【城ヶ島】
ノリで城ヶ島まで来てしまった。
「ここはどこ?」
とりあえず暑い。
船長に別れを告げて港を歩いてみる。
突き刺さる直射日光に足がすくむ。
日陰を探そうにもさしあたって日陰は見当たらない。
時折いる太公望たちを横目にテクテク、さあどこへ行こう。
港は終わり民家の連並に入っていった。
遠く聞こえるセミの声と甲子園のラジオ中継。
こんな音を日本のあちこちで聞いた。
こんな光を日本のあちこちで浴びた。
職場の暑さとはまた違う、なんだか夏が楽しみになる暑さだ。
とはいえろくに地図も持っていないため、どこからどこへ行こうかかなり迷ったものだ。
海だから岬があるはずだとは思うがいささかノープランにも度が過ぎたかな、そんなことを思い小さく溜め息をついていると
「帽子もかぶんないで歩いてると倒れちゃうよ」
と自転車おばちゃん。
「岬までって遠いですか?」
「岬まで行こうとしてるの、歩きだと遠いよ」
――じゃあいっか、今度また車で来れば。
気分と天気次第の旅程変更(旅程なんてハナっからないが)も、お一人様の醍醐味ってもんよね。
城ヶ島大橋の根本からまたバスに乗り込んで、また三崎口駅を目指す。
バスの最後部、窓際。
一段高いこの席から見る景色が好きだ。
町中の風景はどことなく田舎染みていて、かつて見てきた数々の車窓を思い出させる。
ガラスに額を押し付けると篭ったような暑さが頭に伝わってきた。
耳元には夏の歌、またウトウトしている。
こんなバスの景色を見ながら泣いていたのは去年だったろうか、それとももっと前だったろうか。
たくさんの人がマーブリングみたく混じって頭に浮かび、名前を思い出そうとしたら消えていく。
その人が発した小さな呟きだけを残して消えていく。
――こうやって歳をとっていくのかな。
年月の過ぎる速さに目がくらんだ。
ノリで城ヶ島まで来てしまった。
「ここはどこ?」
とりあえず暑い。
船長に別れを告げて港を歩いてみる。
突き刺さる直射日光に足がすくむ。
日陰を探そうにもさしあたって日陰は見当たらない。
時折いる太公望たちを横目にテクテク、さあどこへ行こう。
港は終わり民家の連並に入っていった。
遠く聞こえるセミの声と甲子園のラジオ中継。
こんな音を日本のあちこちで聞いた。
こんな光を日本のあちこちで浴びた。
職場の暑さとはまた違う、なんだか夏が楽しみになる暑さだ。
とはいえろくに地図も持っていないため、どこからどこへ行こうかかなり迷ったものだ。
海だから岬があるはずだとは思うがいささかノープランにも度が過ぎたかな、そんなことを思い小さく溜め息をついていると
「帽子もかぶんないで歩いてると倒れちゃうよ」
と自転車おばちゃん。
「岬までって遠いですか?」
「岬まで行こうとしてるの、歩きだと遠いよ」
――じゃあいっか、今度また車で来れば。
気分と天気次第の旅程変更(旅程なんてハナっからないが)も、お一人様の醍醐味ってもんよね。
城ヶ島大橋の根本からまたバスに乗り込んで、また三崎口駅を目指す。
バスの最後部、窓際。
一段高いこの席から見る景色が好きだ。
町中の風景はどことなく田舎染みていて、かつて見てきた数々の車窓を思い出させる。
ガラスに額を押し付けると篭ったような暑さが頭に伝わってきた。
耳元には夏の歌、またウトウトしている。
こんなバスの景色を見ながら泣いていたのは去年だったろうか、それとももっと前だったろうか。
たくさんの人がマーブリングみたく混じって頭に浮かび、名前を思い出そうとしたら消えていく。
その人が発した小さな呟きだけを残して消えていく。
――こうやって歳をとっていくのかな。
年月の過ぎる速さに目がくらんだ。
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