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何せ自由な帖なので

【雑】目にみえないものは目にみえない(フカエのマルから)

2013-10-04 19:42:26 | ウェブログ
(※某カフェ発行の読書関係フリーペーパーに寄稿しました)


 わたしはこの世界において,ほんのちょっとみえているにすぎない。みえないものにかこまれて,わたしは,わたしたちは,この世界にほんのちょっとみえている。

 この世界は目にみえないもので充満している。それは,たとえば誰かの思想とステップ,吐息に音楽。それから陽光の匂い,風の手ざわり,雨の静けさ。きっと全てのことに意味はあるけれど,きっと全てのことは意味がなくなってからではないとわからない。

 けれど,たまにそんな意味をかいまみることがある。ときどき,「あ,そうなんだ」と思うことがある。しかしそれは,何が「そう」なのか,「そう」とは何か,はっきりとはわからない。それは,すがすがしいのに,どこかもやもや,だけどおおらかに。
 ただただ,「そうなのか」と納得する。それは何の前触れもなく。みえないものがちらりと顔をのぞかせる瞬間。(けれど,わたしはみえないものがみえないので,やはりみえはしないのです。)

 麦ふみクーツェにも,「あ,そうなんだ」がたくさんある。何も教えてくれないけれど,何も教えてくれないことがきっと教えてくれること。全て読みおわったとき,たくさんの目にみえないものがきっとあなたをつつんでいる。

 わからないことだらけですが,わからないことだらけということはわかっているわけで。くやしいなあと思いながら,そういうものさと思っている。ただ,いつかわたしもみえないものになったとき,全てがわかってほくそ笑む,そんなときをたのしみに。


テーマ:幽霊
おすすめの本:麦ふみクーツェ(いしいしんじ)