真の動物福祉牧場を目指して

22. インドのイギリス人

 前回に続いて、「SYNの物語」の「時」と「場所」を使って「教育」を語らせて貰います
  前回は「平和教育」を語ったので、今回は「平等教育」をテーマにします。

 「平和」と「平等」は切り離せず、不平等が戦争や革命を生んで来たコトは否めないかと思います。
 「SYN」の第一部ではイギリスのインド植民地搾取を描いており、大英インド帝国の首都カルカッタがその舞台です。

 植民地時代のカルカッタは「宇宙一邪悪な場所」と呼ばれ、阿片と奴隷貿易が盛んに行われ、綿のモノカルチャー(産業革命)により飢民にさせられた農民と、機械に職を奪われた伝統織物工が溢れかえっていました。(「植民地残酷物語」)

 植民地搾取で豊かになったのはイギリス人と、その手下に成り下がったインド人だけで、90%以上のインド人は奴隷状態に置かれました。
 これは僅か百年前の話で、今でもインドはその後遺症から奴隷人口でトップを走っております。

 こうした「不平等」に物語で立ち向かったのは、バラモン階級の娘ラクシュミーと、イーストロンドン(当時治安が世界最悪と言われたスラム)出身のメアリーです。
 メアリーは夫と共に豊さを求めてインドに渡りますが、兵士になった夫は「セポイの反乱」で戦死します。 貧困と憎しみの渦巻くカルカッタで、メアリーは産まれたばかりのジョンを必死で育て上げます。

 ラクシュミーは腐敗したバラモン階級に反旗を翻し、飢えた人々を救う活動にのめり込んで反英闘争の闘士と結ばれます。
 彼女の夫も戦乱で行方不明となり、産まれたばかりのガネシアを女手一つで育て上げます。

 このラクシュミーとメアリーが協力してカルカッタのスラムに建てた寺子屋が「教育」の舞台です。
 ここでは「平等」が一番の教育テーマとなり、ジョンは「インドのイギリス人」として実に妙なる環境で育ちます。

 ジョンは奴隷商人に拐われたスラムの女の子を救い出したりして、冒険家ジョジョへと成長して行きます。 こうした「体験教育」はただの勉強とは次元が異なり、魂の奥底まで響く教育と言えます。

 現代においても「平等」は果たされなければならないテーマで、世界では未だに9人に1人が栄養失調で苦しんでおります。
 この原因の一端は、現代の植民地支配と言えるアグロコングロマリット(農産複合体)による農民搾取にあり、それは地球そのものの搾取にも通じています。(「グリーンレボリューションの暴力」)

 話が逸れるので農業には深入りしませんが、経済性を追求して阿片や綿ばかりを作らせ、農民の自立する力を奪って飢えさせたイギリスのインド支配と、現代の農産複合体による農民支配は共通点が多いと言えます。

 「平等」の本質はただ本を読んでも体得できず、実際に貧しい人達と一緒に農業をする「体験教育」が必要かと思います。
 その橋渡しとして「WWOOF」が、世界中の経済性に捕らわれないカウンター·カルチャー的な農家さんと経げてくれます。

 日本でもこの「世界有機農業ボランティア連盟」に加盟している農家さんは沢山いるので、コロナ禍で世界へ行きづらい今だからこそ、国内の「平等と未来」を大切にしている農家さんを訪ねてみては如何でしょう。

 最後に実在した妙なる「インドのイギリス人」として、ジョージ·オーウェルを紹介致します。 
 彼は二十世紀初頭のインドで、ケシ·プランテーションの監督官の息子として生を受けます。 その後インドで憲兵に成りますが、植民地支配の悪辣さに嫌気がさしてボヘミアンとなり「パリ·ロンドン放浪」で作家デビューを果たします。 その後、労働者運動にのめり込みスペイン革命に参戦しますが、ソ連の「粛清の嵐」に巻き込まれて共産主義に絶望します。

 オーウェルの人生は短かったけれど激しく燃え上がり、その作品は稀に観る「Power of Equality」(大平等観)を備えていました。

 

 



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