプレゼント贈んなきゃなんねえんだよ」
結花「一緒に暮らすようになってから指令ばかりで、私たち、あの子に何もしてあげてないわ。ちょうど秘密の指令から帰るころよ、あの子の誕生日」
由真「そっかぁ、誕生日か」
結花「16才のね、これから先、あの子や私たちにどんなことが待ってるか分からないでしょ、でもせめて今はハッピーバースデー、明るい顔でそう言って上げたいの」
学校は「試験休み」らしいが、結花、大学受験のほうはいいのだろうか?
結花が卒業してしまうとドラマが成立しなくなるとは言え、受験のことが全く話題に出ないのは変だよなぁ。
ちなみに唯の「秘密の指令」について、具体的な描写はない。
これは、浅香唯さんのスケジュールがますます厳しくなって、ほとんど撮影に参加できなくなった為の、スタッフの苦肉の策なのである。
面倒臭がっていた由真も、誕生日と聞いて乗り気になり、アルバイト情報誌の中からひとつの仕事を選び出す。

それは、モスバーガーの接客係と言う、スケバンらしからぬものだった。
しかし、こうして見ると、まるっきり別人である。

登「本当にいた」
と、店の外を通り掛かったひとりの若者が、結花と由真の顔を見て驚き、魅入られたような顔で入ってくる。
登を演じるのは「仮面ライダーアマゾン」のマサヒコこと、松田洋治さん。1作目にもゲスト出演している。

結花「いらっしゃいませー、どうぞお客様」
登「……」
由真「お前だよ」
登「……」
由真「はい、いらっしゃいませ、何にいたしましょうか」
登「喋った……」
登は、突っ立ったまま、茫然と由真の顔を見ていたが、我に返ったように、
登「ポテトの小と、コーラのS」
と、いかにもやる気のないオーダーをする。
由真「あいつ、姉貴に一目惚れってそう言う目だよ、ありゃあ」
結花「あんたにじゃないのー」
由真「うるせえよ」
結花「新しい恋かもね」
由真「ええっ?」
登は、結花の差し出した袋を受け取ると、二人の顔を見ながら、おぼつかない足取りで店を出るが、店の前の路上で「やったーっ」と叫んでバンザイをする。
由真「なんだ、あいつ……」
青年の奇異な態度と行動に、首を傾げる二人であった。
ちなみにこのシーンで店内にかかっているのは、浅香唯さんの「その気☆不思議」である。
その後、登はとあるマンションの前のベンチに座り、ひとつの部屋を見上げている。

登「ベランダ、鉢植えの木、やっぱりあったんだ、夢の中の場所!! 彼女たちも、この場所も何もかも本当にあるんだ……」
満足げに頷く登だったが、その部屋に住む男から見られていることには気付かない。
野乃「昨日、そして今日、一体何者?」
バイト中のふたりのところに、クマたち三人が押しかける。

由真「なんだ、お前らか」
クマ「姉御、なんてお姿で……水臭えですぜ、金が欲しいなら欲しいと何故この一言クマにぃ……」
結花「そう言うお金は困るの、気持ちの問題だから」
由真「買わないんなら、さっさと帰んな」
クマ「いえ、照り焼きバーガーを買わさせて頂きます」
結花「はい、照り焼きバーガー三つお願いします」
由真「お前らコーラも飲むよな?」
三人「はいっ」
由真「ポテトもつけて欲しい?」
三人「つけさせて頂きます」
由真「よーし、アップルパイもあるよ」
三人「……」
由真の、上下関係を利用した怒涛の押し売り商法に、がっくりと項垂れる三人であった。
と、またあの青年が、外からこちらを見ているのに気付く二人。
由真「あのスモールポテト野郎、今日で三日目だぜぇ」
登、すたすたとカウンターの前まで来て、

登「まだ思い出しませんか、僕のこと」
由真「なんだよ、急にぃ」
登「只野登って言います、僕……」
由真「タダじゃねえんだよ、ポテトとコーラは」
登「只野登です」
由真「テレビでも出てんのかぁ」
登「丸山大学1年、四畳半ガス水道付きアパート、西荻窪!! 西荻窪です!! 覚えてませんか?」
由真「知ってる?」
結花「……」
登「誰なんですか、あなたたちは?」
由真「お前こそ誰なんだよ~」
登「だから、只野登です、好きなんです、ずっと思い続けてきたんです!!」
訳の分からないことを言った挙句、突然、告白をする登。
と、結花が身を乗り出し、

結花「……好きってどっち?」
登「……決めてなかった」
近くの席で聞いていたクマたちが思わず吹き出す。
結花「人違いじゃない?」
登「そんなぁ……いえ、いいんです、また明日来ますから」
登は肩を落として出て行く。
結花「何か事情があるみたいね」
由真「そんなツラには見えないけどね」
バイトの帰り、二人は、ガード下のトンネルで忍者らしき男に襲われている登を見掛け、これを助ける。
二人はそのまま登のアパートへ。

登「夢を見るんです、いつもあなたたちの夢を……」
結花「そんなに思い詰めてたの? 私たちのこと」
登「違います!! あ、それもあるけど、出会う前から夢の中に出てきてたんです、あなたたちが」
由真「冗談言ってんじゃねえよ、お前は……」
登「冗談の言えない人間なんです、僕、ネクラだし……あなたたちにもうひとりお姉さんか妹がいませんか、どちらかといえば妹みたいな」
由真「姉貴、気味悪いよ、こいつってば」
登「やっぱりいるんですね」
その夢を見始めたのは3ヶ月前、昇が視力を取り戻してからだと言う。
登「僕の目は見えませんでした。2年前、交通事故に遭って……それが亡くなられたどなたかの角膜のお陰で僕はまた世界が見えるようになったんです。まるで生まれ変わったみたいに何もかも新鮮に見えちゃって……初めて見た夢があなたたちの夢だったんです。でも、他にも見たことのない街や建物、それに、恐ろしい物まで見るようになって……おとついはその建物のひとつを見つけました」
結花「みんな実在するってわけね」
登「たぶん」
由真「恐ろしいものって、どんなもんなんだよ」
登「とても大きくて奇妙なものが目の前に迫ってくるんです、それで、遠い暗闇の中からふっとお面みたいなものが浮かびあがって、何処まで追いかけてくるんです。いつも最後は変な球みたいなものが大きくなって僕の体にあたり、当たり続けて、ジ・エンドです。もう何度死んだかわかりません、僕」
由真「もしかして、それも実際」
登「脅かさないで下さい!! でも悪い夢ばっかじゃありません、お二人と知り合えたんですから」
その部屋の外壁にヤモリのように張り付いて、中の様子を窺っている者がいた。
先ほど登を殺そうとした男である。
二人がそろそろおいとましようとすると、
登「変な奴らに狙われてるからって、女の人にうちに泊まってってくれなんて言えませんよね、でも大丈夫です、僕、男だから……いいんです、気にしないで行って下さい、僕負けませんから、虚弱体質だけど、貧血症も治ったし、ウホッ!! 風邪気味だけど……」
わざとらしく咳をしてみせる登に、顔を見合わせる結花と由真。
結花「登君、うちへいらっしゃい。ここは危険だわ」
結局、結花のはからいで、登は風間家に泊まることになる。
翌日、依田と図書室で話している二人。
依田「登と言う青年、君たちと同じ目をしています。最近の医学研究の報告によればですね、すでにこの世にない角膜の持ち主の見たものが、それが移植した人の夢にあらわれることがまれにあるそうです」
由真「まさかぁ」
結花「目が生前の人の見たものを記憶しているっていうの」
依田「カメラのように映像を残した角膜、そうとしか考えられません、とすれば、昇に提供された目の元の持ち主、その人が君たちを知ってることになる」
要するに、今回の話は、実写版として映画化もされた「ブラック・ジャック」の「瞳の中の訪問者」と言うエピソードのパクリだったのである。
続いて、何処かのスケートリンク。

氷の上を、着物姿のオトヒがすたすたと歩いて来るという、なかなかシュールな映像。
だが、上には上があるもので、「突っ走れ隠密剣士」と言う時代劇には、江戸時代なのにフィギュアスケーターが出てきます。

オトヒは、途中で現代風の衣装に変わる。
さすがアイドルだけあって、なかなか可愛いのである。
オトヒの前に、あの男が進み出てうやうやしく跪く。

オトヒ「目か、執念とは恐ろしいものよ、目だけが生命を持ち、風間の娘らと結び付いているとはな」
野乃「はっ、オトヒ様」

オトヒ「けれど、野乃佐伯、何としてもお前の役目の秘密、暴かれてはならぬ、お前は草の忍びらと翔様を結ぶ、深い絆、もし知られた場合は……分かっておろうな」
野乃「御意!! この野乃佐伯の術にかけましても!!」
この男の名は野乃佐伯(ののさえき)と言う、およそ人間の名前とは思えないけったいなものだった。
うーん、さすがにこれはないよなぁ。
普通に佐伯で良かったんじゃない?
あるいは、礼亜がレイア姫、般若がハン=ソロ、帯庵がオビ=ワンと言うように、「スターウォーズ」のキャラクターをもじった名前が多く使われている本作なので、これもそのたぐいなのかもしれない。
オトヒ「今は世に広く蒔かれた草の種がほころびし時、そのような芽なぞ、はよう潰しておしまい」
野乃「はっ」

風間家に泊まった登は、いつもの夢を見るが、登に向かって飛んでくると言う物体が、アイスホッケーのパックであることが分かる。

結花と由真はまだ起きていたが、その部屋のふすまがひとりでに開く。
素早く警戒態勢を取る姉妹であったが、

その空間いっぱいに巨大な般若の顔があらわれ、
般若「半年ほど前より、お前たちとは別に風魔鬼組源吾と言う者が影の動きを探っていた……」
と、ごくフツーに喋り出す。
毎度のことなので、二人はノーリアクション。

般若「そして突き止めたのが、野乃佐伯なる影の存在である」
続いて、フツーのサイズに戻って部屋に入ってくる般若。
何がしたいんだ、お前は……
結花「野乃佐伯?」
般若「古来より、影が草の忍びに命を下す役目を持つもの」
由真「なんだよ、その草って」
般若「時あらば、影の命を受け、陰謀破壊を企てんとする忍びだ。それらの草たちが一斉に動くとき、世は滅びの道を歩むことになる」
結花「それを探ってた源吾って人」
般若「死んだ、野乃佐伯が見付かったという知らせの後に事故としてな……いや、事故などではない、影に殺されたのだ」
で、登の目に移植された角膜の持ち主こそ、その源吾だったのだ。

般若「忍びとは非情なもの、そのものも家族のない無名のものとして葬られた。人々のためにその目も捧げたのであろう」
由真「その源吾ってのが私たちのことを知ってたってことかよ」
般若「うむ、私がお前たちを山荘で鍛えた時のひとりだ。覚えておくが良い、結花、由真、全ては偶然ではない。死んで行った風魔の想いが登に乗り移り、お前たちを引き寄せたのだ。野乃佐伯の潜みし場所を伝えんが為に……無念の思いで死んでいった風魔の血の執念が自分が果たしえなかった仕事をお前たちに託しておるのだ」
どうでもいいが、角膜バンクに登録してる忍者ってやだなぁ。
CM後、二人は登を連れて見覚えのある建物がないか、あちこち見て回っている。

その最中、偶然、野乃と肩がぶつかり、野乃の持っていたアイスホッケーのスティックが落ちる。
登「すいません」
野乃「いいんだよ、だいじょぶ、だいじょぶ」
登「……」
スティックを見た登は、豁然と、自分に向かってきたのがアイスホッケーのパックだと気付くのだった。
ちなみに、いくらなんでもこんな偶然はありえないので、野乃がわざとぶつかって、スティックを見せ、登に思い出させたのだろう。
その後、風間家に戻った登が階段を降りると、下から二人の話し声が聞こえてくる。

由真「あいつの見る夢がどれだけの意味を持ってるか教えてやれば少しはマジで探すんじゃねえの? あいつ、叩き起こしてやる」
結花「それはダメ!!」
由真「なんでだよ」
結花「一般の人を忍びの戦いに巻き込むことはできないわ」
由真「……」
結花「登君はただの男の子よ、わたしたちがいつかどこかで父さんのように死んだとしてもきっと懐かしく思い出してくれる。そんな男の子……わたしたちがすべきことは(源吾の)恨みを晴らすことじゃない。今生きてる登君から悪夢を取り除いてあげることよ」
由真「殺された源吾って人、どんなひとだったのかなぁ」
二人の会話を立ち聞きした登は、置手紙を残してあのスケートリンクへ向かう。
登の手紙「目が見えるようになってから僕は嬉しくて、光や風景、そして結花さんたちの夢にただ夢中になっていました、この角膜をくれた人のことや結花さんたちの背負っている運命のことなど考えもしなかった、ゆうべ、夢の風景を必死に思いました。角膜をくれた人のためにも結花さんたちのためにも……そしてはっきりとその場所を思い出したのです。僕はその場所へ行ってみます。これ以上結花さんたちに迷惑をかけることはできません。どうもお世話になりました」
手紙を読んだ二人は、登の健気さにじんとなる。
結花「登君……」
由真「あのスモールポテト野郎、いいとこあるよ」
しかし、だからって、自分が命を狙われていると知りながら、ひとりでそんなところに行こうとするだろうか?
もっとおかしいのは、登はその場所のことは手紙に書いてないのに、二人がスケートリンクにやってくることである。
放送ではカットされたが、般若に場所を教えてもらうシーンがあったのかもしれない。
ともあれ、二人が東伏見アイスアリーナに行ってみると、登の姿はなく、リンクの上に、野乃佐伯が座って待っていた。

野乃「ふっふっふっふっ」

野乃「来よったか……凍え死ぬかと思ったぞ」
結花&由真(でしょうねえ……)
じゃなくて、
野乃「来よったか……自らの秘密を知られぬことが私の使命、それを知られた今、私の命もお前たちと共にない」
結花「登くんはどこ」
野乃「まだ生きておる」
いや、結花たちは野乃の顔は知らないのだから、さっさと登を殺してトンズラしてしまえばよかったのでは?
自分で言うように、その正体を知られないことが最大の任務なのに、なんでわざわざ結花たちが来るのを待たねばならんのだ。
オトヒだって、別に結花たちを殺せとは言ってないのだし……
それはともかく、野乃が姿を消すと、代わりに三人のアイスホッケー選手があらわれ、結花たちに襲い掛かる。
氷の上では思うように動けず、敵の飛ばしてくるパックをかわすのが精一杯の二人。
野乃は、登を人質にして、結花たちの真上の高い場所に潜んでいた。

野乃「苦しみながら死んでいくさま、見物ではないか……」
……
いや、だから、なんでちゃっちゃと殺さないのっ?
結花たちを脅さないのなら、登を人質にしておく意味がないではないか。
やっぱりバカなの? ねえ、そうなの?
その時、登が流した涙が結花の折鶴の上に落ち、彼らの居場所を教える。
結花と由真が野乃を攻撃すると、術が解けて選手たちの姿も消える。
彼らは野乃の作り出した幻影だったのだ。
この後、野乃を本人を捕らえて事件解決。
あんなこと言ってた癖に、縛られた野乃が、自害しようとしなかったのは不可解である。

結花「もう悪夢に襲われることはないわ、登君、あなたの目に助けられたの……光の中で素敵に煌めいてた」
登「それはきっとこの目をくれた人の……」
由真「違うよ、あんたの目だよ」
そう言われて、やっと登も晴れ晴れとした笑顔を見せる。
事件は解決したが、翌日、結花と由真が肩を落として店から出て来る。
由真「クビかぁ」

由真「参るよな、影を追ってる間に店に泥棒が入ったなんてさ……出来過ぎだよぉ」
と言うのだが、だからって二人が責任を取らされるというのは理解に苦しむ。
単に、昨夜のバイトをすっぽかしたからクビ、で良いんじゃないの?
由真「唯にプレゼント買えなくなっちまったな」
失意の二人の前に、登があらわれる。

登「昨夜一晩、僕、死ぬほど悩みました。結花さんを選ぶべきか、由真さんを選ぶべきかをです……でも僕には決められませんでした。だから、お二人のどちらかが僕を選んで下さい!! これ、プレゼントです」
そう言うと、二つのプレゼントを差し出す。
あんな目に遭いながら、能天気なことを言う登に呆れる二人だったが、
由真「長生きするよ、お前は……あっ、これだよ、これだよ、姉貴!!」
由真は、そのプレゼントをそのまま唯への誕生日プレゼントにまわすことを思いつく。
ラスト、無事任務を果たして帰って来た唯の誕生パーティーが行われている。

結花「誕生日、おめでとう、唯、はい」
由真「ハッピーバースデー、唯」
唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、ありがとう」
それがプレゼントの使い回しとも知らず、コロコロと喜ぶ唯。
二人も実は中身を知らなかったのだが、無難なセーターだったので、
由真「あいつにしちゃ良いセンスだね」
結花「……」
結花、テーブルの下で、由真の足を蹴る。
だが、あいにくと、プレゼントには登からのメッセージカードが封入されていた。

唯「結花さんへ、由真さんよりあなたが好きです、登。由真さんへ、結花さんよりあなたが好きです、登」
結花&由真「……」
唯「なんじゃこれ?」
と、綺麗に落ちたところで終わりです。
以上、色々と腑に落ちない点はあるが、主人公の不在と言う制約を上手く生かしたなかなかの力作であった。