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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第15話「瞳は忘れない!スケートリンクの死闘」

2024-08-26 19:52:13 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第15話「瞳は忘れない!スケートリンクの死闘」(1987年2月19日)

 冒頭、結花と由真の見ている夢が映し出される。

 結花は、恋人にプロポーズされると言う甘ったるいものだったが、由真は逆に恋人に捨てられると言うシビアなもの。

 
 由真「お願い、捨てないで、もう暴力はふるわないから!!」

 もっとも、由真の台詞で、捨てられたと言うより、逃げられたことが判明する。

 タイトル表示後、居間でまったりしている二人。

 
 由真「せっかくの試験休みだってのに、なんでバイトしてまで唯にプレゼント贈んなきゃなんねえんだよ」
 結花「一緒に暮らすようになってから指令ばかりで、私たち、あの子に何もしてあげてないわ。ちょうど秘密の指令から帰るころよ、あの子の誕生日」
 由真「そっかぁ、誕生日か」
 結花「16才のね、これから先、あの子や私たちにどんなことが待ってるか分からないでしょ、でもせめて今はハッピーバースデー、明るい顔でそう言って上げたいの」

 学校は「試験休み」らしいが、結花、大学受験のほうはいいのだろうか?

 結花が卒業してしまうとドラマが成立しなくなるとは言え、受験のことが全く話題に出ないのは変だよなぁ。

 ちなみに唯の「秘密の指令」について、具体的な描写はない。

 これは、浅香唯さんのスケジュールがますます厳しくなって、ほとんど撮影に参加できなくなった為の、スタッフの苦肉の策なのである。

 面倒臭がっていた由真も、誕生日と聞いて乗り気になり、アルバイト情報誌の中からひとつの仕事を選び出す。

 
 それは、モスバーガーの接客係と言う、スケバンらしからぬものだった。

 しかし、こうして見ると、まるっきり別人である。

 
 登「本当にいた」 

 と、店の外を通り掛かったひとりの若者が、結花と由真の顔を見て驚き、魅入られたような顔で入ってくる。

 登を演じるのは「仮面ライダーアマゾン」のマサヒコこと、松田洋治さん。1作目にもゲスト出演している。

 
 結花「いらっしゃいませー、どうぞお客様」
 登「……」
 由真「お前だよ」
 登「……」
 由真「はい、いらっしゃいませ、何にいたしましょうか」
 登「喋った……」

 登は、突っ立ったまま、茫然と由真の顔を見ていたが、我に返ったように、

 登「ポテトの小と、コーラのS」

 と、いかにもやる気のないオーダーをする。

 由真「あいつ、姉貴に一目惚れってそう言う目だよ、ありゃあ」
 結花「あんたにじゃないのー」
 由真「うるせえよ」
 結花「新しい恋かもね」
 由真「ええっ?」

 登は、結花の差し出した袋を受け取ると、二人の顔を見ながら、おぼつかない足取りで店を出るが、店の前の路上で「やったーっ」と叫んでバンザイをする。

 由真「なんだ、あいつ……」

 青年の奇異な態度と行動に、首を傾げる二人であった。

 ちなみにこのシーンで店内にかかっているのは、浅香唯さんの「その気☆不思議」である。

 その後、登はとあるマンションの前のベンチに座り、ひとつの部屋を見上げている。

 
 登「ベランダ、鉢植えの木、やっぱりあったんだ、夢の中の場所!! 彼女たちも、この場所も何もかも本当にあるんだ……」

 満足げに頷く登だったが、その部屋に住む男から見られていることには気付かない。

 野乃「昨日、そして今日、一体何者?」

 バイト中のふたりのところに、クマたち三人が押しかける。

 
 由真「なんだ、お前らか」
 クマ「姉御、なんてお姿で……水臭えですぜ、金が欲しいなら欲しいと何故この一言クマにぃ……」
 結花「そう言うお金は困るの、気持ちの問題だから」
 由真「買わないんなら、さっさと帰んな」
 クマ「いえ、照り焼きバーガーを買わさせて頂きます」
 結花「はい、照り焼きバーガー三つお願いします」
 由真「お前らコーラも飲むよな?」
 三人「はいっ」
 由真「ポテトもつけて欲しい?」
 三人「つけさせて頂きます」
 由真「よーし、アップルパイもあるよ」
 三人「……」

 由真の、上下関係を利用した怒涛の押し売り商法に、がっくりと項垂れる三人であった。

 と、またあの青年が、外からこちらを見ているのに気付く二人。

 由真「あのスモールポテト野郎、今日で三日目だぜぇ」

 登、すたすたとカウンターの前まで来て、

 
 登「まだ思い出しませんか、僕のこと」
 由真「なんだよ、急にぃ」
 登「只野登って言います、僕……」
 由真「タダじゃねえんだよ、ポテトとコーラは」
 登「只野登です」
 由真「テレビでも出てんのかぁ」
 登「丸山大学1年、四畳半ガス水道付きアパート、西荻窪!! 西荻窪です!! 覚えてませんか?」
 由真「知ってる?」
 結花「……」
 登「誰なんですか、あなたたちは?」
 由真「お前こそ誰なんだよ~」
 登「だから、只野登です、好きなんです、ずっと思い続けてきたんです!!」

 訳の分からないことを言った挙句、突然、告白をする登。

 と、結花が身を乗り出し、

 
 結花「……好きってどっち?」
 登「……決めてなかった」

 近くの席で聞いていたクマたちが思わず吹き出す。

 結花「人違いじゃない?」
 登「そんなぁ……いえ、いいんです、また明日来ますから」

 登は肩を落として出て行く。

 結花「何か事情があるみたいね」
 由真「そんなツラには見えないけどね」

 バイトの帰り、二人は、ガード下のトンネルで忍者らしき男に襲われている登を見掛け、これを助ける。

 二人はそのまま登のアパートへ。

 
 登「夢を見るんです、いつもあなたたちの夢を……」
 結花「そんなに思い詰めてたの? 私たちのこと」
 登「違います!! あ、それもあるけど、出会う前から夢の中に出てきてたんです、あなたたちが」
 由真「冗談言ってんじゃねえよ、お前は……」
 登「冗談の言えない人間なんです、僕、ネクラだし……あなたたちにもうひとりお姉さんか妹がいませんか、どちらかといえば妹みたいな」
 由真「姉貴、気味悪いよ、こいつってば」
 登「やっぱりいるんですね」

 その夢を見始めたのは3ヶ月前、昇が視力を取り戻してからだと言う。

 登「僕の目は見えませんでした。2年前、交通事故に遭って……それが亡くなられたどなたかの角膜のお陰で僕はまた世界が見えるようになったんです。まるで生まれ変わったみたいに何もかも新鮮に見えちゃって……初めて見た夢があなたたちの夢だったんです。でも、他にも見たことのない街や建物、それに、恐ろしい物まで見るようになって……おとついはその建物のひとつを見つけました」
 結花「みんな実在するってわけね」
 登「たぶん」
 由真「恐ろしいものって、どんなもんなんだよ」
 登「とても大きくて奇妙なものが目の前に迫ってくるんです、それで、遠い暗闇の中からふっとお面みたいなものが浮かびあがって、何処まで追いかけてくるんです。いつも最後は変な球みたいなものが大きくなって僕の体にあたり、当たり続けて、ジ・エンドです。もう何度死んだかわかりません、僕」
 由真「もしかして、それも実際」
 登「脅かさないで下さい!! でも悪い夢ばっかじゃありません、お二人と知り合えたんですから」

 その部屋の外壁にヤモリのように張り付いて、中の様子を窺っている者がいた。

 先ほど登を殺そうとした男である。

 二人がそろそろおいとましようとすると、

 登「変な奴らに狙われてるからって、女の人にうちに泊まってってくれなんて言えませんよね、でも大丈夫です、僕、男だから……いいんです、気にしないで行って下さい、僕負けませんから、虚弱体質だけど、貧血症も治ったし、ウホッ!! 風邪気味だけど……」

 わざとらしく咳をしてみせる登に、顔を見合わせる結花と由真。

 結花「登君、うちへいらっしゃい。ここは危険だわ」

 結局、結花のはからいで、登は風間家に泊まることになる。

 翌日、依田と図書室で話している二人。

 依田「登と言う青年、君たちと同じ目をしています。最近の医学研究の報告によればですね、すでにこの世にない角膜の持ち主の見たものが、それが移植した人の夢にあらわれることがまれにあるそうです」
 由真「まさかぁ」
 結花「目が生前の人の見たものを記憶しているっていうの」
 依田「カメラのように映像を残した角膜、そうとしか考えられません、とすれば、昇に提供された目の元の持ち主、その人が君たちを知ってることになる」

 要するに、今回の話は、実写版として映画化もされた「ブラック・ジャック」の「瞳の中の訪問者」と言うエピソードのパクリだったのである。

 続いて、何処かのスケートリンク。

 
 氷の上を、着物姿のオトヒがすたすたと歩いて来るという、なかなかシュールな映像。

 だが、上には上があるもので、「突っ走れ隠密剣士」と言う時代劇には、江戸時代なのにフィギュアスケーターが出てきます。

 
 オトヒは、途中で現代風の衣装に変わる。

 さすがアイドルだけあって、なかなか可愛いのである。

 オトヒの前に、あの男が進み出てうやうやしく跪く。

 
 オトヒ「目か、執念とは恐ろしいものよ、目だけが生命を持ち、風間の娘らと結び付いているとはな」
 野乃「はっ、オトヒ様」

 
 オトヒ「けれど、野乃佐伯、何としてもお前の役目の秘密、暴かれてはならぬ、お前は草の忍びらと翔様を結ぶ、深い絆、もし知られた場合は……分かっておろうな」
 野乃「御意!! この野乃佐伯の術にかけましても!!」

 この男の名は野乃佐伯(ののさえき)と言う、およそ人間の名前とは思えないけったいなものだった。

 うーん、さすがにこれはないよなぁ。

 普通に佐伯で良かったんじゃない?

 あるいは、礼亜がレイア姫、般若がハン=ソロ、帯庵がオビ=ワンと言うように、「スターウォーズ」のキャラクターをもじった名前が多く使われている本作なので、これもそのたぐいなのかもしれない。

 オトヒ「今は世に広く蒔かれた草の種がほころびし時、そのような芽なぞ、はよう潰しておしまい」
 野乃「はっ」

 
 風間家に泊まった登は、いつもの夢を見るが、登に向かって飛んでくると言う物体が、アイスホッケーのパックであることが分かる。

 
 結花と由真はまだ起きていたが、その部屋のふすまがひとりでに開く。

 素早く警戒態勢を取る姉妹であったが、

 
 その空間いっぱいに巨大な般若の顔があらわれ、

 般若「半年ほど前より、お前たちとは別に風魔鬼組源吾と言う者が影の動きを探っていた……」

 と、ごくフツーに喋り出す。

 毎度のことなので、二人はノーリアクション。

 
 般若「そして突き止めたのが、野乃佐伯なる影の存在である」

 続いて、フツーのサイズに戻って部屋に入ってくる般若。

 何がしたいんだ、お前は……

 結花「野乃佐伯?」 
 般若「古来より、影が草の忍びに命を下す役目を持つもの」
 由真「なんだよ、その草って」
 般若「時あらば、影の命を受け、陰謀破壊を企てんとする忍びだ。それらの草たちが一斉に動くとき、世は滅びの道を歩むことになる」
 結花「それを探ってた源吾って人」
 般若「死んだ、野乃佐伯が見付かったという知らせの後に事故としてな……いや、事故などではない、影に殺されたのだ」

 で、登の目に移植された角膜の持ち主こそ、その源吾だったのだ。
 
 
 般若「忍びとは非情なもの、そのものも家族のない無名のものとして葬られた。人々のためにその目も捧げたのであろう」
 由真「その源吾ってのが私たちのことを知ってたってことかよ」
 般若「うむ、私がお前たちを山荘で鍛えた時のひとりだ。覚えておくが良い、結花、由真、全ては偶然ではない。死んで行った風魔の想いが登に乗り移り、お前たちを引き寄せたのだ。野乃佐伯の潜みし場所を伝えんが為に……無念の思いで死んでいった風魔の血の執念が自分が果たしえなかった仕事をお前たちに託しておるのだ」

 どうでもいいが、角膜バンクに登録してる忍者ってやだなぁ。

 CM後、二人は登を連れて見覚えのある建物がないか、あちこち見て回っている。

 
 その最中、偶然、野乃と肩がぶつかり、野乃の持っていたアイスホッケーのスティックが落ちる。

 登「すいません」
 野乃「いいんだよ、だいじょぶ、だいじょぶ」
 登「……」

 スティックを見た登は、豁然と、自分に向かってきたのがアイスホッケーのパックだと気付くのだった。

 ちなみに、いくらなんでもこんな偶然はありえないので、野乃がわざとぶつかって、スティックを見せ、登に思い出させたのだろう。

 その後、風間家に戻った登が階段を降りると、下から二人の話し声が聞こえてくる。

 
 由真「あいつの見る夢がどれだけの意味を持ってるか教えてやれば少しはマジで探すんじゃねえの? あいつ、叩き起こしてやる」
 結花「それはダメ!!」
 由真「なんでだよ」
 結花「一般の人を忍びの戦いに巻き込むことはできないわ」
 由真「……」
 結花「登君はただの男の子よ、わたしたちがいつかどこかで父さんのように死んだとしてもきっと懐かしく思い出してくれる。そんな男の子……わたしたちがすべきことは(源吾の)恨みを晴らすことじゃない。今生きてる登君から悪夢を取り除いてあげることよ」
 由真「殺された源吾って人、どんなひとだったのかなぁ」

 二人の会話を立ち聞きした登は、置手紙を残してあのスケートリンクへ向かう。

 登の手紙「目が見えるようになってから僕は嬉しくて、光や風景、そして結花さんたちの夢にただ夢中になっていました、この角膜をくれた人のことや結花さんたちの背負っている運命のことなど考えもしなかった、ゆうべ、夢の風景を必死に思いました。角膜をくれた人のためにも結花さんたちのためにも……そしてはっきりとその場所を思い出したのです。僕はその場所へ行ってみます。これ以上結花さんたちに迷惑をかけることはできません。どうもお世話になりました」

 手紙を読んだ二人は、登の健気さにじんとなる。

 結花「登君……」
 由真「あのスモールポテト野郎、いいとこあるよ」

 しかし、だからって、自分が命を狙われていると知りながら、ひとりでそんなところに行こうとするだろうか?

 もっとおかしいのは、登はその場所のことは手紙に書いてないのに、二人がスケートリンクにやってくることである。

 放送ではカットされたが、般若に場所を教えてもらうシーンがあったのかもしれない。

 ともあれ、二人が東伏見アイスアリーナに行ってみると、登の姿はなく、リンクの上に、野乃佐伯が座って待っていた。

 
 野乃「ふっふっふっふっ」

 
 野乃「来よったか……凍え死ぬかと思ったぞ
 結花&由真(でしょうねえ……)

 じゃなくて、

 野乃「来よったか……自らの秘密を知られぬことが私の使命、それを知られた今、私の命もお前たちと共にない」
 結花「登くんはどこ」
 野乃「まだ生きておる」

 いや、結花たちは野乃の顔は知らないのだから、さっさと登を殺してトンズラしてしまえばよかったのでは?

 自分で言うように、その正体を知られないことが最大の任務なのに、なんでわざわざ結花たちが来るのを待たねばならんのだ。

 オトヒだって、別に結花たちを殺せとは言ってないのだし……

 それはともかく、野乃が姿を消すと、代わりに三人のアイスホッケー選手があらわれ、結花たちに襲い掛かる。

 氷の上では思うように動けず、敵の飛ばしてくるパックをかわすのが精一杯の二人。

 野乃は、登を人質にして、結花たちの真上の高い場所に潜んでいた。

 
 野乃「苦しみながら死んでいくさま、見物ではないか……」

 ……

 いや、だから、なんでちゃっちゃと殺さないのっ?

 結花たちを脅さないのなら、登を人質にしておく意味がないではないか。

 やっぱりバカなの? ねえ、そうなの?

 その時、登が流した涙が結花の折鶴の上に落ち、彼らの居場所を教える。

 結花と由真が野乃を攻撃すると、術が解けて選手たちの姿も消える。

 彼らは野乃の作り出した幻影だったのだ。

 この後、野乃を本人を捕らえて事件解決。

 あんなこと言ってた癖に、縛られた野乃が、自害しようとしなかったのは不可解である。

 
 結花「もう悪夢に襲われることはないわ、登君、あなたの目に助けられたの……光の中で素敵に煌めいてた」
 登「それはきっとこの目をくれた人の……」
 由真「違うよ、あんたの目だよ」

 そう言われて、やっと登も晴れ晴れとした笑顔を見せる。

 事件は解決したが、翌日、結花と由真が肩を落として店から出て来る。

 由真「クビかぁ」

 
 由真「参るよな、影を追ってる間に店に泥棒が入ったなんてさ……出来過ぎだよぉ」

 と言うのだが、だからって二人が責任を取らされるというのは理解に苦しむ。

 単に、昨夜のバイトをすっぽかしたからクビ、で良いんじゃないの?

 由真「唯にプレゼント買えなくなっちまったな」

 失意の二人の前に、登があらわれる。

 
 登「昨夜一晩、僕、死ぬほど悩みました。結花さんを選ぶべきか、由真さんを選ぶべきかをです……でも僕には決められませんでした。だから、お二人のどちらかが僕を選んで下さい!! これ、プレゼントです」

 そう言うと、二つのプレゼントを差し出す。

 あんな目に遭いながら、能天気なことを言う登に呆れる二人だったが、

 由真「長生きするよ、お前は……あっ、これだよ、これだよ、姉貴!!」

 由真は、そのプレゼントをそのまま唯への誕生日プレゼントにまわすことを思いつく。

 ラスト、無事任務を果たして帰って来た唯の誕生パーティーが行われている。

 
 結花「誕生日、おめでとう、唯、はい」
 由真「ハッピーバースデー、唯」
 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、ありがとう」

 それがプレゼントの使い回しとも知らず、コロコロと喜ぶ唯。

 二人も実は中身を知らなかったのだが、無難なセーターだったので、

 由真「あいつにしちゃ良いセンスだね」
 結花「……」

 結花、テーブルの下で、由真の足を蹴る。

 だが、あいにくと、プレゼントには登からのメッセージカードが封入されていた。

 
 唯「結花さんへ、由真さんよりあなたが好きです、登。由真さんへ、結花さんよりあなたが好きです、登」
 結花&由真「……」
 唯「なんじゃこれ?」

 と、綺麗に落ちたところで終わりです。

 以上、色々と腑に落ちない点はあるが、主人公の不在と言う制約を上手く生かしたなかなかの力作であった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第14話「強悪の結花 三姉妹対決の日!?」

2024-08-19 18:58:58 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第14話「強悪の結花 三姉妹対決の日!?」(1987年2月12日)

 冒頭、ひとりで父・小太郎の墓参りに訪れている結花。

 結花(父さん、もう4月にもなりますね、父さんが願ったとおり私たち三人力を合わせて元気にやってます。どうか安心して見守っててください)

 心の中で語りかけ、静かに手を合わせる結花であったが、その足元に矢文が飛んでくる。

 手紙には「内密の指令あり」とだけ書かれてあり、結花は近くにいるであろう般若の姿を探して墓地の中を走り回っていたが、何者かに当身を食らって気を失う。

 さっさと結花を殺せば良いのに……

 
 タイトル表示後、髪をほどき、派手なメイクをして街へ繰り出し、他校の生徒をボコボコにして金を取る、悪鬼のような結花の姿が映し出される。

 結花「私の名前は折鶴の結花、おぼえときな」

 星流学園の屋上。

 
 クマ「そんな心配することないでしょう、しっかりした結花姐御のことだから……あ、そうだ、女学生一人温泉の旅、なぁんちゃって!!」
 由真「バカ」

 結花が、数日前から家に戻っていないのだ。

 そこへゴロウとヒデが「大変だ~」と騒ぎながら飛んでくる。

 
 ヒデ「結花姐御が、あちこちの番集めて締めまくってるって……商工のダチが言ってたんです」
 由真「ばかやろう!! 冗談言ってんじゃねえよ」
 ゴロウ「でもぉ、他にも見た奴がいるんです。なんか鬼気迫るって言う感じで……」
 クマ「まさか、裏番が? 表と裏の番がぶつかるようなそんなことになりゃしねえだろうな」
 由真「ある訳ねえだろ!! そんなこと……」

 結花に限ってそんなことがある筈がないと思いつつ、由真の心は不安に揺れ動く。

 どうでもいいけど、みんなイイ人そうな奴ばっかりで、とても番長グループとは思えない。

 無論、唯も小さな胸を痛めていた。

 
 唯「今日でもう丸二日、寝とらんのじゃろ、由真姉ちゃん」
 由真「お前もだろ」
 唯「……」
 由真「家にも帰らない、学校にも出てこない、これじゃあどうしようもないよ」
 唯「二日前の日曜日、結花姉ちゃんはいつもと変わらんじゃった、朝起きて、ちょっと出かけてくるって言ったっきり帰ってこんじゃった。あの日、何処いったんじゃろ」
 由真「オヤジの墓だよ」
 唯「父ちゃんの?」
 由真「ああ、墓に新しい花があったよ。問題はその後さ」

 夜、由真がひとりで家にいると、警官が訪ねてくる。

 
 警官「星流学園3年、風間結花の家はここだね」
 由真「まさか、姉貴が怪我でも?」
 警官「させたんだよ」
 警官「それだけじゃない、脅迫、傷害、窃盗」
 由真「怪我と傷害は同じなのでは?」
 警官「屁理屈を言うんじゃないっ!!」

 じゃなくて、

 警官「風間結花はいるかね」
 由真「待ってくれよ、姉貴がそんなことするはずないんだ」

 
 警官「風間結花のものに間違いないね?」
 由真「これは……」
 警官「窃盗の現場にあったもんだ」

 警官が由真に見せたのは、紛れもなく結花の使う金属製の折鶴だった。

 学校の図書室で依田と礼亜が話している。

 
 礼亜「結花の行動に変化が起こる前、結花を呼び出したものがいると思われます」
 依田「影か」
 礼亜「おそらく、私たちの名を騙ったものと」
 依田「今の結花が術を掛けられた本物か、あるいは……」

 今の段階では、依田にもそこまでは判断がつかなかった。

 しかし、なんで礼亜にそんなことが言えるのだろう?

 結花が、墓参りに行ったのは自発的な行為なのだから、そこで敵に拉致されただけかもしれないではないか。

 無論、一連の騒動の仕掛け人は「影」であった。

 
 山の奥で、滝に打たれて何やら呪文を唱えている二人の女性。

 真冬にこの撮影は大変だったろうなぁ。

 もっとも、防空頭巾のようなものを被っているので、顔や髪には掛からないようである。

 彼らは六道衆の刺客で「二方髪(にほうはつ)」と言う、忍者デュオであった。

 滝の裏側の洞窟には、雇い主であるオトヒの姿もあった。

 
 オトヒ「実を虚となし、虚を実となす。二方を巧みにし、思いのままに人の姿を装い、破滅に導く二方術の術、仕上げが楽しみよのう」
 二方髪『三本の矢、それは一本では脆いもの、心の離れ離れになった時、矢は互いに相手を貫かんとする。私どもの手に陥りし、本物の姉と妹たちの戦いがやがて見られましょうぞ』

 喋る時まで二人同時と言う、なかよしこよしの二方髪を演じるのは、二階堂美由紀さんと玉井千鶴さん。

 二人ともなかなかの美形なのに、ろくに顔も映してもらえないのが不愍である。

 しかし、こんなに早く、あの結花がニセモノだと視聴者にバラしてしまったのはいただけない。

 興味が半減してしまうではないか。

 学園の片隅で話している二人。

 唯「どうしてもわちには信じられん、結花姉ちゃんがそんなげなこと」
 由真「あたりまえだろ、この由真ならわかんねえけど、姉貴に限ってそんなことあるわけねえだろう」
 唯「じゃけんど、もし、影の術に操られちょるっちゅうなことないじゃろうか」
 由真「まさか」

 
 由真「姉貴を見たって言う奴の話じゃ、顔を隠すようにしてたって言うぜ。本物の姉貴なら顔を見せたっていいはずじゃないか」

 由真はそう反論するのだが、最初にシーンでは、別に顔は隠してなかったような……

 唯「やっぱりニセモンじゃろか」
 由真「そうに違いねえよ」
 唯「そしたら結花姉ちゃんは?」
 由真「……」
 唯「警官が見せた折鶴は本物じゃった。ヒデ坊の話じゃ、姉ちゃんに締められた番格たちは結花姉ちゃんじゃったって言うちょるって……」
 由真「うっせえ、姉貴じゃねえったら姉貴じゃねえんだ!! 姉貴のことはこの由真が一番良く知ってるんだ。物心付いた時から、何から何までな……てめえが姉貴を信用できないなら勝手にすれば良いさ。元々(唯が本当の)兄弟がどうかだってわかりゃしねえんだ。だけど、姉貴と由真は、私たちは……」
 唯「由真姉ちゃん……」

 何と言っても、生まれてからずーっと姉妹として一緒に暮らしてきた二人である。由真の、結花に対する思い入れは唯とは比べ物にならず、腹立ち紛れに、つい無神経な言葉を口にする。

 と、2階の窓から依田が顔を出し、黒板消しを叩きながら、

 依田「礼亜が街で暴れた結花の裏付けを取った、その時、結花が傷つけた暴走族の話によれば建築倉庫の爆薬を結花が狙っているらしい、考えられる倉庫は二箇所、そこに別々に張り込むんだ、そして結花が本物かどうか確かめるんだ」

 と言うことなのだが、なんで襲われた暴走族がそんなこと知ってんだ?

 一方、本物の結花はあの洞窟に監禁されていた。

 
 二方髪『風間結花、最早お前が無事、人の世に帰れたところで生きるべき場はないわ……見よ!!』

 二方髪は、白い頭巾を同時に取るが、その下からあらわれた顔は、結花と瓜二つであった。

 
 ニセ結花「鬼のように変わり果てたお前が今日も街で暴れる。人はお前をおそれ、憎み、逃げ出すのだ」
 ニセ結花「そればかりではない。今ではお前たち姉妹の絆もまた破れ、はじけ飛んだ。妹らもまたお前を憎み、呪うておるぞ」

 二人のニセモノは縛られている結花に迫ってその体を壁に押さえつけ、彼らと同じようにどぎついメイクを施して行く。

 さっさと殺せば良いのに……

 あるいは、せっかく結花に化けたのなら、もっとひどいことをすれば良いのに、他校の不良や暴走族を痛めつけるだけではねえ……

 CM後、由真の見張っていた倉庫に、結花がやってくる。

 
 由真「姉貴ぃ、影に操られてるんだろう? そうだよな、でなきゃ、こんなことある訳ない。憎いよ影が、憎くて憎くてたまんねーよ!!」
 結花「……」

 由真の棒読みの訴えに、結花が涙をこぼすのを見て、

 由真「姉貴、本物の姉貴なんだね」
 結花「私は……自分から風魔を裏切ったのよ。私だけじゃない、父さんもそうだった」
 由真「オヤジがぁ?」
 結花「汚れきった世の中を守るんじゃない、直すべき、そう考えて悩みぬいたのよ。そして影と接触した、その時、父さんは風魔に殺されたのよ」
 由真「そんな、嘘だ」
 結花「父さんほどの知恵と技を持ちながら、あんな仕掛けが見抜けないと思う?」
 由真「……」

 結花の言葉に、小太郎の笑劇的、いや、衝撃的な最期を思い浮かべる由真。

 結花「父さんは迷いを捨てきれないまま、自分から風魔の罠にはまったのよ。由真、一緒に出なおすのよ、風魔と戦う為に」
 由真「ほんと、姉貴?」

 由真も、一瞬心がぐらつくが、次の瞬間、本物の結花なら腕に梵字がある筈だと思い出し、リリアンで結花のセーラー服の袖を破るが、果たして梵字はなかった。

 結花「何するの、由真」
 由真「お前は姉貴じゃない!!」

 完璧な変装術を売りにする忍者デュオにしてはお粗末な失敗であった。

 もっとも、彼女たちの梵字って、普段は見えないんじゃなかったっけ?

 由真はニセの結花を攻撃するが、背後にもうひとりの結花があらわれ、由真を混乱させる。

 
 結花「私はもう風間結花じゃないわ。私もまた影のひとり……だから由真、そして唯、あなたたちに戦いを挑むわ。怨霊寺境内、そこであなたたちを待ってる」

 その結花は、それだけ言って姿を消す。

 由真「怨霊寺……なんちゅう名前だ

 じゃなくて、

 由真「怨霊寺……行くよ、姉貴、どこまでだって助けに行く」

 由真、その、変な名前のお寺へ向かっていたが、途中、例によって般若おじさんに止められる。

 般若「敵はお前と唯のように甘くはないぞ」
 由真「どういうことだよ」
 般若「結花とお前たちは戦わねばならぬかもしれぬと言うことだ。今お前たちの前に立ちはだかる影は恐ろしい手練れ、しかも結花を盾に戦意を奪い、風間三姉妹のすべてを倒さんとしている。共に倒れたくなくば戦わねばならん、たとえ結花が死ぬことになっても……」
 由真「そんなー、私たちに姉貴を倒して生き残れって言うのかよー」
 般若「そうだ、それが戦いだ!! 情けこそが人をして戦いに敗れさせ、心に迷いが生じた時、お前たちは敗れる。それだけは心しておけ」

 渾身の訓示を由真に与える般若おじさんでしたが、

 由真(敵の罠だろうが、なんだろうが、どうでもいい、姉貴と死ぬことになるんなら、喜んで死んでやる!!)

 由真は、その話を全く理解していませんでした。

 しかし、般若はああ言うけど、煮るなり焼くなり好きに出来る結花を、傷ひとつつけずに生かしておいた影の方も、たいがい甘いと思うんだけどね。

 ともあれ、由真は怨霊寺に行くが、境内の木に結花が縛り付けられていた。

 
 結花「由真」
 由真「姉貴? 本物?」
 結花「来ちゃだめ」
 由真「やっぱり本当の姉貴だろ」
 結花「結花、騙されちゃだめ」

 由真が結花に近付くが、今度は背後から結花の声がする。

 振り向くと、もうひとりの結花が同じく木に縛られていた。

 
 そして由真が振り向いた隙に、最初の結花がその首をロープで縛ろうとする。

 由真、その結花を投げ飛ばし、二人目の結花を助けようとするが、これもニセモノではないかと疑い、身動きがつかなくなる。

 そこを二人目の結花が襲おうとするが、

 唯「そいつはニセモンじゃ!!」

 遅ればせながら唯が駆けつけ、ヨーヨーを投げつける。

 今回、浅香唯さんの出番が少ないのは、スケジュールの都合らしい。

 続いて、山門の下に、本物を含めた三人の結花が立ち並ぶ。

 
 二方髪『ふふふふ、良くぞ見破った、戦え、風間の娘らよ、互いに殺し合うのだ。本物の結花を倒さねば我らを倒せはせん。それができなくば逃げてもいい。しかし、そのときは結花が死ぬとき、どうだ、早く結花を倒したらどうだ』
 結花「奴らの言うとおりよ、唯、由真、戦うのよ。たとえ私を倒すことになっても」

 ニセの結花たちは、本物の背後を猛スピードで反復横飛びしながら、苦無を飛ばしてくる。

 
 結花「戦いなさい、私が邪魔なら私を倒して!!」
 唯「結花姉ちゃん……」
 由真「姉貴」
 結花「なにをしてるの、私の喉を狙って!!」

 二人は結花の真意を読み取って頷くと、

 由真「いまだ!!」

 まず、由真がリリアンを投げ付ける。

 
 本物の結花が咄嗟にその場にしゃがんだ為、背後に並んだニセモノたちがリリアンの糸で動きを封じられる。

 すかさず唯がヨーヨーを投げ、二人を倒す。

 結花「唯、由真、ありがとう」
 唯「やっと本物の結花姉ちゃんに会えたわい」
 由真「姉貴」
 唯「結花姉ちゃんも泣くことあるんじゃね、おかしか」

 苦難を乗り越え、再び揃った三姉妹の絆はますます固く結ばれるのだった。

 以上、はっきり言って面白くもなんともなく、レビューするのが苦痛であった。

 しかし、これ、一件落着みたいな感じになってるが、結花の容疑を晴らすには、ニ方髪が結花そっくりに化けていたことを証明せねばならず、なかなか大変なんじゃなかろうか。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第13話「動きだした大魔神、不動!」

2024-08-02 19:52:05 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第13話「動きだした大魔神、不動!」(1987年2月5日)

 冒頭、女の子らしく、アジトで占いに興じている翔たち。

 翔「次なる刺客は?」
 オトヒ「六道衆がひとり、不動」
 ミヨズ「まがまがしき地獄の悪霊どもの力を借りるための行を修めております」
 翔「どういう意味?」
 ミヨズ「さあ、プロフィールにそう書いてあるんで……」

 途中から嘘だが、何言ってんのかよく分からないのは確かである。

 翔「して、その術は」
 ミヨズ「闇に生きる限り、不死身でございます」

 要するに、光の中では生きられないと言う、難儀な人生を送っているのである。

 一方、星流学園。

 依田が学期末テストの答案を返している。

 答案は100点から点数順に並べてあり、生徒たちは次々と自分の答案を取っていくが、残り4枚となったところで、依田が指示棒で答案用紙を押さえる。

 依田「ここまで」
 唯「なんでじゃー」
 依田「これからはバツですねえ」

 要するに、赤点と言うことなのだ。

 
 依田「村上まさひろくん、55点、藤波ヒデオ君、38点」
 ゴロウ「あ、先生、ヒデ坊ちょっとお腹痛くて」
 依田「都合のいい子ですねえ」

 と言うのだが、実際は、俳優の都合が悪くて不在だったと思われる。

 依田「河本(こうもと)ゴロウ君、38点……そして最後、風間唯君、20と4点」
 唯「……」
 依田「諸君らは追試を受けてもらいます」

 ちなみに依田の台詞で、ヒデとゴロウのフルネームが判明する。

 河本ゴロウの河本は、演じている河本忍さんの名前から取ったものと思われる。

 どうでもいいが、ヒデたちはともかく、55点で赤点と言うのは厳しすぎないか?

 逆に言えば、それ以外の生徒はみんなそれ以上だった訳で、いささか優秀すぎる気がする。

 その後、唯はとことこと依田の後を追いかけ、

 
 唯「スケバン刑事との二足のワラジはつらかとよ、ちいとは考えてくれてもええんじゃないか?」

 自分の特殊な立場をアピールし、便宜を図ってもらおうとするが、依田は途端に厳しい顔になり、

 
 依田「風間唯、君は誰と話してるつもりです」
 唯「依田先生、そして般若、あんたならわかってくれるはずじゃ」

 なおも甘えるように上目遣いで見るが、

 依田「今の私は教師の依田です、けじめはよろしく願いますよ」
 唯「融通の利かんやっちゃ、ようし、やっちゃる、やればええんじゃろ」
 依田「頑張って下さい、私は点数に達しないものはビシビシ留年させる主義ですからね」

 こういうところは妙に厳正な依田であったが、ぶっちゃけ、影によって世界が滅ぼされようとしているときに、赤点だの追試だのやってる場合じゃないと思うんですが……

 実際、今回は追試の勉強のため、唯がひとりになってそこを不動に狙われることになるのだから、自分で自分の首を締めるようなものである。

 さて、唯は夕食時にも教科書を手放さずに勉強に励んでいたが、

 由真「うっとうしい奴」
 唯「なんでひとが真面目に勉強しちょっとに、そんげなこと言うとや」
 由真「急に頭が良くなるわけないだろう、要領悪いんだよお前は」

 由真は自分の部屋に唯を連れていき、様々なカンニングアイテムを広げる。

 
 唯「なんじゃこりゃ」
 由真「由真様の秘密兵器、どれでも貸してやるよ。これはね、こうやって……男の教師には効果抜群!!」

 その中には、ブラジャーにアンチョコを仕込んだけったいなものもあった。

 唯「これ、みぃんな由真姉ちゃんが作ったと」
 由真「そう、人の裏を掻く、これも立派な忍法さ」
 唯「呆れた、こりゃただのカンニングじゃわ」
 由真「人がせっかく心配してやってんのに」

 由真なりの親切だったが、意固地な唯は自分の力でクリアして見せると断言する。

 対照的に、成績優秀で真面目な結花は、自分が使っていた単語帳を貸してやるのだった。

 
 夜のトレーニングをしながら、単語帳で英単語を暗記している唯。

 だが、すでに唯のまわりの暗闇には、不動の赤い目が輝いていた。

 それは、神楽で使うような恐ろしげな面をつけ、古代風の甲冑をまとい、右手に直刀を持つという、忍びと言うより、それこそ不動明王の化身のごとき異形の怪物であった。

 ただ、外見はインパクトがあるのだが、何も喋らず、何か特別な技があるわけでもなく、ただ力任せに暴れまわるだけなので、キャラクターとしての面白味に欠ける。

 今回の話が、シリーズ中でも一、ニをあらそう凡作になったのも、それが原因だと思われる。

 せめて、本体は別にいて、怪物を操ってる……みたいな設定だったら、少しは盛り上がったと思うのだが。

 それでも、唯が公園の遊具の上に腰掛けて勉強しているのを、何者かが「見た目」で近付き、その足を掴んだので、

 
 唯「きゃあーっ!!」
 警官「ああっ」
 唯「なんじゃ、お巡りさんか」

 唯が悲鳴を上げて落っこちるが、それは不動ではなく、警邏中の巡査だったと言うオチは、ホラーではありがちの演出だけど、なかなか面白い。

 面白いのだけど、その後、

 
 ごくフツーの感じに不動さんがあらわれ、唯に切りかかってくるので、せっかくの前ふりがぜんぜん生かされていないのが残念である。

 あと、野暮なことを言うようだが、ただ唯を殺すだけなら、こんな化け物を呼び寄せるより、銃で撃ち殺した方がよほど簡単だろう。

 相手が仮面ライダーだったら、銃など通用しないので、怪人にお出まし願うと言う大義名分が成り立つのだが、相手はあくまでただの人間だからねえ。

 ともあれ、唯は車道に不動を誘い出して、走ってきたトラックにぶつけさせる。

 だが、トラックは何事もなかったように走り去り、道路にも不動の姿はない。

 CM後、闇の中をひた走っている唯。

 自宅に駆け込むと、家の中は不気味な闇に覆われ、めちゃくちゃに荒らされていた(註1)

 唯「なんじゃこれは?」

 唯がゆっくり視線を動かすと、畳の上に結花と由真が倒れているのが見えた。

 註1……実際は、画面が暗くてどうなってるのか良くわからない。

 
 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん!!」

 唯が慌てて駆け寄ると、畳から不動の腕が飛び出し、唯の手首を掴んで引き摺り込もうとする。

 唯「いてて、放せっ」
 由真「起きろよ、起きろよー」

 が、それは唯の見ていた夢で、腕を引っ張っているのは現実世界の由真だった。

 しかし、今更だけど、中村由真って演技がヘタだなぁ……

 まぁ、他の二人もどっこいどっこいなので、そんなに目立たないけど。

 
 結花「どうしたの」
 唯「なんでんなか、昨夜転んだと」
 結花「見せて見なさい」

 結花が唯の右手を見ると、親指の付け根あたりが痣になっていた。

 結花「由真、薬箱」
 由真「はい」
 唯「ほんまにだいじょうぶじゃ」

 一応、夢かと思ったら、体にその証拠があって現実の出来事だったと知ると言う、怪談によくあるパターンにはなっているのだが、不動の存在自体が夢みたいな話だし、唯が木から落ちた時に右手を怪我したことははっきりしているのに、夢の中の出来事と重複していて、武上さんのシナリオにしては、焦点がぼやけている。

 それをやるんだったら、昨夜の出来事もひっくるめて夢だったのかと唯に思わせ、それから痣を見て現実だったと知る……と言う風にすべきだったろう。

 唯、右手に包帯を巻いてもらい、学校に行く。

 唯(あん化け物はわちをねらっちょる、姉ちゃんたちを巻き添えにするわけにはいかんわい)

 健気なことを考える唯だったが、現時点では、唯だけが狙われているとは断定できまい。

 三姉妹が標的で、たまたまひとりで出歩いていたところを襲われた可能性だってあるんだから。

 右手でヨーヨー、左手で単語帳をめくるという、器用なことをしていると、右手からヨーヨーが落ちて転がる。

 依田がそれを拾い上げ、

 依田「手首のスナップがバツです」

 
 依田「腱鞘炎かもしれませんね、きっと勉強のし過ぎでしょ」
 唯「皮肉でしょうが、どうせ」
 依田「はははは、話が通じるようになりましたね」

 依田は唯の右手を持つと、強く捻る。

 唯「いて、なんすっとか」
 依田「合谷(ごうこく)と言うツボです、少しは効いていませんか」

 
 唯「ほんとうじゃ」

 言われてみると、確かに右手の親指が軽くなっていた。

 依田「腱鞘炎で、追試の勉強ができなかったなんて言い訳はバツですよ」
 唯「100点満点ば、とってみせるわい」
 依田「いやいやいや、も、60点で結構」

 なお、なんでも知ってる般若おじさんのことだから、唯の怪我の原因も知っていたと思われる。

 ちなみに合谷の効果は、肩凝りや頭痛の解消などであり、捻挫(?)を治すようなものではありません。

 ともあれ、依田にバカにされたと思った唯は、学校の実験室に閉じ篭もり、徹夜で勉強することにする。

 実験室には防火扉があるので、怪物も侵入できないだろうと言う読みである。

 深夜4時ごろ、不動がやってきて防火扉をガンガン叩く。

 唯「頼むかい、今夜は襲わんで、明日は大事な追試があるんじゃ……神様、仏様、キリスト様、唯に勉強ばさせてください」

 唯が必死に祈っていると、ピタッと音がやむ。

 唯、おそるおそる扉に近付き、

 唯「もしもし、お帰りですか、もしもし?」

 相手が化け物なので、思わず敬語になってしまう唯。

 が、次の瞬間、部屋の明かりが消え、防火扉のノブがはじけ飛ぶ。

 
 唯「お願いじゃ、今日だけは勉強させちくり」

 唯の願いも空しく、遂に不動が扉を破って入ってくる。

 どうでもいいが、背後の骨格標本、妙に顎が長い。

 唯も腹を括り、プロテクターを装着してバトルモードとなる。

 
 唯「三代目スケバン刑事、麻宮サキ!!」

 唯がヨーヨーをパカッと開けて代紋を見せるが、

 
 不動「……」

 すでに人間廃業してしまったらしい不動さんには全く理解できず、首を傾げるだけ。

 
 振り回した剣が配電盤に当たって感電するという、お約束を披露する不動さん。

 死んだと思って唯が非常階段に出て一息ついていると、背後に不動が立つ。

 まぁ、イメージとしては「13金」のジェイソンが元ネタだろうなぁ。

 不動、唯を斬ろうとして踊り場から地面に落ちる。

 その後もひたすら勉強を続ける唯だったが、5時半ごろ、またしても不動があらわれる。

 結花と由真が学校に駆けつけるが、例によって般若に止められる。

 
 結花「般若、何故?」
 般若「唯は我らに救いを求めなかった。自らの力だけでその宿命に挑もうとしているのだ。その心根、天晴れ、見届けてやろうではないか」
 由真「やられちまったらどうするんだよ」
 般若「そのときはそれまでの忍びに過ぎなかったと言うこと」
 由真「冗談じゃねえ、行こう」
 般若「ならん、唯は今、忍びとして生きられるか否かの瀬戸際に立っているのだ」

 般若はあくまで二人を行かせない。

 いや、さっきも書いたけど、唯を死なせたら世界も救えなくなる訳で、そんな熱血スポーツドラマみたいなこと言ってる場合じゃないと思うんですが……

 つーか、そもそも忍びの仕事って、化け物と戦うことじゃないと思うんですが……

 この後、不動が光に弱いことを知った唯は、

 
 扉を開けて、昇ったばかりの朝日を不動に浴びせ、漸く倒すのだった。

 追試後、依田は唯の答案を採点していたが、60点に少し足らない。

 依田、やむなく、答案を改竄して、無理やり60点にしてやるのだった。

 依田「武士の情け」

 お前は忍者だろーが。

 うーん、でも、さすがにインチキは良くないと思うし、依田の信条にも悖る行為だろう。

 しかも、

 
 依田「村上君、78点、合格」

 依田はゴロウとヒデに返すと、

 依田「もう一度、追試」

 もう一回あんのかいっ!!!!

 と言うことになり、だったら唯にもそうすりゃ良かったのにと思ってしまう。

 赤点で留年決定だったら、依田のインチキもまだ分かるんだけどね。

 ともあれ、唯は60点ピッタリで、なんとか及第する。

 さっきも書いたけど、60点未満で赤点って、いくらなんでも厳し過ぎるよね。

 
 唯「やったーっ」
 結花「やればできるじゃない」
 由真「由真と同じ血が流れてんだ、そんな出来悪いはずないじゃん」

 由真はそう言うのだが、自分がバカなことぐらいは自覚してるだろうに、この台詞もちょっと変である。

 ここは、「姉貴と同じ血が~」にすべきだろう。

 しかし、のちに「同じ血が流れて」いないことが判明するのだから、実に皮肉な台詞になっている。

 この時点では、そこまで考えられていたかどうかは不明だが。

 以上、はっきり言って、面白くもなんともない凡作であった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第12話「明かされた風魔一族の宿命」

2024-07-20 19:14:28 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第12話「明かされた風魔一族の宿命」(1987年1月29日)

 前回と同じく、ミヨズが護摩壇を焚いている。

 
 ミヨズ「土ぐも一族・土鬼が敗れたそうですな。額にカーンの梵字を持つ娘、あなどれぬこと御承知いただけたかとぞんじまする。して、次なる方はどなたが」

 ミヨズの言葉に、壁に映る人影からもうひとつの影が分離する。

 その影が、ミヨズの背後で巫女のような衣装を着た女の姿に変わる。

 
 夜叉女「ふふふふ、六道衆、カゲロウ一族、カシラ・夜叉女(やしゃめ)にございます」
 ミヨズ「かたじけのうござる」
 夜叉女「三日のうちに必ずや娘の命、絶ってご覧に入れまする、ははははははっ」

 夜叉女を演じる桑田和美さんは、後に「花のあすか組!」でも、似たようなキャラクターを演じておられる。

 しかし、何故、必ずひとりずつ敵にぶつけるのか、その辺が謎である。

 六道衆と言うなら、6人全員で掛かればいいではないか。

 考えたら、風魔って、「忍者キャプター」の頃から全然進歩してないなぁ。

 それはともかく、タイトル表示後、結花が、いつになくしんみりと父親の遺影に語りかけている。

 
 結花「父さん、唯や由真や私は、本当にあんな恐ろしい変態人たちと戦わなければいけない運命なの? 私、なんだか自信がなくなってきた……怖いんです。父さん……」

 前回、土鬼たちが土塊となって死んだことがよほどショッキングだったのか、率直に弱音を吐く結花。

 一方、唯は、前回、面の下からあらわれた般若の顔が、依田そっくりだったことを考えていた。

 唯「あの男、似ちょった……」

 そこへ由真が入ってきて、

 
 由真「いつまで寝てんだよ」
 唯「寝とらん、考え事しちょるんじゃ……ああ、考えることが多すぎて頭が割れそうじゃ」
 由真「じゃあ、いっそのこと考えるのやめればいいじゃん」
 唯「うん……」
 由真「早くメシ食おうぜ」

 由真がせかすが、なおも唯は腕組みをして考え込む。

 由真「なんなんだよー」
 唯「考えるのをやめるかどうか考えちょるんじゃ」
 由真「いい加減にしろよー」

 唯のとぼけた答えに、由真が枕で唯の頭を叩き、そこから例によって取っ組み合いの喧嘩が始まるのだった。

 そんなこんなで朝食をとる余裕もなく登校した唯だったが、学校の前で番長グループが出迎えてくれて、ゴロウからもらったパンと牛乳を食べながら歩く。

 

 
 が、唯が校舎に近付いた時、頭上から大量の水が落ちてくる。

 唯「なんすっとか?」

 
 依田「だから言ったでしょう、僕は番長グループなどと言うものの存在は認めないって……毎朝毎朝徒党を組んで、全くもって目障りです」
 唯「じゃかいって、じゃかいって、これはないじゃろう?」
 依田「それだけ人をまとめる力がありながら、無為に日々を過ごすなんてもってのほかです」

 
 唯「なんのこっちゃ?」
 依田「今にそのエネルギーを向けなければならない大変なことに出会うでしょう。力を貯えておくんですねえ。何が起こっても動じないよう、腹を括っておきなさい……よしなに」

 ただの説教かと思いきや、急に依田が意味ありげな忠告をしたので、結花と由真も考え込む顔になる。

 ちなみに、胸壁に生徒たちの自画像(?)が貼ってあるが、夜中に、この顔が笑い出したらめっちゃ怖いだろうなぁ。

 唯「うるさい、言いたいことはそれだけか? そこを動くな」

 怒り心頭の唯は、ただちに依田のいるベランダまで駆け上がるが、既に依田の姿はなく、いつの間にか校庭に降りて向こうへ歩き去る姿が見えるのだった。

 その後、依田が授業をしていると、セーラー服姿の夜叉女がグラウンドを突っ切って校舎に近付いてくる。

 もっとも、校舎の中には入らず、校庭で唯と擦れ違うと、自らその正体をあらわす。

 
 夜叉女「ほほほっ、額に浮き出でしその梵字、うつくしゅうございます」
 唯「しゃからしかっ、お前なにもんじゃ?」
 夜叉女「六道衆、カゲロウ一族カシラ・夜叉女と申します」
 唯「六道衆? お前も影の仲間か」

 夜叉女、右手を差し上げてつむじ風を起こしつつ、落葉の形をした手裏剣を飛ばすが、般若の投げた陣羽織が盾となって、唯を守る。

 夜叉女「邪魔が入った。今日より三日のうちにあなた様のお命頂戴仕りますこと、お知らせに参ったまで、しかとお心に留め置きくだされますように」
 唯「なんじゃとー」

 夜叉女はそれだけ言って姿を消す。

 どうでもいいが、なんで三日なんだろう?

 こう見えて、結構スケジュールが詰まってるのかもしれない。

 唯は何も考えずに追いかけようとするが、例によって般若おじさんに止められる。

 般若「待てい、深追いをするな、お前ひとりで勝てるような相手ではない」

 唯はにっこり笑って鼻コスコスすると、陣羽織を返しながら、

 唯「あんたに話があったんじゃ、放課後、八幡神社の境内で待っちょる」

 放課後、唯は姉二人と八幡神社で般若が来るのを待っていたが、現れた般若に、いきなりヨーヨーを投げ、その面を割る。面の下から出て来たのは、勿論、依田の顔であった。

 般若にしては不覚のようだが、そろそろ正体を明かすときだと思って、わざとよけなかったのかもしれない。

 
 由真「うっそぉ……」
 結花「依田先生?」
 唯「やっぱりそうかぁ」

 全然気付いていなかった結花と由真は目を丸くして驚く。

 
 般若「私の正体を見抜くとは、見事だ、唯、よくぞそこまで成長してくれた……お前の父・小太郎が生きていたら、どんなに喜んだことか……」
 唯「しゃからかしかっ!!」

 般若が感慨ぶかげに言うが、唯は聞きもあえずに一喝する。

 どうでもいいが、見抜くと言っても、前回、たまたま般若の素顔を見たから気付いただけであって、「成長」とは関係ないような気もする。

 
 唯「あんたの口から聞きたいことはそんなげなことじゃなか、あんたの目的はなんなんじゃ? もしかして、わちや姉ちゃんたちを利用してるとじゃなかかぁ?」
 結花「父さんが影と戦ってたとか言ってたけど、それだって本当かどうか判らないわ」
 由真「私たちは影と戦う宿命をしょってるとかなんとか言ってたけど、それだってどうだかわかりゃしないぜ……」
 結花「そうね、もしそれが本当なら顔を隠す必要なんてないもんね」
 由真「こっちは平凡な女子高生やろうと思ってたんだ、てめえの勝手に操ろうってんなら、許しゃしないぜ!!」
 唯「どうじゃ、どうなんじゃ?」

 唯が口火を切ると、結花と由真もその尻馬に乗って口々に般若に対する不信感をぶちまける。

 さらに、それぞれの武器を手にして、ここで一戦交えることも辞さない覚悟を示す。

 
 般若「平凡な女子高生か……出来ればそうしてやりたかった。凶星、影星、また光を増したか……お前たちが背負っている影星の宿命、知る時が来たようだ」

 話の途中、空に赤い星が輝くのが見えるのだが、さすがに真っ昼間に星は見えないのでは?

 影星が光を増すと言うのもなぁ……

 CM後、般若が三人を連れて山道を歩いている。

 唯「こらぁ、一体どこまで連れていくんじゃ」
 般若「この山頂に海覚上人と言う人がおられる……海覚上人がお前たちの敵が何者で、お前たちが何のために戦わねばならぬのか教えてくれるはずだ」

 
 散々歩かされた挙句、三人が辿り着いたのはゴツゴツした岩山であった。

 登山道の入り口には注連縄の結界が張られていて、般若が印を結び、真言を唱えて注連縄を掴んで上げ、唯たちを通す。

 
 山頂には、行者のような衣装をまとった老人が祭壇を築いて何事か祈念していた。

 
 海覚上人「おお、来たか、クソ寒かったぞ

 間違えました。

 海覚上人「おお、来たか、待っておったぞ、娘たちよ」
 由真「どうして私たちが来ること知ってんだろう?」
 結花「さあ」
 唯「気味悪か坊さんじゃあ」

 海覚上人を演じるのは、名優・加藤嘉さん。

 般若は、不穏な空気を感じ、一礼してその場を離れる。

 
 海覚上人「カーッ!」

 海覚上人が気合を発すると、唯の額に梵字が浮かび上がる。

 海覚上人「ほう、これは見事じゃ……そちたちの梵字は?」

 結花は袖をまくって左腕の、由真はスカートを引っ張って右足の梵字を見せる。

 海覚上人「宿命の子らよ、お前たちに伝えなければならぬことがある」
 
 同じ頃、夜叉女たちカゲロウ一族も登山道の入り口まで達していたが、結界に気付いて歩を止める。

 
 夜叉女「スズメ!! 結界破りの法を行う、そなた、犠牲となってくれますね」
 スズメ「……」

 スズメちゃん、なかなか可愛いのだが、注連縄を両手で掴んで、結界のパワーを一身に受け、あえなく絶命してしまう薄幸のキャラなのでした。

 何もこんなことで死ななくても……

 そもそも、なんでわざわざ結界の中で戦わねばならんのだ?

 まだ三日の期限は先なのに。

 ともあれ、結界を抜けて進みかけた彼らの前に般若が立ちはだかる。

 夜叉女「おのれは、風魔鬼組・般若!!」
 般若「影に魂を売りし哀れなるもの、ここを通す訳にはいかん!!」

 彼らが戦っている間、海覚上人が影や唯たちの宿命について淡々と語って聞かせていた。

 
 海覚上人「あらゆるものは相生相克に従い、太極から生まれ、全ては二元に支配されるのじゃ。それは陰と陽、すなわち天があれば地があり、男があれば女がある、そして光があれば影が……世界は陰陽対立する二元からなり、さらにその陰陽は、木・火・土・金・水の五元素から成る。これを陰陽五行と言う。五行には相生、相克の二つの働きがあり、これが天体や宇宙を正しく作用させるのだ。だが、ここにその正しき道にそぐわぬもう二つの道がある、反相反克の道だ」

 
 ここで、三人が宙に浮かび、その背後に巨大な影がうごめくイメージが映し出される。

 海覚上人「悪と呼ばれた忍びどもは全て転輪聖王(てんりんしょうよう)に魂を売り渡し、反相反克の道に生きようとしたものたちじゃった。彼らは世を乱し、戦士(?)を起こし、世界を邪悪の相に塗り替え、やがて全てを破滅へ導こうとする。が、万物には二元あり、悪があればまた善も……転輪聖王に立ち向かい、世を救った者がおったそうじゃ。その者は転輪聖王と戦う為に想像を絶する恐ろしい試練を乗り越えたと聞く。人としての幸せを捨て、孤独と責任、永遠の苦しみを背負い、それに打ち勝ったればこそ転輪聖王に勝てたという。その者とは体に梵字を抱きし、風魔の者……」
 結花「じゃあ私たちの先祖が?」
 由真「その、転輪聖王ってのと戦ったのか?」
 唯「そうか、そうじゃったんか」
 海覚上人「影星現れし時、体に梵字を抱きし風魔は転輪聖王と戦う……それがお前たちの宿命、さいわい、転輪聖王はまだ出現しておらぬが、その時は近いじゃろう」
 結花「恐ろしい試練……」
 由真「人としての幸せを捨てるのか?」

 さすが怖いもの知らずの由真、名優・加藤嘉さんに対し、堂々のタメ口!!

 唯「お坊さん、わちにはようわからんかったけど」
 海覚上人(わからんのかいっ!!!!)

 このクソ寒いなか、長々と喋らせた挙句の唯の言い草に、思わず心の中でツッコミを入れる海覚上人であったが、嘘である。

 唯「もしかして今の話にこれも関係があるんじゃろか」
 海覚上人「これは……」

 唯、持参した木箱の中から、例の雛人形を取り出し、海覚上人に見せようとする。

 ちなみに、転輪聖王と言うのは、インド仏教などに出てくる理想的な王のことで、別に世界に破滅をもたらすような存在ではない。だが、テンリンショウヨウと言う言葉の響きが、得体が知れない、何か途轍もなく強そうなラスボスと言う感じを漂わせているので、ネーミングとしては良いと思う。

 が、次の瞬間、海覚上人は、夜叉女が投げた木の葉手裏剣から唯を守ろうとして、自分が胸を刺されてしまう。

 夜叉女は風で木の葉を舞い躍らせてその中に身を隠していたが、唯に気付かれてヨーヨーをまともに食らう。

 
 夜叉女「ようぞ、カゲロウの術、見破られました、おみごと」

 もっとも、夜叉女はその場に倒れただけで、その生死は不明である。

 再び唯の額に浮かび上がった梵字を、瀕死の海覚上人が指差す。

 
 海覚上人「オンタダギャット、トバンバヤ、ソワカ……」

 海覚上人は、真言を途切れ途切れにつぶやくと、結花の胸の中で息を引き取る。

 
 般若も、無言で手を合わせ、海覚上人の死を悼む。

 結局、海覚上人と言う人がどんな人物なのか、般若とはどういう関係なのか、さっぱり分からないままなのだった。

 
 オトヒ「六道衆、土鬼、夜叉女まで倒されましたか」
 ミヨズ「あの娘達もなかなかのものです」

 二人がガッツ星人のように向かい合って話していると、翔がやってきて、雛壇のそばに立ち、

 
 翔「人形が、人形が泣いておる……悲しい、のう

 女雛の欠けた男雛を見てつぶやくのだが、途中から、しわがれた老婆のような声に変わるのが不気味であった。

 勿論、雛飾りの空白の場所には、唯の持つあの女雛が座ることになっているのだ。

 ラスト、琥珀色の夕陽を見詰めている4人。

 
 般若「お前たちが風魔の子に生まれていなければ、体に梵字を抱いていなければ……平凡な女子高生として生きられたかも知れん。しかし、既に影たちはこの世の中を飲み込み始めているのだ。お前たちは戦う宿命から逃れることは出来んのだ」
 結花「父さんが殺されたのも私たちがこれから乗り越えていかなくちゃいけない試練なのかも知れない」
 由真「くっそー、人のこと巻き込みやがって……どうせ私らは風魔の子だ、親父が戦ってたんだ、立派に跡を継いで見せようじゃないか」
 唯「そうじゃ、転輪聖王がどんげなもんじゃいうて、わちらの宿命がどんげなもんじゃちゅうて、そんげなもんは知らん!!
 般若(えっ? ええーっ?)

 大声で今までの展開を台無しにするような唯の叫びに、思わず焦るが、続けて、

 唯「じゃけんど、わちは人から魂を奪い、勝手に操ったり殺したりする奴らを許す訳に行かん。姉ちゃんたちもじゃろう? どんげなことがあってもわちは戦う!!」

 と言う無難な決意表明でまとめたので、ホッと胸を撫で下ろす般若おじさんでした。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第11話「土グモ一族の頭 土鬼見参!」

2024-07-06 19:03:33 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第11話「土グモ一族の頭 土鬼見参!」(1987年1月22日)

 冒頭、いとしのミヨズたんが、洞窟の内部のような場所で、護摩壇の前に座り、火を焚きながら「アビラウンケンソワカ……」と、真言密教を唱えている。

 ミヨズ「いまぞ赤き凶星輝き、天地の陰陽五行に誕生の気満ちたり、集え、忍びの衆よ、影星のもとに我らが技もて異端(?)をなすのだ、影の子らよ、集え!!」

 要するに、そろそろ手持ちの人材が心細くなって来たので、外部から助っ人を呼んでいるところなのである。

 やがて、背後の壁に、巨大な影があらわれる。

 
 影「我ら六道衆、何用じゃ」
 ミヨズ「我ら影の前に立ちふさがらんとするおなごがひとり、額にカーンの梵字を持つ風魔、そのもの、ヴァジュラを身に付けておるやもしれません。どなたかヴァジュラを奪い、おなごを消して頂けませぬか?」

 ミヨズの言葉に、巨大な影から別の影が分離し、芝居の黒子のような格好をした男の姿になる。

 
 土鬼「六道衆の一、土ぐも一族のカシラ・土鬼(どき)!!」
 ミヨズ「かたじけのうござる」

 しかし、残念ながら、ミヨズのこの依頼そのものが、敗着となった。

 欲張らずに「おなごを消す」だけにしておけば、容易に勝利を掴めていただろうに…… 

 ヴァジュラなどは、唯を殺したあとで、ゆっくり探せば良いのである。

 タイトル表示後、礼亜がいつもの部屋で、三姉妹に任務の説明をしている。

 礼亜「昨日、地獄明王アグニの像が三つ発見されました」
 唯「地獄明王アグニの像ってなんね?」

 礼亜は、三人に資料を見せる。

 
 礼亜「影が信奉する邪悪な火の神です。アグニの像あるところ、必ず影の存在あり、発見されたのは松風森林公園、武蔵丘霊園、朝日ヶ丘公園の三箇所……調べて貰えますか?」

 と言う訳で、三人は手分けしてアグニの像を調べることになるのだが、誰が、どういう状況でアグニ像を発見したのか、何の情報もなく、もどかしいことこの上ない。

 それはともかく、三人が早速調査に行こうとすると、般若おじさんが出てきて、

 般若「待て!!」

 三人に煙のようなものをふきつけると、苦無を投げてカーペットに映った三人の影に突き刺す。

 結花「どういうこと?」
 般若「影縫いの術だ、動けまい」
 由真「なんだよ、それ」

 由真が近づこうとするが、足が床に釘付けにされたように動かない。

 他の二人も同様だった。

 
 唯「こらぁ、なんでこんげな邪魔をすると?」
 般若「慌てるでない、アグニの像は罠かも知れぬ。影が信奉するアグニ像、そう簡単に人目に触れるものではない。それが三つも見付かった、おかしいとは思わぬか?」
 三人(おかしいのはあんたの恰好だ)

 般若の問い掛けに、心の中で冷たくツッコミを入れる三人だったが、嘘である。

 しかし、このシーン、般若が、自分たちで出した命令を自分たちで否定してるようで、なんか変なんだよなぁ。

 ま、この命令自体は、暗闇指令が出してるのだろうが……

 般若「今度の敵、今までの影のものたちとはわけが違うぞ。心して掛かれ!!」
 唯「こら、影縫いの術、解かんかい」
 般若「苦無は空蝉じゃ」

 
 三人が苦無を見ると、それが本に変わるのだが、管理人、本じゃなくて笛みたいな筒に見えてしまった。

 背表紙の部分だけ見えてるからだろう。

 
 別のアングルから見て、やっとそれが本だとわかる。

 般若「視覚、聴覚、嗅覚、全てを研ぎ澄まさねば敵のまやかしの術には勝てんぞ」

 般若、そうアドバイスしてから三人を送り出す。

 しかし、この苦無のくだり、「影縫いの術」と「空蝉の術」がごっちゃになっていて、結局般若が何を見せたかったのか、よくわからないのだった。

 あと、なんで般若は、戦う前から、敵が「まやかしの術」を使うことを知っていたのだろう?

 ともあれ、三人は調査に向かう。

 結花は武蔵丘霊園、由真は朝日ヶ丘公園、唯は松風森林公園と言う分担なのだが、冷静に考えたら、何もひとりでそれを調べねばならない理由はない訳で、三人一緒にまわったほうが、遥かに安全且つ確実だっただろう。

 それはともかく、

 
 中村由真の「ジレンマ」をバックに、三人が、オリエンテーリングのごとく、地図を手にアグニ像を探すシーンとなる。

 しかし、「発見された」と言うことは、既にアグニ像はしかるべき施設に保管されてるんじゃないのかなぁと思うのだが、結花がひょいと石像の後ろを覗き込むと、

 
 アグニ像が無造作に置かれていた。

 いや、これ、「発見された」んじゃなくて、捨てられてるんじゃないの?

 結花はそれを手に取ろうとするが、般若に言われたことを思い出し、精神を集中させ、それが砂で作られたまがいものに過ぎないことを見破る。

 由真の場合は、いくつもある石のベンチの下を覗き込むと、

 PDVD_011.jpg
 やはりアグニ像がポンと置いてあった。

 これなんか、むしろ、由真が発見したと言うべきだろう。

 なので、「発見された」のではなく、「アグニ像が何処其処に隠されていると言う情報が入ったので、行って調べて欲しい」と言う指令の方が良かった気がする。

 由真も、心眼を研ぎ澄まして、それが土くれだと言うことを見抜く。

 あと、三人が持っている、アグニ像の場所を示した地図だが、それは一体誰が作ったのだろう? 暗闇指令の部下が作ったのなら、それを作ってる時に、アグニ像を調べれば済むことではないか。

 まぁ、ここにこだわってると永久に話が進まないので、今日はこのくらいにしといたるわ。

 唯は、雑木林の中の、松の根元に置いてあるアグニ像を見付け、何の気なしに持ち上げようとすると、落ち葉の中から手が出て、唯の足首を掴む。

 唯、その足を踏みつけて逃げようとするが、土鬼の部下が四方八方からロープを投げ、唯の体に巻きつけて自由を奪う。

 唯「くそう……」

 唯の額にカーンの梵字が浮かび上がる。

 地中から土鬼が出てきて、

 
 土鬼「なるほどのう、額にカーンの梵字を持つ風魔か、ははっ」
 唯「貴様、なにもんじゃっ」
 土鬼「六道衆の一、土ぐも一族カシラ・土鬼!! どうじゃ、このアグニ像とヴァジュラとを交換せぬか」
 唯「ヴァジュラ? なんじゃそりゃ?」
 土鬼「ふっふっ、とぼけるな、おぬしが持っておることは分かっておる」
 唯「知らん、わちはほんとにそんなげなもんは知らん」

 実際、唯はこの時点ではヴァジュラのことは何も知らないのだから、他に答えようがないのであった。

 まぁ、ミヨズだって、「ヴァジュラを身に付けておるやも知れません」って言ってるんだけどね。

 そう言う未確認情報を元に、人にものを頼むのはやめましょう。

 
 土鬼「そうか、ならば用はない、死んで貰おう」

 唯、そのまま宙に引っ張り上げられる。

 浅香さん本人が吊り上げられているのが、なかなかえらいよね。

 唯「こんなことで、死んでたまるか……」

 奮起する唯であったが、心配しなくても、こんなことで人は死なないと思います。

 
 ヨーヨーで部下のひとりを倒し、いささか屁っ放り腰で宙を滑空する唯。

 土ぐも一族の包囲網を突破した唯であったが、樹上にいた土鬼の妹・奇羅(きら)が垂らした毒蜘蛛に首筋を噛まれてしまう。

 一方、先に任務を終えた結花と由真は、自宅近くの路上で出会う。

 結花「やっぱり泥人形だったの?」
 由真「人のことコケにしやがって」
 結花「唯はどうだったのかしら」
 由真「あいつも無駄足に決まってるよ」
 結花「だったらいいけど、でも、どうしてこんなことするのかしら」
 由真「えっ」
 結花「般若が言ったとおり、もし罠だったら」
 由真「そっか、罠にしては念が入ってるよな、確かに」
 結花「罠がもし、私たちを切り離すことだとしたら」

 二人は急いで自宅に戻る。

 しかし、前記したように、ひとりがひとつの像を調べねばならない理由はないのだから、確実性の低い計略である。

 案の定、家の中には土鬼の部下が入り込んでいたが、二人はすぐに気付いて撃退する。

 唯の部屋に行くと、部屋がめちゃくちゃに荒らされていた。

 二人が唯を助けに行こうと家から出ると、再び般若おじさん登場。

 
 般若「待て、どうした」
 由真「あんたが言ったとおり、アグニ像は罠だったんだ」
 般若「やはり」
 結花「ここに蜘蛛の刺青がある忍びが唯の部屋で何かを探してたみたいなの」
 般若「なに、土ぐも一族が」
 結花「奴らのこと知ってるの」
 般若「六道衆のひとり、土鬼が率いる土ぐも一族、空蝉の術、土遁の術を良く使い、毒蜘蛛を操る」

 二人が森林公園に向かったあと、般若は勝手に唯の部屋に(多分土足で)上がりこみ、その下着を物色、いや、放り出されていた雛人形を拾い上げる。

 
 般若「遂に始まったか、何もかもが動き出す、何もかもが……」

 無論、般若は、雛人形の秘密を知っているのである。

 その頃、唯は、公園内の物置小屋のソファに横たわり、毒の苦しさにもがき苦しんでいた。

 そのぼやけた視界の中、結花と由真らしき人影が、複数の忍びと戦っている姿が見える。

 由真「唯、しっかりしろ」
 結花「唯、もう大丈夫よ」

 姉たちの言葉を遠くに聞きながら、唯は安堵のあまり気を失う。
 
 次に目を覚ますと、自分の部屋の布団に寝かされていることに気付く。

 唯「ああー、味噌汁の匂いじゃ……そうか、助かったんじゃ」

 
 唯「そう言えばあの化け物ども、ヴァジュラとか言ったのう……ヴァジュラ、何のことじゃろう、わちのもっちょる値打ちもんといえば、これしかないんじゃけど」
 結花「唯-っ、ご飯よーっ!!」
 唯「はい、今行きます!! これのこと、何処かの方言でヴァジュラっちゅうんかのう」

 あの雛人形を手に考え込む唯。

 由真「早くしないとお前の分まで食っちゃうぞ」
 唯「はーい」

 それを持ったまま下に降りると、結花は台所で包丁を使い、由真は居間でお茶を飲んでいた。

 
 唯「姉ちゃん、雛人形のことを、どっかの方言でヴァジュラっちゅんじゃろか?」
 結花「さあ、でもどうして?」

 
 唯「あいつら、わちがヴァジュラっちゅうものを持っちょるっちゅうちょった」
 由真「他にヴァジュラの心当たりは?」
 唯「それがないんじゃ、これは母ちゃんの形見やし……」

 その瞬間、唯は強烈な違和感を覚え、緊張に頬を強張らせる。

 
 唯(まさか、空蝉?)

 唯、目を閉じて耳を澄ませ、結花の包丁のリズムや、由真の話し声が、いつもと微妙に違うことに気付く。

 唯「違う!!」

 唯が叫ぶと、結花は土鬼に、由真は奇羅の姿に変わる。

 そう、二人はニセモノで、唯からヴァジュラについて聞き出そうとしていたのだ。

 土鬼は雛人形を奪うと、

 
 土鬼「土ぐも一族カシラ・土鬼」
 奇羅「同じく、妹・奇羅」
 土鬼「よくぞ、我らが空蝉の術を見破った」
 奇羅「第一の目的は果たした。後は……」
 土鬼「おのれを殺すだけだ」

 しかし、奇羅役の吉岡聖子さん、せっかくドラマに出たというのに、素顔が一度も映らないのではつまらなかっただろうなぁ。

 二人は蜘蛛の糸で唯の動きを封じ、その場で殺そうとするが、

 結花「唯!!」
 唯「姉ちゃん」

 そこに本物の結花と由真が駆けつける。

 つまり、小屋で唯を助けたのもニセモノで、本物の結花たちは公園に唯がいないので戻って来たのだろう。

 要するに、土鬼たちは唯を完全に自分たちの手中におさめておきながら、こんなまわりくどい方法を使った訳で、何故さっさとアジトに連れ帰り、拷問なり空蝉の術なりを使ってヴァジュラのことを吐かせようとしなかったのか?

 それはともかく、二人は折鶴やリリアンで蜘蛛の糸を切り、唯の体を解放しようとするのだが、

 
 大変モタモタされていました。

 まぁ、その隙に土鬼が逃げるという必要もあったのだろうが、これでは、結花と由真がぜんぜん使えない、一般人と大差なくなるので、編集で素早く蜘蛛の糸を切る……みたいな感じにして欲しかった。

 ともあれ、二人は唯を殺すのはまたの機会にして逃げ出す。

 
 土鬼「アビラウンケンソワカ……」

 せっかちな土鬼兄妹は、途中の森で、切り株の中に雛人形を置いて、ヴァジュラの本体を取り出そうとするが、そこへ般若おじさんが登場。

 
 土鬼「貴様……風魔鬼組・般若」
 般若「いかにも、哀れ、六道衆・土ぐも一族、影に飲まれてしもうたか……」

 般若、そう言って雛人形を掲げて見せる。

 ハッとして土鬼が唯から奪った雛人形を見ると、それは土の塊に過ぎなかった。

 「策士、策に溺れる」という奴で、なかなか見事なオチであった。

 般若「影に染まりしものよ、はよう退散」

 と、そこに唯たちがやってくる。

 そちらに気を取られた隙に、土鬼が苦無を投げ、

 
 それが般若の仮面に当たり、その下の素顔が一瞬見える。

 唯「!!」

 ここからラス殺陣となり、般若が土鬼と戦ってこれを倒す。

 奇羅は、兄が死んだのを見ると、自ら首に毒蜘蛛を噛ませ、兄の後を追う。

 いや、だから、影のみなさん、あきらめが早過ぎですっ!!

 つーか、何故、生きて兄の仇を取ろうとしないのか?

 二人の体は土の塊となって崩れ落ちる。

 般若「よく見ておけ、それが影に魂を売ったものの末路……」
 結花「恐ろしい、恐ろし過ぎるわ、こんなこと」
 由真「信じられない……」

 この世のこととは思えない現象を目の当たりにして、結花と由真は声を震わせて立ち尽くす。

 だが、唯にとっては、一瞬目にした般若の素顔が、自分たちの良く知るある人物に似ていたことの方が気になるのだった。

 唯「般若、あの男……」

 前記したように、ミヨズが余計なオプションをつけなければ、確実に唯の命を奪えていたであろうに、土ぐも一族および影にとっては残念な戦いであった。