母の化身

お晩でがんす
私の母は４３歳で身罷った、つまり私は３４歳の時の子供である
従って私が９歳のときでもある、母の死と言う事の実感が未だ半分位しか分からなかった。死の恐怖もなく、ただ少しも口を利いてくれない母に異常を感じて
父に、元の母を返して欲しいと泣いたことだけが鮮明に残っている
そんなわけで真の母親の愛情というものを知らない、後添いの母も大事にしてくれたし良い母であるが、、そんな事は出来ないと承知をしていても
実母ならこうしてくれたのでは、、と思ってしまう
お互いに不幸である、だから私はたとえ二十台の娘でも、どこかで母はこんなではなかったのかなと思ってしまう
古い写真を見つけて焼き増しをして大切に飾っていたら、其の実の息子が見て
此れは内の母でお前の母の姉だといわれてがっかりするやら悔しいやら、振り上げた拳骨の降ろす場所がなく、頭の上でクルクルパーをしている自分に涙が出た
４６歳のときに胃がんの手術をした、昏睡状態がかなり長くて、一時は危ぶまれたが現世に復帰した、
そのとき臨死体験をした、
此岸に生えている草につかまり這い上がろうとするが半ばまで這い上がると草が抜けて又川に落ちてしまう、振り返ると彼岸にいる和服のおばさんがいかにも優しそうに此方えは来るなという、よくみると顔がのっぺらぼうなのである
折角死をも覚悟して臨死体験をして母にあったのに、母の顔に覚えが無く、
のっぺらぼうの母しか見えない、、確かに母と感じられるのだが、、、、
現世に立ち返ったとき最初にしたことは悔しくて悔しくて止め処なく涙が出た
前段が長かったが、
其の母が育った山の中の温泉地に有った「しがみ石」という石に付いて来た岩松
が我が家の庭石として鎮座しているが其の時一緒に種が毀れていたのであろう
羽蝶蘭が段段咲くようになり今年は三箇所に増えて咲いている
自然のままに任せて何の手入れもしないが毎年少しずつ増えている
此れこそ母の化身では無いかと想い大事にしている
五日そう遠く無い将来に会えるであろう母への土産話が一つ増えた
「実子は醜母を嫌わず」まさに其の通りである
未だ幸いな事に母上をお持ちの方方に忠告したい、優しく出来るのも、大切に出来るのも、もう時間が残り少ないのですよ
後悔しないで堂々と胸張って母に会える様に今一頑張りをしよう

そんじゃあ又　　　　　　遊童子