冬桃ブログ

初春のS村で花を植えて鼻に悩む

 南信州S村を初めて訪れたのは昨年の五月末だった。
 ここの四季を全部体験すると決め、夏、秋、冬も訪れた。
 そして待望の春! 横浜と違って、ここはまだストーブと
就寝時の湯たんぽが必須。
 とはいえ春は確実に始まっていた。
 夜、コートなしで外へ出て、しばらく星を眺めていられる。
 湯ぶねから出て脱衣所へ出たとたん震えあがる…ということもない。
 そこここに春!

 裏の畑にいっぱい出ているフキノトウ。
 七分目くらいに開いたのを選び、味噌和えと天婦羅に。


 新品ピッカピカの蜘蛛の巣。


 こちらは地蜘蛛の巣。


 お世話になっている家の地主さんが、
自分で釣ったアマゴを持ってきてくださった。
 炭火で塩焼き。私はアマゴ初体験。
 なんとも上品な美味しさ!


 私より少し若い「りつ子」さんは
立派な和風庭園のある大きな古民家の女主人。
 S村に来るたび、ここを訪れたくなる。
 気さくな人柄のりつ子さんと、この家の
内外に生き続ける「昭和」に会いたくて。


 細い枯れ木や薪が、家の裏にいっぱい積み上げてある。
 りつ子さんはこれで毎晩、お風呂を沸かす。


 お風呂の焚口は屋外にある。
 真冬だって、彼女はここにしゃがんで薪をくべる。


 座敷になにやら大きな布が……。


 「ああ、これなあ。二階を整理しとったら出てきたで。
何に使ったらええかねえ、これは」
 その布を何枚も拡げてくださった。一辺が150センチ近くある。
 「炬燵の上掛けにでもするかねえ」
 「いや、それはもったいないかも。こんな立派な藍染を」
 とお喋りするうち、昔の行商人などが使った風呂敷ではないか、
という結論に至った。

 この家にお邪魔すると、私はいつもタイムトリップする。
 子供の頃、暮らしの中にあったもの、日本のどこかにあったもの。
 そんなあれやこれやが魔法のように姿を現す。


 庭木選定中だったりつ子さんと一緒に。


 さて、今回のS村では私にもミッションがあった。
 畑の空いているところに花を植え、ゆくゆくは
バタフライガーデン(蝶や蜜蜂が集まる花畑)
にしようというもの。
 夢だけで、知識も経験もなく、ここに住んで
いるわけでもないのに、なんとも大それたミッションを
勝手に決めてしまった。

 植木屋さんで買ってきた花を、さっそく植えてみる。
 ポットに種も蒔いた。
 

 ひとの世話になる……というか、人の力を120%くらい
借りなきゃできないことを始めてしまった。
 で、すぐに罰が当たった。

 空気の良いところなら、杉があろうがなかろうが
花粉症は収まるはず……と信じていたし、着いた日は
なんともなかった。
 なのにいきなり鼻水、鼻づまり、目の痛み、喉の
イガイガが、凄まじい勢いで始まった。
 りつ子さんにもポケットティッシュをありったけ
いただいて帰った。
 原因はすぐにわかった。土埃だ。
 この日、ポットに土を入れて種を蒔いた。
 その直後からこの症状が出た。
 にもかかわらず、せっせと雑草取りをした。
 あとはもう三分とおかずに鼻をかみ続け、
はあはあと苦しい息を吐き続けた。
 もちろん花粉症用に服用薬、鼻炎スプレー、目薬と
用意万端だったが、どれも効かない。

 いまこれを書いているのは夜。
 ようやく収まってきた。
 でも明日はどうなることか。
 畑の土は、付け焼刃の「やる気」を見抜き、
がつんとやってくれたのかもしれない。



 
 
 
 

 

 

 

 
 

 


 
 
  

 

 


 
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