妄想ジャンキー。202x

あたし好きなもんは好きだし、強引に諦める術も知らない

NHK創作ドラマ大賞『川獺』

2016-03-30 12:16:51 | テレビ

3月29日放送、NHK創作ドラマ大賞『川獺』


 

主人公は松浦保(堀井新太)。
父・明憲(勝村政信)の危篤の報に接し、14年ぶり故郷に戻って来ることで物語が動き始めます。

明憲は絶滅したはずのニホンカワウソを発見したと嘘の発表をして世間を騒がせてしまっていました。
それをきっかけで離婚し、別々に暮らして来た保と明憲。
父にわだかまりを抱きつつ苛立つ保。




しかし一通の手紙で、父のついたもう一つの嘘を知ることになり……




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舞台は高知県須崎市。
堀井さんのまとってる空気感と背景の懐かしさ感がピッタリ。

 

「ニホンカワウソはもう絶滅した」
「でも存在を信じていた人がいた」
「自然に手つけなかったから生き延びた」

ってのテーマに関わってるのかな。

てかカワウソってタール便なんだ。





保の実家の水産加工場。



「ありのままの美術デザイン」とのこと。

圧巻のセットやCG撮影もいいですが、ありのままの風景をそこにあるように拵える美術スタッフ。
まとってる雰囲気も出ていてすごいなあと。


 

しかし後ろの丸太すげえ。

高知県は、県土のおよそ8割が森林だそうで。
林業も盛んでこうした材木を運び出す材木港もあるそうで。


工業団地建設を阻止したい漁師・磯貝さん。
地元工場の工場長と役場で出会い……

カワウソの存在を信じていたからこそ、町を守りたいからこそ。
うそをついた。

そして大事な家族を失った。


なんだか切ないな。






カワウソがいるから失うもの。
カワウソがいると信じたから失ったもの。
父親と同じように保が失いかけてるもの。


堀井さんのこの手の叫び演技はハッとさせられる。



 

どこか懐かしい日本の田舎町。
こういう場所を探してくるスタッフもすごいよなあ。


「カワウソを見つけたというウソは、坊ちゃんなりの誠」




そして町岡の母により、明かされる30年前の真実。
幼い頃の明憲と徹が海辺でカワウソを見つけます。
漁師の網にもカワウソと思われるものがかかっていました。

ですが、カワウソは天然記念物。
漁が出来なくなることは生活に関わる。

大人たちから事前に口止めをされる明憲。
カワウソがいたと主張する徹。

 

大人たちも、本当はカワウソいて欲しいって思ってるんじゃないの?
徹や明憲ら子供の気持ちを大事にしたいって思ってるんじゃないの?

子どもふたりを見つめる目がなんだか悲しいよ。





1970年、カワウソはいないと嘘をついた。
2000年、カワウソはいたと嘘をついた。




大切なものを守る。
町やそこで暮らす人々を守る。

父のついた二つの嘘と真実を知って、保が改めて問われる「大切にしたいもの」。




その父が守ろうとした町から出ていったあの日の保。

「広いところで生きる方が保のためよや」

ひとつ、うそをついて。
ふたつ、うそをついて。


守りたいものが守れなかった。
けれど、田舎の狭いコミュニティの中で嘘を強いられたかつての少年は、自分の息子にそんなことをさせたくなかったんだと。

父・明憲の背中が切ない。





 

「坊ちゃんは、徹にとってかけがえのない友達やったがです」

本当のことを言うこと、嘘をつくこと。
どちらが幸せなのか。

子供がそんなこと問わせられるの辛い。





カワウソは徹くんで、かつての明憲。
ふたりが紡いだ海辺の日々。

カワウソはいる。カワウソはある。
カワウソは、そこにいる。

父ちゃんは危篤になりながらあのころの夢を見ているんだろう。
きっと回想シーンのように海辺で川獺を探している。

それを保が追いかける。



「ニホンカワウソはもう絶滅した」
「でも存在を信じていた人がいた」
「自然に手つけなかったから生き延びた」


終わったかと思っていた友情は続いていた。
その真実を知ろうとしなかった。
でもそっとしておかれていたからこそ、今になり輝きだす。


入り組んだ構造ながらも、時間差と回想の演出がうまいなあと。





あっさりめながら、景色と音楽、ありのまま美術セットが美しかった。
離れていく船や列車の音が演出する流れる時間。

人間の残酷さと純粋さがしみる。

地方局製作モノもそうだけど、この手のドラマを作れるのはNHKならではだなあ。


エネッチケー、地方局製作と合わせて短編枠みたいなのあればいいな。
週イチじゃなくても月イチくらいで。





4月5日(火) 午後3時10分より再放送あるそうな。








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