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IS・クルド・トルコ・アサド政権…泥沼シリアをどう解決
2016.11.13 15:27更新
米大統領選が最終盤を迎えた今月初旬。時折響く砲撃音が、前線が近いことを教えていた。
トルコ南部にあるシリア国境の町カルカミシュ。トルコが8月、隣接するシリア側の町ジャラブルス周辺へ地上部隊を派遣した。
住民のひとりは「トルコも実際の戦争に入っていくことになるなんて」と、戸惑いの表情を浮かべる。
◆同盟国と不協和音
「ユーフラテスの盾」と名付けられた同国の軍事作戦には2つの狙いがある。
1つは、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の国境地帯からの排除。そしてもう1つが、シリア反体制派が国境地帯を掌握するのを支援し、シリア北部での少数民族クルド人勢力「民主連合党(PYD)」の伸長を抑止することだ。
いったい何が、北大西洋条約機構(NATO)の一員でもあるトルコにシリア領への越境に踏み切らせたのか。背景にあったのが、シリア情勢をめぐる米国との意識の食い違いだ。
シリア内戦の決着よりも当面はISなどの過激派の掃討を優先させるオバマ米政権は、ISとの地上戦を担う存在としてPYDを支援。アサド政権とつかず離れずの関係を保つPYDも、米国の支援を利用する形で勢力圏を拡大させた。
しかし米国のこうした態度は、トルコにとってはマイナスに作用する。
PYDは、トルコが国内で戦う非合法武装組織クルド労働者党(PKK)の実質的な傘下にあり、PYDが国境地帯を勢力下に収めることは、PKKの活動活発化につながるためだ。
また、PYDが勢力圏を西へ伸ばすことは、トルコが目指すアサド政権排除の障害ともなる。
8月の軍事作戦開始直後、米国は同盟国トルコの顔を立てる形で、PYDに対し、ジャラブルス近郊を流れるユーフラテス川以東へ後退するよう勧告し、これが守られない場合は支援を見直すことを示唆した。
だが、トルコ南部ガジアンテプでクルド支援に従事するエルカン・シャヒンさん(33)は「PYDはクルドの土地を守ろうとしているだけ。米国も本音では認めているはずだ」と、クルド勢力が西進を諦めることはないと語る。ISとの戦いでPYDを頼りにせざるを得ない米国は、結局はクルド勢力の伸長を黙認する-との“読み”だ。
◆「誰の味方なのか」
2011年に始まったシリア内戦は、発生からの約5年で、難民の大量発生やISの台頭、クルド勢力の伸長とそれに対するトルコの軍事介入など、次々と局面が変化してきた。ロシアやイランの支援を受けるアサド政権は、軍事面で反体制派を圧倒しつつある。
そんな中で米国は、ロシアとの協議を通じて停戦を模索もしてきたが、その範囲に反体制派の一翼を担うヌスラ戦線(シリア征服戦線に改称)といった過激派を含めないとしたことなどで、停戦枠組みに実効性を与えることはできなかった。米国の支援を受ける反体制派からも「米国は誰の味方なのか」(自由シリア軍)と憤りの声が上がる。
そして、トランプ次期米大統領の下では、シリア政策の力点が「IS壊滅」にこれまで以上に集中するとの見方が強い。
トランプ氏は選挙戦で、IS掃討に向け地上軍の投入や「戦術核の使用」、ロシアと連携も辞さないと述べる一方、米国の介入を避けてロシアとイランに委ねることを示唆してきた。また、トランプ氏は当選後、米紙ウォールストリート・ジャーナルとの会見で「われわれは反体制派を支援しているが、彼らが何者かが分かっていない」と述べ、オバマ政権が続けてきたPYDや反体制派に対する支援を見直す考えを示した。
米情報企業ストラトフォーは、「アサド政権とイランの立場が強まり、政権と対立するトルコなどが(内戦への)関与を強める」と分析する。
シリア情勢でトランプ氏を待つのは、利害が衝突し、がんじがらめとなった泥沼だ。(トルコ南部カルカミシュ 大内清、ワシントン 青木伸行)
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トランプ次期米大統領が直面する世界の情勢と新政権の外交戦略について現場ルポを交えて報告する。
http://www.sankei.com/world/news/161113/wor1611130029-n1.html
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■ 2009年7月9日
「我が郷は足日木の垂水のほとり」 はじめました。 本稿はその保管用記事です。
■ 2010年3月2日
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