一か月ぶりに雲仙を訪れたのは
夏休みもあと数日の8月の終わり。
今日の朝散歩は 宿の近くの原生沼です。
雲仙地獄の一部だった場所が
長い年月の間に湿原地帯となったところで
周囲の木道は避暑地らしく涼しい散策路です。
降り注ぐ光もずいぶん優しくなりました。
ヒヨドリバナ・ミズヒキ
コバギボウシ・ワレモコウ
この日、山頂からの眺めが素晴らしいと聞く
標高870mの絹笠山に登ることにしました。
温泉街から標高差は170m…大したことなさそうです。
登山口は白雲の池。
外国人の避暑地として雲仙が賑わった頃
彼らは絹笠山を「サンセットヒル」と呼んでいたそうです。
滝つぼで泳ぎ、池で釣りをし
テニスに乗馬にゴルフ…
楽しんだ一日の最後にサンセットヒルに登り
千々和湾に沈む美しい夕陽を
眺めるのが日課だったと聞きました。
夏のはじめに
池のほとりにたくさん咲いていた
黄色いダイコンソウの花は
くっつき虫に変貌中。
シシウド・サオトメカズラ
センニンソウ・ゲンノショウコ
雲仙の夏は
ヒグラシの声で始まって
ツクツクホウシで終わるって
聞いた通りでした。
ヌスビトハギ・キンミズヒキ
ここは秋の入口…そう思った時
ふうわり ふうわり
目の前を横切ったのは
あっ・・・!!
九州辺りに飛来するのは毎年9月の終わりごろなのに
なんて気が早いアサギマダラでしょう・・・
こんなところで こんなに早く
秋の使者に会えるなんて…
一瞬の夢のようでした。
華麗な蝶の舞に夢中になって
音のない世界にいたけれど…
ふと気がつけば 足もとにも 秋
周りにはツクツクホウシたちの声が戻っていました。
山頂に辿り着くと
突然視界が開けます。
西に広がる千々和湾…
海を朱に染める落日は
どんなに美しく思い出に残ったことでしょう。
振り返ると雲仙温泉街の全景が箱庭のよう見下ろせました。
山々の緑、あずき色の屋根、地獄のけむり…
そして陽が落ちると
秋の夜長を鳴き通す虫たちの声。
今宵は十六夜(いざよい)
ためらいがちに上った丸い月が
静かにほの白く温泉街を照らすのでしょう。