上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

5月 日日是好日

2020-05-08 21:24:08 | エッセイ
コロナ禍で家にいる時間が増えたことで、
これまでやりたくても後回しにしてきたことを始めている。
見逃した映画をアマゾンビデオで観るのも、そのうちの一つ。

ゴールデンウィーク中に、「日日是好日」を観た。
2018年、森下典子さんのエッセイ『日日是好日』を映画化したものだ。
主演は、樹木希林さんと黒木華さん。
ストーリーはともかく、
観終わった時、「やっぱり、そうやなあ」という思いを強くした。

映画は、茶道を通して四季の移ろいを見せてくれる。
折々の風や雨、雪、木々のざわめきなど、
自然が奏でる音一つひとつが微妙に違うことに気づかせてくれるのだ。

観ているだけなのに、いつの間にか耳を澄ませている自分がいて、
茶釜にそそぐ「水」と「お湯」の音でさえ違いがあることに気づいて、一人で感動したりする。
また、季節ごとに取り変えられる部屋のしつらえが、母や父と暮らした幼い頃を蘇らせてくれた。

人は暮らしながら、毎日毎日同じことを繰り返す。
それをマンネリという人もいるけれど、
それを丁寧に丁寧に繰り返すことに幸せを感じたりするものなのだ。

新型コロナウイルスの影響で、つい2〜3ヶ月前までの生活が一変してしまった今。
友人と集まって、ワイワイしゃべりあった日が懐かしい。
大きなトランクを引っ張りながら旅行に出た日が遠い昔のことのよう。
同じ志の人たちと、「ああでもないこうでもない」と論じ合った日は本当にあったことなのか。
コンサートで感動して涙を流した日も、
人であふれるデパートの食品売り場を、重い荷物を抱えて人の間をぬうように歩いた日も。

こんな時期だからこそ、
映画の中の「何気ない日常が繰り返されること」のありがたさを重く感じたのかもしれない。

「日日是好日」は、禅語の一つだそうだ。
映画は、毎日が好い日となるよう、出会う人と一期一会の気持ちで接することを教えてくれる。
「日日是好日」には、
「一瞬一瞬を精一杯生きる。その積み重ねが一日の好い日となる」という解釈も。
また、
「日々に一喜一憂するのではなく、あるがままを好しとして受け入れる」という意味もあるらしい。

スタイルは多少変わっても、みんなが笑顔で出会える日を静かに待とうと思った。
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