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こころが生ずる場

絵本のこと、日々の生活のこと、研究のこと、折々に書き留めていきます。OCNから引越しを命ぜられ移り住むこととなりました。

ともだち

2010-12-23 21:29:15 | 絵本

 大学に行く途中、同じ大学の先生と駅でばったりと行き合った。

学科が違うので、お互いに顔見知りという程度なのだが、その日はなぜだか、子どものころの話となった。

家の周りに職人さんがたくさん住んでいたんですとか、秋田のきりたんぽがどうのとか・・・。

そんな話しをしたのは多分、聞いてくださった先生の雰囲気によるものが大きかったのだろうと思う。

 そのときに盆栽とか庭に置くような飾り石を磨いているおじいさんの話しをした。磨かれた石がとても美しく見えて、暇があればそこに遊びに行っていたことを。そのおじいさんの名前はもう忘れてしまったが、顔はうっすらと覚えている。ちいさい私を邪魔にする様子もなく、ただ一緒の時間を過ごしてくれた。きっと話しもしたのだろうが、もう覚えてはいない。

そのときに美しいと思った石がなんという種類の石だったのか、時折、大人になって考えることがあった。

 先日、佐渡に行った折に、あの時の石と同じ輝きの石を見つけた。同じ石と断定はできないが、その時に、ああ、佐渡の石だったのかと思った。

おじいさんが削った石のかけらを集めて、家に持って帰っては、水をかけて、石の輝きに魅入っていた自分の姿を、なぜか、今の私は思い描ける。そんなはずはないのである。魅入っている自分の姿を見ることなどできるはずもないのだから・・・・。

記憶とは不思議なものだと思う。

 ところで、大学の同僚の先生と話しをした日から、私は、今まで気づきもしなかったことに気づいた。

それは、私は今、石の彫刻家と生活しているという事実である。

あれ?もしかして私は、石が好きだっただけじゃなかろうかと。主人が磨く、黒御影石の輝き、磨かれた石が雨にぬれて漆黒に輝く様子、美しいと思う。

ちょっとこれは我ながら、まずい気づきをしてしまったのかも知れない。^^;

 私が、美しいという概念を手に入れたのは、たぶんあの時の水にぬれた石の輝きからだろう。そして、そのときの美しさが、私の中での人が生きるということの美しさと関連しているような気がする。人を欺いて平気な顔をしている人を、たとえその人が大学の教員であろうが、政治家であろうが、何であろうが私はえらいとも美しいとも思えない。私にとって美しいものとは、無心に石を磨く、あのおじいさんのような姿とそこから生み出されたものの範疇にあるのだろう。

ともだち

木坂涼さんの「ともだち」を読みながら、あの時の自分の姿を見る思いがした。懐かしかった。

子どもにとって、老人との出会いは、時としてとても大きな意味をもつようだ。その存在的意味を考えてみたくなる本だった。


プラリネクというプレゼントから

2009-12-26 13:44:16 | 絵本

プラリネク―あるクリスマスの物語 プラリネク―あるクリスマスの物語
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2005-11

クリスマスの日に,もう一度開いてみようと思っていた本である。

ミヒャエル・ゾーバとアクセル・ハッケの本。

クリスマスにお父さんからこの本を読み聞かせてもらう,そのことを願って描かれた本である。

プラリネクは,男の子がお父さんへのプレゼントに作ったロボット,お菓子の箱と洗剤の箱と,トイレットペーパーの芯でできている。

プラリネクは,お父さんという他者を思う男のこの気持ちでできている。だからこそ,プラリネクを介して,お父さんと男の子のこころが交流しあう。子どもの言葉,子どもの気持ちを忘れていたお父さんにも,プラリネクの言葉が理解できる。男の子のこころが響く。

やさしい想いでできた本だと思う。

クリスマスに本を絵本を開いて過ごす習慣というのは素敵だなぁ,と思う。


思い出の青,未来への青

2009-08-02 17:38:51 | 絵本
いつか空のうえで (創作絵本シリーズ) いつか空のうえで (創作絵本シリーズ)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2009-07-10

 ふいに目にとまった絵本。

その青が気になったのかもしれない。

さっと目を通して,思っていた。

 悲しみの孤独の蒼さが,心の中に,閉じこもるための高くて厚い塔を作る。

 自らを自らが幽閉してしまう。

 そうしないと生命を保てない時もあるということ。

 けれど,温かな思い出と,

 塔の窓から空を見上げる勇気さえあれば,

 人は物語を想像し,語ることができるのだ。

 空の青,雲を相手に,繰り返し語る,温かな思い出が,

 いつか自らが作った孤独の塔の壁を薄く透明なものにしていくんだろう。

 未来へ,

 人間はそうして青から青へ自分の物語を生きるのだろうか・・・と。

 


くまとりすのおやつ

2008-02-24 18:40:44 | 絵本
くまとりすのおやつ (幼児絵本シリーズ) くまとりすのおやつ (幼児絵本シリーズ)
価格:¥ 780(税込)
発売日:2008-02

きしだえりこ(文)

ほりうちせいいち・もみこ(絵)

くまはおおきい りすはちいさい

くまはつよい りすはよわい

なんて,対立ばかりを考える。

弱者にならないためには,強いほうに回らねば,などとばかり考える人間の大人には,こういうシンプルで暖かい絵本がいいんじゃないだろうか。もちろん,子どもにも。

くまとりすは木苺つみに一緒にいく。たくさんつんでも,少しでも,その差は当たり前。二人でつんで二人で食べる。二人でつみ二人でたべるという仕事をすることが大切なのだ。その行為の価値こそが大切なのだと思う。

作業時間あたり,どちらがたくさん採れたのか?作業時間あたりの総数で,仕事のできるできないが決まるとか,たくさんお金がいただけるとかいただけないとか。そんなことばかりを気にしなければならないのは悲しい。いつの間にか,人間の考えることまでが,多数意見に縛られる。

どっちだっていいじゃない。

あなたとわたし,今こうして一緒にいて,一緒に働き,そして一緒に一休みする。

「あしたもまた,いっしょに行こうね」

『そうしよう』

と,ことばを交わす。そのこと自体が,重要なのだ。その繰り返しこそが幸せの正体なのかもしれない。

そんなことを思わせてくれる,絵本だった。

・・・

きいちご ぽちん ぽちん

なってるか なってるよ

すっぱいか あまいだろ

きしださんのことばの世界,すてきだよな,と思う。

 


おめでとう

2007-11-12 20:56:58 | 絵本

Photo_2 (かんざわとしこ 文 ,やぎゅうげんいちろう 絵,福音館書店)

たまごのなかで かくれんぼしている 

あかちゃんは だあれ?

でておいでよ

ぴっぴっぴっ

こんにちわ

にわとりのあかちゃん

こんにちわ

・・・

たまごのなかでかくれんぼしてる

あかちゃんは

みんなみんな

でておいでよ。(本文引用)

 この本は,私にとっては忘れられない大切な一冊になりました。

声に出して読むと,この本のことばのすばらしさがわかります。

トマセロの共同注意を基盤にした修士論文に取り組み始めたころのたっくんママ,

後輩のはずなのにその聡明さにいつもいつも助けてもらっていたIさんと,

私と,

ともに,この本とオモチャ,ビデオカメラをもって,茨城のあっちこっちと出歩いた日々を思い出します。

 たっくんママとはその後,CASのデータとりでふたたび今度は栃木のあっちこっちと出歩きました。人のつながりの不思議さと共通にある思い出のありがたさとを再び思っています。

おめでとう,たっくんママ。

今度は,たっくんとともちゃんのダブル読み聞かせ期待してます。もちろん,たっくんパパの協力なしではできませんね。

ほんとうにおめでとう。