せめてテンプレートを変えて気分転換をはかってみました。
(よく変えます。飽きっぽいので)
さて、最近観た映画の中で印象的だったもの。
「秋津温泉」
1962年の邦画です。岡田茉莉子映画出演100本記念
ということで、本人の岡田茉利子さんがプロデュース。
監督はこの作品がきっかけで茉利子さんと結婚することに
なった吉田喜重。
この頃まで、邦画はほんとに良かったですねえ。
物語は終戦間近の昭和20年。舞台は岡山県の秋津温泉。
東京から、結核に冒された大学生、河本がやってきて、
一軒の旅館で寝ついてしまう。
旅館の娘、17歳の新子は献身的に河本を看病する。
絶望しきっていた河本だったが、心身共に健康な新子の
おかげで、生きる力を取り戻す。
三つ編み、もんぺ姿で丘を駈ける画面の新子を観ながら
「え? こんなに若くて映画出演100本? 岡田茉莉子って
幾つから映画に出てたの?」
と、驚いた。実年齢はこの時、29歳だったらしいが、
17歳(もちろん、いまの17歳よりは大人っぽいけど)
になりきっていた。可愛い!
で、謎なのは結核の学生、河本。
私は津川雅彦だと思って観ていた。
なのに結核が治って社会人になったシーンでは
いきなり長門裕之に変わってて、しばらく面食らった。
いくら実の兄弟といっても、津川雅彦と長門裕之じゃあ
顔が違うでしょうが。
終戦を挟んで人格が変わったということを言いたくて、
こういう配役になったのかな、と自分を納得させながら
観ていたのだが……。
あとからネットで調べたが、どこにも「学生時代を津川雅彦
が演じた」とは書いてない。当初、この役を芥川比呂志が
演じることになってたが、降板して長門裕之に変わった、と
いうのは出ている。
では、私の見間違いなのだろうか。
だけど最初に長門裕之が登場した時、「あ、あら? あら?」
と私は大いに戸惑ったのだ。
見終えてから録画を消去してしまったので、もう確かめようがない。
でも、こんな見間違いをするかなあ、この映画好きな私が。
なんだか狐につままれた気分。
誰か、「いや、あれは確かに津川雅彦だった」という人、いませんかねえ。
ともあれ、岡田茉莉子さんはほんとうに美しかった。
若さに溢れた17歳から、女盛りではあるが人生にくたびれた
34歳まで、体型も変わったんじゃないかと思うほど見事に
演じきっていた。
いまの女優さんで実年齢29歳の人がこの役をやったとしたら
17歳は容易に演じられるだろう。でも34歳の倦怠感が
出せるかどうか。
総じて子供っぽいものねえ、いまの女優さんは。
それにしても長門裕之演じる河本という男は、まるっきり
魅力がなかった。苦労かけてる妻には冷たいし、新子以外にも
遊びで女と付き合ってるし、なんで新子が17年間もこんな
男を思い続け、悲劇の最後を遂げるのかさっぱりわからない。
身勝手男にひたすらついていくという構図は「或る女」や
「浮雲」もそうなのだが、この映画は岡田茉莉子があまりにも
魅力的なだけに、河本という男のつまらなさが目立ってしまった。
映画自体は、美しい四季の移り変わりといい、ストーリーの
緊迫感といい、邦画の良さを認識させてくれた一本だったのだが。