「忘らるる身をば思はず誓いてし
人の命の惜しくもあるかな」右近【出典:拾遺集】
訳:あなたに忘れられる悲しさは忘れます。ただ、
神に誓ったあなたの命が、
罰を受けて失われるのではないか、惜しまれてなりません。
(つづいてのニュースです。県の公共施設の発注に関する
談合の疑惑で 疑いをかけられている XX党の藤原兼昌議員の
証人喚問が明日午後 国会にて行われます。この問題について、
藤原議員は容疑を一貫して否認しておりましたが、
相次ぐ証人の出廷により 窮地に、、、)
リフレッシュするために有給を使って
鎌倉の海に来ていた スミレはホテルの部屋でTVを観ていた。
連日報道されているニュースに耳を塞ぎたくなって
TVを消した。
しかし、スミレの泊まっている狭いホテルの部屋は
TVを消しても 隣の部屋のTVの音が微かに聞こえてきて
求めていた 静寂を与えてはくれなかった。
あきらめてスミレは 再びTVをつけて
適当なバラエティー番組にチャンネルを合わせると
まともに画面を見ることもなく
ベッドに寝転がった。
スミレは昼間に出会った、是則という男の事を考えていた。
背も高いし、顔も悪くない、頭も良さそうだし
悪い所もなさそう、危険な香りの一切しない男。
こんな男を選べていたなら、人生もっと上手くいってるんだろうな。
そんなことを考えているときに
スミレの携帯が鳴った。
「もしもし」
「もしもし」
「何?」
「あ、兼昌だけど・・」
「知ってるよ」
「そうだよね。今、時間大丈夫?」
「平気」
「そっか、元気?」
「用件は何?」
「用件がないと電話しちゃいけないかな?」
「奥さん元気?」
「君も意地が悪いね。忙しくて妻とは数日会ってないよ。」
「そう。。」
「ふと、君の声が聞きたくなったんだ。突然ゴメン」
「なんで!」
「…」
「なんで、あhなことしたの?キャリアだけじゃ満足できなかったの?
議員になって、令嬢と結婚して、十分夢はかなったはずじゃないの。
私だって毎日あんなニュース見るの辛いんだから。
ざまあみろって思えたら どんなに楽か。。」
「ごめん」
「ばかだよ」
「俺も毎日そう思ってる」
「…」
「明日で、俺の議員人生も終わりだよ。政治家になろうと決めたときから
応援してくれた君にはどうしてもお礼を言っておきたくてね」
「反省しておいで」
「うん。わかってる」
「十分反省して、帰ってくる場所がなかったら電話して」
「こんな酷い男に ずいぶんと親切な事言ってくれるね」
「不幸な自分に酔ってるだけよ」
「ふふふ。ありがとう。久々に昔のような楽しい時間を過ごせた気になるよ」
「私は楽しくなんかないけど」
「やっぱり君は変わらないね。うれしいよ。落ち着いたら会いたいね」
「マスコミに追われなくなったら 会いましょう」
「ふふふ。ありがとう。じゃあ」
「じゃあね」
電話を切ったあと、言いようのない悲しみがスミレを襲った。
隣の部屋に聞えるのではないかという不安から
声を出さずにスミレは泣いた。
翌朝、浅い眠りから目覚めたスミレは
つけっぱなしになっていたTVの画面に目をやった。
芸能ニュースをやっていた画面がニュース速報により
切り替わった。
(談合疑惑で取り立たされていた、XX党の藤原兼昌議員が今朝
宿泊先のホテルで大量の睡眠薬を飲んで 意識不明の状態で
病院に搬送された模様です。安否については未だ不明です。)
人の命の惜しくもあるかな」右近【出典:拾遺集】
訳:あなたに忘れられる悲しさは忘れます。ただ、
神に誓ったあなたの命が、
罰を受けて失われるのではないか、惜しまれてなりません。
(つづいてのニュースです。県の公共施設の発注に関する
談合の疑惑で 疑いをかけられている XX党の藤原兼昌議員の
証人喚問が明日午後 国会にて行われます。この問題について、
藤原議員は容疑を一貫して否認しておりましたが、
相次ぐ証人の出廷により 窮地に、、、)
リフレッシュするために有給を使って
鎌倉の海に来ていた スミレはホテルの部屋でTVを観ていた。
連日報道されているニュースに耳を塞ぎたくなって
TVを消した。
しかし、スミレの泊まっている狭いホテルの部屋は
TVを消しても 隣の部屋のTVの音が微かに聞こえてきて
求めていた 静寂を与えてはくれなかった。
あきらめてスミレは 再びTVをつけて
適当なバラエティー番組にチャンネルを合わせると
まともに画面を見ることもなく
ベッドに寝転がった。
スミレは昼間に出会った、是則という男の事を考えていた。
背も高いし、顔も悪くない、頭も良さそうだし
悪い所もなさそう、危険な香りの一切しない男。
こんな男を選べていたなら、人生もっと上手くいってるんだろうな。
そんなことを考えているときに
スミレの携帯が鳴った。
「もしもし」
「もしもし」
「何?」
「あ、兼昌だけど・・」
「知ってるよ」
「そうだよね。今、時間大丈夫?」
「平気」
「そっか、元気?」
「用件は何?」
「用件がないと電話しちゃいけないかな?」
「奥さん元気?」
「君も意地が悪いね。忙しくて妻とは数日会ってないよ。」
「そう。。」
「ふと、君の声が聞きたくなったんだ。突然ゴメン」
「なんで!」
「…」
「なんで、あhなことしたの?キャリアだけじゃ満足できなかったの?
議員になって、令嬢と結婚して、十分夢はかなったはずじゃないの。
私だって毎日あんなニュース見るの辛いんだから。
ざまあみろって思えたら どんなに楽か。。」
「ごめん」
「ばかだよ」
「俺も毎日そう思ってる」
「…」
「明日で、俺の議員人生も終わりだよ。政治家になろうと決めたときから
応援してくれた君にはどうしてもお礼を言っておきたくてね」
「反省しておいで」
「うん。わかってる」
「十分反省して、帰ってくる場所がなかったら電話して」
「こんな酷い男に ずいぶんと親切な事言ってくれるね」
「不幸な自分に酔ってるだけよ」
「ふふふ。ありがとう。久々に昔のような楽しい時間を過ごせた気になるよ」
「私は楽しくなんかないけど」
「やっぱり君は変わらないね。うれしいよ。落ち着いたら会いたいね」
「マスコミに追われなくなったら 会いましょう」
「ふふふ。ありがとう。じゃあ」
「じゃあね」
電話を切ったあと、言いようのない悲しみがスミレを襲った。
隣の部屋に聞えるのではないかという不安から
声を出さずにスミレは泣いた。
翌朝、浅い眠りから目覚めたスミレは
つけっぱなしになっていたTVの画面に目をやった。
芸能ニュースをやっていた画面がニュース速報により
切り替わった。
(談合疑惑で取り立たされていた、XX党の藤原兼昌議員が今朝
宿泊先のホテルで大量の睡眠薬を飲んで 意識不明の状態で
病院に搬送された模様です。安否については未だ不明です。)