ZaK堂

本好きの、本好きによる、本好きのためのブログ。

ハサミ男 / 殊能将之

2006-02-14 23:44:17 | 書庫
 少女を絞め殺し、その首にハサミを突き立てる殺人鬼、ハサミ男。すでに二人をその手にかけ、三人目を殺そうとしたところ、標的としていた少女が、自分と同じ手口で殺さてしまう。しかも皮肉なことに、ハサミ男自身が第一発見者となってしまう。
 少女はなぜ殺されたのか?そして犯人は?ハサミ男は調査に乗り出す……。

 ハサミ男の視点と警察の視点の双方が交互に語られる形式。それぞれに真実に近づいていく物語。最初、読んでいてハズレを買ってしまったと後悔しました。特に大きな謎が提示されるわけでもなく、登場人物が靴底をすり減らして犯人を追い詰める、ZaKがあまり好きではない、いわゆる「社会派ミステリ」かと思ったからです。まぁ実際これはどちらかというと社会派だと思いますが。
 しかし、最後に用意されたどんでん返しには、正直やられました。この本のほとんどの部分が、それに向けた大きな伏線になっていたわけです。この驚きで、今までの後悔は吹っ飛びました。
 映画もありますが、伏線がバレバレなので、やはり、小説がおすすめです。

Vシリーズ / 森博嗣

2005-12-01 21:48:33 | 書庫
前回の書庫から引き続き、森さんのVシリーズを取り上げようと思います。
舞台はS&Mシリーズと同じ地域、ただし、時代(というか世代?)が少々違う次元の物語です。つい先日、シリーズの完結編『赤緑黒白』が文庫落ちしたので買いました。
こればっかりは文庫落ちを待っていたのでいやっほいと即買い。
S&Mと同じく、登場人物の魅力満載の理系ミステリ。
S&Mシリーズを全部読んでから読むとより一層楽しめるシリーズです。
『黒猫の三角』
『人形式モナリザ』
『月は幽咽のデバイス』
『夢・出逢い・魔性』
『魔剣天翔』
『恋恋蓮歩の演習』
『六人の超音波科学者』
(『捩れ屋敷の利鈍』)
『朽ちる散る落ちる』
『赤緑黒白』
以上の9(10)冊で構成されています。
ちなみに、『捩れ屋敷の利鈍』に括弧がついているのは、VシリーズとS&Mシリーズがリンクする、少々番外編的な面があるので、シリーズから除外しないにしても区別しました。

登場人物は探偵、保呂草潤平を始め、医大生、小鳥遊練無、大学生、香具山紫子ら、アパート「阿漕荘」(なんていう名前だ)に住む三人と、桜鳴六角邸の離れ、無言亭に住む科学者、瀬在丸紅子。この四人を中心に展開。
起きた事件を事後にこの四人のうちの誰かが纏めた個人的な文章として書かれています。
まず、この登場人物たちの紹介から行きましょう。

まず「探偵」保呂草潤平(ほろくさ・じゅんぺい)。
探偵と言ってもほとんど体のいい「便利屋」で、練無や紫子にバイトを斡旋したりもしている。
実はとある副業もしているが、それはシリーズを読み進めていくと明らかになる。

次に小鳥遊練無(たかなし・ねりな)。
国立大学の医学部に通う秀才ながら、女装の趣味がある。
もともと中性的な容姿を持つので、初対面の人が見れば完璧に女性というすごい人物。紅子の執事である根来機千瑛を少林寺拳法の師匠として慕う。

香具山紫子(かぐやま・むらさきこ)
私立大学に通う大学生。練無とは違い、あまり大学には行っていない。
他の登場人物に比べたら属性としての特性(つまり職業とか)はあまりないが、関西弁の強烈なキャラで全体のムードメーカとしての印象が強い。
練無との絶妙な掛け合いが面白い。保呂草に想いをよせる乙女な一面も。

そして最後に瀬在丸紅子(せざいまる・べにこ)
今でこそ没落してしまったが、かつて桜鳴六角邸を所有していた瀬在丸家の最後の一人。自称科学者。
現在は桜鳴六角邸の離れ、無言亭に息子、通称「へっくん」や執事の根来と一緒にすんでいる。
大家の令嬢として育ったため、外で働くということができず、元夫、林の援助でなんとか生活している。しかし、そんなこと微塵も感じさせない独特のキャラクター。

こんな四人が活躍するシリーズ。
S&Mシリーズよりもさらにアクの強いキャラが動き回る。
ZaKのおすすめは『黒猫の三角』
あんまり書くとネタバレになりそうなのであんまり書けませんが、所謂密室モノですね。森ワールドが楽しめる一冊です。ぜひS&Mシリーズを全部読んだ後に手に取っていただきたいですね。

S&Mシリーズ / 森博嗣

2005-11-25 22:11:44 | 書庫
『すべてがFになる』を始めとする、森博嗣の代表的なシリーズ。
N大の助教授、犀川創平とその教え子、西之園萌絵のコンビが活躍するミステリ。
『すべてがFになる』
『冷たい密室と博士たち』
『笑わない数学者』
『詩的私的ジャック』
『封印再度』
『幻惑の死と使途』
『夏のレプリカ』
『今はもうない』
『数奇にして模型』
『有限と微小のパン』
これら10の長編のほか、短編集に収められたいくつかの短編で構成されるシリーズ。

森さんの作品はよく「理系ミステリ」と呼称され、数学や物理、はてはコンピュータと、文系のZaKには難しい内容も多いのですが、実に面白い。
特にその登場人物のキャラにはすさまじいものがあります。

犀川助教授は普段は頼りない感じにボケーッとしているのに、しっかりと観察、考察を重ね、事件を解決に導くすごい人。
実は天才。
その普段のキャラと、時に見せるものすごい行動力のギャップが面白い。
かたや、西之園萌絵。
幼くして両親を亡くし、その莫大な遺産を受け継いだお嬢様。
容姿端麗にして天才的頭脳を持ち、才色兼備……かと思いきや常識的なことが抜けてるという典型的な温室育ち。
犀川助教授が父親の弟子だったこともあり、小さいころから親交があった。
犀川助教授にぞっこん(ぞっこんなんて今時つかうのか?)

こんな二人の物語。
ZaKのおすすめは『すべてがFになる』
孤島のハイテク研究所で15年間、部屋の外に出ず研究を続ける天才工学博士・真賀田四季。
彼女の部屋から突如、ウエディングドレスを身にまとい、両手両足を切断された死体が出てくる。
偶然その場に居合わせた犀川、西之園コンビはその謎に迫る。

S&Mシリーズだけでなく、Vシリーズや四季シリーズなど、森作品の多くに影響をあたえるこの作品。
これを読んだら森ワールドにはまります。

ちなみに、プレイステーションでゲーム化されています。
ZaKは未プレイですが、そのうちやってみたいと思います。
でも、売ってるところを見たことがない○| ̄|_

どんどん橋、落ちた / 綾辻行人

2005-10-15 22:06:49 | 書庫
くせものです。ZaKが大好きな綾辻さんの短編集。
しかも全てが「犯人当て」というミステリファンにはたまらない一冊です。
『どんどん橋、落ちた』
『ぼうぼう森、燃えた』
『フェラーリは見ていた』
『伊園家の崩壊』
『意外な犯人』
の五つの短編で構成されています。

中でもZaKの一押しが『伊園家の崩壊』
そう、あのサ○エさん一家のことだとしか思えないような名前と設定w
幸せいっぱいだった一家の崩壊していく様が描かれています。
ちなみに、書いたのはお隣の小説家の先生です(そう、あの人w)

でも、冒頭に「この作品はフィクションであり、既存のいかなる人物・団体ともいっさい関係がない。仮に読者がなんらかの人物・団体を連想するようなことがあったとしても、それはまったくの誤解と言うものである(作者)」とあるので、たぶんZaKの誤解ですw

読み終わった後に「やられた!」って思えるような短編集です。

七回死んだ男 / 西澤保彦

2005-09-30 20:45:14 | 書庫
久々に書庫更新です。
さて、この本、題名からしておかしいですよね。
人間って一回死んだら終わりじゃないですか。それなのに七回もおんなじ人が死ぬんですよ。

先日、家族で晩飯食いに行って、その帰りに本屋によったんですね。
で、その道すがら弟と
「兄ちゃん一回死んだほうがいいよ」
「ならお前は七回死ね」
とか他愛のない話をしていたんですよ。若干穏やかじゃない感じですが。

そんで本屋に入って見つけたんですよ、この本を。

もう家族は爆笑。買うしかねぇ!ってことで即購入。

主人公はちょっと変わった体質を持った高校生。
その体質が、「反復落とし穴」と呼ばれる(主人公がそう名づけた)現象。
同じ一日を九回体験するというかなり特殊な体質。
これにより現在16歳であるはずの主人公は精神的にはすでに30近いのではないかという老けっぷり。きっとIQも200近いんでしょうね(笑

さすがに毎日九回繰り返されるのではなく、月に数回程度、「反復落とし穴」に落ちるのだそうで、そのコントロールはできない。故に能力ではなく体質なのです。

事件はお正月。彼の祖父の家で行われる新年会のときに起こりました。
毎年、親戚一同が集まって新年会を行い、その夜、祖父が後継者を記した遺言状を書き直すことが通例となっており、皆後継者に選ばれようと躍起になるわけです。
その新年会の次の日。
祖父に酒盛りに誘われた主人公はしこたま飲み、どえらい目に遭いました。
その夜、兄の車に乗り込み家路に着くところで記憶が途切れます。
そして次に目が覚めたのは、また祖父の家だったのです。

そう「反復落とし穴」に落っこちたのです。

どえらい目に遭うことを知っている主人公は、祖父との酒盛りを回避すべく行動します。
しかし、祖父は酒盛りをした(するはずだった)部屋で何者かに殺害されてしまいます。
祖父の死をなかったことにすべく、主人公の孤独な戦いがはじまります。


と、まぁこんな感じの流れの作品です。
まぁ斬新ですわな。
「同じ日を繰り返す」作品は、ミステリ以外であれば意外と多いのです。
しかし、ミステリでは異色ともいえる設定です。

でもやっぱりそこはミステリ。
最後にどんでん返しが待ってます。

読点が多くてちょっともったりした感じの文章ですが、結構読みやすいし、そんなに複雑怪奇ってわけでもないのでさサクッと読めると思います。
現実離れした設定が嫌いじゃなければ楽しめる作品だと思います。

オルファクトグラム/井上夢人

2005-06-06 20:38:00 | 書庫
強烈な一冊。
ミステリなんですが、ちょっと毛色が違う。

主人公はある日、姉の家を訪れますが、そこで縛られた姉を見つけ、自分も殴り倒され、こん睡状態におちいります。
その後、病院で意識の回復した主人公は「匂い」が見える不思議な能力に目覚めます。しかし、姉は殺されて、すでに一ヶ月が経過していた。
主人公はその能力を駆使し、姉の敵討ちを決意する。

不思議で強烈な能力を持った青年が主人公の本作。
非常に強烈な世界観を持った作品です。
あまりに強烈過ぎて、映像化は困難だと言われてましたが、数年前(といっても結構前だが)にwowowで映像化されていたように記憶しています。見てませんが。

普通のミステリに飽きたら、気分転換にどうですか?

ドッペルゲンガー宮/霧舎巧

2005-04-01 20:24:49 | 書庫
『ダ・ヴィンチ・コード』に続き、【大当たり】のもう一冊の方。
霧舎巧の『ドッペルゲンガー宮』

激しく面白いです。

個性豊かな「≪開かずの扉≫研究会」のメンバーが活躍するミステリ。

もう、なんというか欲張りな一冊です。
だってもう、いろんなミステリのパターンがあっちこっちに出てくるんですもん。
密室殺人やら見立て殺人やらなんだかんだで・・・。
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を実際にやろうとすると、こんな風な話になるのかな?
といった感想をもちました。

山奥にたたずむ「流氷館」そこで開かれる推理サークル"隣りの部屋"の集まり。
そこで起こる連続殺人。

この本も本当に面白いです!
ただちょっと頭がこんがらがっちゃいますがw

もう、いわゆる「本格」好きには堪らないですね~☆
超人的な名探偵(しかも二人!)
閉鎖空間でおこる事件。
そしてビックリするようなトリック!

そして魅力的な「≪開かずの扉≫研究会」の面々・・・。

もうぶちのめされた感じです。久々に来た【大当たり】はホントにでかかった・・・。

ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン

2005-03-30 23:04:30 | 書庫
ええと、このブログ作ってもうすぐ三ヶ月目に突入ってところで、やっと本の紹介。
最近、立て続けに二冊の本がZaK的には【大当たり】だったので、そのうちの一冊をまず。

今、テレビで特番とか組まれる程の超話題作!『ダ・ヴィンチ・コード』
科学者であると同時に芸術家でもあった天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
彼がその作品に込めた暗号。そして、その暗号の示す「秘密」を守る秘密結社シオン修道会。
これらを題材にしたミステリです。

これはスゴイですよ。読んでいて鳥肌が立つほどの大当たりですよ。

あ、ちなみに、ダ・ヴィンチの暗号と、シオン修道会についてはコレ事実ですから。
しかもダ・ヴィンチはシオン修道会の総長でもあったそうです。
他にも、万有引力を発見したサー・アイザック・ニュートン。レ・ミゼラブルで知られる文豪ヴィクトル・ユーゴーなどが、総長として、シオン修道会に参加していたとされています。
他にももっと出てきますが、それは実際に本を読んでみてくださいなw

これだけ聞いただけでも、なんだかワクワクしませんか?

物語が進むにつれ明らかになっていく謎、暗号。
しかもそのテンポの小気味いいこと!
ダラダラとせず、それでいて性急でない。
もう、次が気になってページをめくる手が止まらない。

止められない止まらない~♪

まさに、こんな感じ。
ZaKなんか部活中にまで読んでましたからね(汗
でもこれはホントに面白い!
久々に出合った、ZaKが人に自信を持っておすすめできる作品です。

角川書店『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン 訳・越前敏弥 上・下巻各1800円


あ、書き忘れてましたが、2006年に、トム・ハンクス主演で映画化が決まったそうです。
結構楽しみ☆