上村悦子の暮らしのつづり

日々の生活のあれやこれやを思いつくままに。

80歳からの二世帯住宅

2024-06-29 10:05:30 | エッセイ
もうすぐ80歳という知人に、笑顔で打ち明けられたのは2年前のこと。
「子どもが生まれた長男が、今後のことも考えて、
家を二世帯住宅に建て直して一緒に暮らさないかと言ってるの」
こう聞くと、ほとんどの人は年老いた両親の介護のことを考えてだろうと思いがちだ。

その時、見せられたのがクリクリの目が愛らしい初孫さんの写真だ。
ところが、
長男夫婦が共働きで、子どもの保育園の送り迎えが難しいため、
二世帯住宅にして、元気なうちは手伝ってもらえればという話だった。

周りの多くの友人に言われたそうだ。
「その年齢で引き受けたら潰れてしまうよ」
「絶対に無理だから断ったほうがいい」

それから2年、久しぶりにその知人とランチに行った。
若々しく、元気そうな彼女。
長年、家でピアノ教室を開いてきた人だが、今も生徒さんが4人いるそう。

「お孫さんは元気?」
「ええ、もう元気に保育園に通ってるの」
建て替えた真新しい二世帯住宅の玄関で、
色とりどりのお花に囲まれて微笑む可愛いお孫さんの写真を見せてもらった。

この2年の間に、住み慣れた家の細々とした片付けをこなし、
一時的に近所のマンションに引っ越して生活。その間に家を二世帯住宅に建て直して、また引っ越し。
昨年から夫婦2人に息子さん家族3人との新しい生活を再スタートしているのである。

絶対そうは見えないが、現在、81歳。
毎日ではないにしても、お孫さんの送り迎えをし、帰宅してからの世話や食事の準備までこなす。
「おばあちゃん、おいちい!」のひと言で、元気が出てくると笑うのだ。
なんて人だろうと思う。

まったく嫌味がなく、ただただ一生懸命。
つい数年前まではボランティアの民生委員も務めてきた人なのだ。
人のために動くことが何の気負いもなくできる人というのだろうか。
「無理なんかしてないのよ」
「やってて楽しいの」
そういう彼女の存在があるだけで、幸せな気持ちになれる。
不思議と私まで頑張らなきゃと思わせてくれるのである。
コメント
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