ローズガーデンの脇、緑の迷路みたいな
小道を歩きながら、T氏がしみじみと言った。
地方の少年だったが、横浜へ遊びに来た時、
山下町に住んでた叔父がここへ案内してくれたのだと。
「港の見える丘公園」は、そこに佇むだけで
日本でも外国でもない不思議な空気感があり、
カルチャーショックだったと。
私は中学校の修学旅行が横浜初体験。
日本海の港町に住む女の子は、日活アクション映画で
垣間見る、怪しくも妖しい横浜に憧れた。
その時、引率されて行ったのは山下公園。
マリンタワーが完成した年だと後年知ったが
もう建っていたかどうかは覚えていない。
海と船ばかり見ていたから。
ここにくれば、どんな遠くへだってはばたける。
ここから船に乗れば、異人さんの国へいけるのだと。
「赤い靴」という童謡のイメージが強かったのだろう。
図書館で翻訳物ばかり読んでいた女の子は、
いつも異国を夢見ていた。
横浜で一番美しいのは、やっぱり山手の丘。
私たちは頷き合った。
その一角にある瀟洒な洋館の窓から
濃い緑と、その向こうにある展望台、そして海を眺める。
空に出現した不思議なものは、宇宙人の顔ではない。
窓ガラスの模様。
久しぶりに雨が降らなかった一日
最新の画像もっと見る
最近の「雑記」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事